◇暁闇


第一話 徴雨(ついり)



一、

 大歓声が館内いっぱいに響き渡る。

 中央に設えられた競技場で、気炎を上げる、女性が二人。
 どちらも真剣な眼差しだ。
 一人は見るからに武道を嗜むといわんばかりの体格。
 対する一人は、武道をやっているようには見えない。どちらかというと華奢(きゃしゃ)な身体つき。
 ちぐはぐな、対戦相手同士、はっしと中央で睨み合う。

「でやああっ!!」

 先に動いたのは、大きい方。まるで、猪突猛進(ちょとつもうしん)する猪のように見えた。
 小さい方はそれを間際で難なく避ける。体重が軽い分身軽だ。
 だが、軽くかわされた大女は、すぐさま、身体を方向転換した。

「えっ?」

 かわしたと思ったその先に、巨体がずんとのしかかってきた。大きいくせに、案外、身軽な動きだった。
「くっ!」
 華奢な方は、のしかかられて、思わず顔をゆがめた。手足を羽交い絞めにされて、思い切り身体をねじられたからだ。苦痛で顔は歪む。
「ふふ、つかまえた。リタイアするなら今のうちよ。」
 不敵に笑う女に、
「リタイアなんかするもんですかっ!!」
 激しい言葉を吐きつけた。
「なら、その、か細い身体、折ってやろうかっ!」
「やれるもんなら、やってみなさいよっ!」
 巨体に向かって、挑発する。
「その憎ったらしい軽口、叩けないようにしてあげるわっ!!」
 ぐっと、大女が力を入れた時だ。

「はあああああっ!!」

 体内から爆発する激しい気の光。

 バチッ!!

 組み合っていた二人から火花が飛んだように見えた。いや、飛んだのは、巨漢の女。
 華奢な女性が体内から放った気の技に、吹っ飛ばされたのだ。
「わああああっ!!」
 悲鳴の後に続くように、ドスンと鈍い音。
 それと共に湧き上がる大歓声。
 投げ出された巨体は、ピクリとも動かなかった。

「勝者!天道あかねっ!!」

 審判が進み出て、華奢な女性の右手を高らかに突き上げた。

 どっと場内が再び沸きあがった。
 場内、興奮のルツボと化す。

「やったね、あかね。」
「優勝よっ!ぶっちぎりの!!」
「おめでとう、あかね。」

 友人たちは、顔をほころばせて、勝者を迎え入れる。
 その向こう側に気難しい顔をしている青年が一人。同じ色の道着を着ていた。背中と胸には同じ学校のロゴ。
 おさげに編んだ髪を後ろになびかせて、彼はじっと、睨むようにあかねを見ていた。彼女の許婚、乱馬。
 息切れしながら、あかねが脇を通りかかったとき、一言、声をかけてきた。

「たく…。あんな三下相手に危なっかしい試合しやがって…。勝ったから良かったものの…。」
「あら、人のこと言う前に、自分はどうなのよ。」
 あかねは汗を拭いながら、言い返す。勝気な瞳が青年を間近に映し出していた。
「けっ!おめえとは格が違うさ。」
「得と見てやろうじゃないの。その格の違いっていうの…。」
「ああ、その目、かっぽじって見とけっ!!」
「負けたら承知しないわよ!」
「バーカ!こんな大会で負けるわけがねーだろっ!!一分以内に決めて来てやる。」
 そう言いながら、男子部の決勝へと向かう背中。

 高校時代の頃とは違い、随分逞しくなったものだと、あかねは思った。
 背丈もグンと伸び、背中も広くなった。
 ぎらぎらと光る野性の瞳。自信に溢れた足取り。
 
 この春、乱馬とあかねは、風林館高校を卒業し、大学へ進学した。
 あかねは、大学では「スポーツ科学」を専攻していた。スポーツを科学する。そんな学部に興味を持ち、将来を探求するために推薦入試を受けて入った。
 一方、乱馬も同じ大学に籍を置いていた。だが、彼の場合は、あかねとは若干、入学経緯を異にしていた。あかねのように、己から志願したのではなく、早乙女乱馬という格闘界の風雲児に目をつけた大学側からの接触に、父親の玄馬が乗ったというような感じでの入学だった。学費免除で就学というのは、かなりな部分、美味しいものには違いない。
 乱馬自身は、そう、就学に対して執着はなかったのだが、「これからの武道家は学問にも通じていなければなるまいよ!」という玄馬のごり押しで渋々承知し入学を決めた。尤も、あかねが先に推薦試験を受けて合格していたので、承知したという駆け引きも若干あったかもしれない。勿論、はっきり口にした訳ではないので、真相はわからないが。
 彼の入学の必須条件は、大学の格闘技部へ入部すること。そして、大学の名を轟かせるような活躍をすること。それに尽きた。
 一方あかねは、高校時代を知る、風林館高校卒の先輩から、是非にと誘われて、半ば引き摺られるようにして入った「格闘部」。柔道や空手、剣道や合気道といった、武道一般は勿論、無差別格闘技部門なども設けられていた。
 ここのところ、世間では、様々な武道ジャンルが溶け合った、新格闘技が注目されだしている。武器は使わない新しい徒手(としゅ)格闘技が興隆し始めたのだ。いわば、柔道や空手、居合いなどの武器を持たない無手(むて)の武道の集合体のような競技だ。
 無手であれば、気の技を使っても良かった。
 その格闘技は、アメリカで生まれ、「ニューウエーブバトル」と名付けらた。東西問わず、新進気鋭の格闘家たちが、競い合うように技を磨いているという。洋物が好きな日本人たちも、その新しい格闘界の波に乗り遅れまいと、力を注ぎ始めたのである。
 大学のような、アマチュアスポーツ界もまた、時代の波に乗り遅れまいと必死だった。乱馬を推薦入学させたのも、ニューウエーブ格闘の素質を見込んでのことだった。

