◇My funny birthday
   1.the Day before

いなばRANAさま作


 四月も下旬、新学年の新学期にも慣れて来た頃合い。

 どーもこのところ、天道家の中の様子がおかしい。
 どこが、と聞かれてもうまくは言えないのだが・・・
 ただ、心当たりはめちゃくちゃあったりする。

「おはよ、乱馬。早くしないと遅刻するわよ。」

 いつもと変わらないのはあかねくらい。というか、鈍いだけなのかもしれないが・・・
 ってわかってんのか、お前も当事者なんだぞ!
 ・・・そう言ってやる勇気は・・・俺には無い。


 あかねに急き立てられながら、茶の間を出る間際、ちらとカレンダーに目をやる。あれこれメモが書き込まれている四月のページ。その中にぱっと見た目にはわからないが、印を付けて消した後のある日がある。

 4月25日、土曜日だ。

 世間的には特にどうということの無い日だが・・・ぶっちゃけた話、俺の生まれた日、だ。
 去年までは「今日で○才になったんだっけ」程度のことしか考えなかったが、今年はそれでは済みそうに無い。

 今度の誕生日で、俺は18になる。俺としては特別な感慨があるわけではない。が、周りの連中、特に親父たちはこの日をてぐすね引いて待ち構えているだろう。俺だって学校で民法のミ、の字くらいは習ってんだ。特に無神経な社会科の教師のおかげで、忘れようたって忘れられない。ったく・・・

『・・・ということで、男女の権利も義務も法律上、平等ですが唯一とも言える例外は・・・おい、早乙女、居眠りしてないでちゃんと聞いとけよ。お前だって来年の誕生日で18だろう。法の上では結婚できる年になるんだぞ。・・・女の子は16才で結婚可能だがな。』

 どっと沸く教室。そのあとあかねが怒ったのなんの・・・今思い出しても恥ずかしいやら腹が立つやら。
 ともかく、こうなると親父たちが黙っているわけがない。どうやってかわすか・・・いい手が浮かばないうちに、その日は明日に迫っている。ところが、あかねはまるっきり気にもとめていない様子。不思議でしょうがない・・・

 放課後、教室の窓枠に腰掛けてぼんやり空を見ていると、大介たちが声をかけてきた。

「おい、乱馬・・・お前、明日誕生日だって?」
「まあな」どこで聞きつけてきたんだか。
「これでお前も18・・・いよいよ晴れて、かよ、くぉんの〜〜」
「何がくぉんの〜だ。わけわかんねーこといってんじゃねーっ」
「もーそんなに突っ張らかるなよ。わかってんだから、さ〜」
「はあ?」
「すっとぼけても無駄、無駄・・・最近のあかねを見ればいちもくりょーぜん、だって。」
「何が一目瞭然、だよ。意味分かってんだか。」
「おっ、誤魔化しちゃって。学校始まってみ〜んな驚いたんだぞ・・・あかね、めちゃめちゃ綺麗になったもんな。」
「そうそう、何があったんだよ、春休みの間に?」
「何って・・・俺、一人でずっと山に行ってたんだぜ。」
「怪し〜な〜、あかねも一緒だったんじゃねーのか?」「バ、バカヤロ〜〜ッッ!!」
 その手に乗るまい、と思っていた俺だが、ついムキになってしまう。

「そのへんにしとけよ、ひろし。からかいに来たわけじゃないぞ。」
「もーい〜からあっち行ってくれ。」
「待て待て、これはマジな話だ。聞かねーとあとで大変なことになるかもしれんぞ。」
「ほ〜〜」半信半疑。俺はジト目で大介の話の続きを聞く。
「友達の姉貴が言ってたんだけどさ、結婚や離婚の届けって誰でも簡単に出せちまうんだって。」
「って本人じゃなくてもか?」これは初耳だ。ということは・・・
「そんなの役所じゃチェックしねーって。書類が整っていりゃはいどーもって受け取ってしまうそーだ。」
「そりゃまじーぞ。乱馬の知らないところで勝手に結婚届、出されてしまうこともあるってことだろ?」
「なっ」じょーだんじゃねーっっ いつの間にか結婚させられてたまるか!!例え、あかねと、だって・・・
「やりかねんな〜、シャンプーにしろ右京にしろ小太刀にしろ・・・」
「うぐっ」そうだ、あいつらがいた。こっちは本っ当にシャレにならない。

