ナ イ ト メ ア
chapter2 〜ベストカップル〜 


『…やっと……であっ………』
「ねぇ…何を言っているの!?」
聞き取り難い、悲しげな声が降る何もない空間。
あたしはそこに一人佇んでいる。
何をする訳でもない…何をする事も無い。
ただ空を見上げては声の主が一体誰かと考える。
「一体あなたは誰なの!?」
声がする度、あたしはそう叫ぶ。しかしその後の反応はない。
そして………





「……まただわ……。」
あたしは夢から覚めた。
「…何のかしら?あの夢は…。」
あたしが夢で誰かと問うと、決まって目が覚める。


ここ最近、変な夢を見続けていた。
いつからともなく、急に見始めたこの夢。
と言っても、別に何が見える訳でもなく、ただ男の人の声がするだけ。

あたしはベッドから起き上がると道着に着替えた。
夢のせいか…それとも、昨日であった早乙女乱馬という男のせいか、あたしはいつも以上の気だるさを覚えていた。
「はぁ…学校、憂鬱だなぁ。」


昨日、早乙女乱馬とやり合って、その後が大変だった。

あれから………





きーんこーん

あたしたちが向かい合って互いの流派名が同じことに呆然としていたその時、チャイムがなった。
「ちょっ…これってショートホームルーム終了のチャイム!?」
すっかり夢中になって、早乙女乱馬に向かって行ったから忘れていた。
もう授業が始まる事を。
あたしはチャイムが鳴って現実に呼び戻された。

「え?ショートホームルーム?何だそれ?」
あたしが慌てているのと対照的に、早乙女乱馬はのんきそうな表情で首をかしげた。
「担任からの連絡の時間みたいなものよ!とにかく早く行かなくちゃ、遅刻よ!!」
「なっ…何!!俺初日から遅刻かよ!?」
「とりあえず、あんたを職員室まで送るわっ!!」
ようやく事態を把握したのか、あたふたする早乙女乱馬とあたしは、放り出していたかばんを急いで拾い上げた。
「た、頼むっ!!」
その言葉と同時に、あたしたちはげた箱へ向かって走り出した。

それにしても、さすがに鍛えているだけあって、あたしと走っても息ひとつ乱さない、隣の男。
今まで出会って来た男の中でも、ちょっと違うように見える。



職員室の前に来ると、もうショートホームルームはとっくに終わっていたのか、あたしの担任の先生が立っていた。

「天道…に……あっ…早乙女っ!!お前一体何していたんだ!?」
あたしたちの姿を見ると、先生はそう言った。
「げ…すいません先生!ちょっと……」
その言葉に早乙女乱馬はそう答えながら、じっ…とあたしを見た。
「な…何よ……。」
「別に。」
言葉とは裏腹に、早乙女乱馬の目はあたしを攻めているよう。
確かにあたしがムリヤリ挑んだ組み手だったから、あたしにも責任はある。

「………」

思わず目を反らしたけど、早乙女乱馬の視線が痛い。

「………」

わ、判ったわよ!説明すればいいんでしょ!

あたしは心の中でそう叫ぶと、仕方なく先生に事情を説明しようした。
と、その時
「何だ…?アイコンタクト取って。早乙女、まさか転校早々天道に手を出していたのか?」
先生はからからと笑いながら、どう勘違いしたのか、見当違いなことを言ってきた。
「なっ…何言ってるんですか!?違います!!」
冗談じゃないと、あたしがそう言うと、早乙女乱馬もあたしの言葉に間髪入れずに口を開く。
「お、おいっ先生勘弁してくれよ!おれは被害者だぞ!?ったくいきなり因縁つけられて…」
「いっ、因縁!?ちょっ…因縁だなんて、その言い方失礼じゃない!?」

確かにあたしから行ったけど、先生の前で因縁だなんて!

「鼻息あらく、つっかかってきたのはおめーだろうが!ったく凶暴な女だぜ!」
思いっきり反論したら、その倍の言葉が返ってきた。

何なのこの男っ!!弁解してあげようと思ったのに!!

