パソコン 


ぴこん

"あかねの好きそうな店、偶然見つけたぜ。
http://www.△△.com/
折角偶然見つけたんだから、見てみろよ。
偶然とはいえ、こんなもん見つけられる様になったとは、どうだ!上達しただろ。
俺に不可能はないな!

乱馬"


メーラーを開くと数件のメッセージが届いていた。
さゆりやゆかを始めとする悪友4人組や、クラスメート。乱馬の写真を売りつけようとする、なびきまで。
その中でもやっぱり最初は乱馬のメッセージを開くと、あかねはそのメッセージを眺めていた。

あかねは学校の昼休中、パソコンでメールのチェックをしていた。

高校2年生になって、急に必須となったコンピューターの科目。今や、簡単なパソコン操作位、出来て当たり前の世の中。社会に出る前に少しでも免疫をつけようと、風林館ではめずらしく真面目な試みが行われている。
予約を入れ昼休みや放課後、開いている時に、パソコンを自由に使用できるようになっていた。各生徒にIDとパスワードを与え、個人でログインし、インターネットの閲覧や、メールのやり取りなど出来る。

「偶然偶然ってしつこいわよ…。上達してもらわないとあたしも困るのよ。」

あかねはそう言いながらふっと笑った。そして以前の授業を思い出した。


以前の授業…その日はインターネットに接続しよう!だった。
アドレスを打って見たいページを開くというのだが、アドレス打つのに乱馬は苦戦していた。

「げーーっ何だよこれ!使いにくいぜ。」
「もう、文句ばっかり言ってないで、手を動かしなさいよ!」
「ったく…こんな事出来なくても、一生俺は困らないぜ?」
「あんたねぇ…そういう問題じゃないでしょ!」
「全くだわ早乙女くん!天道さんの言う通り、そういう問題じゃないわよ。」

あかねと乱馬のやり取りを遠くで見てた先生は二人の傍に寄ると、あかねの言葉に同意した。

「早乙女くん、こういう知識がいつ必要になるか、どこで役立つか判らないのよ。それに知らなくて恥じかくことはあっても、知っていて無駄になる事って世の中にはないの。」
「パソコンなんて家にねぇのに、どこで使うんだよ…。」
「今は無くても、早乙女くん、格闘家になるなら、将来自分を売る為にWebサイト持つ事も必要となるかもしれないわよ?それに道場の宣伝とかにもなるし、ね天道さん!」
「「えっ!?」」
「そーだぜ乱馬っ!あかねとの愛の軌跡とか、絶対ウケルぜ〜。」
「やだーそれ面白そう!」
「きゃーーそのページ作りましょうよ。」

いつの間にか、悪友までも参戦して、授業は段々騒がしくなる。

「なっ何訳わかんねー事言ってんだ!!」
「そ、そーよあたし達そんなじゃないってばっ!!!」
「「「「そーかなぁ?」」」」

乱馬とあかねの反論に悪友4人はニヤリと笑いながら、声を揃えてそう言った。

「こらこら、ちょっと静かにしなさい!とにかくゆっくりで良いから、どう使うか考えるのも楽しいわよ。取り合えず頑張ってやりましょうね。」

そういうと先生は他の生徒を見回り始めた。

「ったく……あの先生、言い返しにくいぜ。」
「他の先生と比べて正論過ぎるからでしょ?ほら、教えてあげるからちゃんとやりなさいよ。言っておきますけど、家でパソコン出来ないんだから、学校でちゃんと勉強してよ。」
「へーへー。」

二人は並んで一緒にパソコンを動かし始めた。その様子を見ていた悪友達は口を開かずにはおれない。

「あんた達…本当に仲いいのね…。」
「かーーーっ結局乱馬はあかねの為に勉強かよ。」
「全く、乱馬も必ずどこかにあかねがついてないと、一生懸命になれないんだなぁ。」
「だって、乱馬くんあかねを愛してるんだもん。」
「お前ら、なっ………何言ってんだ!!だ、誰もあかねの為に頑張るなんて言ってないだろ!」
「でも、将来の為に頑張るんでしょ?」
「るせー!んな訳ねーだろ!適当にやるっつーの!」
「……あら、早乙女くん、単位いらないの!?」

