◇時流想戯曲 三国志演義・呉
  第四 呉国オイエ騒動の巻 

しょーすけさま作



十、夢に向かって



周喩「引越しをしようと思う。」

孫堅「んなっ!?」



孫堅「嫌じゃい嫌じゃい嫌じゃい!」
孫策「まーそうは言いますけど父上、父上!」

 ここは長沙、中国の南方に位置する。呉の国の首都。…なんだけど、これより首都の場所を替えようと思うわけだ。なぜかって?ふふっ。すべては戦略さ!長沙は東西でいうと「真ん中」あたりだが、北の方で争ってる奴ら…劉備、曹操、呂布、袁紹などはみな「東」寄りに集中している。つまり、呉の国の首都を東の端の街・建業に遷すことで、より積極的に主力軍を送って戦線に乗り出すことができるってわけだ。逆に、北から攻め込まれたとしてもおおいに守ることができる。

孫策「これも天下統一のためなのです。父上、理解の程を。」
孫堅「む…そう言われては仕方があるまい。おまえに任せよう。しかしのぉ…」

この長沙にずっと勤め、役人を出世して太守(知事みたいなもんかな)となり、旗揚げをして一軍の君主となり…そーやって長沙の雄として居つづけたオヤジだ。名残惜しいのはわかるし、皆ここに色々と思い入れがあるのは当然のこと。だが、そんなこと言ってちゃこのさき生きていけねえぜ。

周喩「そーだな…建業に行けば海鮮料理が目白押しだぜオヤジ。」
孫堅「ほほぅそれはいいことを聞いた。ぁいや、長年住んできた長沙の地を離れるのは寂しいが、天下のためならばやむを得んことだ。」
黄蓋「もしかして楽しみにしてない玄ちゃ〜ん?」
孫堅「ごっほん!」



………。

そんなわけで、首都の大移動…いわゆる遷都ってのをおこなうことになったんだ。

長沙の太守を改めて決めなおし、その人にあとは任せて、おれ等は明日にでも建業へ向けて出発する。
遷都の何よりの目的は、軍だ。ここにいる大量の兵を移動させるわけだから、けっこう手間がかかるだろう。長江の流れにのせて船で送るとか、騎兵は馬に乗ってとっとと行かせるとか、なにかと工夫が要る。特に船を使うとしたら、注意が必要だろう。向こう岸は敵地…最悪の場合、この城にスパイなんかが忍び込んでいたりでもしたら…この引っ越しに関する情報が漏れてしまっていたとしたら、船が真っ先に攻撃される恐れだってあるわけで。

周泰「根性でっせ根性!」
周喩「まだ言ってんのかうっちゃん…もうそれはよくわかったよ。」

うっちゃんの傷もだいぶ回復したようだ。すっかり元気に、朝のトレーニングからしっかりこなしている。

孫権「なあ乱馬。」
周喩「なんだ?」
孫権「何っか忘れてると思わねえか?」

…?

孫権「おれに新しい仕事くれるって話だっっ!それをまたそっちのけで引越しの話なんざ持ち出しやがって!」
周喩「あーあー、そーだったそ−だった。じゃあ建業に着いたらゆっくり決めるか?」
孫権「面倒くさいな。おれだけ別行動で動けばいいことじゃないのか?」
周喩「おめーひとりで何処に行けるって?この方向音痴。」
孫権「ぬ………!」

やれやれだぜ。
さて、ここいらで代表的な将軍だけ点呼をとっておくか。

黄蓋「いち、」
孫策「にー、」
程普「さん、」
陳武「しぃ、」
太史慈「ご、」
韓当「ろく、」
周泰「なっぱ」
蒋欽「はっぱ」
甘寧「きゅー」
孫権「…十。」

周喩「よろしい。この十人は各自、兵達を引率してくれ。良牙は他のグループを見失わないよーに注意すること!あと各グループで何か問題があるようなら、早雲おじさんか東風兄に聞くよーに。…え〜とそれで、誰が船を使用するか…」
蒋欽「はい!はいはいはい!」
周喩「はいつばさ君。」
蒋欽「長江での船出なら、わたくしと右京さまにお・ま・か・せ!なにせ船には慣れてるからねン。」
周泰「そやな。うちらに任してんか。」

そっか。うっちゃんとつばさは元々が海賊出身、船についてなどは色々知識もあるだろうし、この二人なら安心だな。

周喩「じゃあもひとつ、出発の前に食糧を積む仕事を頼みたいんだが…そうだな…この中でいちばん力持ちなのは…子義?」
太史慈「俺か。」

うん、この男だろうな。食糧を荷台に積む仕事は、彼に授けることに…

程普「乱馬、乱馬。」
周喩「ん、何だ?」
孫権「ちょっとコイツを見てくれ。」
周喩「?」

甘寧「………ん?コラッ、何しやがるっ!」
陳武「ええい大人しくするだ!」

…どばっしゃ!

周喩「?………………なんじゃこりゃあぁぁぁ!!」
「ブモォォォーーーーーーーーーーー!!」

ば、化け物っ!!いったいどーいう生き物だコレっ!?

