◇無差別格闘大会 その2
Ran-maさま作



玄関から数十歩、なにも会話が進まない。
「あっ」
「あの」
二人の声が交差する。
「なっなんだよっあかね」
「ううん、なんでも、それより、乱馬こそなに?」
「あのさー九能の家ってどこだ?」
「………。あっあそこに張り紙が貼ってあるよ…なになに」
【格闘大会開催会場、九能家はこちら↑】
「乱馬〜こっちだって〜」
(お前も知らなかったのかよ…)
「ほら、見えてきたよ、九能先輩の家って、お金持ちなんだねぇ、みて、あの家、五階建てのマンションみたい」
「どうせ外見だけだろ、あの親子だぜ、考えてみろよ」
「そっそれもそうね…」

二人は談笑しながら門の所までいく。
「あれっ乱馬〜これなにかな」
「んっ。指紋チェックみたいなもんじゃねぇか?」
「じゃ〜ここに指を置くのね」
人指し指をくぼみに置く。
【ピー、ガシャン、天道あかね、登録完了、ガード、オープン】
ギギギギッ、
「すっすっご〜い、じゃ〜私先に入ってるから、乱馬もはやくチェックしてね」
「まったく、くだらねぇもの作りやがって」
人指し指をくぼみにおく。

【ビー、早乙女乱馬、登録不可】

『ビリビリビリッ』
電撃が走る。
「ぐわぁわぁあ、く、くそな、なんだこりゃー、これじゃはいれねぇじゃねえか」
「乱馬、たぶん女じゃないと、入れないわよ。だって昨日九能先輩いってたじゃない。女だけだって…」
「なんだって、でもこんなところにみずなんかねぇぜ」
『バシャ』
「なっなんでぃ、あかね、お前水もってたんじゃねーか」
「なんか、ここに、給水所があったの…、そんなことはいいから、早く中入ってよ」
「こ、今度は大丈夫だよな…」
おそるおそるくぼみに人指し指を置く。

【ピー、ガシャン、おさげの女、登録完了、ガード、オープン】

ギギギギッ
「ふーやっと中に入れたぜ、まったく、こんなくだらねぇもんつくりやがって、んっなんだこの機械は」
目線を下に下ろすと小さな機械が確認してるのか、二人の周りをぐるぐる廻る。
そして‥
「おお、天道あかねにおさげの女」
機械から、九能の声が聞こえる。
「おい、九能、道場ってどこにあるんだよ」
「まあ、そんなにあわてるんじゃない、そんなに僕に会いたいのだな、今からその機械に案内させる。ついてきたまえ」
『オープン、T・K道場』
ガコンッ。庭の一角に階段が現れる。
「そこの階段を下りればすぐ道場だ、早く下りて来たまえ」
機械が階段を器用に下りていく。それに続く二人…

トントントンッ、階段を下りていく。暗い空間から、明るい、広い空間に変わる。この床には畳が端から端まで、ビッシリ敷き詰められている。大きさは、というと大体、天道道場と同じぐらいであろうか。
二人があたりを見回しているうちに、一人の男が目の前に現れる。
「九能家地下道場へようこそ、私は、この道場の管理人…、これからあなたたち二人には、本戦出場にむけての、予選をしてもらいます。ただいまの人数は、147人、本戦に出れるのはその中から16人です。まず、天道あかね選手は3番の扉へ、おさげの女選手は、7番の扉へ行ってください」
「へっ?ここで試合をするんじゃねぇのか?」
「もう、乱馬、今の話聞いてなかったの、まず予選するっていってたでしょ」
「でも、なにすんだ?いちいち部屋にわけて…、別にここでやってもいいんじゃねぇか?」
「いや、申しわけございません、帯刀様からのご要望ですので、ご了承ください」
「まっいっか、じゃーあとでな、あかね、負けるんじゃねーぞ」
「わかってるわよ、乱馬こそ、負けないでよね」
二人はその男に軽く会釈をして、それぞれの部屋へと入っていった。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