 そして、今、関東大学対抗格闘技新人大会の決勝に臨んだ二人。

 あかねも乱馬も、超アマチュア級の腕を持つ。二人とも、この大会では順当に勝ち進み、まずはあかねが、決勝戦で優勝を決めて見せたのだ。今終わった試合がそれだ。

 まだ、あかねの優勝への興奮がさめやらぬ会場。
 大歓声と共に、若き勇者たちへ、熱い視線が注がれる。
 普通、学生スポーツはここまで観客が居ないだろうが、ここのところ、巷に急に「ニューウエーブバトル」への関心が高まりつつあった。
 その中でも、大学選手権は、若手選手の発掘場所でもある。大学側が是が非でもと乱馬に入学を勧めたのも、この大きな波の中への参入という思惑が見え隠れしていたかもしれない。
 まさに、早乙女乱馬は、これから、格闘界の表舞台へ登場しようとする若き獅子。これからの注目株。新しい時代の格闘技の逸材には違いなかった。

 軽く一礼して、始まる取り組み。
 さすがに、色々な無手の武道の集大成。武道は礼に始まり礼に終わるという、日本武道の基本はおさえられてあった。
 礼が終わると、はっしと睨み合う。
 乱馬の相手も、あかねと違わず、巨漢な青年であった。
 乱馬とて、小さい方ではなかったが、相手がでかすぎて、傍目には貧弱に見えた。
 この無手の格闘技は、柔道や空手などとは違って、重量には関係なく対戦させられた。「柔良く剛を制す。」それが柔道の醍醐味だと誰かが言ったが、まさにそれを地でいく格闘技として人気が確立されてきている。

 乱馬と対戦相手は、互いに牽制しながら身構えた。
 軽く左足を後ろに引き、手を前に構える。相手のどんな動きにも対応できる構え方だった。

「でやああっ!」
 巨漢が先に動いた。乱馬に向かって直線的に攻撃を仕掛けてきた。

「遅えっ!!」
 乱馬が電光石火に動く。
 軽く、相手の拳をかわし、左側へ器用に避ける。そればかりか、次の瞬間、利き腕の拳が、相手の脇腹へと入っていた。
「うっ!」
 たった一言発すると、巨漢は畳の上に、どおっと前のめりに倒れ伏した。

 本当に、一瞬の出来事だった。
 彼が宣言したとおり、一分にも満たないあっけない幕切れ。
 沈んだ相手は気を失っているのだろうか。審判が近寄っても、一向に起き上がる気配はなかった。

「勝者!早乙女乱馬っ!!」

 乱馬は中央で背筋をただし、一礼すると、さっと退いてきた。

「さすがねえ…。余裕の貫禄だわ。」
「相手に付け入る隙すら与えないんだもの。」
「かっこいいなあ。」
「やっぱ、早乙女君は、ポイント高いわよねえ…。あたし、彼女に立候補しちゃおうかしら…。」
「あら、競争率高いわよ。将来の格闘界のリーダーになることは間違いない金の卵ですもの。並みの女じゃ、相手にされないわよ。」
 先輩も同輩も、溜息交じりで、乱馬の勇姿を見ながら、評しあっている。

「どこが良いのよ…。あんな奴。」
 あかねはぼそっと吐き出した。

「天道さんちに早乙女君は下宿してるんでしょう?いいなあ…。」
「えーっ!同じ屋根の下に居るんだ!!羨ましいっ!!」
 一斉に女性陣が振り返ってくる。
「天道さんとは同門なのよねえ…。確か、無差別格闘流とか言ってたわね。」
「へえ、道理で、あかねも強いわけね。」
「凄いわ。同門の新入生二人が、この大会の優勝杯をペアでかっさらうなんて。」
 羨望の目が一斉にあかねに注がれる。
「羨ましがられることなんか、何にもないわよ、あんな居候。」
 色めき立つ周りと比べると、あかねは辛口だ。
「あら、天道さんが強いのも、早乙女君が稽古つけてくれるからじゃないの?」
「ああ、いいなあ。あたしも、直々に早乙女君から手取り足取り教えて貰いたいわ。」
「言っときますけど、現実はそんなに甘いもんじゃありませんから!彼はただの居候です。」
 あかねは敢えて強く言った。

