◆あかねの大学受験
電柱ユーイチさま作
「乱馬くーん、あかねー、早く食べちゃいなさーい。」
「はーい!」
私、天道あかね。風林館高校の3年生。親が道場を経営していて、ゆくゆくは私が、というか私の夫となる人が道場を継ぐ予定。だって、2人いるお姉ちゃんは拳法に興味なさそうだし、私が引き継ぐしかないでしょ。
ただ、やっぱり大学くらいは出ておきたい。最近は女でも大学出てないとなめられるもん。
「あかねー!」
「は、はいー」
居間に着くと、家族みんなが朝食を食べていた。
「おう、あかね。今朝は遅いじゃねえか。今日の進路相談、びびってんのか?はっははは。」
「ち、違うわよ!・・・はぁ、乱馬はいいわよね。どうせ進路のことなんか真剣に考えてないんでしょ?」
乱馬というのは、本名を早乙女乱馬といって、天道家に居候している男の子。私と同じく、風林館高校の3年生。そして・・・私の許嫁。
ということで、天道道場の跡継ぎ筆頭候補。
「そりゃ乱馬くんはこの天道道場を継いでくれるんだもの。
進路なんて決まったようなもんだよねぇ、早乙女くん。」
「そうそう。そうなればわしらは悠々自適に楽隠居。
道場も安泰で言うこと無い。まさに完璧だよねぇ、天道くん。」
そのように話すのは私の父・天道早雲と乱馬の父・早乙女玄馬。
2人ともノー天気というかなんというか・・・。私と乱馬に道場を任せることしか考えてないんじゃないかしら。
「ま、待てよ!俺はまだ道場を継ぐだなんて・・!」
乱馬がすかさず反論。するとお父さんがさらにすかさず・・・
「るぁんむぁくぅぅぅん!君はまだそんなことをぉ〜。」
「ひ、ひぃ〜!つ、継ぎます・・・。」
道場を継ぐということは、それすなわち私と結婚するということで、乱馬は居候を始めた当初からそれを拒み続けてきた。
まぁ、今となってはその拒みが表面上のものに過ぎないことを、周りの誰もが知ってるわけだけど。私も、乱馬となら・・・。
「乱馬くん、あかね。そろそろ行かないと遅刻よ。」
「あ、やべっ、行くぞ、あかね!」
「うんっ。かすみお姉ちゃん、いってきます!」
天道家の長女・かすみお姉ちゃん。
高校を卒業した後は、家事手伝いとして天道家のお母さん的存在。
お母さんは数年前に亡くなった。
「で、実際のところどうすんだ?進路。」
「うん・・・大学へは行きたいと思ってるんだけど。」
「そうか、やっぱり大学行くのか。」
「うん。まだ詳しいことは全然決めてないけど・・・。」
そんなことを話しながら学校へ向かった。
大学へ行きたいとは思ってるけど、どの大学へ行きたいとか、どういう学部がいいとか、そこまではまだ考えていない。
でも、今日の進路相談でなんとか自分の道を見つけなきゃ。
校門の前まで行くと、頭にヤシの木を生やしてアロハシャツを着た男性が立っていた。風林館高校の最高権力者、そう、校長先生。
「HAHAHA〜。グッモーニン、ミス・あかね。今日も元気デスかー?」
「あ、はい。おはよう・・・ございます。何やってんですか?校長。」
「校長特別挨拶週間デース。
教育者たる者、常に生徒とのコミュニケーションをとらなくてはいけないのデース。」
また気まぐれで変なこと始めたのね・・・。ま、単に挨拶するだけなら平和でいいけど。
昔はとんでもない校則を連発してたもんねぇ。
「OH、早乙女乱馬。グッモーニン!」
「よっ、何やってんだ、校長。」
「挨拶週間デース。グッモーニン!」
「ほ〜。じゃ、挨拶代わりに・・っと!」
「アウチっ!」
乱馬が校長を踏んづけた。こんな光景はいつものことだけど、挨拶週間中の校長に挨拶せずに、なおかつ頭を踏んづけるだなんて。まったく、乱馬も馬鹿ねぇ。
「さーおーとーめーらーんーまー・・・。待ちなさーい!校長侮辱罪の罰を与えまーす!」
校長が乱馬を追いかけた。こんな光景はいつものことだけど、毎回毎回よくやるわねぇ。なんかもう2人とも良き遊び相手って感じね。
そんな2人は放っておいて校舎、そして教室に入る。教室内にいる面々はいつもと一緒だけど、今日はやっぱりみんなそわそわしてるみたい。しかたないわよね、3年生になって初めての進路相談だし。
「よーし、みんな座れー。」
先生がきた。今日の先生はなぜかすごく頼もしく見える。とはいえ、いつもの先生が頼りないってわけじゃないけど。
