2人は許婚
早乙女亜乱(華緒梨)さま作


ここは病室。
あかねが倒れてしまったから。
そのあかねは、夕焼けの空を見ている。
俺は、あかねについていきながら、ある決心をつけた。
「あかね」
「・・・おねえさん」
あかねは笑みを浮かべなかった。
「またここに来る事になっちゃったなんて、悲しいわね」
かすみさんは苦笑した。
あかねは空に視線を戻す。
「あかね・・・」
「お願いです、おねえさん。1人にさせてください」
視線は、空に向いたままだった。
「・・・」
かすみさんは黙って出ていった。
俺も後をついていった。
「大和・・・」
かすみさんは涙を浮かべていた。
「あかね・・・可哀相ね」
俺を抱きしめながら、そう言った。
「あかね・・・乱馬くんの話を聞いて倒れちゃったんだって。可哀相ね、好きな人の話を聞いて倒れちゃう
なんて・・・あかね・・・可哀相よね・・・神様・・・ひどいよね・・・」
俺は悲しい顔をした。
かすみさんの目からは、大粒の涙が零れていた。
待合室をとおったとき、やかんの音がした。
どうやら、お湯が沸いたらしい。
俺はかすみさんの腕から抜け出した。
「あ、大和・・・」
そのかすみさんの声を無視し、俺は台所に向かった。
かすみさんは、諦めて帰って行った。
俺はやかんをとって、俺のあたまからかけた。
「ふうっ・・・久しぶりの男だぜ・・・」
お湯は少し熱かったけど、我慢できるぐらいの熱さだった。
俺は、ゆっくりと階段を上った。
階段は微妙に軋んだ。
そして、あかねの病室をめざした。
あかねの病室の前で、立ち止まる。
表札に、「天道あかね」と書いてある。
間違いねえ、ここだ。
俺はノックして、中に入った。
あかねがくるっと振り返った。
「乱馬・・・」
急にあかねが言った。
「あかね・・・?」
俺の事を覚えてるのか・・・?
「乱馬・・・!!遅いよ!遅すぎるよ・・・」
あかねの目から、大粒の涙が零れた。
「ごめんな・・・あかね・・・」
俺はあかねを抱きしめた。
記憶を逃がさないように。もう・・・離さないように。
「乱馬・・・」
あかねの目からは涙が滝のように零れている。
それを指ですくった。
「あかね・・・ごめんな。でも、俺、まだ完全な男に戻ってねえんだよ・・・」
「え・・・?」
あかねの顔が、曇った。
「俺、まだもどってねえんだ。だから、もう一回中国に行く。帰ってきたら、また喧嘩しよう」
俺は言った。しかし、
「イヤ!もう待てない!行かないで、どこにも!!」
と、あかねは言う。
突然のその反対に、どう対応していいかわからなかった。
「あかね、落ち着けよ!」
「いやよ!ねえっ・・・乱馬・・・1人に・・・しないで・・・・・・」
あかねの瞳から大粒の涙。
震える細い腕で俺のシャツを握っている。
もう離さないとでも言いたげだ。
「ねえ・・・行かない!」
最後まであかねは言えなかった。
あかねのピンクの唇に、俺の唇が重なったのだ。
「!?」
突然の事に、あかねは動揺している。
ゆっくり唇を離した。
あかねはうつむいてしまった。
「あかね・・・俺が次に中国に行ったら、男に戻って帰ってくるよ」
「・・・うん・・・。でも、今度帰ってきたときに、「また行く」なんて言ったら、あたし、もう待たない
んだから」
濡れた睫が付いている、つぶらな瞳を閉じて、にこっとあかねが笑った。
夕日を背に。
そして、俺の唇にあかねは自分の唇を重ねた。
「・・・さっきのお返し♪」
あかねは視線を空に移した。
奇麗な夕焼け。
オレンジ色が眩しい。
明日も晴れるよな・・・。

俺が兎になった事をあかねに話して、殴られたのは言うまでもない。

俺は中国に行って、完全な男に戻った。
最愛の人。
それはたった1人。
俺らはまだ許婚だけど、絶対・・・
おまえを嫁にして迎えてやるぜ。


vvENDvv


作者さまからのコメント

とうとう完結!!
やったあ〜(苦笑)
実は、テスト前。(汗)
勉強、してないんです。(ぉぉ
もういいです、ホントに。
自分の結果を知ってて、小説を書いてましたから。人生、捨てたもんです。(待て
とりあえず、おわりました。
ここまで、読んでくださった方々、どうもありがとうございます。
次回は、クリスマス小説を投稿したいと思います。
それでは、みなさん、クリスマスまでお待ちください〜♪
短期は損気よ。それなりの覚悟をしといてね。(ぉぉ


実は私、この作品、某所で絶賛したんです。ストーリーの骨子(プロット)が生きている、亜乱さまの書かれた中でも好きな作品の一つです。
短いストーリーの中に、二人の風景が見えてきます。
「二人」が基本なんですね。乱馬もあかねも。
(一之瀬けいこ)


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