 実は、乱馬とは、相変わらずの関係を続けていた。
 根がああいう性分だから、特に進展もしない距離関係。「許婚」を肯定するでもなく、否定するでもなく。はっきりと好きと言われたわけでもなければ、特に恋人宣言もしたわけでもない。
 付かず離れず、のらりくらりかわし、かわされる。そんな微妙な関係が続いていたのだ。
 サークルや大学の仲間には、一切、許婚同士ということを公表していない。いちいち説明するのも面倒であるし、第一、今の世の中「許婚」という言葉自体が馴染まないだろう。特異の目で見られるだけだろうし、何より、「あやふや」な関係が続いていて、今更、許婚など名乗れない。
 乱馬自身も、あかねとの関係をとやかく言われるのは嫌なようで、部活でも校舎でも、大学内では声も殆どかけてこない。だからと言って、全く関心がないわけではないらしく、あかねが他の男子と親しげにしていたら、さりげに間に割り込んでくる。一応は「ヤキモチ」を妬いてくれているらしいことが、おぼろげにわかるだけである。
 事情を知る、一部の友人たちだけが、
「相変わらず、二人とも不器用ねえ…。」
とくすっと笑う程度だった。

 乱馬はつかつかとあかねに寄って来た。
「ほら、ぼやっとすんなよ。表彰台。」
 そう言ってあかねを促す。
 会場の中央には、表彰台の準備が終わり、閉会宣言と表彰式が行われる手筈が整っていた。
「たく、いつまでたっても、おめえは、のろまなんだから。」
「な、何よ、偉そうにっ!」
 カチンと来るくらい、乱馬は素っ気無く乱暴だった。
 場内アナウンスに続いて、表彰式が始まる。
 選手の栄光を称えて、男女の優勝者それぞれに優勝杯と賞状が渡される。
 まずはあかねが先に出て、金のカップを受け取る。会場内からは拍手が沸き起こる。続いて乱馬が呼び出され、前に進み出る。
 どこにでもある、新人戦優勝杯の授与式。




 その遠景を見ながら、佇む青年が一人。
 サングラスにつばの深い帽子をすっぽりと頭からかぶり、袖の長い黒いTシャツとジーンズというラフなスタイル。良く見ると長袖の下に隠れてはいるが、「引き締まった筋肉」をまとっているのがわかる。華奢そうに見えてがっしりとした体格。武道を嗜んでいそうな身体つきだった。
 傍らには、きっぷしの良い体格の中年親父が侍っている。白髪交じりの長い髪をキャップからはみ出し、口にはちょび髭。サングラスにアロハ風味の派手なシャツを着ている。

「どうだった?今日の試合は…。」
 中年親父は青年に話しかけた。
「まあまあですね…。彼は実力の数パーセントも出してはいなかった。」
「そう思うか?」
「当たり前ですよ。学生ばかりのそれも新人ばかりが集った、この程度の大会では、順調に優勝まで行き着いて当然。でなければ、面白くない。」
「ほお…。面白くない、とな。」
「ええ、そうです。力が拮抗してこそ、格闘は楽しい。ふふふ、彼の底はまだまだ、あんなものじゃないのは一目瞭然。」
「わかるか?」
「ええ、わかりますとも…。彼はともかく…。」
 青年はちらっとあかねを流し見た。表彰式が終わって引き上げるために、すぐ下を通りかかる。
「気に入ったか?」
 にやりと中年男性は笑った。
「まさに理想的な女性(ひと)ですね…。」
「そうか…。気に入ったか。ならば、話は早い方が良いだろう。」
 中年男性は立ち上がりながらにやっと笑った。
「ええ…。是非とも。」
 彼らが立ち上がろうとしたとき、傍に居た人間が騒ぎ出した。ひそひそと彼らを指差していたかと思うと、好奇心の目で近寄ってくる。