「おや、おい天道、早乙女は休みか?」
「・・・校長と鬼ごっこしてます。」
「毎日気楽なもんだな、あの2人は・・・。」
昼休み。いよいよ午後からは先生と1対1の進路相談が始まる。昼休み中はみんな自分や他人の進路についての話題でもちきりだった。
そりゃそうよね、高校を卒業した後の進路なんて本当に人それぞれだもん。進学する人もいれば働く人もいる。
私は・・・やっぱり大学に行きたい。
昼休みが終わると、とりあえず自習という形になり、出席番号順に先生に呼ばれて別室で進路相談・・・なんだけど、自習してる子なんて私を含めて1人もいない。
大学特集の本を読んでいる子、友達と相談してる子、寝てる子・・・。
私は[友達と相談]派の1人。
「あかねはどうするの?あ、卒業したらすぐに結婚とか?」
「ば・・・!そんなわけないでしょ!」
「なぁんだ、つまんない。やっぱり無難に進学?」
「うん。とりあえずはそう考えてる。どこの大学にするとかはまだ・・・」
「次、天道あかね〜!」
「は、はーい。」
「もうあかねの番?早いわねぇ。頑張ってね、あかね」
何を頑張ればいいのかよくわからないけども、ゆかやさゆりに見送られて教室を出た。
すぐ隣の進路指導室に入ると、先生が何やら書類を見ながら待っていた。
こ、恐い・・・。何なのよ、この雰囲気は・・・。
「お、来たか。まぁ座れ。」
「は、はい・・・」
普段見慣れてる先生にここまでビクビクしちゃうなんて・・・。恐るべし進路相談。
「早速だが、卒業後の進路はどういう風に考えているんだ?やっぱり早乙女と結婚するのか?」
なんでみんな同じことを・・・。そりゃ乱馬と私は許嫁で、祝言っぽいこともやったけど、まだまだ私は自分の生き方を・・・。
「おい、聞いてるのか?天道。」
「あ、はい!と、とりあえず乱馬との結婚はその・・・まだ先のことで・・・。私としてはやっぱり大学に進学する方向で・・・。」
「なんだ、結婚はまだか。スピーチの言葉とか考えてたんだがなぁ、はっはっは。」
「えっ!そうなんですか!?」
「冗談だよ。ま、何年先になるか知らんが、式の日取りが決まったらちゃんと連絡してくれよ?教え子同士が結婚するなんて、これ以上めでたい話はないからなぁ。」
「あ、はい・・・。それで先生、大学のことなんですけど・・・」
「あぁ、すまん。大学な。とりあえずお前の成績なら基本的には大丈夫だと思うが・・・要はどの大学を受験するかだな。」
「はい・・・。その、どの大学を選べばいいのかっていうのがいまいちわからないんです。何を基準に考えればいいのか・・・。」
「一番大事なことは、お前が大学で何を学びたいかということだな。ただ単に漠然と大学に通っても意味がない。」
「自分が何を学びたいか・・・ですか。」
「そうだ。お前の場合、まずそれをよく考えてみることだな。他に何か質問あるか?」
「あ、いえ。今のところは・・・。ありがとうございました。」
部屋を出て教室へ。再び友達と談笑する。いざ進路相談が終わってしまうと、一気に脱力感。緊張が解けたというのもあるけど、一難去ってまた一難、自分のやりたいことを見つけなきゃいけないという新たな課題が私を襲う。
1人の帰り道。そういや乱馬はどうしたんだろ。未だに校長と鬼ごっこしてるとか・・・まさかね。
それにしても、私のやりたいことって何なんだろ・・・。
なびきお姉ちゃんは確か商学部だったっけ。
確かになびきお姉ちゃんにとっては極めて妥当な選択よね・・・高校時代にいくら儲けたのかしら、かなりあくどい稼ぎ方だったと思うけど。
私の写真を売って商売するなんてホント困っちゃう。
まさか大学でも私を売り物にしてないでしょうね・・・、今度聞いとこう。
「おー!そこにいるのは天道あかねではないかっ!」
声がしたので後ろを振り返ると、袴(はかま)姿で木刀を持った男性が走ってくるのが見えた。飛びついてきたので、条件反射的に避ける。
「あたた・・・相変わらず見事な避けっぷり。変わってないようで嬉しいぞ、天道あかね!」
「九能先輩こそ、大学に進学してもしつこく私を追っかけてくるんですね。」
九能帯刀。私や乱馬の1つ上の先輩で、今は大学生。
[風林館高校の蒼い雷]と称し、最強の名を欲しいがままにしていた・・・乱馬が来るまでは。この一帯有数の大金持ちで、なびきお姉ちゃんから私の写真を何枚も購入するほど私にゾッコン。
