◆一番
いなばRANAさま作


 物心ついてから俺は何でも一番だった。

 走るのも、飛ぶのも、跳ねるのも・・・

 木登り、虫取り競争、ザリガニ釣り・・・

 遊びと喧嘩に関しちゃどこの町に行こうと俺は常に一番。たまに年上のやつらに睨まれても、俺は絶対に引かなかった。年下相手に威張り散らすなんぞ、男の風上にも置けねえ。

 それで生傷の数も一番だった。

 別に番張ってたわけじゃねえ。けど弱いもんイジメなど絶対にしなかったし、乗りかかった舟は最後まで付き合った。そんなわけでいざというと俺を頼るやつは多かった。当然女の子の人気も一番。ま、相手にはしなかったけどな。


 でも俺には誰も頼れるやつはいなかった。親父なんぞあてにしたらバカを見るだけ。

 だから気が付くと俺は一人ぼっち。でも弱味なんぞ絶対に見せられねえ。

 意地っ張りも一番。

 負けん気も一番。

 こらえた涙の量も・・・きっと一番。



 修行の旅というより放浪癖のある親父に連れられて、俺は日本中はおろか中国まで足を伸ばした。歩いた距離も同じ年代のやつとは比べ物にならないだろう。そしてそこであった出来事も・・・
 碌でもねえ経験値ばかり稼いで、俺は帰国した。もう一つの姿と共に。そして明かされるとんでもない事実。

 俺には許婚がいた。小さな道場の跡取り娘。俺と同じくらい、どころかもっと気が強くて勝気で・・・おまけに俺のことを目の敵にする始末。

 ちぇ、面白くねえ。見た目はかなり・・・いや、今まで会った中で一、二を争う可愛い顔立ち。俺以外の男は夢中だが、冗談じゃなかった。願い下げだ、あんな男勝りのお転婆なんか。

 けど、目をそらしても気持ちはそらせない。気が付けば目すらあいつの方に向かっている。くそっ、何だってんだ!俺のこと嫌いだの関係無いだの赤の他人だの言ってるくせに、妙に世話焼きやがって・・・これじゃ気にするなって方が無理だろうが。

 どこかで予感はした。マズいなって気もした。だけどその日はやってきてしまった。


 夕風がふわりと短い髪をすくい上げる。金褐色に燃えるような夕日より、鮮やかに輝く笑顔。

 俺の一番はその笑顔を見せてくれたあいつになった。



 悔しい。どんなに修行に打ち込んでも、あいつに勝るもんはなかった。こんな話があるか!これじゃずっとあいつに負けっぱなしだ。どんなに憎まれ口叩いてやろうが、怒らせ困らせようが・・・一番の座は不動。どんなに他の女に好かれようが、強いやつに勝とうが、そんなのは何の足しにもなりゃしねえ。

 負けるが勝ち、と言うやつもいた。確かに自分の気持ちを白状しちまえば、めまいがするくらいのあの笑顔を手に入れられるかもしれない。
 けど、それじゃあいつに、そして自分に負けてしまう。それは絶対に嫌だ。子供みてえだと言われたって・・・まだまだ無条件降伏なんてするものか。


 だから俺は決めた。

 俺もあいつの一番になってやる。・・・というかなりたい。

 トップタイなら、負けたことにはならねえからな。


 で、今一番気になること・・・あいつの中で、俺は現在どのあたりにランクインしているのだろう?この番付ばかりはさっぱりわからねえ。


 もしも・・・そんなこたあないだろうけど・・・万が一ランキングトップだったら・・・

 俺、最初で最後の白旗、上げてしまうかも。



 その日もあまり遠くないかもしれない。俺の予感、よく当たるからな。


 きっとそれは・・・俺にとって一番の記念すべき日になるだろう。



 end of the story

 written by "いなばRANA"




作者さまより

何だか中途半端な考察系です(^^;
乱馬くんって小さい頃正統派ガキ大将やってたような気がして・・・今はもういないかもしれないですね(ちと寂しい)


中途半端な解説は要らないなあ…。
(一之瀬けいこ)