程普「こいつ、なんだかとてもややこしぃ溺泉に落ちたらしいある。」
孫権「非常に力仕事に向いてると思わねえか?」

こ、こいつも呪泉郷で泉に落ちてたのか…。
おそろしくでかい図体に焦げ茶色の毛並み、牛かと思いきやひづめではなくコブシ、うなぎの尻尾に白い翼………鶴か?
ううむ…確かに、この巨体、この筋肉…使えるっちゃ使えるな。…暴れたりしねーだろーな?

周喩「わ、わかった。じゃあパンスト太郎、」
「ブモッモモーーモーーーーー!!(その名で呼ぶな!!)」
周喩「おめーに食糧担当を任せる。子義は騎乗兵を集めて引率してくれ。」
太史慈「相分かった。」
周喩「他は各自、歩兵の引率を頼む。出発は明日の朝、それまでに荷物をまとめておくこと!以上!解散!」

はぁ。さて、明日にそなえてもう休むか。最近は方々飛び回ったり会議の連続だったりで大変だったからな。明日でようやく一段落つきそうだ。

周喩「(………水軍、てのもいいかも知れねえな。)」

うっちゃんとつばさから、もうちょい船について話を伺うのもいいかも知れない。
…ま、それは建業についてからということで。



仕事が終われば。
おれだって一人の人間だ。気を抜く時もある。

周喩「あ、か、ね〜前借りた本…あれ?」

あ、居ねえ。ここじゃなかったか。…道場かな。
本殿のはなれに、天武館という道場があるんだ。ここか中央広場のどっちかで、毎日兵が集まって稽古をしていたんだ。それも今日までのこと…か。明日以降は、この街を守るだけの兵を集めなおして、今よりは少人数で活動するんだろう。

周喩「あかね?………いたいた。」

誰もいない道場の片隅にひとり、ぽつんと座っている。壁に飾られた掛け軸を見上げているようだ。その背は、何も語らず、とても寂しそうに見えた。なんか、小さくなった?まさか。…そんなわけがないよな。

周喩「あかね。」
小喬「…乱馬?」
周喩「おわかれの挨拶は終わったか。」
小喬「………………」

…本当に寂しいんだな。横に並んで見てみれば、その顔は、ぴんと上を向いているけど、今にも糸が切れてしまいそうな…。

周喩「………ここでいろんな事があったよな。オヤジやおじさんとも毎日かかり稽古をしてきたし、良牙とも何度もやり合ったっけ。」
小喬「…うん………」
周喩「東風兄が本気出した時は、ついに勝てなかったな…。」
小喬「…懐かしい。」

ここには何千回、足を運んだだろう。道場の、端の端まで思い入れが詰まっている。毎日修行をしに、何かあった日の夜には気分を鎮めに、ときには決闘も…。

周喩「やっぱりここがおれ達の家だよな。戦いのために引越しなんて、…変な話だ。」
小喬「夢をつかむためでしょう…?」
周喩「………まぁな。」
小喬「うん…頑張ろ。これからが正念場だもの。」
周喩「ああ…。」
小喬「寂しくなんかないわ。みんなで行くんだから…またここに戻って来る日まで、しばらくのおあずけ。」
周喩「………戦いが終われば、またここに帰って来てえな。」
小喬「うん。」
周喩「…ほら、借りてた本。」
小喬「あ、………………」

みんなで行くんだから………そうだよな。すぐにでも、新しい住居に慣れるだろうさ。

小喬「ん、もうちょっとじっくり読んどいて。」
周喩「へ?」
小喬「…なんか、心寂しいから。」
周喩「まあ、いいけど…。」
小喬「飽きたら返してね。」
周喩「それじゃしばらく返せねえぞ。」
小喬「別にいいわよ。」

思い出だらけの場所を抜け出して、新しい地へと行く時。何か、何でもいいから、思い入れを深く持てるものが欲しい…そんな願望のようなものが少しずつ沸いてくる。それで、この本。…別におれにとって特別意味のある本ってわけでもないんだけど…飽きるまで読んでみようか…そう思わされるわけだ。
1ヶ月後ぐらいだろうか。その頃には、この本は、あかねにとって“おれもよく知ってる本”ってことになる。それだけでも充分、おれにとってもあかねにとっても特別なものってもんだろ。

周喩「そろそろ飯いくか?かすみさんも帰ってきてるし。」
小喬「うん。おねーちゃん何作ってるかなぁ。」

立ち上がって、道場の出入口へ。
外に出る前に、少しの間だけ…ちょっと、彼女の肩に手を置いて、たぐり寄せた。
鼓動、ぬくもり、呼吸の様子…生きている。それがはっきりとわかる。
間をおいて、少しだけ頭をかたむけてくれる。
………………これ以上はちょっと…やっぱり場所が場所だから、誰が見てるかわからねえんだよな…イマイチこう、安心できないとゆーか。
触れていた手をおろし、一歩前に立って道場を出る。「一体なにがしたいのよ」とでも言われそうな気もするけど、…おれだって精一杯がんばってら。