進学してもそれは変わってないみたい。こんな九能先輩だけど、剣道の腕は超一流で、風圧だけで石像を破壊してしまうほど。大学1年にして早くも剣道選手権の優勝候補だとか。
ちなみに父親は風林館高校の校長。あの変態親父にしてこの変態息子ありって感じね。
「で、何か用ですか?」
「ふふふ、天道あかね。言わずとも良い。この九能帯刀がズバッと悩みを解決してあげよう!」
「えぇ?悩み・・・ですか?」
「なびきより聞いたのだ。何やら進学について悩んでいる、とな。」
「お姉ちゃんから?そうだったんですか・・・。」
なびきお姉ちゃん、普段は素っ気ない態度だけど、やっぱり心配してくれてたんだ。
それに、九能先輩も。なんだか、ホッとした。
「九能先輩は、どうやって今の大学に進学することを決めたんですか?」
「ん、僕か。そうだな、僕の場合は・・・剣道が弱い大学を中心に選んでいったな。」
「どうしてわざわざ弱い大学に?強い大学に行った方が得るものも多くていいんじゃ・・・」
「ふっふっふ、天道あかね。君とて僕の腕前は知っていよう。すでに向かうところ敵なし!この九能帯刀に勝てる奴などいないのだよ。ならば!弱小大学から成り上がっていった方が世間的にも大きく取り上げられて一石二鳥!ハーハッハッハ!」
そうだ・・・先輩はこういう人だということをすっかり忘れてた・・・。
変なこと聞いちゃったなぁ、下手すると長い話になりそう。なんとか話題を変えようっと・・。
「そ、それで大学ってどうですか?高校と比べて・・・楽しいとかつまんないとか。」
「そうだな・・・まず、君がいないということが非常に寂しい!悲しい!心苦しい!そうだ天道あかね、うちの大学に進学したまえ!この僕が温かく迎えてあげよう!」
「そ、それだけは遠慮しておきます!」
そんな会話をしながら歩いていると、いつの間にか家の前に着いた。
「それじゃ九能先輩、どうもありがとうございました。」
「ふむ、僕の話が参考になったのならば良いが・・・。とにかく天道あかね、最終的に進路を決めるのは自分自身だ。
他人の話を参考にするのはもちろん良いことだが、それに流されてはいかんぞ。」
「は、はい。頑張ります!」
九能先輩がまともなこと言うとなんだか調子狂っちゃうな。ギャップというかなんというか。
帰宅してご飯食べてお風呂入って、その日は早めにベッドへ。
「私のやりたいこと・・・か。」
翌朝、着替えて居間へ行くと、なぜか良牙君がいた。
良牙君は乱馬のライバルで、格闘の腕も相当なもの。
けど極度の方向音痴という決定的な弱点がある。
「良牙君、どうしたの?」
「いやはや、名古屋から大阪に行くつもりがなぜか天道道場に来てしまって・・・。この響良牙、常にあかねさんのことを想っているんで、無意識にここに来てしまうのでしょう。」
絶対違うと思う・・・。
「そういえば乱馬に聞いた話だと、大学を受験するとか。あかねさんならどんな大学でも絶対合格できます!頑張ってください!」
「あ、ありがとう。」
良牙君の横では乱馬が朝ご飯を食べていた。
なんか、私と良牙君が話してるのが気に入らないみたい。無言でパクパクと食べていた。
とりあえず、良牙君と2人で乱馬を挟むような位置取りで座る。
「そういえば乱馬、あんた昨日進路相談受けたの?」
「んぁ?あぁ、校長と遊んでるうちにすっかり忘れちゃっててよ、放課後に先生んとこ行ったよ。とりあえず卒業したら修行の旅に出るって言っといた。」
「卒業後のことを話す前に、乱馬って卒業できるのかしら・・・」
「・・・なんだとぉ?」
「乱馬よ!いくら格闘の道を志すとはいえ、高校もろくに卒業できないようでは無差別格闘・早乙女流の恥ぞっ!」
「うっせえなぁ、卒業くらいできるっつうの!」
乱馬はそう言ってるけど、本当に大丈夫なのかしら。
私としても、自分の旦那になろうという男が高校留年ってのもねぇ・・・。
ホント、頑張ってよね、乱馬。
そして、月日は流れ・・・。
「あかねー、ご飯よー。」
「ごめーん、今無理ー!」
入試直前冬休み、この時期になると食事や睡眠よりも勉強を優先するって話は耳にしてたけど、自分がその立場になっちゃうなんて・・・。やっぱり志望先決めるのに手間取ったからよねぇ。
はぁ、そんなこと今さら悔やんでもしかたないわよね、頑張ろう!
