A hotel with many orders
chapter6


「ねぇこれ見て。」

あかねは、顔を抑えながらエレベーターの中に座り込んでいた、乱馬の腕を引っ張って立たせた。

「んだよっ!……あ?何だこれ?」

-当ホテルは何かと決まりの多いホテルですからどうかそこはご承知下さい。了承された方のみ、こちらのドアを開け、エレベーターを降りて下さい。-

「何かしら決まりって。」
「知る訳ねーだろ?」
「ヘンよね…この張り紙。それにね…この文句…どっかで聞いた様な…」
「何だそれ?気のせいじゃねーのか?」

あかねは首を傾げているが、乱馬は何も感じない様。

「行こうぜ!」

そう言うが、しかしあかねはどうしても何か引っかかっり、張り紙をじっと見たままであった。
その姿に乱馬は痺れを切らし、腕を引っ張ると、ドアを開けエレベーターから出た。

「ちょ、ちょっと!」
「んなもん見ててもしょうがねーだろ?ほら行くぞ!」
「でも……。」

あかねはその張り紙を名残惜しそうに見ながら、乱馬に手を引かれるまま進んだ。





201〜205はコチラ。
そう示されている廊下を歩いている二人。

「えーっとこっちか。」

指示された方へ目を向けると長い廊下が伸びている。
乱馬はスタスタ歩き出した。
しかしあかねは内心落ち着かない様子で後に続く。

「乱馬…。」
「何だ?さっきの張り紙なら気にするなよ。」
「うんそれもあるんだけど……」
「ん?」
「あの……手……。」
「ん?あっ…うわっ!ご、ごめん!」

エレベーターの前で手を掴まれたままの状態で歩いていた二人。
乱馬は全然気付いてなかった様だが、あかねはこんな状況だからこそ、乱馬に触れられているだけで、心臓は飛び出そうだった。


あかねは乱馬の後を1歩距離を置いて歩いていた。
手を離してからは、乱馬も距離を保って歩こうとしている。
"二人っきり"という事に気がついてから、頭をかすめるのは今夜の事。
その為か、近付く事を恐れている。
淡い気持ちと不安な気持ちが入り乱れる、この状況下。
寧ろ頭をかすめ無い方がおかしい。惹かれている相手とだから余計に……。


(もう…どうしよう!あたしってば……。)
あかねはこんな時に不謹慎だと首を振ると、その思いを払拭しようと乱馬に話し掛けた。

「ねぇ…そう言えば、エレベータの中で何言おうとしてたの?」
「え!?」

あかねの突然の言葉に思わず慌てる乱馬。
しかもその時に考えていた事等、言えるはずも無い。
乱馬が真っ赤な顔してうろたえるので、その様子にあかねも慌てる。

「ちょっ……あんた…まさか…変な事考えてたんじゃ…」

ぎくり…その言葉に乱馬は体をぴくっと動かした。
払拭するはずの思いが、乱馬の行動を見て余計にヒドクなりそうである。

「ほ…本当なの!?し、信じられないこんな時に!!」
その反応を見逃さなかったあかねは、自分も考えていた事を忘れる様に睨む。
「なっ…へ、変な事って何だよ!」
「えっ!?……へ、変な事は変な事よ!!このスケベ乱馬!!」
あかねのこの言い草に、乱馬は開き直った。
「だ、誰がスケベだっ!おめーこそ、んな事考えてたのか!?俺の身が危険じゃねーかっ!」
「なっ…なに言ってるのよ!それはあたしの台詞よっ!」
「おめーみてーな色気0(ゼロ)のオコチャマに、興味ねぇっ!」
「んですってーっっ!だっ誰がオコチャマよっ!!あたしだって優柔不断男に興味ないもん!!」
「んだとーーーっ!!」
「やろうっての!?」

きっ!!
二人はそう言うと、廊下の真ん中で睨み合いを始めた。

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