A hotel with many orders
chapter3


あれから数時間、段々日も暮れて、辺りは闇に包まれ始めた。乱馬がいくら修行で自然慣れしていても、あかねを連れている為、もう、むやみやたらに動く様な事は出来なくなって来ていた。同じ様な景色の中である森。同じ場所を回っているだけの可能性もあり、又、暗闇をあちこち動くのは危険なのは間違いない。木は、大きな根をあちこちに張り、絡み合って、険しい道を作っている。只でさえ、それを越えるだけでも、相当な体力を必要とする。


一向に希望の光は見えない。お互いがそう思われた時、奇蹟が起きた。

「あっ!あれ見て乱馬っ!」
「えっ!?」

乱馬はあかねが指差す方へ向いた。光が見える。かすかな光が、あかねの視界に入ったのだった。

「もしかして小屋の光か!?」
「そうかも……。」

乱馬とあかねは顔を見合わせ頷いた。そっしてさっきまでの疲れが取れたかの様に、光に向かって歩き始めた。



「西洋…旅館…?」

近付いて見ると、白塗りを基調にしたシックな作りのこじんまりとしたホテルであった。白塗りのせいか、森の中では不気味に浮き上がっている。
2人は顔を見合わせたまま、ホテルを目の前にして立ち尽くしていた。どう考えても、自分たちの目指す場所は全く違う。

「親父達は……。」
「いないでしょうね……。」

しかし、父達がいようがいまいが、この森で野宿する事を思うと、お互い迷う事は無かった。

「もう動いたら危ねぇし、仕方ねーな。…今日はここで…。」
「そうね、お父さん達捜すの、また明日にしましょ。」

ようやく、休めそうで安堵する2人。



「しかし、これ旅館なのか?ホテルじゃねーのか?」
「西洋の旅館…だからホテルでしょ?」
「はぁ、成る程。でも、こんな所に作って、誰か来るのか?」
「さぁ……。あたし達みたいに迷った人が結構いるんじゃない……?」

2人はそう言いながらホテルの入り口へ進んで行った。

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