そんな時、急に部屋の窓がガラッと開いた。
「よっ。頑張ってるな、あかね。」
「乱馬!まったく、入るんならちゃんとドアから入ってよね。」
「まぁそうかたいこと言うなって。調子の方はどうなんだ?」
「どうって言われても。とにかく頑張るだけよ。さっ、邪魔邪魔、あっち行ってて!」
「お、おぅ。まぁ頑張れよ。・・・あ、そうだ。入試の日っていつだっけ?」
「ん?2月10日だけど?」
「2月の10日だな・・・。じゃ、頑張れよっ!」
何なのよ、いったい。入試の日程聞いてどうしようっての?
・・・って、乱馬なんかにかまってる場合じゃないわ!私には時間がないのよ!
「あかねー、ご飯食べないと頭も働かないわよー」
・・・ははは、かすみお姉ちゃんにはかなわないや。
そんなこんなでいよいよ2月10日。泣いても笑っても今日が本番!
だけど、昨日ほとんど眠れなかったせいで風邪気味だし・・・。
勉強は頑張ったつもりだけど、本当に合格できるのかしら・・・。
なんか、この期に及んで不安になってきた・・・。
「あかねー!!」
乱馬の声が聞こえた。
声が聞こえた方に目を向けると、乱馬だけじゃなく・・・
「あかねさん!絶対合格できます!頑張ってください!」
良牙君。
「天道あかねぇ!己の力を信じるのだぁ!この僕が応援している、受からないはずがなぁい!」
九能先輩。
「あかねー、頑張れよー!」
「大丈夫、あかねくんなら出来るー!」
「今日まで頑張ってきたんだもん、きっと大丈夫よ、あかね。」
「まぁ、頑張ってらっしゃい。」
お父さん、早乙女のおじさま、かすみお姉ちゃんになびきお姉ちゃんまで・・・。
「へへっ、当日にみんなで応援しようと思ってな。良牙を捕まえるの大変だったんだぜ?前日まで見つからなくてよ。」
「乱馬・・・。」
「あ、あー、あと、シャンプーとかうっちゃんも呼んだんだけど、店の方が忙しいから来れねえって。代わりに応援メッセージ?みたいなのを預かってきた。」
そう言って乱馬に手渡された手紙の内容は、意外に素直な応援メッセージだった。
うっちゃんはともかく、シャンプーはもっと皮肉たっぷりの内容だと思ってたのに。
恋のライバルも一時休戦で応援してくれてるってことか。
なんか、疑ってごめんねシャンプー。シャンプーもうっちゃんも、ありがとう・・・。
「あかね、そろそろ行かないとまずいんじゃないのか?」
「あ、うん。行ってくる!」
「あかね!」
「え、何?」
「・・・頑張れよ。」
「乱馬・・・。うんっ!」
そして合格発表当日。合格番号の掲示板、1人で見に行く勇気がないから、隣になびきお姉ちゃん。
「お姉ちゃん・・・私、受かってるかなぁ。」
「さぁね、私には何とも言えないわ。」
「そんなぁ・・・」
少しは励ましてくれたっていいのにぃ。・・・うん、きっと大丈夫。試験問題はとりあえずだいたい解けたし・・・きっと大丈夫!
