◇時流想戯曲 三国志演義・呉
第三 伝説の修行の巻
しょーすけさま作
八、乱馬を追ってどこまでも
おれの名は良牙。またも置いてけぼりをくわされた男だ。いま、おれはたまらなく虫の居所がわるい。
孫権「ちくしょう、乱馬の野郎!帰って来たらただじゃおかねえっっ!」
そう、先ほど連絡が入り、呉郡が制圧されて江東一帯が我らの領土になったと聞いた。それはすごい事だ。だがその功績をあげた者の中に、何故このおれが居ない?日々修行を積み、必殺技まで会得しているのに、これじゃ宝の持ちぐされってやつだぜ!
…そんなわけで、おれは奴が帰って来るのを待たずして長沙の城を飛び出した。
孫権「待っていろ乱馬!貴様との決着をつけ、このおれを軍のスタメンに入れてもらうっ!」
そうして誰もいない街道を、ひたすら走り、歩き、走り続けたんだ。
孫権「すまん、呉郡はどっちだ?」
民「………ああん?ここは天水だよ。」
孫権「なにっ!?そうか、失礼した。」
どうやら東に向かったつもりが、はるか北西に来てしまったらしい。おれは急いで方向を変え、また走り続けた。
孫権「呉郡はどっちだ?」
民「ここは襄陽だよ。」
孫権「呉郡はどっちだ?」
民「ここは夷稜だよ」
孫権「呉郡はどっちだ?」
民「なに云ってるんでいここは長安の都だよ!」
孫権「呉郡はどっちだ?」
民「ここは小沛ですよ。呂布どのに何か用でも?」
孫権「いやっ、失礼した。」
孫権「呉郡はどっ………いや、何でもない。失礼した。」
関羽「?」
いかん、どうやら敵がうじゃうじゃしている所に来てしまったらしい。まさかあの関羽という男にまで遭遇してしまうとは…ヒゲが長いとは聞いていたが、本当に長かった。そして背が高かった。ジャイアント馬場級じゃねえか。
しばらく中国全土を旅したかたちとなり、おれは仕方なく長沙に帰ろうかと考えた。
しかしやはり帰り道がわからない。
兎に角これ以上、敵のうじゃうじゃしている所にはいられない。おれの正体がばれないうちに、少なくとも南の方へは辿り着かなくては。
そこでおれは「南はどっちだ」と質問を変え、指差された方角を目指して、障害物もはねのけながら真っっっ直ぐに進んだ。河は泳いで渡った。
孫権「はぁ、はぁ、…えらい幅のある河だったな。きっと名のある河に違いない。…今日はこの辺で休むか。」
ここでおれは濡れた服を脱ぎ、火をおこして乾かすことにした。
そろそろ夕暮れどきだ。
周喩「………なぁっっ!?良牙、おめーこんなとこで何やって…」
孫権「乱馬!?何故こんな所に…」
………どうやらおれはたった今、長江を泳いで渡ったらしい。ここは建業、もう既におれ達の領地となっている場所だそうだ。
孫権「ちょうどいい、乱馬!この場で決闘だぁっ!」
周喩「ばーか何考えてんだっ。おれはおめーと違って忙しいんだよ!」
孫権「なにおう!?だったらおれにも仕事をよこせ!」
周喩「…え。」
誰がおれを年中ヒマ人間にしてると思ってんだっ!