「たく…。うるさいハエどもめ。相手するのも面倒だ。」
 中年男はすいっと立ち上がると、青年に目配せした。
「行きますか…。」
「ああ、そうするかな。」
 
 彼ら目掛けて押し寄せる、人垣をひょいっと飛び越えて、彼らは、出口へと、吸い込まれるように消えてしまう。それは一瞬の出来事だった。



二、

 大会から程なくして、じめじめした季節がやってきた。
 この国にある、長雨の季節。梅雨。
 旧暦で言うならば「皐月(さつき)」。五月をそのまま「さつき」と読ませることもある。
 従って「五月雨」は梅雨の雨を指すのが本来の意だ。明治時代以降、西洋暦を取り入れた日本。梅雨は「五月」ではなく「六月」の代名詞となった。
 そう、いつの間にか、季節が後ろへとずれ込んだのだ。だからといって、「六月雨」をさみだれとは呼ばせない。梅雨の雨は今でも「五月雨」なのだ。決して梅雨の前兆ともいえる、「走り梅雨」のことを「五月雨」と呼ぶのでもない。
 梅雨のじめじめとした気候は、特に身体に故障が無くとも、鬱陶しいものだ。古傷が痛み始めることもあるだろうし、じめっとした空気は何某かの病を呼びこむこともある。「はしか」「水疱瘡」といった伝染病は古来からこの時期に流行ったものだ。

「良く降るわねえ…。」
 ふっと見上げる、薄暗い空。
 滴り落ちる雨を見詰めて、溜息が漏れる。
「ホント、こう、雨ばっかり降られてしまったら、お洗濯物もカラッと乾かなくて…。」
 かすみが、一家の主婦役らしいコメントを残す。
 そうなのだ。ここのところ続く雨のせいで、洗濯物は、道場の中に満面に干されている。家族の多い天道家にあっては、一日たりとも洗濯を止められない。下着だけでも、洗濯機一回は回さなければならないという具合だ。その上、遠慮の無い居候たちは、何かと言うと衣服を汚して帰って来る。よくぞまあ、かすみは耐えているものだと、あかねは正直、感心する。
 今日も、まだ、湿っぽい洗濯を、籠一杯、道場から取り込んでいる最中だ。
「ごめんなさいね…。干すところがないものだから、どうしてもここへお洗濯物が集中しちゃって。」
「ううん。雨はお姉ちゃんのせいじゃないもの。うちは家族が多いし、洗濯をしないでいないわけにはいかないんだから…。」
 申し訳なさそうに言うかすみに、あかねは労わりの言葉をかける。
「夏の大会前の大事な時期だっていうのに、不自由させちゃって…。」
「いいのよ。試合って言ったって、サークル活動の一環だし、特別ハードってわけじゃないから…。」
 あかねは笑って見せた。


「たく、乱馬ったら!!あれほど、夕方に稽古つけてって言っておいたのに…。」
 すっかり洗濯物が取っ払われて、元に戻った道場の中、鼻息荒くはきつけた。

「何、そんなにカリカリしてるの?天気がぐずついてるせいかしらねえ。」
 道場の戸口に、姉のなびきが立っていた。
 外から帰って来たのだろう。パンツルックにショルダーバック。彼女もまた、女子大生。
 ニヤニヤ笑いながらこっちを見ている。
「なびきお姉ちゃん…。何か用?」
 あまり普段は道場へ足を踏み入れない、すぐ上の姉が、帰宅一番、道場へ来るなんてと、怪訝な顔を差し向ける。
「あら、良い物見せてあげようかなあ…って思っただけよ。」
 と言いながらすっと持っていた雑誌を差し出す。
「何?雑誌?」
「今日発売の、月刊誌。」
 受け取りながらぱらぱらとめくる。
 若い女性向けの情報誌のようだ。着飾った女の子たちの写真の中に、ふっとそぐわないような写真が何枚か。

「今、大注目。ニューウエーブ武道の旗手となる、イケメンたち。」
 そんな見出しのページに手が止まった。

「これ…。」

「そう、乱馬君ね。」
 なびきはにっと笑った。
 良く目を通すと、そこには、道着に身を包んだ乱馬が、片足を上げている姿が大きく映し出されていた。この前の大会を写したもののようで、精悍な身体は勿論のこと、普段とは別の「真摯な獣の瞳」の彼が写り込んでいた。
 思わず、ドキンと胸が唸った。
 許婚というフィルターなしで、「ちょっと格好良い。」そんなことを思ってしまったのだ。
 そんなあかねの心の動きを読んだのか、
「なかなか良い男に撮れてるわよねえ。惚れ直した?」
 と、したり顔をしてみせる。
「だ、誰がっ!!どんな角度から撮ったって、あいつはあいつよっ!!」
「そお?一瞬、目を奪われたように思ったけど…。気のせいかしらん?」
「もうっ!お姉ちゃんっ!!」
 思わず声を荒げた拍子に、雑誌のページがぱらっとめくれた。乱馬の写り込んでいたページの一つ手前。見開きで、一人の青年の写真が眼に入った。
「あら?」
 乱馬よりも細面の甘いマスク。少し笑ったような口元。だが、瞳は乱馬と同じく獣の輝き。いや、別に見入ったわけではないが、引き寄せられるように見てしまった。