 翌日。やいのやいのと騒ぎながらのお引っ越しとなった。初めは後ろに見える長沙の城を何度も振り返りながら、しばらくすると旅を楽しむようにして、ゆっくりゆっくり集団移動は続いた。




十一、開戦の兆し



太史慈「ふ〜む、建業の街とは何と美しく、盛んなことよ!長沙ともまったく引けを取らんな!」
兵「太史慈さん…元気っすね。」
兵「他より先に着いたから優越感にひたってるんだよきっと。」
兵「着いたら着いたでさっそく宴会だもんなぁ。」
兵「旅疲れってのを知らないんだな。」
太史慈「うむ!あの程度の酒盛りでへばっていてはいかんぞ!右京どのが言っていたであろう、気合いだー!気合いだ…」

げんっっ

どしゃ!

兵「あ、コケた…」

太史慈「あだだ………うむ?おお、あれに見えるは乱馬どのと謎のパンダ!歩兵グループも到着したようだな!」


「パホッ。パホッパホッ、パッポ〜」
周喩「ええぃ何言ってるかわかんねぇよっ!」
「パッフォー(料理亭は何処ッ)」
周喩「…メシは宮城に入ってからにしろぃ。」

さて、無事にここまで辿り着いた。あとは港でうっちゃん等と合流して、城に入る。部屋割りとか決めないとな〜。
ここ建業の街は、港町としても知られている。長沙にいたときは南蛮に割りと近かったから、そことの交易はけっこう盛んにやってたんだけど、ここではもっと色んな場所の名産が入ってくる。それに河だけでなく、目の前はもう海なんだ(いまでいう日本海か東シナ海か)。海老!蟹!食い放題!オヤジもはしゃいでるけど、おれだって正直楽しみだ。

大喬「新しい住まいね。あかねちゃん。」
小喬「うわぁ〜すっごいじゃない!絶対長沙より大きいわよここっ!」
大喬「ふふっ。そうねえ。」

周泰「ほらつばさっ、しゃきっとせんかいっ。」
蒋欽「う…右京さま…なんだか目が回って…」

周喩「おし、これで全部揃ったな(船で何があったんだ…?)。じゃあ城に入るぜ。」
孫策「うーん。まるでボーイスカウトみたいだね、乱馬くん。」
周喩「…。いちいちまとめ役がいなくても、勝手に動いてくれりゃ楽なんだけどな。」
「ブモーーーーーーーーーーー!!」
周喩「だぁっ!?おめーまだその格好だったのかよ!」
「ブモォッ!」

民「うわぁ化け物が現れたぞー!」
民「牛子さん、ここは逃げて!」
民「豚彦さん、無茶しないで!」
民「花子さん、君だけでもどこか遠くへ!」
民「草男さん、あなたを置いて行けないわ!」

周喩「…誰かお湯かけろお湯!」

ばっしゃ!

甘寧「………ぐふっ。気の小せぇ奴らだぜ。」
周喩「あのなっ。」



 はてさて新しい城に入り、部屋割りもじゃんけんで決まり、あとは良牙の仕事………どっか別の城を任せるとか言ったんだっけ。う〜ん、また行方不明になられても困るから、あんまりここから遠くには置けないよな…。

周喩「章安(しょうあん)でどーだ。ここから少し南の所だ。」
孫権「別に場所にこだわるつもりはないが、仕事の内容は変わるんだろうな?また農村のばあさん相手ばかりじゃねえだろーな?」
周喩「これからはそんな平和なことばっか言ってられねえよ。ここからすぐ近くだから、予備軍の配置もしたい。」
孫権「予備軍…?」
周喩「ああ。まさか海から攻め込まれることはないだろうからな…章安に“隠し玉”を置いておけるってわけさ。北の奴らにぎゃふんと言わせてやれる。」
孫権「…建業を前線として、章安で援助を図るってことか…言ってみりゃ倉庫係みたいなもんか。」
周喩「いや、それだけじゃねえ。うっちゃん、」
周泰「あいさ。」
周喩「しばらく、つばさと別行動でいいか?ちょっと頼みたいことがあるんだ。」
周泰「ん?」

うっちゃんとつばさには、普通の軍人にはない知識がある。船を使った、海賊としての戦法。これをウチの軍にみっちり教えこめば、大量の水軍の完成だ。

周泰「…なるほど。それじゃつばさにも言うておくわ。それでどっちがどっちに付けばいいんや?」
周喩「あ〜どっちでもいいけど…」
孫権「それなら、右京をおれに回してくれないか。」

ん?

孫権「右京にはでかい借りがあるからな。恩義にはなんとかして報いておきたい。」
周喩「へぇ〜アツイ事いうじゃねーか。じゃあうっちゃん、良牙と一緒に章安の方に回ってくれ。」
周泰「わかった。」

恩義に報いる、ねえ〜。うっちゃんに渡せる兵の数も多くなったし、充分報酬は回ったと思うけど。まあ、良牙の気が済まないってんなら好きにすりゃいいさ。

…どばっしゃ!

周喩「おわっ!?冷てっ…」

な、なんだいきなり!?