内政こそ任されても、それ以外の話はとんと来ねえじゃねーかっ。だから内政の仕事は軍師連中に預けて、城を飛び出してこーやって直接訴えるためにここまで来たんだっ。
周喩「わ、わーったわかったよ。つまり長沙での内政も飽きたってんだろ?じゃあ新しく領地になった城のひとつをおめーに任せる、それでいいだろ。詳しくは後日話す。というわけであばよっ」
孫権「あ、待て!乱馬ー!」
おのれ乱馬!決闘だといっとるのに、とっとこ逃げていきやがって!ええいこのままじゃ気がおさまらねえっ。意地でも乱馬と決着をつけてくれるっ。
孫権「乱馬ぁー!どこだー!」
おれは建業の街を歩きに歩いた。そしてようやく情報をつかんだ。
孫権「ん、シャンプーかっ。乱馬を見なかったか。」
程普「あいや、わたしもちょうど探していたところなのだが、どうやらバヤンカラ山脈に向かたみたいある。」
孫権「バヤンカラ…?なんだそれ?」
程普「そこには呪泉郷という、伝説の修行場があると聞いたね。乱馬、オヤジどのと二人でそこの調査に行ったとか。」
孫権「修行場…そうか。なら今すぐ後を追って…」
程普「その前に、………この男なんとかしてほしいねっ。」
孫権「んっ?」
陳武「シャンプ〜!どうしておらというものがありながら乱馬なんぞという男を〜っ…」
孫権「何者だこいつ?」
程普「わたしと同じ、女傑族の出身の男ね。陳武(ちんぶ)、あざなは沐絲(ムース)。それだけね。」
陳武「冷たいの〜ぅシャンプー。おらはおまえの将来の婿になる男じゃろうが〜。」
孫権「ほぉ。」
程普「知らないねっっ!乱馬がわたしの婿殿。それ以外は認めない!」
うーん、まあ好きにやってくれ。おれはおめーらの痴話にゃ興味はねえぜ。
孫権「ではおれはそのバヤンカラ山脈ってとこに行くぜっ。じゃあな。」
程普「あ、待つねっ。わたしも行くっ。」
陳武「シャンプーが行くならおらも行くだ。」
乱馬を追って、シャンプー、ムースと旅することしばらく。なんとか目的の山脈に辿り着いた。それにしても殺風景なもんだな…
孫権「一体、ここは何処なんだっ。」
程普「だからバヤンカラ山脈ある。」
不思議なものだ。草もあまり生えていない、いかにも秘境といわんばかりの、人を近づけなさそうな風景。
ここも新しく領地になった範囲らしいが、もともと誰も来ないんじゃないか?
乱馬のやつ、まさかここに新しい拠点でも造って戦略に用いる気か?
程普「これはすごい絶壁ねー。ん?なにあるかアレ?」
陳武「おおっ!これこそ噂に聞く呪泉郷〜!その泉に落ちた者は呪いにかかってしまうという、恐ろしい荒行の場じゃあ。」
孫権「うう〜ん、どれにどんな呪いが秘められているんだ?」
たくさん水たまりがあるのは見えるが…いかんせん見た目は水たまりだ。どう恐ろしいのかもまだ伝わってこない。
崖の上から三人でのぞき込んでいると、後ろから何か近づいてくる物音が。
…ざざざざざざざざざざ
孫権「?………うわぁっ何だぁっ!?」
「パフォー!!」
「待て、くそオヤジ!!」
後ろの竹林から姿を現したのは、猛スピードで駆け抜けるパンダと女だった。
こっちに突進してくるので、わけもわからず避けたのだが…
「おりゃあ!!」
どがっっっ
孫権「…だぁぁーーーーーーーーーーー!!」
程普「あいやーーーーーーー!」
陳武「のぁーーーーーーーーーー!?」
女が勢いよく足場を破壊したせいで、おれ達三人は見事に真下に落下した。
…どっぽーーーーーーーーーん
がぼがぼがぼがぼがぼがぼがぼがぼ…
「………クィーーーーー!クィックィッ!」
「ミィッ!ミゥーッ!」
「クワァーー!!クワッ!クワッ!!」
豚!!
猫!!
アヒル!!
…となってしまったわけだ。
これが呪いかっ!?呪いなのかっ!?
