◇無差別格闘大会  その1
Ran-maさま作



「くぉら、おやじ、それは俺のだぞ」
「何を言う、ここに置いたお前が悪いのだ」
「ふざけんじゃねー」…居候中の早乙女親子のケンカ。ここ天道家の日常ともいえる出来事である。
「乱馬〜早くしないと学校遅れちゃうよ〜」
髪の短い少女が言う。そう、彼女は乱馬のかわいくない許婚のあかね。
『ドカッバキッ』
彼女の言葉と共に一人の男が空へと消えていった。
「けっざまーみやがれ」
憎み口を叩きながらも、生傷はたえない。
「もーあんたたち、毎日やっててあきないの?」
「うるせーな、あれは俺が悪いんじゃねーよ、おやじが悪いんでいっ」
学校に二人並んで行く時の普段となにも変わらない台詞。校門に着くといつもの…「天道あかね、この僕と交際するのだー」
あかねに抱きつこうとする九能だが、あかねに触れる前に、乱馬とあかねの強烈な蹴りが作裂した。
「九能先輩、おはようございます」
「けっ、こりねーな、お前も」
ぐらりと倒れ込む九能だが、すぐに立ち上がり、
「ふむ、いや、今日は特別な知らせを教えようとしたのだが」
「特別な知らせ〜?どうせくっだらねぇ事だろ」
「今度の日曜日、僕の道場で、無差別の格闘大会を開こうと思うんだが、天道あかね、出場してみないか?」
「ん〜格闘大会か〜この頃運動してないからな〜。ん〜乱馬はどうするの〜」
「待て天道あかね、この大会は女性しか出場できんのだ、しかし優勝した者には僕の家の権力で、世界各国好きなところへ招待しようと思う」
「す、好きな所へだと〜本当か?」
「本当だとも、この九能帯刀十七歳、この名に誓って断じて嘘はつかん、ときに早乙女乱馬、おさげの女の行方を知らんか?」
「ん、ああ、今度会ったときにでも言っといてやるよ」
「ああ、愛しきおさげの女よ、是非この僕に会いに来てくれー…して天道あかねはどうするのだ?」
「あたしは…じゃ〜出場します」
「そうか、出場してくれるのか、この僕の為に…」
涙を流しながらあかねに近づく、が、あかねの強烈な鞄と、乱馬の蹴りで、晴天の空へと消えていく。
「しかとまっているぞー天道あかねー」そう言い残して見えなくなった。
「これはチャンスだぜ、格闘大会に優勝して中国の呪泉郷で男溺泉に入れば、俺は完全に男になれる、なにがなんでも優勝してやるー」
「でも途中で男に戻ったらどうするの?女だけって言ってたからすぐに失格よ、失格」
「う゛確かに。いや、でもよー、道場でしかも格闘大会なんだからお湯があるわけねーだろ」
「ん〜まぁそれもそうね。でも、そう簡単に優勝できるかしら、女だけって言ってたから、きっとシャンプーも右京もでるわよ、きっと」
「俺は毎日稽古してんだ、そう簡単に負けはしないぜ」
「ど〜だか〜」
「なっどういう意味でいっ」
「だってあんたたち、稽古っていうより、ただのケンカだも〜ん」
「なっなんだとー」

キーンコーンカーンコーン、学校のベルが鳴る。

「あっ早く行かないと、乱馬、早く行こ」
「おっおう」急いで教室に駆け込み、それぞれ自分の席へつく。
「いーなー乱馬、あんなかわいい彼女がいて」乱馬の友達の大介が言う。
「そっそんなんじゃねぇ。あんなかわいくも色気もねぇ女っ」
「だれがかわいくも色気もないって?」
ふと振り向くと恐ばった顔で睨みつけるあかねの姿があった。
「いっいやっあのっこれはっそのっ」
「いいわけするんじゃな〜い」
『バキッ、ガッシャーン』窓ガラスをつきやぶりはるかかなたへと消えていく。
「なんでアイツ素直になれないかなぁ」あきれて大介が言う。
『ガラガラガラ』教室の扉が開く。
「さ〜今日もはりきって勉強するわよ〜。あら、早乙女君は早退ね?」……


「いってーあかねの奴、本気で殴りやがって…やっぱりかわいくねぇ…。これから学校いってもしょうがねぇしなぁ、そうだ、格闘大会にむけて、修行でもするか」




 キーンコーンカーンコーン

「あ〜やっと終わった〜結局乱馬戻ってこなかったし。悪い事したかな〜。家に帰ったら謝ろう」
そう呟くと、一気に校庭を走り抜け、家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり、あかね」
「お姉ちゃーん、乱馬は?」
「乱馬君?乱馬君なら稽古するって道場にいるわよ」
「ありがとーお姉ちゃーん」