「ふふ。彼もねえ、今、赤丸急上昇中の人気格闘家よ。確か名前は、葉隠魁(はがくれかい)。」
 なびきが横から割り込んできた。
「ニューウエーブ武道の旗手よ。アメリカの大会で、若輩ながら、ぶっちぎりで優勝をかっさらったらしいわ。」
「見りゃわかるわよ。…あたしだって日本語は読めるんだから。」
 あかねは記事を読みながら答えた。
 葉隠魁。自分たちよりも三つ年上の青年武道家。古武道の家に生まれたサラブレッド。十代始めに海外に渡り、腕を磨き、アメリカで開催された、世界武道「ニューウエーブ世界大会」で優勝。二十二歳にして、既に格闘界の頂点に居る。得意技は気技。体内よりいずる気を瞬時に炸裂させて相手に触れることなく倒す、神技。
 そんな言葉が並んでいた。

「やっぱり、気になるわけ?」
 なびきがにんまりと絡んできた。
「気になるって何がよ…。」
「あら、あんただって一角の格闘家のお嬢さんなんだし、それに…。年齢が近いっていうことは、乱馬君の最大のライバルってことにもなるでしょう?違うかな?」

 当たらずしも遠からずだ。
 年齢が近いということは、何かと今後、ぶつかることも多い相手だろう。
 乱馬と組み合ったら、どちらが勝つのだろうかと。
 若輩でまだ伸び盛りの乱馬が、現時点では不利かもしれない。
 そんなことをつらつらと思った。

「ま、あんたは、乱馬君と、これから一緒に流派を作り上げて行くんだし…。気になるのもわかるけど…。」
「誰と誰が一緒に流派を作り上げていくんですって?」
 雑誌をパタンと閉じて、返しながらあかねが吐きつける。
「あーら。お父さんたちは、そろそろ祝言だってはしゃいでるけど。」
 にんまりと降りてくる微笑。
「し、祝言って何よっ!!」
「言わずもがな、結婚式と披露宴。随分前に、チャラになったあの祝言。ここらで仕切りなおして、何て話を、夜毎の酒のつまみ話でやってるわよ。」
「また、勝手なことを…。」
「勝手なことなのかしらねえ…。遅くとも来年の春には、ってつもりをしてるみたいだけど。」
 ちらっとあかねを見やる視線。
「だから、それが勝手だって言うのよっ!!あたしはまだ、十九よ!!それに学生なんだからっ!!」
 思わず吐き付けてしまった。
「あーら、あんたも往生際が悪いわね…。来年にはもう成人するんだから。十九って言ったって、昔だったら、子供の一人や二人、居たって全然不思議じゃない年齢でしょう?」
「その言葉、そのまま、お姉ちゃんに返すわ。」
「あたしは、まだまだ、結婚する気はないわ。それに、シャンプーやムースだって、引きどころって思ったのか、この前、故郷へ帰っちゃったんだから…。」
「だからって、何であたしと乱馬が結婚しなきゃならないのよ。あー、もうっ!あたしたちのことはほっといて!!」
 これ以上、姉とくだらない会話を続けたくないと思った。
 姉のことだから、暇つぶしに妹の己をからかっているのだろう。
「あたしたちのことねえ…。はいはい。ま、ともかく、周りがやきもきしださないうちに、結婚までのステップを、だんだんに踏んで行きなさいよ。いい加減、奥手と決別してね。」
 なびきは笑いながら撤収にかかる。
「あ、そうそう…。乱馬君ならウっちゃんの店に居たわよ。」
 最後にそう言い残して。

「右京の店ですってえ?たく、乱馬の奴っ!何考えてるのよっ!!」
 姉の言い残した言葉にあかねは、思わず声を荒げていた。



三、

 右京は夜の営業時間の準備に余念がなかった。

「ほれっ!つばさっ!さっさとキャベツを刻んで。そろそろ店、開(あ)けなあかんねんでっ!」
 そう言いながら、己はせっせと生地を練りこんでいく。
 お好み焼きの命は生地とソース。職人肌の右京はそう言ってやまない。
「あ、はあい。右京様。」
 その傍を、かいがいしく動き回る、女形の青年。紅つばさだ。