「クィッ!?クィックィッ!」
「ミィ…」
「クワッ!クワーッ!」
案内人「…あいやーーーーーーーーー!!黒豚溺泉(ヘイトンニーチュワン)、猫溺泉(マオニーチュワン)、家鴨溺泉(ヤーズニーチュワン)に落ちてしまたーーーーー!!」
おれ達はそこにいたガイドに拾われ、近くの小屋にて確保された。
「クィッ。」
案内人「ぁぃゃ、元に戻すの忘れてたね。ほれ、あっちに風呂があるね。入ってくるよろし。」
・
・
・
・
・
孫権「ぷはあっ!ひでえ目に遭ったぜ!」
陳武「まったくじゃあ。しかし湯につかると元に戻るとは…」
「ミィッ!」
陳武「おお、シャンプーも入るだか。…わかっただ。おら達はとっとと出るだ。」
孫権「そうだよな…。」
「ミィッ。」
いや恐ろしい。なんて恐ろしい呪いにかかってしまったんだっ。
案内人「よろしか、お客さん達、呪いの泉に落ちてしまた。これからは水をかぶるとそれぞれ黒豚、猫、みにくいアヒルの姿になてしまうのよ。」
陳武「みにくいは余計じゃ。」
程普「どしてくれるねっ!」
案内人「あいや、文句はあなた方を泉に落とした人に言ってちょーだいね。」
落とした人って、…確かパンダを「くそオヤジ!」とかいいながら追いかけてた、赤い髪のおさげの女。そうか、そういえばあの女はどこに行ったんだろう。
周喩「あれ、おめーらも来てたのか。」
その場に入ってきたのは、先にここに着いていたであろう乱馬だった。
いいところに来た、今こそ決闘だぁっといきたいところでもあるが、今はそれ以上にあの女に用がある。
孫権「乱馬。お前、ここで赤い髪をしたおさげの女を見なかったか?」
周喩「………ん?」
言うと何故か乱馬は目をぱちくりさせ、突然井戸へ向かった。そして水を汲んでくると、それを頭からざばーっとかぶった。
周喩「これのことか?」
一瞬、時が止まった。そして三人そろって「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」と声をあげたわけだ。
孫権「てめぇだったのか…」
程普「乱馬っ!責任とるよろしっ!」
陳武「おぉのれ貴様がおら達をこんな目に遭わせた張本人だか!」
周喩「なーに言ってんでえ!おれだってこんなフザけた体質になってほとほと困ってんだよっ!オヤジはパンダになるし」
孫権「あのパンダ父上なのか!?」
周喩「おまけにこの呪いは、ある程度月日がたたないと解けないものらしいぜ。ったく、男溺泉に入れば元に戻れると思ったのによ。」
程普「あぁ、なんて事ね…。」
くっ…ろくでもねえ修行場だぜ。
周喩「んで、おめーらはなに溺泉に落ちたんだよっ?」
孫権「おれ達か?………」
乱馬がしたのと同様、水を汲んで三人あたまからかぶる。
…。
周喩「…ねごぉぉぉーーー〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっ!!」
九、続・乱馬を追ってどこまでも
孫権「くっそぉ乱馬のやつ、どざくさに紛れて逃げ出しやがって…」
おれとムースはともかく、シャンプーの猫姿がダメだったらしい。乱馬のやつ、あんなに猫恐怖症だったとはな…。
孫権「乱馬は見つかったか、ムース?」
竹林の中を捜索していたんだが、…おや?ムースも、シャンプーも見当たらなくなってしまった。
いかん、おれはまた道に迷ってしまったのだろうか。
孫権「ちっ、まずはここから出るか。」
どっちへ向かえばこの竹林をすぐに出られるだろうか。…まったくわからない。
よし!こんな時こそ、この必殺技の出番だ!
孫権「爆砕点欠!!」
どこっっっっ
こうやって穴を掘っていけば、ややこしい障害物に当たることもなく一直線に進めるというものだ。そして気が付いた頃には、林は抜けているはず。
孫権「この辺で、どうだっ!」
ぼこっっ
孫権「………あらっ?」
森だ。多分、竹林は抜けたのだろうけれども、これはおそらく別の森まで来てしまったか…。
孫権「くそっ!負けてたまるかっ!爆砕点欠っ!」
ぼこっっっ
ぼこっっっ
・
・
・
・
・
道に迷うこと数日。おれは、どこかの山に来ていた。
まったく困ったことだ、これまで一度も人里に遭遇していない。
なんだか自分がどこに居るのか、本当にわからなくなってしまった。
ここは、北の方なのか?それとも西?南はどっちだ?
…尋ねる人も見当たらない。
とてつもなく不安になる。
木々の揺れる不穏な音が、余計に不安を駆りたてる。
孫権「(…このままじゃあ城の皆にも迷惑をかけちまうな。早いところ長沙に戻りたい…)」
そう思ったときだった。うしろから、誰かの声がした。
「うしろ!!あぶない!!」
孫権「…!?」
ドカッッッ!
反射的によけることはできたが、これは…!
いつの間にか…おれの背後にまわり、棍棒を振り下ろした男。間違いねえ、山賊だ!
山賊「ちッ、かわしやがったか。やぃテメェ!ある物全部そこに置きな。」
孫権「ふん、誰が…」
山賊「オレ様に歯向かう気かぁ?やぃ野郎ども!」
野郎ども「へぃ!!」
孫権「………!」
多い!茂みに身を隠していた奴らが、一斉に武器をかまえて現れやがった。
山賊「こんなトコでおッチにたくなきゃあ、とっとと言うとおりにしろや!」
孫権「(分が悪いな。一人で倒せるかどうか…)」
身構えて様子を探ってみる。
山賊「…やっちまぇ!!」
野郎ども「おおぅ!!」
孫権「来るか…!」
腰に差していた刀を抜こうとした、その時だった。
「おりゃあっ!!」
ばきっっっ!!