「・・・なあ、乱馬、そんな連中に先越されないうちに、いっそのこと、届、出しちゃえよ。」「え゛」
「俺、真面目に言ってんだぜ。いずれって考えてるんだったら、今だっていいじゃないか。」
「ちょっと待て。ひとごとだと思いやがって〜」
「ひとごとって、俺ら友だちがいに言ってやってるんだぞ。お前、気が付いてもなかったじゃねーか。」
「そ、そりゃあ・・・けど、俺の一存じゃ、んなこと・・・」あかね、何て言うだろう・・・
「そ−だな、この話、あかねにもしといたほーがいいよな。」
「ああ・・・乱馬、あかねはどこだ?」
「用があるからって先に帰った。」

 ったく、間の悪いところは相変わらずだ。こんなのっぴきならない話があるってのに。
 どーせまたさゆりたちとお茶か買物でもしてるんだろう、と思っていたら・・・
「ねー、あかね知らない?」
 さゆりとゆかが教室に入ってきた。一緒じゃなかったのか。じゃああかねはどこ行ったんだ?
 大介たちの話を聞いた二人はさすがに難しそうな顔をした。
「そういえば、前にストーカーに勝手に婚姻届出された人の話、聞いたことがあるわ。戸籍直すのに裁判沙汰だって。」
「ほら、大変だろう、だったら・・・」
「だからといってこんな形で結婚なんて・・・私ならやだな。」俺だってやだぜ。あかねだってきっと・・・
「けど、役所は土日休みだろう、まだ少しは時間が・・・」
「甘いわよ、ひろし。婚姻届はいつでも出せるの。一年365日、24時間。」
「こ、こーしちゃいらんねえっっ」
「お、おいっ」「ちょっと乱馬くん、どこ行くのよ」

 どこ行くってそりゃ・・・

 30分後・・・
「乱馬、気持ちはわからんでもないけどなー」
「来たはいいけど、どうするの、乱馬くん」
 俺たちは練○区役所の前にいた。いや、来たって確かにしょうがないんだけど・・・

「どうせだから、用紙、もらっていけば?」
「そうそう、持って帰って今晩にも書いて日付が変わったら即出す。」
「あのなっっ」やっぱり面白がってんじゃないのか。こいつらわ〜
「ね、ちょっと見て!あれ、あかねじゃないの?」
「どれどれ?あ、あかねだよ。となり歩いている和服美人、どっかで見た覚えが・・・」
 区役所の玄関先に出てきたのはあかねと、おふくろだった・・・!
 俺たちはあわてて隠れる。二人はにこにこしながら話していて、こちらにはまるで気づかない様子。
「なあ、あの人、お前のおふくろさんだろ?何しに来たんだろう・・・あかねと一緒に。」
 な、何しにって・・・俺はもう二の句が告げない。
「そりゃあ、やっぱり、だよな。」「うん、そーゆーこと、だろうな。」
 をい、そーゆーことってど〜ゆ〜ことだよ
「そっかー、あかねったらもう〜」「乱馬くんのお母さんと一緒ってことはもう、決まりね♪」
 何が決まったってゆーんだ、こら

「おめでとう、乱馬」「お幸せにってあかねに伝えてね」「この野郎、一生あかねを大事にしろよ」「式にはちゃんと呼んでね」
「あ゛に゛・・・」
「じゃあね〜♪」足早に立ち去る四人。

 だああああああああああああーーーーーーーーっっっっっっっ
 俺、18になんか、なりたくねーーーーっっっっ!!!!!!


