◇素直になりましょう(後編)
如月天馬さま作


 昼間おもいっきり滑り、夕食後乱馬と大輔とひろしの部屋に集まりゲームして楽しんでいた。
「ったく、相変わらず弱いな乱馬は」
「本当だぜ。」
「っるせっー、こんなのは実力じゃなくて全部運がついてるかついてないかだけじゃねえか。」
「それもそうね、じゃぁ次は実力が勝負の決め手になる大貧民でもやりましょうよ!」
「あれって大富豪って言わない?それにそのゲームだとゆかがいつも勝つじゃない!」
「そう?でも楽しいからいいじゃない!ひろしたちもいいでしょ?」
「ああ別にいいぜ!大輔も乱馬もいいだろ?」
「ああそれなら乱馬も勝てるだろ」
「へへっ今度こそ屈辱を晴らしてやるぜ!!」
と乱馬、大輔、ひろし、あかね、ゆかが話していると
「私はパス!家族におみやげ頼まれちゃったから下のお店行って見てこなきゃ。」
とさゆりが言い何やらゆかに目で合図を送った。
「あっそれなら私も見にいくわ!なんかかわいいのがあったしね。ねぇ大輔とひろしも行こうよ!」
「俺らは別にいいよ。なぁ?」
とひろしに向かって大輔が言ったがゆかがもの凄い迫力でこちらの方を向き
「ねぇ行くわよねぇ。」
と言った。
「あっはいっ行きます。」
その凄みに負けて仕方なしに行く事に(行かされる事に?)なった。
みんなが出て行くと部屋に残ったのは乱馬とあかねだけだった。
「なんかみんな行っちゃったね。どうする乱馬?」
「どうするったって・・・」
その頃部屋を出たさゆり達はまだ文句を言っている大輔たちに説得させていた。
「ったくやっと俺にも運が回ってきていい所だったのになんで!・・・・」
「文句言わないでよ、もしかしたら告白するところ聞けるかもしれないんだから。」
ひろしが文句を言ったがゆかの一言で文句を言うのをやめた。
「一体どういうことだよ?」
大輔が言うとさゆりが説明した。
「今日あの二人にスキー場で会った時様子がおかしかったでしょ。なんかちぐはぐしてるって言うか。だからゆかと話した結果もしかしたら告白するところだったんじゃなかって思ったのよ!」
「ホントかよそれ!!」
ひろしと大輔は驚きを隠せないかんじだった。
するとさゆりが続きを話す。
「で、あのカンジからいくとまだ告白してないだろうから・・・」
「「「「今プレゼントを渡すと同時に告白する!!」」」」
「でもここからじゃ声が聞こえねぇぜ。」
ひろしがそういうと抜かりはないといったかんじでゆかが言った
「そこら辺は大丈夫よ。私たちの部屋あんた達の部屋の隣だから聴診器でも壁に当てればばっちり聞こえるわ!」
「でも聴診器なんてそんなすぐに手に入らない・・・・」
大輔が言い終わる前にゆかが目の前に聴診器を差し出した。
「大丈夫だっていったでしょ♪」
ひろしと大輔は同時に思った。
((こいつらそこらへんのスパイよりすごいんじゃ・・・))
一方、こんな作戦が実行される事など露知らず、沈黙が流れるなかあかねと乱馬は何をするでもなく部屋の中にいた。
だが不意に乱馬があかねにいった。
「あっ、あのよぉ、今日おまえの誕生日だろ、これやるよっ!」
そう言って渡した物は宝石であった。だが、ただの宝石ではなかった、誰の手も加えられていない宝石の原石であった。
その宝石は少し煤けていて汚れていたが、そんな汚れなど気にならないほど石の奥で光ってる宝石は綺麗だった。
「べ、別に気に入らなかったら返してもいいんだぞ!」
「ううん。すごく綺麗・・・。」
あかねは乱馬からそれを受け取ると、光に透かして眺めた。
「どうしたのこれ?いくら手を加えられてない物だって乱馬が手に入れられるような物じゃないでしょう。」
「3週間前隣町の骨董品屋で見つけたんだよ。本当は指輪とかのほうがいいかなと思ったんだけどあかねに似合いそうな物が無くってよ。でさ、実はそれ売り物じゃなくて店の主人が人から貰った物だったらしいんだけど店の主人、気前がよくてよ誕生日のプレゼントに買いに来たって言ったくれたんだ。条件付だったけどな。」
「条件って?」
「結果を聞かせろってな」
「えっ?」
乱馬が姿勢を正しあかねの方へ向き直した。
「あかね、俺お前が言った言葉のお陰で言う決心がついた。俺・・・・お前の事が好きだ!!お前は俺が守る、・・・だから、俺より先に死ぬな!」
「・・・乱馬・・・。」
「呪泉洞の時・・・お前が死にそうになった時やっと分かったんだ。どれだけお前が好きだったのか・・・、どれだけ俺にとって大切な存在なのか。・・・そして、どれだけ自分が未熟だったかが。あの時すでに俺はあかねを絶対に危険な目には会わせないって決めてたはずなのにお前を死なせそうにしちまった。だから、俺は今よりもっと強くなる。俺が死ぬまで一生守ってやる!」
乱馬が自分の思いを打ち明け終わりあかねが口を開いた。
「乱馬。私も乱馬のことが好きだよ。だけどこんな性格だからいつだって正反対のことばっかし言っちゃって。いままでごめんね。けど私だって武道家よ。守られるだけの女なんて嫌だ。私も何かあったら乱馬一緒に戦うわ!」
あかねがそう言うと乱馬は少し笑って
「相変わらずお前はじゃじゃ馬だな。女なら女らしくしろっつーの。」
「なによ、呪泉洞の時私が金蛇環をひねらなかったらサフランに力全部吸い取られてやられちゃってたくせに!」
「なんだとー!俺がサフランに止めさしたから今のお前がいるんじゃね―か!」
「なんですってー!そのサフランに止めさすための突破口を作ったのはこの私のおかげじゃない!!」
しばし沈黙が流れたが思い出したように二人は笑った
「「ははっ、はははははは」」
「あかね、なに笑ってんだよ。」
「そういうあんたこそ何笑ってんのよ。」
「・・・ありがとう乱馬。この原石大切にするわ。」
あかねがそう言ったとたん!!
「ちょっと押さないでよ!!」
「なんだよそっちこそ押すなよ!」
「イテテ、ばかっ俺の足踏むなよ!!」
「ちょっともうちょっと静かにしてよ二人にバレちゃうじゃない。あっ!」
「「「「」あっ〜〜〜〜!!」」」