「さ、行くわよ。受験番号は何番?」
「きゅうひゃくじゅうさんばん・・・」
「913番ね。さて、果たしてあるのかしら。」
「ちょっとなびきお姉ちゃ〜ん・・・!」
掲示板に目を向ける。800番台の数字の後に900番台が並ぶ。
901、905、906、・・・。そこまで見て、恐くて目を閉じた。
「あかね、目を開けなさい。現実から目を背けちゃダメよ。」
なびきお姉ちゃん、まるで私の番号が無いみたいな言い方・・・。まさか、まさか・・・。
目を開いた。掲示板を見た。私の受験番号913番は・・・あった。
「・・・あ、あれ?」
目をこすってもう一度見てみた。913。掲示板には確かにその数字があった。
「おめでと、あかね。」
「・・・なびきお姉ちゃ〜ん、ふぇ〜ん。」
「おうおう、泣くな泣くな、妹よ。よく頑張ったわね。まぁ、私も去年大学に受かったばっかりだし、あんたの気持ちはよくわかるわよ・・・。」
それから、大学の門を出るくらいまでずっと泣いてた。
なびきお姉ちゃんは、恥ずかしいからさっさと泣きやみなさいとか言ってきたけど、今日のこの時くらい、泣いたっていいよね。
家に着いた時もまだ涙ぐんでたから、みんな私が落ちちゃったって思ったみたい。
みんなの第一声がなぐさめの言葉だったから思わず笑っちゃった。
落ちて泣いてるんじゃなくて、受かったから泣いてるのよって言ったら、ようやくみんなホッとした表情になった。
「・・・あかね、おめでと。よく、頑張ったな。」
「ありがとう、乱馬・・・。試験当日にみんなの応援があったからよ。あれでどれだけ励まされたか・・・。」
「そ、そっか?まぁ、とにかく合格したんだから良かったぜ。」
照れてる乱馬を見るのって久しぶりかも。本当にありがとう、乱馬。
「しかし天道くん、これでまた乱馬とあかねくんの結婚が遠のいちゃったんじゃないのかねぇ?」
「いやいや、別に学生結婚でもいっこうにかまわないでしょ、早乙女くん。さすがに子供まで出来ちゃうってのはまずいだろうけどねぇ、はっはっは。」
「いやはやまったく。我々が[お爺ちゃん]なんて呼ばれる日も、そう遠くないかもねぇ、がっはっは。」
「ちょ、ちょっと!何言ってんのよ!」
「そうだぜ!それに俺は、高校卒業したらしばらく修行の旅に出るんだ。中国の呪泉郷に行って、このふざけた体質を治すんだからな!」
乱馬って、やっぱり水をかぶると女になっちゃう体質を治したいんだ。
昔から治す治すって言いながら全然治さないから、結構気に入ってるのかと思ってたけど。
「まぁまぁ、そういう話は後にして、早速あかねの合格パーティを始めましょうよ、みなさん。」
「かすみお姉ちゃん、パーティの用意なんかしてたの!?」
「えぇ。合格パーティと、落ちた時用のなぐさめパーティもね。あら、でもなぐさめパーティは必要なくなっちゃったわね・・・・。もったいないから一緒にやっちゃう?」
「・・・それもどうかと思うけど。」
とりあえず、なぐさめパーティは乱馬が留年する時まで延期ってことになった。
絶対に留年なんかしない!って乱馬は言ってるけど、はてさてどうなるやら?
とにかく今日は開放感で胸がいっぱい!よし、春からの大学生活も頑張るぞー!
「それじゃあ、あかねの合格を祝して・・・」
「かんぱ〜い!!」
完
電柱ユーイチさまからお預かりした作品。
大学受験は人生の一通過点にしか過ぎませんが、それでも、その後の人生を決定することもある試験であります。
ただ、昨年経験した息子の大学受験から振り返ると、昨今、合格発表は「インターネット上」というのが圧倒的です。奴の行ってる大学もネット発表でありました。国立大学ですら、今年からはいくつかキャンパス以外での受験や説明会を開き始めたそうで…。
高校受験ですら、インターネットを使う学校が増えております。時代はどんどん変遷を遂げております…。大学受験もネットで自宅で…なんて時代が来るのかも…。
(一之瀬けいこ)
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