「なんだ、この部屋は、普通の道じゃねーか」

【ピー。ターゲット確認、予選通過するために、これから三つの試練を受けてもらう、異存はないか?】

どこからともなく声が聞こえてくる。
「あーいーぜ、どっからでもかかってこい」
その言葉とほぼ同時に、いかにも格闘家らしい男が、5、6人現れる。
「まず、第一の試練、我々を倒すことだ」
「へっ俺もなめられたもんだぜ、いくぜ、火中天津甘栗拳」
無数のパンチが繰り出される。
「グハァッ」次々に倒れていく格闘家たち。残りの格闘家たちは、仲間がやられたのを見ておろおろする。しかし、乱馬の攻撃は止まることはなかった。
「なによそみしてんだぁ、もうお前一人だぜ」
あたりを見回す、もうすでに、5人の男が床でのびている。
「くっ、ここを通すことは最大の屈辱、私がとめる」
『ドカッ』
無情にも乱馬の蹴りがボディに入る。
「ぐ、ゲホッふ、不覚」
最後の一人が倒れ込むと、また、どこからともなく声がする。

【おさげの女、第一の試練突破、次に第二の試験を行う、異存はないか?】

「今ので終わりか?なんでぃ、おもしろくねぇ、まぁいいぜ、第二の試練も軽くひねってやるぜ、さあこい」
その言葉と同時に今度は一人の男が現れる。

「私が第二の試練を司る者だ、いままでここにたどりつけたのが21人、しかし、ここを通り抜けたのは0だ。よってお前を通すこともない、さぁどこからでもかかってこい」
マントを翻し、乱馬を睨み付ける。
「じゃー俺が一番のりだな、いくぜ、火中天津甘栗拳」
「あまい」
乱馬から繰り出される無数のパンチは、紙一重でよけられていく。
「そんなパンチが、この俺にきくとでもおもったのか」
不敵な笑いをして、蹴りをくりだしてくる。しかし、乱馬も軽々しくよける。
「ちっ、しょうがねぇな、少々本気でいくぜ」
乱馬の姿が消える。
「なっなに、消えた」
「こっちだぜ」
すでに振り向くのが遅かった。乱馬の蹴りが背中に直撃する。
「ぐっぐわぁ」
口から血が吹き出され、ぐらりと倒れ込む。ぴくりとも動こうとしない。すでに失神してるようだ。また、どこからともなく声が聞こえてくる。
【おさげの女、第二の試練突破、第三の試練にうつる、異存はないか?】

「いーぜっ、とっととでてこい」
声と同時にまた、一人の男が現れる。
「く、九能、なんでおまえがでてくるんだ?」
「おお、おさげの女、これもまた運命、僕たちは結ばれる運命なのだー」
涙を流しながら乱馬に抱きつこうとする。しかし、乱馬の蹴りが入る。
「なんでそうなるんでぃ」
「そっそうであった。す、すまぬおさげの女、僕は君をここから通すわけにはいかない」
涙を浮かべながら言う。
「俺はここを通らなきゃいけねぇんだ、こい、九能」
「おおお、これも愛の障壁なのか、すまぬ、おさげの女」 木刀を片手に突進してくる。
「突き突き突き突き突き突き突き突き突きー」
すさまじいほどの剣圧に、壁が崩れ落ちる。
「あまいぜー九能ー」
突きをよけ、懐に飛び込む
「なんのっ、面ー」
しかし、九能の木刀は空を切る。
「どこねらってんでぃ、こっちだぜっ」振り向くとそこには乱馬の足があった。間一発それをよけるが、もう片方の蹴りが、九能の胸へと突き出される。
「ぐっ、やっやるなおさげの女よ」
足にきているのか、あまり動けないようだ。
「おいっやせがまんはしない方がいいぜ」
「なっなにを言う、この九能帯刀十七歳がやせがまんなど…」
『ドカッ』
九能が言い終わる前に乱馬の蹴りが顔面へ直撃する。
「愛するおさげの女に倒される、これもまた運命。ここで負けても、なにも悔いはない」
ドタッ。前のめりに倒れる。
「へっまだまだあめぇな」


またどこからともなく声が聞こえてくる。

【おさげの女、第三の試練突破、よって予選通過とする。もとの部屋に戻って下さい】

「なんでぃ、もう終わりかよ、これなら楽に優勝できそうだぜ」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「ハアッハアッ」

