◇遠い約束、今の約束
  [11] すべての終わり

陽樹(宇宙)さま作


ドゴォォォォォン!!!
並の格闘家でも砕く事が不可能な岩が、乱馬の一撃のみで粉々に砕け散った。
(これ…が、乱馬の力…?)
恐ろしかった。
破片がものすごい勢いで飛んでいる。
俺はその破片を食らっていた。
そして視界の片隅にあるものを見つけた。
(雪梅!!!!)
大きな破片を食らい、倒れる雪梅を見つけた。
今まで、俺の頭の中には乱馬とあかねの始末しかなかったはずなのにいつの間にか雪梅に手を伸ばしていた。
雪梅は俺の想い人だ。それだけの思いで叫んだ。
『雪梅!!!!!!!』


あたしは、その瞬間を見た。この目で。
乱馬は夜闇をなぎはらって、岩に突進した。
そして、ものすごい闘気のオーラをまとっていた。
その乱馬の拳、一撃で目の前の岩が砕け散った。
それだけ。
見たのはそれだけ。
もう、何も考えられない。
あたしは大きな破片の食らって、気を失いかけた。
気を失う前に夜闇が見えた。
必死にあたしの名前を呼ぶ夜闇の姿。
力強く、引き寄せられたのを最後にあたしは気を失った。


(やった!!)
夜闇をなぎ払ったあと、岩を砕いた。
急いで、滝へと走る。
「あかね!!!」
横のロープを見た。
もう、切れ掛かっている。
(間に合うか?!)
全速力で走った。

ブチッ

滝に飛び込む瞬間、ロープの切れる音が聞こえた。
(ヤバい!!)
少し前方に、落ちゆくあかねの姿が見えた。
必死に手を伸ばす。
「あかね!!!!!」
あかねの細い腕をつかんだ。
そして、引き寄せた。
そのまま、落ちる。
河に、打ち付けられた。
俺は必死にあかねを庇った。


『ん………?』
あたしは、目が覚めた。
『雪梅、気がついたか』
『夜闇!!!』
あたしは、飛び起きた。
辺りを見回すと、崖の下だった。
横では、滝が流れている。
(そっか…あたし、助かったんだ)
そして、思い出した。
『夜闇!あかねさんは?!』
『乱馬が助けた。俺は負けた』
ほっとした。そして、ふと夜闇を見た。
あちこち、傷だらけだった。
『夜闇…!その傷…』
『おまえを、庇った時のだろう』
夜闇はあたしを庇って、助けてくれたんだ。
胸が痛んだけど、ドキッともした。
『夜闇、…ごめんなさい』
『いや』
あたしはこの死闘を予想して、救急箱を持ってきていた。
夜闇の傷を、精一杯治療した。
ドキドキしながら。


パチパチ…
たき火が燃えている。
そしてその横で、赤いチャイナ服が水を滴らせながらゆれていた。
俺はあかねを抱きしめていた。
あかねの身体は、冷え切っていた。
しかし、呼吸はある。
生きている。
俺自身も冷え切っているが、ひっしにあかねを暖めた。
(こんなの…サフランの時以来だな)
あの時みたいに、笑いながら目を覚ます事を祈る。

しばらくすると。
「んっ…」
あかねの、瞼が微かに動いた。
「あかね…」
そして、あの瞳が姿をあらわす。
「乱…馬?」
「あかね!」
思わず抱きしめた。
「乱…馬?あたし…助かったの?乱馬が助けてくれたの?」
「…もう、なにも言わなくていい」
「ありがとう…乱馬…」
そして、口づけた。


『あ…!』
あたしと夜闇はたき火に当たっていた。
すると乱馬と、乱馬に抱きかかえられたあかねが現れた。
『乱馬!「あかねさん!」』
あかねさんは、微笑みながら手を振った。
「乱馬」
夜闇が立ち上がった。
そして、手を差し出す。
「俺の完敗だ。お前は強かった」
乱馬はあかねさんをそっと降ろして、がっちりと握手した。
「おめーも、結構強かったぜ」
そして、ニッと笑った。
「雪梅ちゃんたち、これからどうするの?」
あかねさんが言った。
「俺は帰る…と言いたいところだが、雪梅がどうするかによるな」
3人にあたしは見られた。
ポツリと言った。
「帰る。乱馬とあかねさん、ものすごい絆がある。夜闇と帰るね」
(本当の気持ちにも気付いた…)
私が本当に思っていた相手…見つけた。



雪梅ちゃんは次の日の飛行機で中国に帰った。
見送りの帰り道。
「淋しくなるな…」
「そうだな」
そのまま黙ったまま歩く。
「ねえ、乱馬」
話し掛けてみる。
「ん?」
「ありがと」
「あ?」
「昨日、助けてくれて。まるでサフランの時みたいで、嬉しかった」
「…どうってことねえよ」
乱馬はちょっと恥ずかしそうにそっぽを向いた。
その姿が可愛かったから、そっと手を握ってみた。
握った手に伝わったのは、力強いけど、優しく握り返してくれる乱馬の手。
そのまま歩いた。


つづく



ちょっとあとがき
この小説を連載させて頂いている、宇宙(そら)です。
次で終わると思い…ます。たぶん(笑
なんかぐーたらぐーたら書いてるうちに11回目まで来ちゃいましたよ…。
どうなんです?これって(苦笑
でも、頑張って最終話まで書こうと思いますので、ぜひ最終話まで読んでくださると嬉しいです。
でわでわ。。。


いよいよ物語りは終結部へ。
戦いの果ての乱馬とあかねと。苦難は絆を強くする。
命を張って助けられるそんな最大の存在。
ラストはいかに?
(一之瀬けいこ)


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