蒋欽「ふっふーん。話はすべて聞いたわよ。この私と右京さまを引き離そうとは小憎らしい政策だこと…それにあんた、水をかぶると女になるんですって?」
周泰「ほぇっ!?」
周喩「…そーだよ。何か文句あっか?」

うう………呪泉郷のこと、色々噂されてんなこりゃあ…。
そりゃオヤジはもう、人前でもパンダの姿でごろごろしてるからオヤジ=パンダで認知されてきてるけどよ…おれはあんま、知られたくねえなー。やっぱ呪いだし…不本意だし。

周泰「すごーい!ものすごい特技やんか乱ちゃんっ!完璧な女装や!」
周喩「女装じゃねえっ、呪いだっ!」
孫権「ふっ…意外と気に入ってるんじゃねえか?」
周喩「良牙…てめ〜………」

いっぺん水かけて豚の丸焼きにしたろかっ。

蒋欽「………ふ〜ん………」
周喩「な…なんだよっ。」

蒋欽「………………………ちんくしゃ。」

周喩「っっっっっっ!」

ちんくしゃ?ちん・くしゃ?ちんくしゃぁ!?
(釈:「ちんくしゃ」顔のパーツが真ん中に寄ってること。)

周喩「てめ〜そこになおれっっっ!豚の丸焼きにしてくれるっっ!」
孫権「だははははははははっ!!しっかり気にしてんじゃねえか!」
周喩「………………怒」

ばしゃっっっ

「クィーーッ!クィッ、クィッ!」
周喩「うっせぇこのブタ!」
周泰「おおっ、良牙は黒豚になるんかっ。うまそーー!」
「クィッッッ!?クィッ!クィッ!」
周泰「冗談や。」

ちくしょ〜ぅ。早く治してえよこの体質…。それにしても…ちんくしゃ…

ぽんっ。

蒋欽「そんなに気を落とさないでよ。私たち同じシュミじゃない。」
周喩「あん………?」

何が趣味だ何がっ。…って、えっ?

蒋欽「まあ私の女装テクニックには及ばないけどねーン。」
周喩「………………男っ!?」

ずざっっっっ

こいつぁ驚いたっ…いや、これはまさしく奇想天外だぜ。こいつ、男だったとは…。ううううううん………男のくせに男であるうっちゃんにべったり付き従ってんのか…?

蒋欽「やーん私たち仲間じゃな〜い。そんなにびびらないでよっ。」
周喩「ぉ、冗談じゃねえぜオカマ野郎っ。」
「クィッ………クィッ」
蒋欽「オカマってのは心外だねっ。ただの女装好きな健全な男だよっ。」

ぽこっ!

蒋欽「やんんっ!右京さま、ぶたれた〜!」
周喩「でぇい健全な男が男にべたべたするなっての!」

周泰「ん?」
「クィッ?」
蒋欽「はっ?」

周喩「…え?」

…え、おれ何か変なこと言った?

周泰「うち、男ちゃうで…。」

周喩「…ぅそーーーーー!」
周泰「どこ見てもの言うとるんや。」
蒋欽「そーよ右京さまのどこが男なのよっ。」
周喩「いや、だって小さい頃は、確か…男と聞いていたような…」
周泰「言うてへん言うてへん。」

………。不覚っ!

蒋欽「や〜い勘違いオトコ女〜。」
周喩「ぅうっせえやいっ!」



兵「周喩どの!!号外です!!!!号外!!!!!!」



じたばたしているところへ唐突に、速報を知らせる声が響いた。
号外ってことは、何かえらい事件でも起こったのか?
新聞を渡されて、大きな見出しのある1面に目をやる。

周喩「んーなになに…袁術将軍が皇帝宣言………皇帝!!?」

皇帝って、王朝のてっぺんに君臨するっちゅーあの皇帝か!?
読み上げていくと、こうだ。
“昨夜、淮南(わいなん)の地に在る袁術将軍が正式に皇帝となることを宣言した。その理由については、「我こそは袁術、あざなは公路。いまここに伝国の玉璽を以って、天子であることを表明する。我こそが天子にふさわしい人物なのだ。予言書を見よ。『漢に代わる者は塗(みち)に当たりて高し』とある。塗とは何を示すものか。もちろん、道路だ。そして我があざなは公路なり。この公路に玉璽が渡ったのだ。いまこそ漢王朝に代わる新たな王朝を創るときである。」と語っている。以前より袁術が帝位につくことを望みとしていたことは周知の事であったが、今回の宣言に対して諸侯の反応はあまり良くはなさそうだ。”

周喩「こ、この戦乱のさ中にいきなり王朝を建てる馬鹿がどこにいるっ!この男、イカレてるぜっ!」
孫権「伝国の玉璽…それを手にした者は国を得る、という言い伝えか…。」

ったく、玉璽がまだ返ってこねえと思ったら、そんなことに利用されるとは!