【天道あかね、第二の試練突破、第三の試練を行う。異存はないか】

「やるわよっはやくでてきなさいっ」

声と同時に男が現れる。
「ム、ムース?なんであんたが?」
「む、シャンプー、このおらに会いに来たのじゃなー」
走りながらあかねに近づく。
「眼鏡かけなさい、眼鏡」
ムースはあかねの前で止まり、眼鏡をかける。
「なんじゃ天道あかね」
「私のセリフよ、それでなんであんたがでてんのよ」
「ふふふ、知りたいのならば、教えてやろう。シャンプーとデートの為のバイトをさがしていたところ、一勝につき一万円という高額なバイトがあったのでな、して、あと一勝でシャンプーにプレゼントを買えるのじゃ、覚悟じゃ天道あかね」
「あたしだって負けるわけにはいかないわよ、いくわよ、ムース」
二人は間合いを詰めあう。最初に仕掛けたのはムースだった。地面を強く蹴り、高く飛ぶ。
「秘技、鷹爪拳」
高く上空からあかねにめがけて急降下してくる。
『バッ』
間一発で交わす。
「ふふふ、よくぞかわしたな、しかし、次はそううまくよけれるかな、秘技、鶏卵拳」
『ボンッボンッ』
ムースの手から放される卵が爆発していく。しかし、あかねは華麗にすべてよけていく。
「はっはっはー手も足もでないか、天道あかねよ、このままじゃーおらの勝ちじゃなー」
自信満々で勝利を確定したかのように言う。
「何いってるのよ、これからよ」
卵がきれるとすぐに反撃に移る。一気にムースの間合いに入ると蹴りをいれる。ムースはガードするものの二、三歩後ずさりする。それを見逃さずに攻撃をくりだす。連打の威力によりムースのガードが開く。
「ハッ」
渾身をこめて蹴りをいれる。
『バキッ』
確実にしとめたと思った一撃だったが、足に激痛がはしった。
「くっ」
「はっはっはー。今のはおらの暗器じゃー、その足ではうまく走れまい、恨みはないが、これもシャンプーの為、負けてもらう。秘技、白鳥拳」
無数の暗器が、ムースの袖から飛び出されあかねを襲う。
「きゃぁっ」
軽々しく避けたつもりであったが足のケガが思ったよりも重く、よけきれなかった。腕からは血が流れる
。「これでとどめじゃー、秘技、鷹爪拳」


あかねに向かって急降下してくる。あかねは、足のケガが思ったよりも重いらしく、よけることができない。絶体絶命であった。しかしそのとき……。
『ゴゴゴゴゴゴッ』
地面から地鳴りが響き、地面が開く。
「ここはどこだー」
でてきたのはもちろん、天然方向音痴の〔響良牙〕、である。しかし、でてくるタイミングが悪かった。
『ザシュ』
左胸から右胸にかけて、血がしたたり流れる。
「ムース、なにしやがる」
「お前こそなにをするのじゃ、あと少しで勝ったものを」
「勝つ?誰と闘ってるんだ?」
後ろを振り向く。 「いった〜。あっ、良牙君、ありがと」
不意に言われて赤面する。
「いっいやっこんなのっあっあたりま、まえですよ」
喋っている言葉がギクシャクしている。
「おい良牙、邪魔をするな、早くそこをどけい」
「それはできない、あかねさんにこんな危険な真似をこれ以上させてたまるか」
「邪魔をするならお前も容赦はしないぞ」
「望むところ、かかってこい」

『ヒュンッ』
ムースの暗器が良牙めがけて飛んでくる。
「よけれるものならよけてみろ」
「こんなもの、よけるまでもない、爆砕点穴」
それぞれの暗器に人指し指を突き立てる。
『ピシピシッパラパラパラッ』
「なっなに、おらの暗器がっ」
「武器に頼ってる奴が修行してる俺に勝てると思ったのかー」
走り込みムースの懐に一撃を入れようとする。
「良牙君っ。ムースは体中に暗器を隠してるから、気をつけて」
あかねが横から良牙に言う。
『バキッ』
一撃がはいり、沈黙が走る。
「ぐっ、な、なんでじゃ、おらの暗器が、ことごとくこわされ…」
『ドサッ』
最後まで言えずに、前に倒れ込む。
「ムース、お前は武器ばっかに頼ってるから自分に負けたんだ。これからは、自分の拳を磨くんだな」
言い終わるとすぐに、警報がなった。
【ビーッビーッ。侵入者発見、3番の扉の侵入者をただちに確保せよ】
「やっやべっまずいっ」
「良牙君っ、私は大丈夫だから、さっきでた所から逃げて」
「し、しかしあかねさんが…」
「大丈夫だってほら、こんなに歩けるし」
二、三歩歩いて見せる。
「すいません、あかねさんっ、では」
自分が開けた穴に入って行く。少したってから多数の男達がやってきてあかねに聞く。
「ここに今、怪しい男がいませんでしたか?」
「んっ別にいなかったけど、なんで?」
男たちは、集まり話し合い、ムースの状態を見てあかねに言った。



つづく




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