遠くから先生の鋭いツッコミが入った。

「う゛っ……やりゃーいいんだろ?やりゃー!!」

結局、先生にそう言われて、しぶしぶながら勉強する乱馬。
それ以来、授業で理解出来ない乱馬の補習をするのはあかねであった。
時間ある時は一緒に学校で勉強していたあかねと乱馬。



あたしももっと勉強して、パソコン買うのもいいかな?
そうすれば乱馬ともっと一緒に勉強できるし。
あかねはそんな事思いながら、乱馬のメールに返事をした。











ぴこん

"頑張ってるじゃないのvv
ありがとうアドレス。見たわよこのページ。可愛いケーキ屋さんね!!
もっと勉強頑張ったら、ここでごちそうしてあげても良いわよ。
それより偶然なの?

あかね"


乱馬は今、学校に残ってパソコンでメールのチェックをしていた。

あかねのお陰で乱馬もパソコンに大分慣れ、一人でパソコンを起動し、メーラーを開くまで成長した。
メーラーを開くと数件のメッセージが届いていた。
大介やひろし悪友4人組を始めとし…何故かシャンプーまでも入っているのは気になったが、まずは誰よりも先にあかねのメッセージを開く。

「ぐ、偶然に決まってるだろっ。」

メールに向かって真っ赤になりながらも、乱馬はあかねのメッセージを見ると、すぐに返事をしてパソコンを閉じた。
文字の位置を覚えたのか、以前よりは打つのに時間が掛からなかった。
以前は……


カタ…カタ……………カタ………
「T…T………あったあった。」
カタ…………カタ……カタ………
「うーん…R・R・R…ったくどこだよっ………あ゛ーもう嫌だっ!!やってられるか!!」
「ちょっと乱馬!折角つきあってあげてるのにちゃんとやりなさいよね!」
「そう言われても、こんなローマ字の並び方じゃやる気も出ねーよ!」
「気持ちは判るけど、あんたねぇ、自分の名前位、早く打てるようになりなさいよ。」
「るせーなー。大体何なんだよっこの並び方はっ!判りにくくてしかたないぜ!!」
「仕方ないでしょ、昔の名残なんだから。文句言ってないでちゃんとやりなさいよ。もーあたし授業で恥じかきたくないからね!!」

そういうとあかねはじっと乱馬を見た。

「判ってるよ俺だってイヤだぜ!!ったくちゃんとやるよ!」

あかねに迷惑をかけている事を忘れ、ぶすっとしながらパソコンを練習する乱馬。
生まれてこの方パソコンとは無縁の乱馬。もちろんあかねもだが、戸惑いながらも真面目なあかねは、一生懸命授業を聞いているので、乱馬に教えられる様にまでなっていた。




そんな事を毎日繰り返して行くうちに、乱馬は段々操作を覚え始めていた。
起動して、ID、パスワードを打ち込む。そしてメーラーを立ち上げメールを打つ。
ブラウザーを開いて見たいページを開く。

「やれば出来るじゃない!!」
「俺にかかればざっとこんなもんだぜ!」
「……皆はもう出来てるんだけど?」
「るせーっ!もうこれで大丈夫だなっ。」
「そうね、これで乱馬と放課後残って勉強しなくてもいいね。」
「「………」」

その言葉に2人は思わず黙ってしまった。
ひとり立ちをする日がやって来てしまったのだ。
毎日ブーブー言いながらも、二人は楽しくこの時間を過ごしていた。
お互いその時間が楽しかった事を思うと、少し寂しい気持ちになっていた。

「帰るか…。」
「そうね…。」

その日以来、滅多に一緒に開く事をしなかった。周囲のからかいもあったので。

それから数日後、初めて乱馬は一人でパソコンを開いた。
やりたい事は決まっている。メーラーを開くと、まずはあかねにメッセージ送った。

"今までありがとうなあかね。

乱馬"

たった1行のメッセージだったが、操作に慣れたといっても、まだまだ悪戦苦闘しながら、打ったメール。それに滅多に言わない、ありがとうという言葉を乗せた。

すると、翌日あかねからすぐにメッセージが返って来た。

"一緒に練習しなくても、こうしてメッセージやり取りしようね。

あかね"