「初対面のあんたに凶暴だなんて言われる筋合いはないわよっ!」
「凶暴は凶暴だろーが!」
さっきから感じるこの失礼千万な態度。
考えてみればさっき会ったばかりなのに、冷たいだのなんだの言われている。
その上凶暴だなんて、早乙女乱馬は言いたい放題。
「んですってーーーこの……粗忽者!!」
「そ、粗忽もの!?何だと!!」
「何よっ!!」
このままでは言われっぱなしで悔しい。
きっと睨む早乙女乱馬にあたしは負けじと睨みつけた。


「……お前ら……初対面じゃないのか?昔からの知り合いか?」
「「知りません!!」」
ようやく口を開いた先生から出た言葉はこれ。
この男の失礼な態度を止めて欲しいのに、止めることもせず、先生は腕組みしながらあたしたちをしげしげと見ると、さらにふざけたことを言う。
「息までピッタリだなぁ。それにしても早乙女。お前全国各地で本当に格闘修行してたのか?初対面で天道をここまで手なずけるとは…まさかナンパの…」
「んなわけねーだろっ!」
「手なずけられてません!」



きーんこーん。


あたしたちがまたも、言い合いしていたその時、本鈴がなった。
「やだっ!またこんなことしてたせいで、もう授業始まっちゃうじゃない!!先生とにかく教室戻ります!」
あたしがあわててそう言うと、隣で先生は頭を抱えていた。
「あっ!しまった!!ショートホームルーム、サボッてしまった!」
「え?まだショートホームルーム終わってなかったんですか?」
「早乙女を待ってたんだ。紹介しようと思ってな。全く早々から遅刻とはな。」
先生のその言葉にあたしは固まる。
「…え!?」
紹介?先生が?
あれ?そう言えば、余りにも腹が立って気がつかなかったけど、先生が思いっきりコイツを知っているって事は……
「紹介って…先生…もしかしてこの人…」
「あぁそうだ、この転校生はウチのクラスだ。ショートホームルームで紹介するつもりだったのに…」
この早乙女乱馬とあたしは、なんと同じクラスだった。
「げっ…もしかして、こんな凶暴なヤツがクラスメートかよ!」
「なっ!!」
クラスメートだと判った途端にまた暴言。もう我慢しなくていいと思う。
あたしは腕まくりして、1発お見舞いしようとした。

「こ、こらっ!天道、授業まで遅刻するぞ!で、早乙女の紹介どうするかな……」
先生はあたしがお見舞いする前に止めると、
「あっ、あれ1限目の先生だな!おーい!!先生、先生!!」
そして職員室から出てきた、あたしたちの1限目の授業の先生を捕まえ、何か言った。
1限目の先生はこちらをちらりと見ると頷き、
「おい、何ぼんやりしてんだ!一緒に行くぞ!天道…早乙女!!」
先生はあたしたちを呼びつけた。
あたしたちはふんっと顔を反らしあうと、先生と一緒に教室まで向かった。





教室を入ると好奇の目がいっぱい。
もちろん早乙女乱馬に向くもの。
聞かされていなかった転校生の登場に、教室はざわめく。
あたしはさっさと席につくと、授業の準備をした。

担任でもないのに、先生は早乙女乱馬の紹介をしている。
本当はショートホームルームでする予定だったけど…という言葉を付け加えて。



「えー…早乙女乱馬くんは最近まで…」

先生の説明を他所に、みんなひそひそと、"まぁまぁ格好良くない?"だのと言っている。

スグに判るわよ!こいつがすんごく、失礼な男だって。

今日会ったばかりの失礼な男に腹が立っていたあたしは周囲の声に心で答える。

"ねぁおさげしてるよ。意外と似合うもんね!"

え!?
思わずその声で、あたしは早乙女乱馬の方に目がいく。
今まであんなにやりあっていたのに、気がつかなかった…早乙女乱馬はおさげをしている。
おさげを見ようと目を向けたその瞬間ふと目が合った。
早乙女乱馬は挑発的な瞳をしている。

な、何だか、スゴクむかつく!!おさげだなんてヘンな男。ふんっ!!

あたしはふいっと顔を反らすと、早乙女乱馬ともう関わらないように…目も合わさないようにしようと心に決めた。

が、その思いはすぐに打ち砕かれる。



「…であるからして、早乙女、天道、二人とも遅刻だから、廊下に立っておれ。」

「「え゛っ!?」」

突然のその言葉にあたしも早乙女乱馬も声をあげる。
「担任の先生からの指示だからな。ほれバケツ持ってな!早乙女、お前も初日から遅刻とは大したもんだ!」
そう言うと、あたしと早乙女乱馬は廊下に放り出された。
「えっ?えっ……えーっ!?」
あたふたするあたしたちに向かって教室からは笑い声がする。
有無を言わさずの処罰。
笑いを背に受けながら、あたしと早乙女乱馬は並んで立たされた。

すごく恥ずかしい!サイテーーーー!!