 ここのところ、アルバイトと称して、右京の店に入り浸っているつばさ。相変わらずの少女趣味。さすがに、スカートをはくことまではしなくなったものの、それでも、ぱっと見は「可憐な少女」のそれに近い。
 最初は奇妙奇天烈と思っていた彼のスタイルも、時の変遷と共に慣れてしまった右京。
 彼女の周りにはもう一人、抜け忍の小夏という、やはり、少女姿の青年が侍っていたが、紅つばさ共々、タイマンを張れる美少女っぷり。共に右京に惹かれ、慕い、かいがいしく「お好み焼き右京」で働いている。二人とも、男然としている右京とは、性別をまるっきり逆転したような青年たちだった。
 当初は、右京の情愛を得ようと、互いに牽制しあう衝突も予想されたのだが、小夏は、あの人間離れした義母や義姉に対してすらも、反発しない、闘争心など欠片も無いおっとりとした性格。つばさも拍子抜けしたのか、小夏に対しては、この街に当初来た頃ぶつかった、乱馬に対するほどの闘争心は燃やしてはいない。
 つばさも小夏も、互いに右京の傍に居られればそれで満足しているという現況だった。
 尤も、右京が、二人の性格を的確に見抜いて、上手に操舵しているということもあったのだが。姉御肌の強い右京は、結局のところ、慕って来る者に対しては、広い心を持って臨んでいるような暮らしぶりだった。
 勿論、今のところ、どちらとも、男女の仲を発展させる気配はなかった。

「今日はつばさが手伝いか…。」
 ドンとカウンターの前に構えた乱馬が、せせこましく動き回る二人を見ていた。
「うん。小夏は所用があって、今は店にはおらんねん。」
「へえ…。小夏に所用ねえ。」
 なみなみと注がれたコップの水をぐいっと飲みながら乱馬が尋ねる。
「抜け忍のあいつに、どんな所用があるってーんだ?」
 素朴な疑問である。
「小夏の身内のことは、乱ちゃんも知ってるやろう?」
「ああ、あの化け物みてえな、くの一母姉(おやこ)か。」
「そうや、あの化け物がなあ、小夏を渡米させたんや。」
「小夏を渡米?どこにそんな金が…。留学か何かさせようって気で…。」
「そんなわけあるかい!何でも「ニューウエーブ武道大会」ってのに、小夏をエントリーしたとか何とか言って、かっさらうように連れていったんやわ。」
「ニューウエーブバトルの世界大会か?」
「ああ。大掛かりな大会がアメリカで開催されるっちゅーてな。賞金稼ぎに連れてったんやろ…。」
 乱馬は忙しく動く右京の手元を見ながら言った。
「止めなかったのか?」
「小夏の腕を思ってな…。理由はともかく、腕を試すってことはええことやん。ま、見聞も広がるし、旅費はあっちが全て持つとまで言ったさかいにな。」
「おめえも、無茶なことやらせるよなあ…。」
 お冷(ひや)を飲みながら、乱馬は半ば呆れた顔を右京に見せた。
「で?結果は?」
「さあ…。」
「さあって、おめえ…。」
「いくら有名な武道大会って言ったって、開催してるのは海の向こうやし、日本じゃまだこれからの分野やからねえ…。ま、連絡ないってことは、元気にやってるんとちゃうか?」
「たく、いい加減だなあ。今のご時世じゃあ、ネット繋げば簡単に結果だって見られるだろうに…。」
「ま、当分は帰ってけえへん、それでええわ…。」
「で、つばさが、るんるんとここを手伝ってるってわけか。」
「そーいうことや。」

 鼻歌交じりで、開店準備の作業に余念がないつばさ。目立った争いごとがないにせよ、小夏が居ないことは、彼にとっては「ゴキゲンな理由」になっているのだろう。

「ま、手伝う相手があかね以外だったら、どんな子雇っても、店は大丈夫だろうけどな…。」
「言えとるわ…。相変わらずなんやろ?あかねちゃん。」
「ああ、相変わらず、不器用な寸胴だっ!」
 コトンとコップを脇に置いたところで、にゅっと後ろから現れた「山の神」。

「誰が、不器用な寸胴ですってえ?」

「で…。あかねっ!!」

 いきなり現れたあかねに、飛び上がりそうになった乱馬。
 それもそのはず。あかねは早雲張りに巨顔化しそうな勢いだ。
「たく!あんたさあ…。こんなところで何やってるのよっ!!」
 鼻息も荒い。

「何って、久しぶりにお好み焼き食おうと思って…。」
 ぼそっと吐き出す。
「あんたさあ、今日は部活もトレーニングもないから、夕方はあたしに付き合ってくれるって言ってたじゃないのっ!!」
 山の神は怒りを抑えているようだが、語気が荒い。
「ほへ?そんなこと言ったっけ?」
「もう…これなんだからあ。」
 どうやら、忘却の彼方に入っていたらしい。
「んなこと言ったって、腹減ってんだからよう…。」
「食事なら家で食べたらいいじゃないの!」
「いいじゃんか。たまにはウっちゃんの美味しいお好み焼き、食いたいし…。俺、今日は昼ご飯、食いそびれたんだ。気がついたら昼飯食いに行く時間がなくってよう…。」
「そんなこと知らないわよ。あたしが作ったお弁当、持っていかなかったからでしょうがっ!」
「だから、あんな不味い物、食えるかってんだよっ!!」
「何ですってえ?」
「たく…。おめえなあ、いつになったらまともな食い物、作れるようになれるんだよ!おめえのせいなんだから、ちょっとくらい、約束の時間に遅れたくれえ…。」
「約束の反古(ほご)と、あたしの作るお弁当とどんな因果関係があるってーのよっ!!」

