◇遠い約束、今の約束
  【7】あかね、あかな

陽樹(宇宙)さま作


「………」
あの男の子は…あの男の子は…乱馬。
夢の中に出てきた、黒髪のあたしがペンダントをわたした相手。
そして、その男の子は私の初恋だった。
思い出したの。
あたしの初恋の人は東風先生じゃなくて…あの男の子なの。
そして、初恋の男の子はあたしの許婚で、今一番好きな男の人。
「乱…馬…」



「ねえっっっっっっっっっ!!!!!!!!」
俺はポケットをあさった。
ないから、服も脱いで見る。
そして、リュックの中も全部出してみる。
でも、ない。
(ペンダントが…ねぇっ!!)
なんて俺はマヌケなんだろう…
天道道場に戻ってきて1ヶ月。
今俺は、親父ん家と天道家の間にある離れの家にすんでいる。
だから、一応1人暮らし。
しっかし、今頃気付くなんて…
(バカだ………………)
超ド級のバカだ…
「はあああ…」
深い、深い、ため息が出た。



乱馬の部屋(家)であたしと乱馬は今2人きり。
関係もだんだんもとに戻ってきたかな…?っていうトコロ。
あたしは勉強真っ最中。乱馬はマンガを読みふけっている。
乱馬が口を開いた。
「なー、あかね。おめー、好きな奴いんのか?」
(…は?)
「な、なにいってんのよ」
「だぁーからよー、好きな奴いるのか?っつってんだ!」
乱馬の顔は真剣だった。
「俺か?それとも他の奴か?」
乱馬の顔は真剣だったけど、瞳にはどこか不安があった。
もし、ここであたしが乱馬以外の人の名前を出したら乱馬はダメになっちゃいそうな雰囲気だった。
(……)
「乱馬よ」
正直に言って見る。嘘をつく理由なんてないもの。恥ずかしいけど。
「本当か?」
「本当よ」
「嘘じゃねえだろうな…」
「本当よ!!!」
「……」
乱馬は黙った。
どこか疑わしげな表情で。
でも、なんだか怒る気持ちが湧いてこなかった。
そ、その表情はなんなのよ…
「どうしたの?いきなり…」
「……前に」
「え?」
「前にあかねがゆか達に好きな奴を聞かれたときに戸惑ってた」
「あんた…それだけであたしの気持ちを疑うの!?」
とうとう怒鳴っちゃった。
「仕方ねーだろ!!好きなヤツがそういう反応をしたら誰だって疑っちまうじゃねーか!」
あたしは言い返せなかったけど、思い出した。
あかなっていう子の存在を。
「じゃあ、あたしも言いますけどねぇ!『あかな』って誰よ!!」
乱馬は明らかに驚いた。
「なっ…ななななななんでその名前知ってんだよ!!」
「高1だったときに、乱馬が屋上で寝てた時に寝言でいったのよ!『あかな』って!!」
「うぞ!!」
「本当よ!さあ、白状しなさい!あかなってだれよ!!!」
「………」
乱馬は黙った。
そして、乱馬はあたしのくびもとに目を留めた。
そして叫んだ。
目を点にして、叫んだ。
「あぁっ!!!!!!」
「なっ、なによ!」
「そのペンダント!!!!!あかなに…ふぐっ」
乱馬は慌てて口を押さえた。
「あかなに…?」
「〜〜〜〜〜〜〜。あかなにもらったやつ。なんで、あかねが持ってんだよ」
今度はあたしの目が点になった。
「あんた何いってんの?これはあたしが黒髪の男の子にあげたんだからね!」
「は?」
もうあたしたちの頭は混乱状態。
あたしは怒っていた事も忘れて、乱馬と状況を整理し始めた。
「えーと、俺は、『あかな』にそのペンダントを貰って」
「あたしは、このペンダントを黒髪の男の子にあげた…」
「「どこかズレてる…」」
考え込んだあたしたち。
2人で頑張って他の事を思い出そうとする。
(『乱くん』…………あっ!!)
「思い出した!!」
「おっ、何をだ?!」
「あたし、ペンダントをあげた男の子のことを『乱くん』って呼んでた!」
「え?!」
乱馬はあたしの肩を掴んだ。
「なっ、なによっっっ」
「お前、それ本当か?!!」
「本当よ!」
乱馬が呟いた。
「じゃあ、なんでお前が呼び名知ってんだよ」
「どういうことよ」
乱馬は手を放して放し始めた。
乱馬にペンダントをあげた、あかなは乱馬の事を『乱くん』って呼んでいたんだって。
そして、乱馬はペンダントをくれた女の子の事を『あかな』と呼んでいた。
「あれ…?うーん…」
「?どした」
「あたし、『あかな』ってどこかで聴いたような…うーん…」
あ、思い出した!夢の中だ!!!
「夢の中で聞いたんだ!あたし、乱くんに『あかな』って呼ばれてた!!!」
そうよ。あの時は聞き間違いだと思って気に留めなかったから忘れてたんだ。
……あれ?ということは…
「あんたが…」
「おまえが…」
お互いを指さした。
「乱くん?!」
「あかな?!」



  to be continued・・・




STAY掲載〜2002年8月「呪泉洞」移転作品

複雑に絡みついた物語りの糸が少しずつ解き明かされてゆく・・・
二人の未来は?そして深まる謎は?
(一之瀬けいこ)


Copyright c Jyusendo 2000-2005. All rights reserved.