バタッ、バタダダ〜ン!!

「バカッあんまり押すから壁が壊れちゃったじゃない!!」
「それはおまえが押すからだろ!!」
「つーか、普通よっぽど力を入れないと壁なんて壊れないだろ」
「それもそうよねぇ。って、あっ乱馬君にあかねやっほー」
ひろし、大輔、さゆり、ゆかが突如壊れた壁から出てきた。それを見た乱馬は
「お前ら〜〜!!(怒)」
手をワナワナ震わせながらひろしたちに近寄り
「ぶっ殺してやる〜!!」
「わっ〜!に、逃げろー!!」
逃げるひろしと大輔を追いかけるべく壊れた壁から部屋を出て行ってしまい残ったのはあかねと上手く乱馬のターゲットにされなかったさゆりとゆかだった。
「ちょっとどういうことよさゆり!ゆか!」
「よっご両人!とくと聞かせてもらったわよ〜愛の告白!」
「あかね、お前のことが好きだ!だっーてー、あの乱馬君が♪よくぞここまで進歩したわね〜!」
問い詰めるあかねに、茶化すさゆりとゆか。
いつもなら否定をするところだが今は違う。今の自分は素直な自分なのだから。

―「あーあ、もう東京に帰ってきちゃったのかー。もうちょっとスキーを楽しみたかったな。」
「別にいいじゃない、また来年来れば!」
「そりゃー、あかねは良いわよねー。なんてったて彼氏が出来たんだから。こっちは彼氏が居ないから彼氏が居る人の倍ぐらいやらないと満足感が得られないのよ!」
無事?スキー教室を終え東京に帰ってきた乱馬達であったが、あの後もさんざんからかわれて今も尚からかわれてホトホト困り果てているあかねだった。しかしからかわれているのはあかねだけではなかった。
そう告白をした当本人・・・
「このやろー、一人だけ先に春を楽しみやがって〜!!」
「俺らにも女をよこしやがれー」
「あのなぁー、んなこと言ったって俺のせいじゃねぇだろ!」
ふざけで首を絞められてる乱馬を哀れんだのかとひろしと大輔をなだめるようにさゆりが言った。
「大丈夫乱馬君?ひろし達もいいかげんにしたらもう東京に帰ってきちゃったんだから。」
「そうそう、私達もまだ言いたい事はいろいろあるけど、うだうだ言ってても始まらないしね。」
ゆかも二人に言い聞かせるように言った。だがそれは自分に言い聞かせてるようにも感じられた。
するとさゆりが唐突に聞いてきた。
「そういえば、乱馬君。あかねに何をあげたの?あかねはえらく感激してたみたいだけど」
「べ、別に何でもねぇよ。それにどうだっていいだろ。そんなの!」
「どうでも良くないだろ、見せろよそのプレゼント。俺達友達だろ?」
「そうそう、何あげたか見せなさいよ!」
「だから内緒だって言ってんだよ!」
逃げる乱馬を追いつめる大輔とゆか。
それにつられてか、ひろしとさゆりも乱馬に詰め寄る
「別になんだっていいじゃねぇか!あかね逃げるぞ!!」
そう言って乱馬はあかねの手を掴みその場から逃れるべく走り逃げた。
(見せる事なんて出来る訳ないねぇだろ。なんてったて、この原石は・・・)

―「えっ、願いを叶える?!」
「あぁそうじゃ。この原石に願いをしっかりと込めるとその願いはたった一つだけなら叶えてくれるのだそうじゃ。だが、その原石に願いを込めた後本当に信頼できるたった一人の人物意外に見せると願いは叶わないんじゃ。」

(俺の願いはただ一つ・・・)

あかねといつまでも一緒にいられますように・・・。 








作者さまより

真夏にスキーの話なんて気分が盛り上がらないかも知れませんが冷房ガンガンにするなどで感じを味わってください←おいおい(笑)
書き終わって気付いたのですがどちらかというと乱馬視点が多いですね。
まぁ、主人公なのだから当たり前なのかも知れないのですが・・・
ここまで読んできてくださった方々ありがとうございます。
長い間推敲に推敲をしてやっと書き上げた話ですが、自分の中での完成度は全くです。(読者の目から見てもそうだと思いますが・・・)
また、機会があったら次の話でお会いしましょう。
その時はまた腕を上げて書いてきます。
では・・・。


素直になる事。乱馬もあかねも、原作やアニメではこの部分が欠けているようですね。せめて、延長戦的世界では…。
願い事・・・叶うといいね、乱馬君
(一之瀬けいこ)


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