「ほんま、あんたら、相変わらずやなあ…。」
 だんだんにテンションを上げていく、目の前のカップルに、思わず大きな溜息が漏れる。
 処かまわず。己の世界に入ると、喧嘩をおっぱじめる、乱馬とあかね。
「ほらほら…。うちのお好み焼き、食べに来てくれるんは、いつでも歓迎やで。」
 そう言いながら、夕方営業の始めの一枚を、熱く熱した鉄板の上で焼き始める。ジュッと音がして、生地が鉄板に流し込まれる。
 空腹には、たまらない音と匂いの刺激だ。
「ま、ゆっくり食べて行き。腹が減っとったら、稽古も何もできひんやろ?」
「さんきゅー!ウっちゃん。さすがに物事長けてるぜ!」
「ウっちゃん、あたしにも一枚焼いて。ミックスね。」
「おっ、豪勢だな。ミックスか?」
「勿論、あんたのおごりよっ!」
「なっ!!」
「あったりまえよ。散々人を待たせておいてっ!」

「毎度おおきにっ!」

 そろそろ、早いお客も、右京の焼く、美味しそうなお好み焼きの匂いにつられて、入って来る頃合。右京の店は、すっかりこの商店街に定着して、不動の人気を博するようになっていた。
 今ではお昼時と、夕方から夜までの二部で営業していた。
 進学せず、商売一筋。浪花女の生き方だった。

 店のカウンターの少し上に置かれたテレビが、夕方のワイド番組を映し出している。
 主婦向けにアレンジされた夕方の情報番組だ。

「あれ?」
 あかねが思わず箸を止めた。
「あん?」
 急に止ってテレビを見あげたあかねを怪訝に見詰める乱馬。

「どないしたん?」
 右京に促されて、あかねはふっと言葉を継いだ。
「ううん…別に。なびきお姉ちゃんが見せてくれた雑誌に載ってた人だなあって…。」
 見上げたテレビには、一人の青年が映し出されていた。


『葉隠魁さんは、単身渡米し、先頃行われた「ニューウエーブ武道大会」に見事優勝し、凱旋帰国されました。最近、若い女の子たちには人気上昇中のイケメン格闘家。どうです?なかなか、スマートでしょう?』
『ええ、そうですね。格闘家ってごついというイメージがありますけど…。』

「新進気鋭の格闘家、葉隠魁…かあ。なかなか、オットコマエやん。」
 つられて右京が見上げた。

 画面いっぱいに映し出される甘いマスク。ちらっと流し見るカメラ目線。
「あれ?この人の目…。」
 見上げざまに、あかねの心が動いた。
 一瞬だが、テレビに映る、葉隠魁の瞳の色が、両眼で違う色をしているように思えたのだ。こちらを見詰めてくる目。左目がキラッと金色に輝いたように見えた。
(光の加減かしらん?)
 そう思ったときだった。

 ドキュンと心音が一つ波打ったように思った。

(何?この感じ…。)
 テレビ画面の向く側からこちらに向けられた真摯な瞳に、捕らえられたような錯覚に陥ったのだ。
 何故かあかねは身じろぎできなかった。
 葉隠魁の瞳。あかねの動きが一瞬止まった。
「けっ!ただの優男(やさおとこ)じゃねえか。」
 そんなあかねの様子を見て、不機嫌な言葉がはきつけられた。
 どうやら、一瞬でも、画面上の葉隠魁にあかねが反応したのが、気に食わなかったらしい。
「あかね、てめえは、あんなのが趣味なのか?よっぽど男に飢えてるんだな!」
 トゲのある言い方だった。カチンと来たあかねは、速攻、言い返す。
「ちょっと、何よ、その言い方。」
 ぐっとこぶしを握った。もう、さっきの「違和感」のことなど忘れていた。
「まあまあまあ…。何、興奮してんねん。あんたら。」
 入りだした客の手前、こんなところで、言いあいになられては困る。右京がすぐに仲裁に入った。
「乱ちゃん、あかんで。いくらヤキモチ妬いたからって、そんな言い方はあかん!あかねちゃんも、雑誌で見たからたまたま思い出しただけなんやろう?ほら、つばさ。あんたも黙ってへんで、何か言い!」
 だが、つばさも一緒になってテレビ画面を見上げていた。
 それも小首を傾げてだ。

