◇遠い約束、今の約束
   [12]これから

陽樹(宇宙)さま作


『ねえ、夜闇。傷…痛む?』
『ん?ああ…少しな』
『相手が悪かったね』
帰りの飛行機の中。
夜闇をちょっと、茶化してみる。
『んなっ…』
夜闇は顔を真っ赤にした。…やっぱり、侮辱に値するのかな?
『冗談だよ。でも、乱馬は本当に強かったわ』
『まあな』
あたしは、夜闇の肩にそっと頭を乗せた。
『…雪梅?』
『少し、こうしてていいかな』
『好きにしろ』
やっぱり、心臓がドキドキしてた。



「ねえっ、ねえっ、乱馬!これ可愛いよ!」
「はあ?」
あたしと乱馬は買い物に来ていた。
そしてここはシルバーアクセサリー売り場。
その中のひとつをあたしは指さした。
そのシルバーアクセサリーは十字架にほんのちょっと模様が入った、シンプルなものだった。
「それより、俺はこっちのほうがいーけどな」
乱馬がさしたのは、月と羽根をモチーフにした可愛いもの。
「あっ、それも可愛い――」
言いかけて、値段を見てはたと気付いた。
(安物…)
乱馬のさしているものはあきらかに安物。
400円ぐらい。
それに比べてあたしが選んだのは、1200円。
このコーナーの中ではちょっと高いほう。でも、品質を見ると結構安いほう。
(乱馬…値段で適当に決めたわね)
絶対そうに決まっている。
そこであたしは最後の手段に出た。
「乱馬。これ、ダメ?」
ちょっと上目遣いで頼んでみる。
「………」
乱馬が怯んだ。ちょっと赤い。
(あと一押しだわ)
とどめの一発。ちょっと哀しそうにしてみる。
「〜〜〜〜ったく」
これだから女って呟きながら、十字架のアクセサリーを手にレジへ向かった。
乱馬にとってはさようなら1200円。
それに比べて、あたしは心の中でガッツポーズ。
(やった!)
そして、乱馬の後ろについていった。



「どうかなー?乱馬。似合う?」
「……まあまあだな」
2人で堤防を歩いていた。
あたしの問いかけに乱馬はそっぽを向いて答えた。
あきらかにスネてる。
「乱馬、まだスネてんの?男ならしゃきっとしなさいよ」
乱馬は答えない。
「…やっと落ち着いて、初めてのお出かけなのに」
ぽつりと呟いた。
本心だった。
「別に怒ってねーよ」
「……」
沈黙。
「あ、そーだ」
突然乱馬が言った。
「なに?」
「あかね、あのペンダントもってるか?」
あのペンダントというのは、あたしたちが幼い時の思い出のペンダント。
…これのせいで、とんでもないことになったけど。
「もってるわ」
手に出した。
すると
乱馬はそれをつかんだ。
「?!」
驚くあたしにかまわず…
「あらよっと」
乱馬は、横を流れる川に投げ捨ててしまった。
「!!!???」
衝撃のあまり声が出なかった。
そして、やっと落ち着いたと思ったらふつふつと怒りが湧いてきた。
「乱馬――っ!!あんたってやつはっ!!いきなりなんてことすんのよ!!」
あたしは乱馬の前を通って、川を見つめた。
ペンダントはどこにあるか、見当もつかない。
「あんなもん、どーだっていいじゃねーかよ」
「あんたにはよくってもあたしはよくないわよ!!」
だんだん涙が出てきた。
あのペンダントのせいであんな目にあっても、あのペンダントは乱馬との思い出。
あの最悪の出逢いが最初と思ってた乱馬とは、凄く昔に本当は出逢っていた。
そのあたしたちの思い出の詰まった、絆を示すペンダントだったのに。
なのに、乱馬は…
「確かに過去は大事だけどよ」
乱馬が言った。
「あんなロクな思い出がねえペンダントなんて俺はいらねえ」
「あたしは違――」
「これからは、このペンダントを思い出の詰まったペンダントにすりゃいいだろ」
「え…」
わけがわからなかった。
「だからあれはよー。乱くんとあかなの思い出だろ?おまえが今つけてんのは俺とあかねの思い出になるやつなんだよ」
『わかっか?』という目で見てきた。
「うん…」
必死に涙を拭いながら頷いた。
わかるよ。これからはあたしと乱馬の思い出を作ればいいんだから。
「じゃあ、乱馬。約束しようよ」
あたしは切り出した。
「は?」
わけがわからず聞き返してくる乱馬。
「だってあのペンダントをやり取りした時に約束したんだから、また約束しようよ」
「………どういう約束だ?」
「んー…そうねー…」
あたしはしばらく考えた。
「じゃあ、『これからずっと一緒にいる』っていうのは?」
「ま、いいんじゃねえか?」
乱馬は不意打ちで軽くキスをした。
「?!」
口をパクパクさせるあたし。
すると乱馬は言った。
「今のは、約束の証拠ってことにしとくぜ」
「〜〜〜〜〜っ」
乱馬はあたしをニカッと笑ってみて、歩いていった。
「あっ!ちょ、ちょっと待って!」
あたしは乱馬の後を追いかけていった。



この夕陽の日の約束は絶対忘れない。



fin




作者さまより

あとがきもどき。
………………………………撃沈。ぶしゅー(効果音付
見事に玉砕した作品でした。あははははは…(泣笑
最後、すっげー微妙。なんじゃこりゃ。
あぁ…連載小説は向いてない…(T□T)
こんなものを載せ続けてくださった一之瀬さまには本当にひたすら感謝。
ありがとうございました、一之瀬さま…。
にしても本当にありきたりな話(ストーリー)です。
あぁ…ほかに似たような作品を書いている方がいたらどうしましょう…(おろおろ
でも、とりあえず終わってよかったです。
本編は終わりましたが、実は番外編かなんかを予定していたり。
でも、予定で終わる可能性が90%ぐらい?(殴
これから1年後ぐらいに突然送るかもしれません…(迷惑野郎
その時は呆れながらも載せていただけると嬉しいです。
では、またどこかで。
宇宙改め陽樹。



長編連載は持続させて書き込んでゆくのに、物凄いエネルギーが要ります。
完結させた充実感はいかなる物にも得難いものだと思います。
いろいろな荒波を乗り越えながらも、乱馬とあかねの絆は強く確かなものになってゆくのでしょう。

もしかすると「番外編」もあるかもしれないということですので、楽しみにしております。
いろいろな世界観で作品を広げていただければ、嬉しいです。
二つのサイトへ渡る、長丁場作品、ご苦労さまでした。
(一之瀬けいこ)


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