「…あ、あんたのせいだからね。」
あたしは隣にいる早乙女乱馬に向かってこそっと言った。
「あのな、俺はおめーのせいでこうなったんだぞ。」
「何よ、元はといえば久能先輩を踏んだあんたが悪いんでしょ。」
「あ…そういえばそんなこと……でもそのまま保健室に置いて、すぐ戻れば良かったことだろ。」
恨みがましい表情を浮かべあたしを見下ろすけど、あたしも向かっていく。
「あのね。そのまま放っておいて良かったのよ…大体、いつもなら、始業前に片付けてるのに!」
「始業前にって…あ、そういえば、みんなが挑んでくるとか言ってたな。」
「……まぁね。」
「それにしても勝負するわりに、久能だっけ?アイツ変ななりしてたな、竹刀と花束。何だあの姿?」
早乙女乱馬は怪訝そうな顔をする。
「……」
あたしはその言葉に黙ってしまった。
自分で言っておいてなんだけど、訳を言ったらバカにされるのが目に浮かぶ。
実は久能先輩、"あかねくんとつきあいたいなら、あかねくんに勝て"って主張をした。
だから久能先輩の手にはあたしへといつもくれるバラの花束と、勝負用の竹刀があった。
そしてその主張以来、校門で毎朝変な人たちがかかってくる。
でも、あたしの口からそんなこと、言いたくない。
「おい、聞いてんのか?」
そんなことを考えながら、だんまりを決め込んでいたら、


「おのれーーーーーーーー!!」


その噂の張本人が走りながら現れた。
すごい形相で朝と同じ姿、剣道着のままの久能先輩。
「く、久能先輩。」
「おー…天道あかねではないか。今日は邪魔が入って愛を語らずことができずに残念だ。」
あたしの手を取ると意味不明な言葉を囁く久能先輩。
「あの、別に結構ですけど。」
お断りをしても聞いてはいない。
いつものことだけど、正直、いい加減にしてほしい。

「ときにあかねくん、今朝、ぼくたちの甘美な時間を邪魔したヤツ…早乙女乱馬というふとどきものを探しにきたのだが、どいつか教えてくれないか?」
「え?早乙女乱馬?」
あたしは隣にいたヤツに目を向けた。
すると当の本人はのんきそうに、
「久能先輩、噂どおり変だなー。」
ヘンな所に感心している。
「初対面で変とは失礼な輩。しかも仲良く天道あかねと廊下にならびおって!!」
「は?何で俺がこいつと仲良くしなくちゃなんねーんだ?」
「あかねくんをこいつ呼ばわりするとは……失礼千万ーーー!!」
そういうと久能先輩は持っていた竹刀を早乙女乱馬に向かって振り落とした。
「おーっと!」
しかし軽々よける、早乙女乱馬。
その姿に久能先輩は困惑していた。
「貴様!貴様一体なにやつ!?それにあかねくんとどういう関係だっ!」
「は?関係も何も今日あったばかりだぞ。俺は…」
「ぬわにーー!今日会ったばかりで馴れ馴れしい!貴様まさかあかねくんに一目ぼれしたのでは!!」
「「んなわけあるかーーー!」」
久能先輩の言葉にあたしと早乙女乱馬の言葉が揃う。

「いいか貴様!あかねくんと付き合いたいのなら、あかねくんに勝たなくてはならんのだぞ!!」
「せ、先輩っ!そんなんじゃありません!」
いやな予感がする…余計なことを言わないで欲しい。
「あ?付き合う?何の話だ?」
「き、気にしなくていいの!!」
あたしが慌ててそういけど、久能先輩は言葉を続ける。
「ぼくの主張を知らんのか!"あかねくんと付き合いたいなら、あかねくんに勝つ!"これが約束だ!!」

い、言っちゃった!これ以上ばかにされたくないのに!!


「…………あ?」
先輩の言葉で、早乙女乱馬は案の定、唖然としていた。
「まさか毎朝挑むってのは……」
そう言うとあたしをまじまじと見る。
「な、何よ。」
「へぇ…おめー意外と人気あるんだなー。物好きなヤツラ。」
「なっ…か、関係ないでしょ!?」
やっぱりこの男バカにしている。更にデリカシーがないのか、至近距離であたしを見ている。

ちょっ…近づきすぎなんだけど!!