孫権「お、おおう!?」
おれの前にいきなり立ちはだかり、山賊どもと戦い出したのは…さっき「あぶない」と言ってくれた声の主のようだ。どうやら味方らしいが…誰っ?
戸惑う暇もなく、戦いは展開していく。ここだけじゃない、周りが急に騒がしくなってきた。
孫権「ま、まさかこの辺一帯で一斉に山賊と戦っているのか!?向こうも!?こっちも!?」
周泰「っっっだーもまどろっこしい!!早よ逃げんかい!!」
孫権「いや、お前は…?」
周泰「うちはあんたをお守りしに来ただけのもんや!今のうちに!早く!」
孫権「しかし…!」
おれのお守りに来たという。しかし…おれはそこまで弱い覚えはねえぞっ!
周泰「何を迷うことがあんねん!」
孫権「俺も戦えるんだ!配下の将たちを見殺しにはできない!」
周泰「ば、アホ言うたらあかん!!下手して死んだらどーすんねん!?ここも時間の問題やで!?」
孫権「こんな時だから、俺も自らの力量を示したい!絶対に、味方は誰ひとり死なせない!」
周泰「頭冷やさんかい!!」
ごつっっ!
孫権「……………………………………」
周泰「敵はあんたを、殺しにかかって来てるんや。敵の策が成功してまう前に、早く逃げぇっ!」
孫権「俺は…………」
周泰「戦わんでいい!ここで逃げてもらわんと、うちが死んでも意味ないやないか!」
………………!
死ぬかもしれない…
そんな状況なんだ。そうだ、敵はおれ達に刃を向けている。
おれは…こんなところで死んではいけないから…
孫権「すまない………すまないっ!お前、名は何という!」
周泰「周泰、あざなは右京や!」
孫権「右京!!覚えておくぞ!」
一目散に、逃げた。後ろでは右京が、そして他の仲間もそれぞれ戦っている。
孫権「(叶うか分からないが…………生きて還ってくることを願おう。)」
そや。うちの名は周泰、あざなは右京。その強さに惚れて、「呉軍」の傘下に入ったひとりや。
いま、その君主である孫策どの(なんか言いいにくいなァあの人に“との”付けて呼ぶっちゅーのも…)の弟君である、孫権という男の護衛に回ってる。
最初は捜索のつもりで城を出たのが、いざ見つけてみれば山賊に襲い掛かられてるもんやから、こっちとしても冷や汗もんやわ。特にこの山賊、えらい団体や。こっちはちょっとしか兵は連れてきてへん…つばさもついて来たけど、今頃ほかの地点で戦ってるはず。つまり、ここはかなり不利な状態…。
周泰「りゃあああああああああ!!」
山賊「まだまだっ!なんだその程度かぁ!」
あかん、完全に囲まれたっ!応戦しても拉致があかん!相手の太刀をかわすのがやっと…!
周泰「(これまでか…うちじゃ、あの男のようにはいかへんか…。)」
悔しいな…せっかくええとこに身を置いて、乱ちゃんとも再会できたと思ったのに…
蒋欽「右京さまー!!」
周泰「つ、つばさ!?つばさやないか!どーやってここまで…」
蒋欽「茂みに扮して、手持ちの兵を動かしてまいりましたっ!そ〜れ、皆の衆!」
…そっちの相手ほったらかして来たってこと?
