真 実


それを見つけて、俺は思わず興奮した。
手の中には尋常でない分厚さのアルバムが二冊ある。


俺は今、納戸で探し物をしていた。
友達と海に出かける為に、色々用意しようとしていたのだが、おふくろがきちんと整理整頓している為、捜しものはすぐに見つかった。
探しものが見つかれば特に用事は無かったのだが、納戸など、普段あまり出入りしない場所だし、何か面白い物はないかと、興味津々で納戸の品々を見渡していた。
その時だった、それを見つけたのは。

表には

"乱馬くんへ"、"あかねへ"

そして共通して

"FROM なびき"

と書いてある。


一体どれだけの写真を挟めばこの分厚さになるのか。
半ば呆れながらも、期待をこめながら表紙を開く俺がいる。


やっぱり………しかし何なんだ………この写真たちは………。


このアルバム、思った通り親父とおふくろの若い頃の写真ばかりであった。
"乱馬くんへ"とあるものはおふくろのピンばかり、"あかねへ"とあるものはもちろん親父の写真ばかりが詰め込まれていた。
しかも写真は全て、明らかに隠し撮りではないかという代物ばかり。何故ならどれもカメラ目線ではないから。
格闘家でありながら、カメラの視線に親父もおふくろも全く気が付かなかったのかと思うと少々情けない様な気もするが、この間見たバカップルぶりのビデオを見ると手の込んだ事をしていたのでは無いかと思ったりもする。四方八方から撮った二人を見事に編集していた技術もすごかったが…。

……おそるべしなびき叔母さん

改めてそう感じると、背筋に冷たい汗がつぅっと流れた。





時間を忘れ、眺める山とある写真。
どれも良い顔をしていた。まぁ…自分の親を言うのもなんだが、ルックスはそんなに悪くないから、適度な被写体にはなったのかもしれない。
それにしても…ブロマイドばりに、良く撮れている。
スポーツをしているところ、稽古しているところ、どれも何かに集中しているところを撮られている感じであった。そういう写真が大幅を締めているのだが、しかしぽつぽつ…と佇んでいるだけの、とにかく何をしているのか判らない写真も紛れていた。
しかしその写真たちは、スポーツや稽古している時とは違っていて、優しい眼差しで、表情はキレイだったり切ないようだったり、どきりとさせられる様な感じであった。
全くこんなところ撮られるなんてどれだけぼんやりしてるんだよ…そう思っていると、最後のページのなびきおばさんのコメントに答えがあった。

「成程ね。」

俺は一人そう呟くと、二冊のアルバムを抱え納戸を後にした。




その夜、居間にこのアルバムを持って行った。
親父もおふくろも突然の昔の写真の登場に照れていたが、開くと懐かしそうに眺め始めていた。
妹はもちろん、嬉しそうにはしゃぎながら、どんな写真か説明して欲しいとねだり、俺は俺で、こんなに写真撮って、なびき叔母さんどうしてたんだ?と質問攻め。
妹の質問には答えるものの、しかし俺に対しての質問には、親父もおふくろも苦笑いしていた。
結局何に使っていたのかは判らなかったが、俺はそれより気になることがあった。

「なぁこれってピン同士のがあるって事は、二人編ってのもあるんじゃねーの?」

俺がそう言うと親父もおふくろも過剰に反応して、「「ないない」」と否定し、更に親父には「そんなの捜すな!!」とキツク止められた。

ふーん……あるんだ。

判り易い二人の慌てぶりから、そう感じた俺は、また探し物がある機会にでも……。そう思った。
こんな事書かれれば、二人で写る姿を興味深くさせるのも仕方が無い。
案の定、そのコメントを見た妹も興奮状態で「これは捜さなくっちゃ!」と意気込んでいる。
二人が焦るのを余所に……。




"ぼーっと写ってる写真、これ皆、視線の先には許婚がいるものばかりよ!
意地っ張りでも、無意識に向ける優しい眼差しは隠す事が出来ないのね!
一番大事な人を見ているのだからね♪"
大事な人を夢中で見ていた為、二人はカメラに気がつかなかったのだろう。



 息子視点です。
 最初提供しようとしていたのですが、その方が好きな作品のイメージと余りにもかけ離れてる気がして止めました。
 個人的にネタは好きなんだけど(笑
 すっかり息子娘に遊ばれる乱馬とあかね。
 敢えて喋らせないんだけど、二人のラブを書いているつもりです……とっても間接的に(笑
 写真が見つかって嬉しい〜vvってな感じではなく、
 写真は真実を写すので、隠し切れない熱い思いが写ってるよ〜てのが実は書きたかった。
 誰も判らないと思いますが(汗←大問題

 では次回作も読んでいただければ幸いですvv
2003.7.6




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