孫権「どうする?乱馬」
周喩「…東風兄の判断にまかせらぁ。」

おれは本殿の広間に急いだ。そこではやはり、号外の新聞を手にした東風兄と早雲おじさんが話をしている最中だった。おれの他にも、軍師の連中があわてて広間に集まってくる。

孫策「あ、乱馬くん。号外を読んだのかい?」
周喩「ああ、まったく冗談じゃねえぜ。」
黄蓋「うむ。冗談で済まされることではあるまい。我々も袁術どのとは関係者なのだからな。」

軍師A「殿っ!この事態、いかが致しましょう!」
軍師B「即刻にも借りていた分の3000の兵を返し、玉璽を取り返してあの男とは縁を切りましょう!さもなくば、我らも天下の逆賊の仲間と呼ばれてしまいましょう!」

絶縁状を叩きつける、か。新しい王朝を建てることには賛同できるわけねーし、…頃合的にもちょうど潮時なのかも知れない。

孫策「そうだね………………」




十二、揺れる呉船



 呉の国(王朝というほどのもんではないけど)が出来上がり、その兵力は強大なものになった。北方ともいずれ戦いになるだろうという矢先に、この号外が飛びこんできた。袁術将軍…呉の国を展開するうえで今までは世話になっていたが、仮にも担保として渡していただけの物を、さも永久に自分のもののように掲げ始めたために、調和はあっという間に崩れた。

孫策「落ち着いて考えよう。絶縁状を送るのはいいとして、もはや多分、玉璽を返してはくれないだろう。父上には悪いけれど、玉璽は諦めてもらうしかない。それよりも、北方の諸侯の反応が気になる。今まで頼りにしていた袁術どののもとを離れたとなれば、こちらが力をつけてきていることもおのずと悟られる。目をつけられてもおかしくない。北の争いに、いよいよ飛び入りすることになると思うんだ。」

黄蓋「…無論、覚悟はできているよ。」
周喩「おれもだ。」

いってみればおれ達が戦っていた場所は、蚊帳の外。都のまわりでは、もっと熾烈な争いがなされているんだ。強豪たちがひしめきながら、手を組んだり、裏切ったり、逃げ延びたり…その繰り返しで、依然にらみ合いが続いている。そこへおれ達が入っていったら、どんな反応が返ってくるだろうか?手を組んで味方に引き入れようと来るか、潰しにかかってくるか…。

孫策「絶縁状についてはちゃちゃっと済ませてしまうよ。それで、北は具体的にどういった状況なのかな?」
軍師C「はっ。報告します。現在、北端にて公孫讃が袁紹と激突、公孫讃といえば劉備と仲の良い関係にありましたが、今回の戦いには劉備は参戦していない模様。どうやら劉備は曹操のもとに身を寄せているようです。呂布は袁術と何か交渉をしているようですが、その内容は明らかになっていません。」
孫策「………呂布だ。彼の武命、いつまで続くと思う?」
軍師C「はっ…?」
周喩「このところの呂布の戦のデータをまとめれば、簡潔に言うとこーなる。………まるで子供の使い。まわりに言われて動き回っているだけのような気がするんだ。その戦闘能力は天下最強と言われるが、頭の方はちょっと弱いらしい。ちょっと言いくるめてしまえば、裏切りなり何なりしてくれるタイプだ。」
軍師C「…と、なりますと…」
孫策「いずれ、はめられて身を滅ぼす。誰かの軍に懐柔される(招待されて味方になる)可能性は、過去の二度の裏切り経歴を考えれば、もはや皆無に等しいだろう。おそらくは先日刃を交えたという曹操軍が討ち取るか、呂布の部下が造反を起こすか…。」
周喩「ああ。それに多分、呂布の戦いに決着がつくまで、誰しもおれ達に害を与える余裕はないだろ?こっちが動き出すのはそれからでもいいと思うんだ。」
孫策「なるほど、それもそうだね。」

…へへん。とっても軍師らしい仕事ぶりだぜ。なんだか本格的に、天下争いに参加している実感がわいてきた…。

周喩「おれらはおれらだ。まずは軍を配備し、よく訓練させる!周泰・蒋欽の両将軍を二手に分け、建業および章安の地で水軍の開発にあたってもらうことにする。敵が攻め込んできたときは、これを使って長江から南へは決して入れねえつもりだ。異議のある者は?居ないな。じゃあそーゆーことだ。」

よし、会議おわり!

孫策「乱馬くん。」
周喩「ん?」
孫策「…もうその格好に慣れたのかい?」
周喩「え?あ……っっ!」

お、女…。お湯かぶるの忘れてた………………さっきの軍師連中、おれのことわかってたのかな…?