つばさが合図をするや、確かにつばさ持ちの兵たちが一斉に茂みから出てきた。うちを囲んでた山賊どもは、不意をつかれて陣形を崩し始めた。
蒋欽「全軍、突撃ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
味方兵「おおーーーーーーーーー!!」
山賊「に、逃げろォ!」
そして山賊どもは一気に散っていった。
蒋欽「ようし、それまで!さあ皆の衆、我々も逃げましょー!」
周泰「え………」
「…あ〜!いたぞ〜!こっちだ!」
やっぱり、つばさがほったらかして来た方の野郎どもがまだ残っとる…。
蒋欽「さあ右京さま!」
周泰「あ、あぁ…って、ちょっ、つばさ何を…なんでおぶる必要あるんやっ?うちは怪我人ちゃうえでぇっ」
蒋欽「右京さま、ご無理をなさらずに……その傷、残らなければよいのですが………」
…!今ごろ気付いた………腕、足、それに顔もちょっとだけ…鋭利な刃物の傷は痛むまでにちょっと間があるからな………ほんまに痛くなってきた…。
蒋欽「城に戻ればすぐに華陀先生をお呼びします!それまで…いえ、わたくしがここについていますからっ…どうか…!!」
なんや…そんな必死にならんくてもうちは………うち……は………………
周泰「………………ぅ………ん…?」
蒋欽「右京さま!!」
華陀「お気付きに、なられましたか。」
ここは…長沙の城やな。救護室か…。
周泰「…うち、そんなに重傷やったん?」
まだ頭がぽぉっとしとる…頭を上げようと右腕に力を入れると、ずきっと強い痛みが走った。
周泰「っつ………!」
蒋欽「あぁっ右京さまっ!まだ動かないでっ!」
周泰「寝たきりかいな…うちとしたモンが…」
華陀「傷口がちゃんとふさがるまで、安静にしていなされ。」
横に居るのは、緑の頭巾(頭のてっぺんにちょんっとつけるやつ)を付けた老医師。華陀先生ゆーんか。…聞いたことあるで。いやめっちゃ偉い人やん。この戦乱の世にありながら、国をまたいであらゆる人の病気や怪我を治して回っているという…まさか呉に来てたとはなぁ。
孫権「救護室は何処だぁぁぁ!?」
周喩「だからここだってのに!」
…なんか騒がしいのが来た?
周喩「うっちゃん!」
孫権「右京!」
周泰「あ…乱ちゃん………と、誰やったっけ。」
孫権「良牙だ」
周泰「良牙…」
孫権「すまない右京!いや、よく生きて帰還してくれた。おれが言うのも何だが、つばさ共々、大したはたらきだ。」
蒋欽「そんな、わたくしは右京さまをお守りしただけですっ。」
周泰「…うちも大したこと言えへん。こんなざまやし。」
………なんか悪いな…うちが護衛する側やったのに、いまは逆に看病される側になってる。
周喩「とにかくみんな無事でよかった。うっちゃん、無理しねえでいいけど、動けるようになったらオヤジの所に行ってくれないか?」
周泰「オヤジはん?なんでまた?」
周喩「さ〜な。何か話したいことでもあるんじゃねーか?ま、オヤジのことだからそんなに堅苦しい事じゃねーさ。」
オヤジはん…うちがここに来る手前まで、ここの君主をやってたお人や。今は単なる居候らしい…というよりうちは居候してるところしか見たことがないなあ。
華陀先生の薬っちゅーのはほんまによく効くんやわ。2,3日もすればもう、立って歩けるようになった。まったく痛くないって程まではいかんけど、つばさに乱ちゃんに良牙に、あとあの元気な子…あかねちゃんか。が傍にいてくれたおかげで、だいぶ気が楽になった。
蒋欽「傷………残ってしまいましたね。」
周泰「ん、まぁな。まぁ…戦士の勲章って言うやん。」
蒋欽「………」
周泰「そんな暗い顔せんでええって。そのうち見慣れるわ。うん。」
う〜ん、なんちゅーか女を捨ててるような気もするなぁ今の自分の発言。でもしょうがないやん?うちは戦う女やさかい。…ゴ●ドーとかとはちゃいまっせ。確かに海賊やってましたけど…いやいや、入れ墨はないから。
そういえばうちが寝込んでる間、乱ちゃんおかしなこと言うとったなぁ…うちの顔みて男らしいとかなんとか…うちのこと何やと思てるんやろか…謎や。
周泰「ほな、うちはオヤジはんに会うてくるさかいな。」
蒋欽「は、はい。ではわたくしは食堂で料理を作ってお待ちしておりますっ。」
周泰「ん?食堂はかすみさんがやってるんじゃ…?」
蒋欽「現在買い出しのために外出中だそうで、わたくしとシャンプーちゃん、小太刀ちゃんの3人であくせくしとります。」
周泰「へえ!面白そうやなあ。あとで行くわあ。」
蒋欽「はいっ!」
そんなわけで、城の中をよたよたよたっと歩いてオヤジはんの居る部屋にお邪魔したわけで。
椅子に座らしてもろて、お茶つきで(いかにも居候らしいわ…)話をすることに。
孫堅「右京くん、この度は我が息子を助けてくれたとのことじゃな。その点については心より礼を言う。しかし…」
周泰「…?」
孫堅「わしは17の頃、一人で海賊十人を成敗したものだ!ぃゃもっといたかも知れん!」
周泰「一人で…」
孫堅「さよう。天下を統一するためには、それぐらいの気合いが必要なのじゃ!あいにくながら、わしの息子も、その他の者どももまだまだ気合いが足らん!」
周泰「はあ………」
孫堅「此度を機に、そなたが追っ立て役となって、周りの者の気合いを入れなおしてくれんか!わが国もこれからは強敵と渡り合わねばならんのだ、どうかよろしく頼む!」
周泰「気合い………。」
………う〜ん、なんのこっちゃ。今までもこんな感じやったんかな…?