 そこからどうやって天道家に帰りついたか、俺は覚えていない。おふくろとあかねはまだ戻ってなかった。相変わらず天道家の面々はそわついているが、それすら俺にはどうでも良かった。誰もいない道場に座り込む。

 何しに行ってたんだよ・・・おふくろ・・・あかね・・・
 訊いてみる度胸は・・・とても無い。

 あかね・・・ひょっとして、大介たちが言ってたようなこと、知っているのか?そうだ、おふくろが一緒だったってことは、おふくろにそんな話を聞いて・・・それで、シャンプー達に先を越されまいと・・・って、俺に一言の相談も無しにか〜〜

 いや、もしかしたらまた呪泉郷から男溺泉が送られてきてて、それを楯に・・・

 まさか、まさか・・・ホワイトデーのことで、すっかり気持ちを固めてしまったとか・・・あいつ、進路の話をした時、泣いていたしな・・・一人っきりになってしまうって。だからといって、こんなやり方、らしくねーぞ・・・けど、そこまで追い込んだのは、俺、だ。

 頭の中をぐるぐるといろいろな考えが浮かんでは消える。いつの間にか日が暮れて道場の中は暗くなっていたが、俺は全く気づいていなかった。

「隙ありっ!」
ばこおっ

「ってぇーーっ!何すんだよ!」
 もろに頭に一撃を食らう。あかねのやつう〜〜
「隙だらけじゃないの・・・こんな暗いところで何やってるの?」
「ちょっとな」
「ふーん・・・夕飯出来たって。かすみお姉ちゃんが呼んでるわよ。」
「ああ、今行く」食欲も今ひとつだ。調子、くるってるなー
「先、行ってるわよ」
「あ、おい」あっさりと出ていこうとするあかねを俺は呼び止めた。
「今日、どこ行ってたんだ?さゆりたちが探してたぞ。」
 フェアな質問ではないが、俺はどうしても聞かずにはいられなかった。
「うん、ちょっと行かなければならないとこがあって。」
「あいつらと行けば良かったじゃないか。」
「つまんない用だったから。」
 どうやら本当のことを言う気はないらしい。かと言って、俺からはとても切り出せない。これ以上、聞き出そうとしたら、かえって薮蛇になってしまう。俺は追及を諦めた。

 夕飯の席には、久々に家に帰ってきたなびきがいた。最近、ビジネスの立ち上げを目指しているとかで、ずっと九能家に行ってしまっていたのだ。九能家には既に、なびきのため事務所らしきものまで用意されてるとか。九能先輩はすっかりなびきにおネツで、言いなりらしい。・・・ったく、結婚させるならこっちが先だろうが。

「おっ、なびきじゃねーか」
「あら、乱馬くん・・・それとも我が弟君、ってお呼びしようかしら。」

ぶーーーっっ
 俺とあかねが何か言う前に、食卓に着いていたパンダ親父と早雲おじさんが盛大にお茶を吹く。やっぱりこいつら〜〜

「な、なびきぃ〜〜、久々の我が家なんだから、お手柔らかに、頼むよ〜〜」
 あわててその場を取り繕おうとするおじさん。突っ込んでやりたいのは山々だが、それでは向こうの思う壺にはまる。
「もう出戻りかよ」このくらいの反撃、したっていいだろう。
「この週末はこっちにいるわ。最近、九能ちゃん、結婚してくれってうるさいのよね〜〜だからちょっと焦らせてあげようと思って。」
「そ、その話はまた後にしようかね。2、3日家にいるんだから。」
「それもそ−ね」
 誰も驚かないところを見ると、なびきと九能先輩の話は既に了解済み、らしい。意外といい組み合わせ、かもしれないな。
「・・・それに」まだなびきが言葉を継ぐ。親父たちが明らかにびくつくのがわかる。
「何だか面白いものが見られそうだし・・・」
「あー、あー、かすみぃ、おかわりぃ〜〜」「バフォバフォ」
「お父さん、おじさま、おかわりは茶碗が空いてから・・・」
「そういや、じじいはどーした?」八宝斎のじじいのやつ、ここ2、3日姿を見せない。こちらとしては助かるが、何だか不気味でもある。
「お、お師匠さまね〜、どこに行かれたか・・・きっとそのうち戻るって、あはは、はは」
「バホッ」『気にしなくていいよ〜〜ん』というプラカード。どーも怪しい。
「いないって言えば、Pちゃんも急に姿が見えなくなってしまったの。おとといから。」
 あかねが心配そうにつぶやく。良牙が?またどっかで迷子に・・・ん?親父、何か目が泳いでるぞ・・・ま、さ、か・・・
 八宝斎と良牙、もといPちゃん。こいつらの共通点は・・・・・・ずばり、お邪魔虫だ!と、いうこと、は・・・