「ふーん。ま、そんなことどーでもいいけど、おめーに勝てる男もいねーとは、情けねー学校だな。女相手だと腕も鈍るのかなーー。」
そして呆れたようにそう言い放った。

こ、この男はーーーーーーーっ!!!

ぷつん!
あたしは今日で一番見事にキレた。

「あんたって人はーーーー!」
相変わらず失礼な物言いに、あたしがそう言って向かっていこうとした。
「貴様…先ほどからあかねくんに対して無礼の数々…ゆるせん!!」
が、久能先輩があたしより先に踏み出していった。





久能先輩が来たもんだから、騒ぎが大きくなり、気がつけばクラスメートは窓を開けて廊下二人の様子を見始めていた。

「おい、早乙女のヤツ久能に喧嘩売ってるぞ。」
「大丈夫なのかしら…変態だけど、風林館高校最強なのに。」

そうなのだ、久能先輩は一応"風林館高校最強"。
だからあんなわけの判らない主張も通っていた。
風林館高校最強の名の通り、次々と久能先輩は見事に技を繰り出している。
でも早乙女乱馬はそれ以上なのか、完全にこの男優勢だった。
まったくあたらない攻撃に息を切らす久能先輩に対し、早乙女乱馬はけろりとしている。



「き、貴様一体なにやつ!?」
肩で息をしながら聞く先輩。
「俺はあんたが捜していた早乙女乱馬だけど。」
さらりと言う早乙女乱馬のその言葉に久能先輩の顔が引きつった。
「ぬわにぃーーーーー!き、きさまが…早乙女乱馬か!!」
「そ、そうだけど、何だよ。」
今まで見せたことのない、久能先輩のその形相に早乙女乱馬が少し後ずさったのが見えた。

「横恋慕しおって……きさまがあかねくんに手を出し、手なずけた男かーーーーーっ!!!!」

「「えっ!?」」

て、手を出した!?手なずけた!?

思いもよらない言葉に一瞬固まるあたしたち。
でもその様子とは逆にすごい盛り上がるクラスメート。

「な、何ーーーーっ天道、本当か!?」
「きゃーーーっ!あかね男に興味ないなんて言っておきながら!!」
「二人揃って、遅刻ってそういうことだったのーーー!?」

「「ち、違っ……」」

冗談じゃないと反論しようとしたけど、誰も聞かない。
ちょ、ちょっと勝手に決めないでーーーーーー!!

「ち、ちがうっ違うのよ!!これは誤解であって…」
「な、何でこうなるんだーーーー…!?」

「保健室で、そして担任から聞いたのだ!今朝のことをーーーっ!」
そう言う久能先輩。
何を聞いたのか、そして先生も何を言ったのか。
ただでさえ、立たされてが恥ずかしいのに、体中から火が出そうだった。
早乙女乱馬もあたしも否定するけど、盛り上がるクラスメートたちは止められない。
そして久能先輩も…

「清純なあかねくんをたぶらかす不貞の輩!覚悟ーーーーっ!」
「や、やかましわっ!ややこしくしやがってーーー!!」
向かっていく久能先輩は、あっさり早乙女乱馬に蹴り飛ばされていた。


「いいか、おめーらっ!…」
久能先輩を蹴り飛ばしてクラスメートの方に向いた、早乙女乱馬。
するとクラスメートは拍手したり、冷やかしの声でいっぱい。
「ちょっ!止めてよ!違うのに!」
クラスメートの行動にあたしは必死で否定する。
「何言ってるの!早乙女くんが久能先輩を倒してくれたから、公認のカップルよ!」
「早乙女、転校早々羨ましいなぁ…」

「ち、違うの−−−−!!これは誤解であって…」
「だ、だからーーーーーー…っ!」

好き放題に言うクラスメートたちに向かって必死で誤解を解こうとするが、誰も聞いていない。


その状況に早乙女乱馬はあたしに向かって言ってきた。
「おいっ…おめーのせいだぞ…!転校早々こんな目にあわせやがって…」
「冗談じゃないわよっ!元はと言えば、あんたが久能先輩ほっとけばよかったことでしょ!」

「あかねを助けたんだー格好いい!!」
おーーーっ!