孫策「周りの人には説明したの?その体」
周喩「…いんや。面倒くさいからしてない…。」
孫策「ふふっ、面倒くさいからねぇ?乱馬くんらしいね。」
周喩「………。」
孫策「明日、時間があるなら狩りにでも行かないかい?…もういよいよ、気楽に過ごす暇もなくなりそうだから。」
周喩「そだな。楽しみにしとくぜ。」
孫策「それじゃあ。」

この日は、これだけで済んだ。東風兄が絶縁状を書いて(一応オヤジの承諾つき)、使者を派遣したところで騒ぎはおさまった。

ただ、その翌日が………おれたちにとって最悪の日になるとは、誰も思っちゃいなかった。



周喩「おいっ!?おいっ!!しっかりしろ!!」
孫策「………………ぐっ………!」

狩りの最中。街からちょっと離れた森。おれと東風兄、それから仲間ども数人で馬に乗って移動していたところだった。
一瞬の出来事。

周喩「(この矢は…ウチで作ってるものじゃねえっ!)」
韓当「早く主公のお手当てをっ!手遅れになりますわ!」

背に刺さった矢を抜き、急いで街へ送らせた。
犯人はシャンプーが捕らえた。

韓当「お急ぎくださいませ!あの矢………毒………!」
周喩「………………!!」

自分の血の気が引くのがわかった。背筋が凍る。
たまらず、馬をとばして東風兄が護送される後を追った。
目の焦点がはっきりと定まらないような。
怖かった。
こんなところで、すべてが壊れてしまうのか…
大切な、仲間が………………

周喩「…ちくしょぉおおおおおおおーーーー!!」

急げ!もっと急げ!手遅れなんて嫌だ!早く、早く………………!!






孫策「………………………………」
周喩「………。」
小喬「…まだ、起きないの?」
周喩「………。」
華陀「毒は抜きました。あとはご本人の生命力次第。」
小喬「そうですか…。」
孫権「兄上………。」
孫堅「おお、何ということじゃ…。」

夢だと思いたい。
あの東風兄が、いま何人もに囲まれて、意識不明の重体で眠っているなんて。
安否がはっきりするまで、何も考える気にならなかった。ただ皆と一緒に、ひたすら見守った。

孫策「………………………………」
周喩「まだ…かよ………。」
大喬「…お夕飯の仕度してきますね。」
小喬「おねーちゃん………」

かすみさんがすっと立ち上がると、それだけで何かが緩んだ。弱気になってしまうような…。
あかねが、立ち上がってその背に手を触れた。かすみさんがふり返ると、そのまま声も上げずに泣いてしまった。かすみさんも、その肩を抱き留めながら、確かに涙を流していた。

周喩「早く………起きろよなっ………ちくしょお………」

もう心はぼろぼろだった。絶望…ってのは、引きずり込まれると、本当に何もかもお仕舞いになってしまいそうな気がしてくる。きっと大丈夫だ、そう何度言い聞かせても、無限の力で引っぱられる。
目を開けてくれるまで、勝てそうにない…。

孫策「………………………ぅっ…」
周喩「あっ……!?」
孫権「あ、兄上っ!」
孫堅「おおっ…!?」

お、起きた………………!起きた!!

孫策「あっ…はは………心配かけた…?」
周喩「ばっかヤローっっ…ったく………っとに…」

よかった…本当によかった…。
いっきに空気がほころんだ。皆して気の抜けたような声をあげ、涙まじりに笑い声などもあがった。
心配かけた?って、かけたに決まってんじゃねーか。



あぁ………そうだ、一体犯人は何者だったんだろうか?

周喩「なあシャンプー、捕まえた奴ら、何か言ってたか?」
程普「…父の仇、そう言ってたある。」
周喩「………そっか。」

江東制圧戦のさなかに倒した数多の相手、その息子が、仇討ちを企てたのか…。

華陀「………ではわたしはこれにて。」
韓当「お待ちくださいませ、先生。…あの毒、中国全土を歩く先生ならば、見覚えはございませんこと?どこの軍のものですの?」
周喩「小太刀…?」
華陀「…言う必要はありませぬ。」
韓当「先生!」

お、どういうことだっ。どこの軍の…って。

韓当「乱馬さま、今までの相手に毒矢を仕掛けてくる者などおりましたか?…仇討ちなど単なる名目、誰かがそれを利用して、裏で差し金を引いたに違いありませんわっ!」
周喩「!」
周泰「確かにそや。うちが前にいた軍に、毒の生産はまったくなかった。」
甘寧「…俺が前にいたとこも同じだ。」

まさか、北の方から、何者かが先制の一手を仕掛けてきたってことかっ?それも軍の心臓を狙って…

韓当「教えてください先生!」
華陀「…言えば今度は、あなた方がその者に危害を加えましょう。医者ともあろうものが、怪我人の増えるような助言はできかねます。」
韓当「先生!」
程普「小太刀!もういいねっ!」
周喩「華陀先生の言うとおりだ。聞く必要はねえよ。…東風兄には死んでもらったことにしとけば、同じことは起こらねーだろ?」
韓当「はあ………………。」

大丈夫だ。東風兄は一命を取り留めた。ここはひとつ、敵の策が成功したふりをしておいた方が安全だろう。そのうえで様子を見るんだ。何か目的があって、こんな大胆な行動に出たはず…必ずどこかで、何かが起こる。

周喩「まさかとは思うが…おれらの軍をみくびって攻めてこようとしてるんじゃねーだろうな…?」
孫堅「君主の居ぬ間になんとやら…あり得んでもないぞ乱馬よ。我らとて、いともたやすくこの地を得てしまったのだ。同じように、この地をさっさと我が物にしようと企むやからがおらんとは限るまい。」