「はい、乱馬くん」「あ、どうも・・・」
 かすみさんから渡された茶碗を受け取りながら、俺は食卓をそれとなく見回す。
 親父とおじさんは食事に専念するふりをして、目を上げようともしない。かすみさんはいつもと変わらず。なびきは意味深な含み笑いを浮かべて傍観者に徹している。そしてあかねは・・・

「Pちゃん、今頃どうしてるかなあ・・・」

 ・・・本っっっ当にこいつは鈍いっ
 でもちょっとほっとしたりして。


 食った気がしない夕飯が終わってしばらくして、俺は何となく道場の周りをぶらぶらしていた。ちょうど道場の裏手に差しかかった時・・・
「本当に良かったんでしょうか、これで。」
 あかねの声・・・俺はあわてて身を隠す。
「良いも何も、必要だからやったまでですよ。」
 そしておふくろ・・・お弟子さんに夕食に呼ばれたとかで、夕飯の席にはいなかったが。
「でも・・・本人に一言も言わずに・・・」
「そうね、ちょっと時間が無かったから・・・でもきっとわかってくれますよ。」
「・・・そう、ですよね・・・私にもっと勇気があれば、ちゃんと相談した上で・・・あらかじめわかっていたことだし。」
「お互い、一生にかかわる問題ですものね・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「私、やっぱり話してきます。明日になったら効力持っちゃうし・・・」

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!

「そうね。主人と天道家の皆様には明日、でいいかしらね。・・・ちょっと人が悪いかしら?」
「いいえ、お父さんたち、すっかり空回りして・・・こっちの気持ちなんて、全然わかってないんだから。おばさま、本当にありがとうございます、相談に乗ってくださって。」
「いいのよ、あかねちゃん。あなたが真面目に先のことを考えているのはよくわかりましたもの。だから、もう後は二人の自主性に任せようと思うの。未来は自分で作るもの、でしょう。私は信じていますよ。あなたと乱馬が確かな未来を作っていくことを・・・」
「おばさま・・・」

 あ゛・・あ゛が・・ね゛・・・

 こ、こーゆーことかよっ
 鈍いどころか、さいってーの確信犯ぢゃぁねーかっ
 ・・・すっげー、裏切られた気分・・・

 どうかわすもなにもない。一番信じていた相手に見事にしてやられたのだ。ムカつくを通り越して情けなくなってきた。
 なんでぃ、見損なったぜ、あんな女、じょーだんじゃねえ・・・・・・けど、そこまでして俺と・・・い、いや、やっぱこーゆーやり方は良くない!せめてひとこと相談があったら・・・・・・でも、俺、何て答えただろう・・・


 2階にある自分の部屋に戻ろうとした途中、俺は妙なものを見かけた。廊下に積まれたいくつものダンボール箱。
「何だあ・・・邪魔くせえな」
「あ、乱馬くん」なびきがひょこっと顔を出す。「手伝ってくれるとありがたいんだけど、な。」
「タダでか?」「男がケチくさいこと言わないの。」
 いや、ちょっと待てよ・・・これは、使えるかも
「金なんかいらねえ・・・情報くれるんなら、手伝うぜ。」
「・・・OK!取引成立よ。で、何が聞きたいの。」
「おめー、知ってんだろ。親父たち、何たくらんでんだ?」
「聞くまでもないと思うんだけどな・・・これ、全部下に降ろしてくれたら、話すわ。」
「をーし」