『ドカッバキッバキッ』
「きたねーぞおやじ、休憩中に仕掛けるなんて」
「何を言っておる、武道の世界いつどこであろうと、気を抜いてはいかんのだ。まして明日は格闘大会であるだろう。いつどこから攻撃がくるかわからんぞ」
「お前が言えた事かー」
『ドカッドーン』薄い橙の夕焼けと共に消えていった。

「まったく、なんのつもりだよあいつは、人の邪魔ばっかしやがって」

…コソッ(乱馬いるかなー)

「まったく、おやじのせいで今日もろくに修行できなかったぜ、あかねにでも頼むかな…あいつもでるっていってたし…でも、怒ってたからなぁ、あやまったほうが…、いいよな…」

 コトッ

「だっ誰だ…………なんだ、あかねか…」
「ら、乱馬、あのね、わたし…」
「わ、悪かったな」
沈黙がはしる。
「えっ…」驚いた表情で乱馬を見上げる。
「だけどおま…」遮ってあかねが言う。
「お前も悪い、でしょ」
フフッとあかねに笑顔がこぼれる。
(こいつ、かっ…、かわいーかも…)
乱馬は、あかねに聞こえないような小さな声でボソッと呟き赤面した。
「なーに考えてるのよっ」
「な、なんでもねーよ」
「ふ〜ん、まっいいか、じゃ〜特別私が稽古つけてあげる、ちょっと待っててね〜」
トタトタッと足音を立てて階段をかけのぼって行った。
「なんだあかねの奴、全然怒ってなかったな、まぁ、いっか」
トントントンッ、階段を下りてきて乱馬に笑顔を見せる。
「ほら見て、乱馬、この道着、ずっとしまってたんだ〜」
「げっまだあったのかよ、あの時返したんじゃなかったのかよ」
[コミックス32巻参照]
「乱馬あのときは、ボッコボコにやられてたよね〜。今はどうかな〜」
「へっ、今の俺はあのときとは違うというのをみせつけてやるぜ」
「じゃ〜始めよっか」‥‥‥『ギュンバキッダン、ドドドドド、パシッグシャ』‥‥「乱馬〜本当に強くなったの?実はあんまりかわんないでしょ〜」
「う、うるへー、今のは油断したんだー」
「まったく、毎日稽古とかいって結局ケンカになっちゃうんだから…このままだと優勝できないわよ」
「俺はこっから粘るんでぃ、あかね、もう一回頼む」
「別にいーわよ」
じりじりと間合いを詰め、攻撃を仕掛けようとした、その時、

「乱馬君、あかねーごはんよー」

一気に緊張がほどける。
「は〜い、お姉ちゃ〜ん、乱馬、ご飯食べた後にしない?」
「いやっ俺は腹なんてすいて…」『ぐるるるる』
「ねっ。ご飯食べた後にしよ〜よ。腹が減っては戦はできぬっていうでしょ」
「あ、あぁ」赤面して食卓へと向かう。
「なにしてたのーあかね?」
次女のなびきがきく。
「乱馬と稽古だよ、でも、乱馬さっぱり強くなってないんだもん」
「乱馬君この頃おじさんとケンカばっかりだもんねぇー。だめよ乱馬君、あなたはあかねを守っていかないといけないのよ」
「そうだぞ乱馬君、これからもあかねをよろしくな」早雲が話に交ざる。
「なっなに言ってるのよ〜おね〜ちゃんにお父さん、わ、私は乱馬に守られなくたって、大丈夫よ」
顔が赤面していく。
「ご、ごちそうさま」
早々と箸を置き、その場から逃げようとする、しかし、その顔は、やはり赤面していた。


「あ、あかね、俺一人でも稽古できるし、ゆっくりしてていいぞ…」
「えっ…でも、あたしも格闘大会でるんだから少しでも多く稽古したいもん」
「そっそうか、じゃっ、道場で待ってるから…」
タッタッタッ軽い足どりで道場へと消えていく。
「ごちそうさま、じゃ〜また乱馬と稽古してくるね〜」トタトタッ、あかねの姿もまた、道場へと消えた。
「あの子たち、素直じゃないわねぇ」不敵な笑みを浮かべて笑う。