しかし、仮にも「小覇王」とうたわれる孫策の率いた軍だ。そこまで馬鹿にされるはずが…ねえと思うんだけどな。

周喩「一応、防御を固めておくか。全地方に呼びかけねえとな。」

 とりあえず、東風兄は死んだとして、大げさ〜な葬儀をおこなった。当人は建業の城に居るんだけど。華陀先生はその翌日に、この地を去って河を渡っていっちまった。
そして、程なくして北方に関する情報が舞い込んできた。

兵「申し上げます。公孫讃が袁紹に敗れ、姿を消したとのこと。そして勢いを得た袁紹軍は、曹操の方へと進撃を計画している模様です。ならびに曹操は、劉備と協力して呂布を捕らえることに成功、これで呂布軍も姿を消しました。」
周喩「消えたか…。公孫讃、呂布がほぼ同時に消えて、その勝者同士が対決か…。」

まるでトーナメントだ。そしてさらにこの勝者と、将来おれ達は戦わなければならなくなる…。

周喩「袁術は?」
兵「はっ。以前より袁術は、呂布のひとり娘を嫁にとる、という縁談をしていたそうなのですが、曹操軍との戦いのもつれで婚約が成立しなかったそうです。それで不仲となった末、袁術の軍に攻撃が加えられ、大きな打撃を受けたものとみられます。そして呂布が捕獲、処刑された現在は、袁術は袁紹をたよろうとしている模様。」
周喩「わかった。」
兵「なお、袁術は先日皇帝宣言をしたところ。その政治は勝手を極めている、という噂です。民衆からかなりの不満の声があがっているとか。」

ほ〜ぉ。袁術ってのはなかなか器の小さい人間なんだな…。
要注意は曹操…いや劉備もだろうか。

周喩「そーだ劉備は?」
兵「はっ。ええっと…呂布を捕らえたのちは、劉備は曹操と対立し、今度は袁紹に身を寄せているようです。…ん?何、どうしたって?…ふむ。わかった。…え〜ただいま入りました情報によりますと、劉備軍の勇将・関羽が曹操軍に説得され、懐柔された模様。劉備三兄弟の絆に亀裂あり、とのことです。」
周喩「…そりゃ大変だな。」
兵「こんなもんでよろしいでしょうか?」
周喩「おー。ご苦労さん。」

関羽が曹操軍に下った…?意外っちゃ意外だけど、劉備はどうするんだろうか。ただでさえ、独立する力もなく彷徨っている劉備の軍だ。関羽がいなくなったとなれば、ダメージは大きいはず。…でも、関羽だろ?忠義者で有名な関羽が、なんで劉備のもとを…うう〜ん外側から見ているだけでは、細かい事情はわからん…。

周喩「…ふう。」

疲れるな。東風兄はまだ養生中、この席にいない分、外政はおれが一手に引き受けているわけで…。
あぁ〜誰か手助けして欲しいぜっ。一人で考え事すると肩がこる。

周喩「…ひろしと大介にでも頼んだろか…。」

あ〜とにかく、本日もこちらに異変はなし、と。
さて東風兄の様子でも見に行くか。まだ救護室で寝てるはずだ。

周喩「東風兄、起きてっか?」
孫策「ぁ乱馬くん、このヒト何とかしてくれないかなぁ…?なんかさっきここに着いたらしいんだけど。」

ん?ヒトって…あかねが看護で横にいるだけで、他に誰もいねーじゃねえか。
ただあかねがひざに抱えてる、妙にでかい鈴が気になる。見舞いに鈴はプレゼントしねーよな普通?

小喬「この鈴のことよ。本当、何とかしてよね乱馬っ。」
周喩「あん?何わけのわからねーこと言ってんだよっ。」

鈴なのにヒトとか呼んで、何の話してんだ一体。

「…にゃにゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

周喩「へっ?…ぅえっ!?」

鈴が、変化しだした!?しかもなんだか猫みたいな声をあげてやがる…一体、何なんだこりゃあ!?

「にゃにゃ〜〜〜〜ん、ワシの名は于吉にゃん。とっても偉い仙人さまなんにゃぞ〜。」
周喩「ば、化け猫ぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉ!?」
于吉「にゃ、失礼な奴だにゃ。見た目でヒトを判断してはいけないにゃ。ワシは普段は魔猫鈴(まおもーりん)に化け、人前に出るときはこーして本来の姿に戻るのにゃ。ちょっとサイズが大きいだけの可愛い猫姿じゃにゃ〜か。」
周喩「く、来るな!寄るなぁっ!」

ぉ、おれは猫はダメ………………ひぃっ!!

于吉「にゃーん、おみゃーとあかねちゃんのカンケイはだいたい聞いたにゃ。ワシ、おみゃーを倒してあかねちゃんを嫁にするにゃ!」
小喬「ちょ、ちょっと待って!あたし別に何も言ってないわよっ!」
周喩「なんでもいいっ!なんでもいいからこっち来んなぁはぁぁっ!!」
小喬「なんでもいいことないじゃない乱馬!あたしが化け猫さんの嫁になってもいいわけ!?」
于吉「必殺猫妖術〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

だああああもうメチャクチャだーーーーーーーー!!