 10個あまりのダンボール箱を一階に下ろす。俺にとっては大した仕事ではない。
「これ、お前の荷物だろう?引っ越すのか?」
「うん、事務所兼自宅っていうのかな。いちいちここに戻るのも面倒だし。」
 諸費用は全部、九能持ちだろうな。ま、俺が口を出すことでもない。
「これであたしの部屋空くから、乱馬くんにあげるわよ。お父さんたちもそのつもりだし。」
「何だよ、それ」
「待って、ちゃんと話すわよ。・・・お父さんたち、間違いなく明日、あなたたち二人を入籍させるつもりよ。」
「やっぱりそーゆーことか・・・」
「下準備もいろいろやってるわよ。Pちゃんとおじーさん、うまいこと追っ払ったようだし、婚姻届も用意してるしね。あたしと入れ替えにこの部屋に入ってもらって、いずれあかねの部屋との壁を取っ払って一つの部屋にするつもりのようよ。ただ・・・」
「何だよ」
「当のあかねが何考えてるのか、今ひとつわかんないのよね・・・その様子じゃ、二人で示し合わせてるわけでもなさそうだし。」
 あかねのやつ、大したもんだぜ。なびきまで騙しおおせるとは・・・
「さ、もういいかしら。明日は高見の見物、させてもらうわね。邪魔もしなければ後押しもしない。楽しみだわ・・」
「勝手にしろ」
 

 屋根の上でぼんやり星を眺める。俺、どうすりゃいいんだ・・・
 
「乱馬、ここにいたんだ」
「・・・あかね」

 微笑みながら、あかねは屋根に登ってきた。いつもなら、可愛くてしょうがない笑顔が、今日は小悪魔めいて見える。裏に何か隠し持っているような・・・

「実は話しておきたいことがあるんだけど・・・」
「何だよ」
「うん、乱馬、明日誕生日でしょ。18、になるんだよね。」
「・・・」
「だから、ちょっと差し出がましいとは思ったんだけど・・・」
「それでこそこそ区役所に行ってたってわけか」
「え?・・・どうしてそれを?」
 さすがに目を丸くするあかね。俺はそっぽを向く。顔を見ると怒りが込み上げてきそうだ。
「・・・相談も無しにとは、な。」
「でも、厄介ごとが起こるよりはましだと思って・・・だから」
「同じことじゃねーか、俺の気持ちを無視したことには変りねーだろっ!」
「乱馬・・・私だって悩んでいろいろ調べて、一番良い方法、探したんだよ・・・やっとおばさまに教えていただいて・・・話そうと思ったんだけど、もう、時間が無かったの。」
「ひとこと言ってくれりゃあまだしも・・・勝手なことしやがって!」
「なっ・・・誰のためだと思っているのよ!何か手を打たなきゃまた面倒なことになるでしょ!そーなってからじゃ遅いのよ!」
「おめーにどーかしてもらおうなんて思ってねーよっ!」
 俺もあかねもすっかり頭に血が上ってしまった。こうなったら、後はおきまりのパターンあるのみ。

「よくもそんなことを・・・人の気も知らないで!!」
「わかってたまるか!」
「乱馬のばかばかばかっっ!!」
「あ〜俺は大バカだよ!おめーみてーな女、信じてたんだからなっ!・・・嫁になんか、真っ平ゴメンだっ!」
「え?・・・ちょっと」
「どちくしょ〜〜っっ!!」
 もうこれ以上はいたたまれなかった。俺は捨て台詞を吐くと、とっとと屋根から飛び降りた。


 もう充分だ。こんなとこ、出てってやる!!届を出そうが出すまいが、俺がいなけりゃお話にならねーはず。早いとこ荷物まとめて、皆が寝静まったら、こっそり出かけよう。・・・そりゃあ、随分と世話になったけど、向こうだって下心があったんだし・・・こんな形で無理強いされなければ・・・いずれ俺だって・・・くそっ、あかねのやつ!姑息な真似を・・・

 こっそり、というには少々用心が足りなかったかもしれない。ただ、もう頭に血が上りきった俺は、出て行くことしか考えていなかった。夢中で荷物をまとめていた俺の背中はがら空きだった。だから・・・

どすっ
 何かが背中の一点に食い込み、反応する間もなく、俺の目の前は真っ暗になった。

「許せ、乱馬よ・・・」
「おじさまっ!?」

 何、だよ・・・こんなの・・・あり、かよ・・・・・・

「乱馬!らんま〜〜っ!」

 急速に体から力が抜けていく。・・・あか、ね?・・・
 そして・・・ブラックアウト



 ・・・to be continde・・・




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