◇遠い約束、今の約束
  【3】それぞれの想い

陽樹(宇宙)さま作


あたしと乱馬が会話しなくなってから1ヵ月。
あたしもがんばってるなぁ…
だって、つらいもの。乱馬と話さないのは。
え?じゃあ、話せばいいじゃん?
そんなの…できたら世話ないわよ。
怖いの。
乱馬に『さよなら』を言われるのが怖いの。
乱馬が、『あかな』の所に行っちゃいそうで…怖いの。
つくづく思うんだ。
あたしは本当に乱馬が好きなんだなぁ…って。

「あかねー。乱馬君とはどうなったのよ〜」
「そうそう。もう1ヵ月近く喋ってないじゃない」
さおりとゆかは毎回コレ。
「乱馬君がなんかしたの?浮気?」
「じゃあ、あかねは許せないわね〜彼女として」
「もうっ、勝手な想像はよしてよ!」
ゆかとさおりにはあたしが乱馬がすきってバレてるみたい。最近気付いたんだけど。
鈍感…なのかな?
「あぁっ!まさかあかね…あんたが乱馬君から他の男に乗り換えたの?!」
「えぇっ?!じゃあ、あかね。聞くけど、好きな人いるの?!」
「は?!」
「は?!じゃないわよ。ホラ、答えなさい」
「…いるよ。好きな人」
「誰?!乱馬君?!それとも他の人?!」
ゆかとさおりは更に詰め寄ってくる。
「もうっ、そんなのここで言えるわけないでしょ?!あとで教えるから!!!」
「でも、あかね…」
ゆかの言葉は始業のチャイムで途切れた。
あたしは、ホッとした。


(※乱馬視点)
………そうか…
あかね、好きなやついるんだ。
べつに、あかねとゆかとさおりの話を盗み聞きしてたわけじゃねーぞ。
ほ、ほら…あいつらの声、でけーからよ…
俺、あいつと恋人…ってゆーか、付き合ってたつもりなんだけどよ…
あっちは違ったのかな…
気になる。
あかねの好きなやつは誰なのか。
なんか…居眠りなんかできる心境じゃない。
寝たら、うなされそうだ。
なんか、あかねの好きなやつは俺じゃないような気がする。
そうとは限らねーけど、なんか自信なくなってきた。
あかねの好きなヤツが俺じゃないかもしれない…
俺、たーっくさんあかねのこと傷つけてるからな……
…どーすっかなぁ…


夕食時
あたしと乱馬は全く言葉を交わさない。
数十cmの距離なのに…
周りのみんなはこそこそ話している。

『乱馬め…またあかねくんとケンカしたな…』
『でも、いつもと違うみたいよ?あなた』
『それはそうだが、なんだか肩身が狭くなる…乱馬め…』
『本当にね。早乙女君』
『わわっ、天道君…おどかさないでよ』

『乱馬君とあかね、本っ当にどうしたのかしら。これじゃ商売も減っちゃったじゃないの』
『なびき。そんなこと言うもんじゃないわよ。でも…本当にどうしたのかしら…』

あたしと乱馬はそんな会話は聞こえない。
でも、それからおじさまとおばさまの様子がおかしくなったの…
みんなの様子がおかしくなったけど、おじさまとおばさまがそわそわしはじめたの…
どうしたのかしら?

(※乱馬視点)
親父たちがおかしい。
お袋と親父がすげーおかしい。
最近妙に部屋が綺麗なんだよな…嵐でも来るんじゃねーのか?
…にしても、このままじゃ…
俺ら早乙女家族…天道家から出て行く羽目になるんじゃねーか…?
あかねは何だか他に好きなヤツができてる見てえだし…
俺の…せいかな
親父、お袋…ごめん
もう、俺たち…ダメかもしれねぇ
ってゆーか、俺が耐えられねー
俺、中国に行く。
中国で修行して…完全な男になって…帰ってくる。
いや、帰ってこねえかもしれねえ
あかね…また…な

次の日の朝
「ちょっと、あかね!どうしたのよ、あかね!!」
なびきおねーちゃんの声なんかあたしの耳に届くはずがなかった。
頭の中が真っ白だったから。
あたしは、手から一枚の紙を落とした。
その紙には、ちょっと汚い字でこう書いてあった。

――中国へ修行へ行ってきます。もう、帰らないかもしれない。――
                                  乱馬



  to be continued・・・




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