あたしたちの言葉を拾ってからかうクラスメート。
もう違うのに!!
「だから違うって!!おめーも余計なこというな!ったく冗談じゃねー。」
早乙女乱馬はそう言いながら、あたしを睨む。
「睨んだって怖くないわよ!あたしだって冗談じゃないわよっ!!」
あたしは早乙女乱馬にあっかんべーをした。
「…ったくかわいくねー女だな!」
「さっきから聞いていれば…。あんた…今日会ったばっかりの人間に向かって失礼じゃない!?」
「失礼はどっちだ!俺を巻き込んだのはおめーだぞ!?」


「まぁまぁ…二人とも喧嘩は止めて」
「それにしてもすげーな、今日会ったばかりでここまで意気投合とは…」
「未来の夫婦誕生か!?」

「「ち、違ーーーーーーう!!!!」」


もう収集つかなくなったクラスメート。
そして、授業を妨害したあたしと早乙女乱馬は後からこってり絞られた。


信じられない!怒られるし…あんな男と噂になるなんて!!
誰か助けてーーーーーっ!!

しかしそんな思いも空しく、こうして、あたしたちはいきなりカップルに仕立てられてしまった。



そういう訳で、昨日は本当にひどい一日だった。










昨日のことを思い出すと腹が立つ。
早乙女乱馬との一件で、一日中からかわれたあたし。
更に、暴言を吐く早乙女乱馬への怒りも取れない。

「はぁっ!!」

どがしゃーーーーん!

あたしは家のはなれにある道場横で、日課の瓦割りを始めた。
あたしは天道流の跡継ぎであり、道場の跡継ぎである。
道場を継ぐために…強くなるために、昔から、毎朝欠かさずにこれをやってきた。
…でも今日のあたしは鍛えるというより、完全に瓦へのヤツアタリとなっている。

「ったく冗談じゃないわ。」
あたしがため息をつくと、背後に気配を感じた。
「すごい噂になってるわよ、あんた。男嫌いじゃなかったっけ?」
「なびきおねーちゃん…」
あたしの背後に現れたのは一つ上のなびきおねーちゃん。
なびきおねーちゃんは同じ高校に通っている。
だから昨日のことは筒抜け、さらに言うならあの久能先輩と同じクラス。
「…当たり前でしょ!あたし迷惑してるのよ!」
久能先輩に乗せられて毎朝挑んでくる男たち。
そんなことされて嬉しくないし、望んでいない。
本当は……
あたしだって持つ密かな恋愛への憧れ。
でも想いを叶えてくれる人なんて周りにはいない。

「そう?たまにはいいんじゃない?まともな恋の噂があっても。」
あたしの気も知らずに、そう言って面白そうに笑うおねーちゃん。
「冗談じゃないわよっ!あんな失礼なヤツ、まっぴらごめん!」
「ふふっこれから何だか楽しくなりそうだけど?ま、頑張って。」
ひらひらと手を振りながら立ち去るなびきおねーちゃんは、完全に面白がっている。

「あたしは楽しくないわよ!」
また昨日の出来事が色々思い出されて、イラダチは起こる。

"精神統一しなくちゃけがするぞ。あかね。"

あたしに格闘を教えてくれている、父の声が頭の中でする。
そうよ…あんなヤツ、あたしに関係ないっ!
精神統一、精神統一!

あたしは気を取り直すと瓦を割り続けた。





それにしても、同じ無差別格闘流を極める者が、偶然にもこうして出会うなんて、オカシナ事もある。

早乙女乱馬……
本当にムカツク男!!

今日もあの騒ぎならどうしよう…そう思うと、早乙女乱馬に対して益々腹立たしくなっていた。


また1話が長っ!そして必死で話を進めようとしている自分が見える(汗
 えーっと、こうして乱馬、あかね…と交互に視点を置き換えて、話を進めて行きたいと思います。
 書きたい部分だけちょこちょこ書いてるという状態で、つなげるのに時間がかかることかかること。
 矛盾もありそうで怖い(汗

 ところで…私は実は夢によっては夢だと認識して、目を覚ましたり、続きを見たいと思って夢をみたり出来た事が
 あった人なんですよね〜。
 友人に変だと言われました。出来るのって変なのかな〜(笑

2004.1.11

以後はとどきましたら、掲載させていただきます。


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