それ以来、二人はこっそりメールで練習と称してやり取りを始めた。
最初は1行位のメッセージを打たなかった乱馬も、次第に2行になり、3行になった。
そんなに足繁く通える訳ではないが、授業中や友達とパソコンを使う機会はあったので、すっかり扱いに慣れて来ていた。
そのうちどこに行きたい、何が食べたい……など、今や誰にも邪魔されず、こっそり約束できる、良い連絡業務係にパソコンはなっていた。
この間のメールだってこうしてあかねの為にアドレスを連絡出来た。
二人のデートスケジュールを一番知っているのはこのメーラー。



かなりあかねを付き合せたからな…ちったー恩返ししないとな。
それにしてもアイツ、イヤとも言わず、根気良く付き合ってくれたなぁ。
乱馬はそんな事を思うと、閉じてしまったパソコンを再度開いた。








再度開いてからが長かった乱馬。

「しまったー。すっかり夢中になっちまった…。」

そう言いながら教室に戻ると、あかねが一人待っていた。

「遅いっ!」
「あれ?おめー帰ったんじゃなかったのか?」
「ちょっと先生に呼び止められて、お手伝いしてたの。乱馬がパソコン教室にいるの見たから、すぐ終わると思って待ってたの。」
「悪ぃな…すっかり夢中になっちまって…。」
「そう。で、…メール見た?」
「ん?あぁ。充分頑張ってるハズなのになぁ。」
「何言ってるのよ、まだ皆に追いついてないでしょ?」
「そっかー?でもさ……明日休みだし…明日にしねーか?」
「えっ?もっと頑張ったらって、送ったでしょ?」
「それはその時の話。明日は……俺の…おごりで。ほらネットから店のサービス券も手に入れたしなっ。」
「えっ!?珍し〜い!」
「茶化すなよ。結構……感謝してんだぜ。」

そういうと乱馬はぽりぽりと頭をかきながら、真っ赤になっていた。

「乱馬……。」
「さっ、か、帰るか。」
「うん!!」

そうして2人は並んで仲良く帰って行った。











ぴこん

"先日はお店に来て頂き、ありがとうございました。
とても美味しそうに食べてくれたお二人の姿が忘れられません。
是非またカップルで来て下さいね。
今度サービスしますよ!
それでは勉強頑張って下さいね!!

店長 山田"

あれから数日後、乱馬とあかねは久しぶりに一緒にパソコンを立ち上げていた。
メーラーを見ると、先日行ったお店から、メールが届いていた。
乱馬のおごりで行ったケーキ屋は思った以上に美味しく、また新作を出したら店情報を送るからと言う事で、メールアドレスを残してきた。

「こうしてメッセージ貰うのって嬉しいね。」
「そうだな。やっぱこういうのも悪くないな。勉強してて良かったかもな。」
「どこで役立つか…って先生の言う通りだったね。…それにしてもあたしの名前……」

宛名を見ると、早乙女乱馬くん、あかねちゃんへとなっていた。

「別にいいじゃねーか。どーせいつかそうなるんだし…。」
「えっ!?」
「え゛っ!?」

パソコンの前で真っ赤になったまま固まった二人を、パソコンはウィーンと言いながら見つめていた。
END








小話…ある日の会話(笑

「大分打つの早くなったんじゃない?」
「まぁな特に名前が早いぜ。」
「そんなの自分のだから当たり前でしょ。」
「いや、あかねっていうのも早いぜ。」
「えっ!?」
「な、何だよ。」
「あ、あたしも乱馬の名前…」
「……そっか。」


 本編に小話入れられなかった。ラブラブにしてこれ書きたかった(汗
  相変わらず判り難い時間の流れ方…判ります?ワザとこうしてドツボにはまる(笑)
  また書き直します〜(泣

  はじめた頃って楽しくて、本人に会うのに、わざわざ学校から
  秘密のメール送ったりして楽しんでたなぁ…。
  因みに私がパソコンに嵌ったのは2年位前から。使ってるのは5年以上だけど。
  それなのに、Webに関してはまだまだビギナー……。
  乱馬の事は言えましぇん(笑
2003.5.13