たとえば、どうだろう。
当たり前のように隣にいる乱馬がいない世界に、あたしがいるとしたら。
あたしは相変わらず、昔の恋をひきずって生きているのだろうか。
騒ぎの種がいないぶん、おそらく今よりは格段に静かな生活に違いない。
静かな生活は好きだけど、やっぱりちょっと退屈だろうな。
それだけじゃない。こんなに、心が揺れ動くことも無いんだろう。
…なんて、寂しい生活なんだろう。
でもその世界のあたしは、こんなにも心動かされる相手を知らない。
だからきっと、<寂しい>ってことすら、わからないだろう。
きっと、無理にでも「あたしは今幸せだ」って、言い聞かせて暮らしているんだろうな…
…嫌だ。そんな生活、嫌…!
ガタン。
大きな音で、あたしは目を覚ました。
「どーしたあかね。調子悪いのか?汗すっげぇぞ。」
隣に座る乱馬が、心配そうにあたしの顔を覗き込む。
「…良かった、乱馬がいる…」
「…は?」
怪訝な顔をする乱馬。
「俺はいつでも、此処にいるだろ?」
「…うんっ!」
あなたが、あたしの、世界を創る。
乱馬がここにいること。あたしはまた、新しい世界を知っていくんだ。
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たとえば、どうだろう。
俺が自分の望むとおりの世界を、創れるとしたら。
まずは良い修行場が欲しい。山篭りしたいし、山も欲しいよな。海も川も欲しい。
街も、勿論欲しい。うまい飯を安く食わしてくれる店…あと、出来れば男が入っても大丈夫な、甘味処やフルーツパーラー。
帰るべき家。
迎えてくれる家族。
俺のライバル達。
友人たち。
そして…傍らには、あかね。
ガタン。
大きな音で、俺は目を覚ました。
「どうしたの?乱馬。なーんかニヤニヤしてたけど。いい夢でも見たの?」
「あ、ああ…」
なんだ。
今俺が生きてる此処が、自分の望むとおりの世界じゃねぇか。
「…内緒でいっ♪」
「きゃっ?!」
なんか嬉しくなって、俺はあかねにふざけて抱きついた。するとその瞬間。
「ぴぎいぃぃいぃ〜〜〜〜っっ!!」
「きゃあっ、Pちゃんどうしたのよ一体ッ?!」
「んふふ〜、乱馬くんってば朝からお盛んねぇ♪」
「パフォパフォ♪(よっ憎いねご両人)」
…追加注文。お邪魔虫とデバガメはいらねぇ…!
あかねがいる世界。多分どういう世界だろうと、其処が俺のいる世界。
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