‥‥‥‥‥‥「あっ乱馬〜い〜ものもってきてあげたよ、はい」
『ザバー』
「うわっ冷た、な、なにすんだ」
みるみるうちに背丈、体格が変わる。
「だって、格闘大会ってその姿ででるんでしょ、それだったら、その姿でやったほうがいいじゃない」
「あっ…それもそうだな、でもいきなりかけることはねぇだろ」
「ごめんごめん、あ、どうする乱馬、道着、着たほうがいい?」
「ったりめぇだろ、道着きなかったら、稽古にならないだろ」
「いいわよ、じゃ道着なしでやりましょ〜」
「はぁー、まぁいっか、よし、どこからでもかかってこい」
『ビュッ、ドカッパシッ、ドドド、パシッ、パシッパシッ』
‥‥‥‥‥‥
「ふ〜疲れた。結局乱馬倒せなかったぁ」
「でも、お前結構強かったぜ。なんか技にもキレがあったし…」
「でも、なんで乱馬打ってこなかったの?」
(…好きな女の事殴れるかよ…)
「…なっなに考えてんだ俺はー」
「ど〜したの乱馬、顔真っ赤だよ」
「い、いや、なんでもねーよ、打たなかったのは、お前に隙がなかったから…」ブツブツと呟く
「やった、乱馬と互角に戦えるなんて、これも乱馬との稽古のおかげかな。明日が待ち遠しいなぁ」
額に流れる汗を拭いながらうれしそうに言う。
「あかねーお風呂入っちゃいなさーい」
居間から高い声が聞こえた。
「は〜い、じゃ〜乱馬、あとでね」
トタトタトタッと足音を立て、道場をあとにした。
「じゃー俺は寝るとでもすっか」
居間に行き、お湯をもらい、頭からかぶる。
「ふーやっぱりこの姿が一番だな」
なると模様のパジャマに着がえて、布団に入り、すぐに寝息をたてて、寝てしまった。



チュン、小鳥のさえずりで目を覚ます。「ふ〜よくねた〜、今日は格闘大会の日ね…、走ってこようかな」
眠い目をこすりながらカーテンを開ける。青空から、光が差し込んでくる。
「まっまぶしい…いい天気」
トントンッ、階段を下りていく、静かな空間に、音が駆けめぐる。いつも静かさがない居間、しかし、今は違った。誰一人の影もない、ただシーンとしている。玄関を開ける。光が差し込んでくる。
「ホント、いい天気ね」
いつもと変わらない道を走る、誰もいない、ただ、小鳥のさえずりだけは、聞こえてくる。風をきる音、それに伴って、あふれてくる自分の吐息、すべてが鮮明に思える。
「そろそろ皆起きてるわね〜」
「ただいま〜」
「おかえり、疲れたでしょ」迎えたのは、やはり、長女のかすみであった。
「ううん、もうなれたから大丈夫よ」
これは、もうあかねの日課となっている。毎朝のランニング。
トタトタッ、階段をのぼっていく。
トントン
「乱馬〜もう朝だよ、部屋、入るよ」
ガチャ
「もう、あんた毎日寝起きわるいんだから、今日は格闘大会の日でしょ」
ガラガラッ窓を開ける、晴天からの光と共に風がなびいてくる。
「うわっまぶしい……、なっなんであかねがここにいるんだよ?」
「あんたの事起こしに来たの。今日は格闘大会の日でしょ」
「あっそうだった。で、あかねは俺を待っててくれたのか?」
「そっそんなんじゃないわよ、今日、格闘大会だから、稽古しようとしたんだけど、私、先に道場行ってるから、ちゃんと来てよ」
トタトタッ、階段を下りていく。
「なんだ、結局俺を待ってたんじゃねーか、素直じゃねーな、まっ昨日まっててもらったんだし、行くか」

‥‥‥九能宅
「よし、準備はととのったか?」
「はい、準備完了致しました」
「ふっふっふっ、今日こそあのおさげの女と天道あかねの心を奪ってみせる、まってろよ、はっはっはー」

‥‥‥ゾクゾクッ
「うーなんか嫌な予感がしたぜ」
「わ、私も、なんか悪寒が走ったみたい」
「なーあかね?格闘大会っていうのに、なんで男は出場しちゃいけないんだ?」
「それもそうよね、なにかおかしいわよね」
「まっ九能が考えてる事なんか、大体予想はつくけどな、まっいーか、じゃー飯の前にもう一回稽古するか」

‥‥‥AM9:00
「じゃーいってくるねー」
「いってらっしゃい、がんばってくるのよ」
「うん、じゃーねー」
二人は玄関を後にする。



つづく




一之瀬けいこ的コメント
呪泉洞初投稿作品です。
やっぱり「らんま1/2」の醍醐味は「格闘シーン」ですね。
この先の展開からも目が離せません!
波乱の予感が・・・
(一之瀬けいこ)



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