于吉「貧・力・虚・脱の術〜〜〜〜〜〜!!」
周喩「おわっ!?な、なんだこの煙はぁぁっ…!」

紫の、煙?霧?いやなんでもいい。あの化け猫の手から出てきたそれを、わけもわからず、避けた。

周喩「な、なにしゃーがるっ。」
孫策「………あの〜…。」

…あ。
東風兄にかかっちまったみたい…。
避けた拍子に、近くにいた方に霧がいっちまったんだな。

于吉「にゃ、にゃにゃ!?一度きりしか使えない大技をぉっっ!」
周喩「知るかっ!帰れっ!しっしっ!」
于吉「うぅ………無念にゃ、覚えてろにゃ〜〜〜〜!」

お…本当に帰っちまった。なんだったんだ一体?彼女募集の仙人なんか聞いたことねえぞ…?

小喬「………あっ!ちょっと乱馬、見て!」
周喩「んっ?…東風兄、これは………!」

東風兄の額に、「賓」の文字が浮かび上がっていた。確か貧力虚脱とかなんとか言ってやがったが…賓って…

小喬「漢字まちがえてるわ…。」
周喩「だよな…。」
孫策「………僕、どうなっちゃうんでしょ。」






呉国オイエ騒動の巻・完



注釈:

今回はかなり忠実に三国志やってます。とはいっても「正史」と「演義」が見事に入り乱れておりますが…。

まず「孫策、毒矢に撃たれる」の部分は正史に基づくもの。なんですがその後にでてきた于吉導師の話は、演義によるもの。孫策は迷信を嫌ったために于吉に祟られたあげく壮絶な死をとげるという…ここでは両方でてくるので…二度死んでますな、孫策。そう、孫策はここで若くして死んでしまうのです…享年26歳!早すぎる!天才的な能をいかんなく発揮しておきながら、なぜこうもあっという間に消えてしまったのか…一説では、曹操が袁紹との決戦を前に、背後の憂いを取り去っておきたかったので暗殺者を送ったのでは、とも言われています。

ちなみに袁術は袁紹の従弟(いとこ)。演義では腹違いの弟ってことになってますが…どっちでもいいか。皇帝宣言は、ちょっとフィクションっぽいですが、本当にあったことです。正史にもばっちりあります。ばっちり絶縁状たたき付けられてます。

余談かも知れませんが、呂布を知る人ならば「えっ!?子供いたの!?」とどきっとしてしまう人もいたかも…ですが、貂蝉との子ではないのです。妻が二人、それと側室というかたちで貂蝉をつれていた、という形だったようです。さしづめ永遠の恋人ってところでしょうか。

それにしても乱馬が頭よさそうになってますね………周喩ですから。三国志をとおして、呉の国では「歌って踊れる」、もとい、「参謀でありながら戦える」軍師が切り札なのであります。周喩にはもっともっと頑張ってもらいたい!




呉国オイエ騒動の巻・完




作者さまより

注釈:
今回はかなり忠実に三国志やってます。とはいっても「正史」と「演義」が見事に入り乱れておりますが…。

まず「孫策、毒矢に撃たれる」の部分は正史に基づくもの。なんですがその後にでてきた于吉導師の話は、演義によるもの。孫策は迷信を嫌ったために于吉に祟られたあげく壮絶な死をとげるという…ここでは両方でてくるので…二度死んでますな、孫策。そう、孫策はここで若くして死んでしまうのです…享年26歳!早すぎる!天才的な能をいかんなく発揮しておきながら、なぜこうもあっという間に消えてしまったのか…一説では、曹操が袁紹との決戦を前に、背後の憂いを取り去っておきたかったので暗殺者を送ったのでは、とも言われています。

ちなみに袁術は袁紹の従弟(いとこ)。演義では腹違いの弟ってことになってますが…どっちでもいいか。皇帝宣言は、ちょっとフィクションっぽいですが、本当にあったことです。正史にもばっちりあります。ばっちり絶縁状たたき付けられてます。

余談かも知れませんが、呂布を知る人ならば「えっ!?子供いたの!?」とどきっとしてしまう人もいたかも…ですが、貂蝉との子ではないのです。妻が二人、それと側室というかたちで貂蝉をつれていた、という形だったようです。さしづめ永遠の恋人ってところでしょうか。

それにしても乱馬が頭よさそうになってますね………周喩ですから。三国志をとおして、呉の国では「歌って踊れる」、もとい、「参謀でありながら戦える」軍師が切り札なのであります。周喩にはもっともっと頑張ってもらいたい!


 実際乱馬は、戦闘となると頭は回転する方ではないかなあ・・・と読みながら感じました。
 しかし、猫魔鈴が仙人様ですか?三国志に至っても、乱馬って猫が苦手なんですね。ちょっと笑ってしまいました。
(一之瀬けいこ)

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