「つばさっ!!」
 そんな彼を見て、右京が声を荒げた。

「葉隠魁…。葉隠姓ってことは…。葉隠流に繋がる一門って考えられるけど…。うーん…。こんな名前の人、居たかしらん…。」

 右京の言葉など、微塵も耳に入っていないらしく、テレビを見上げながら腕を組んで考え込んでいる。

「もう!!いい加減にしいやっ!!」

 プッツンと傍にあったリモコンで、右京はテレビ画面を切ってしまった。
 その音と共に、我に返ったつばさ。
「もう、つばさ。何してんねん。ぼさっと突っ立ってんと、今入って来はったお客さんにお冷(ひや)出しっ!」
「あ、はい…。右京様。」
 ようやく我に返ったつばさが、せせこましく動き始めた。
 その向こう側でまだ、睨み合っている乱馬とあかね。
「あんたらも、喧嘩やったら、御代払った後で店の外で存分にやり!!ここは美味しいお好み焼きを食べるところなんやし、喧嘩する場所とちゃうで!!」
 と、言い含めた。
 その声に、二人とも、睨み合っていた視線を外し、ぷいっと横に向いてしまう。

「ほんまに、仲がええっていうか、わかりやすいんやから…。あんたらは。」
 苦笑いしながら右京がタンッと焼きあがったお好み焼きにコテを出した。
 どちらからともなく、コテを手に取ると、黙ったまま、焼きあがったお好み焼きを食べ始めた。

「たく…。美味しいお好み焼きも、そんなんじゃ、台無しやろうに…。」
 右京は一つ、溜息を吐き出したが、それ以上は、二人に関わりあいにならなかった。相手するのもバカらしいようないつもの喧嘩だし、店がだんだんに忙しくなり始めたので、二人にかまっていられなくなったからだ。

「ごっそさん!お代はここへ置いとくぜ。」
 それでも、乱馬は律儀に二人分払おうとする。
「いいわよ、自分の分は自分で払うわ。」
 あかねが口を挟む。
「おごれって言ったのはそっちだろ?」
「もういいわよ。食べたいって思ったのはあたしなんだし。」
「あのなあ…。もっと素直になれよっ!!」
「これ以上、どうやって素直になれって言うのよっ!!」

「はいはいはい。わかったから、他のお客さんの目もあるんやさかい。乱ちゃんのお金貰っとくさかい、後は、のれんを出てから、おのれらで好きにやってんか。」
 右京はこれ以上関わっていられんと、追い出しにかかった。


「おおきに。また来てや…。」


 ガラガラっと引き戸を開いて、体よく二人にお引取り願って、、食器を下げながら、どっと溜息を吐く。

「たく…。相変わらず、進歩しとらんわ。あの二人…。何でうちが乱ちゃんから手を引いたか、あれじゃあ、てんでわかっとらへんな…。ええ加減に大人になって欲しいわ。ガキの喧嘩やあるまいし…。」
「乱馬様に飽きられたから、手を引かれたんじゃないんですか?右京様は。」
 つばさが、カウンターを拭きながら尋ねた。
「アホッ!おまえもわかってへんのか?」
「そんなわけないじゃないですかあ!」
「だったら、ぐだぐだ言うてんと、さっさと次の用意しっ!」
「あ、はい。…でも…。さっきの葉隠魁っていう格闘家のことなんですけど…。」
「あん?」
「あ…いえ。一族と関係があるかと思って…。」
「あんたとあの格闘家と何かつながりでもあるんか?」
「あ、い、いえ。葉隠って名乗ってるから、一門かと思っただけです。」
「一門って、あんた「紅」っていうのが氏名(うじな)やろ?」
「だから、紅家ってもとを糺(ただ)せば、葉隠氏の一門なんですってば…。」
「ようわからんな。それより、はよ、次のお客さんに用意しいやっ!」
「わ、わかりました。」
「ただでさえ、小夏がおらんねんからな。その分、しっかりしてやっ!!」
「はあい、右京さまっ!!」
 つばさは元気な声を張り上げた。

 関東地方に入梅宣言がなされた、六月のある夕方のことであった。



つづく




一之瀬的戯言
 始めに断っておきますが、この作品は、一つの仮定に基づく、一之瀬の創作です。紅家やつばさの素性に関しては、原作、アニメ共に何も明かされてはいません。ただ「葉隠突撃流(はがくれとつげきりゅう)」という彼の突撃流儀(?)に関しては、アニメと企画音源「歌暦」に出自があります。
 この先に出てくる、設定も、創作でありますので、ご了承の上、お楽しみくださいませ。
 なお、抜け忍の小夏とその義母、こてっちゃんと義姉、小梅と小枝に関しては、原作コミックス第35巻を参照してください。怒涛の母娘三人組です(笑

 ついでにもう一つ。
 夕方向け番組…。すいません。一之瀬は関西人なので関東方面のテレビは皆目不明です。ちなみに、概ね平日は「ちちん○イ○イ」がついている一之瀬家なのでありました…。(関西ローカルやねえ)


(c)Copyright 2000-2005 Ichinose Keiko All rights reserved.
全ての画像、文献の無断転出転載は禁止いたします。