周喩「うっちゃん、オヤジと何の話をしてたんだ?」
周泰「ん〜…」
ちょっとやってみたろか。
周泰「はぁ〜っ………うちはいま、天下統一のために、モーレツに燃えている………っっ!!」
周喩「…えっ?」
っしゃ。
周泰「はい乱ちゃんもやる!」
周喩「ぇえっっ!?」
こうしてうちは、まるでどっかの熱血先生みたいに、城にいる人という人を指導して回ることになった。…まあ傷が治るまでの軽いリハビリ代わりやな。
周泰「………あ〜ハッ○ルとかしてたらお腹すいてきた〜。御飯できてますやろか〜?」
程普「右京、もう歩いてよいのか?」
韓当「無理はいけなくてですことよ。」
周泰「あ〜大丈夫大丈夫。華陀先生の薬のおかげや。」
…あと、みんなのおかげでもあるかな。
蒋欽「はい、右京さまっ!久しぶりにお好み焼きを作ってみましたの!」
周泰「おぉー!懐かしー!ええなぁお好み焼き!」
仕事の合間のちょっとした休息。傷が治り次第、また何の任務が回ってくるやら。
また戦いが起こるんやろうな…その時はもっとお役に立てるやろか…そんなことを考えつつ。いやもっと真剣になるべきやねんけど…お好み焼きを前に、今だけちょっと、神経ゆるめてる。
伝説の修行の巻・完
作者さまより
注釈:
これ、三国志です(笑)。今回はサービスポイントとゆーか、休憩イベントとゆーか。ほとんど三国志的なところがないですが…「山賊に襲われる孫権を周泰が命がけで助けた」あたりは、本当の三国志演義にあった話。華陀先生が周泰の手当てをしたおかげで奇跡的に生還した、というのもそう。あとは、孫堅が17の頃にうんぬん…も三国志演義より抜粋。ただここではオヤジのうさんくさい自慢話みたいになってますが。
陳武についてですが、厳密にいうと江東制圧戦の最中、太史慈が孫策と戦ってるあたりで仲間になるのが本当のトコロ。その姿はというと、背は高め、黄色い顔、そして赤い目という変わった容貌だったとか。…別に程普とは何という関係はないです。孫策には大変気に入られたらしいですが。
いろいろ悩んだのが呪泉郷の設定です。おそらく…三国志の時代(いまから1800年前!)にはまだまだ呪いの泉が揃っていないだろうと思ったのですが…あると断定できるのは阿修羅溺泉とかカエル溺泉とかぐらいですから。でもまぁ、いいかと。ガイドの「今から1500年前…」のような解説がなくなっちゃいましたけどね。
あとは…らんま的な人間関係についてなのですが…「一体だれがだれを好きなの?」と言われますと、「読んだとおりです、乱馬・あかね・東風・かすみ・良牙は長〜い付き合いなんですが、それ以外の人物は、これ以上もこれ以下もないのです。そしてこれから発展していくのです!」…とでも申しておけばよろしいでしょうか?つまり、まだ関係図が未完成なんですな。右京・シャンプー・小太刀がまだ仲いいですし(あかねはどうなんだろう…)、そういった妙もパラレルならではかと。
というわけで、呪泉郷がいきなり出てくるとは。
考えたら呪泉郷も設定が中国ですからね。三国志の時代も現在も、妖しげなところは変わってないかと思います。
私は茜溺泉に溺れて、乱馬君と喧嘩してみたいなあと勝手に思ってるんですが…
さて、キャラクターの相関関係を明らかにしていただく資料を、しょーすけさまにいただきました。
が、年末暴走主婦に成り下がり…年越し宿題と相成りました事を、お詫びいたします。(殴!)
(一之瀬けいこ)
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