◇素直になりましょう!(中編)
如月天馬さま作


―「はぁー」
乱馬は大きなため息をした。
「どうしたんだよ乱馬?なんか元気ねぇじゃねぇか?」
悪友のひろしが、どことなく元気の無い乱馬が気になって話し掛けてきた。
「もしかしてまた、あかねとなんかあったのかよ?せっかく、これからスキーをするってーのに、そんなんじゃこっちまでテンション下がるぜ!」
これまた悪友の大輔がひろしと同じく話し掛けてきた。
「そんなのおめぇーらには関係ねぇーだろ!」
乱馬がそういってからまたため息を吐いた。
なぜ、乱馬がこんなにもため息を吐いているかというと話はスキー前日の夜、つまり昨日になる。
昨日、乱馬が荷作りとともにあかねへのプレゼントをリュックに詰めていると八宝菜が現れことごとくそのプレゼントを盗まれてしまったのだ。そして、いつもののごとく乱馬V.S八宝菜の鬼ごっこが始まり勝敗はなんとか乱馬の勝利におわったのであった。
(はぁ〜あ、じじいが八宝大華輪なんて出しやがるからプレゼントが焦げて汚くなっちまったじゃねぇか。にしても幸い中身が燃えない物でよかったよ。)
「はぁーい、みなさんこっちに注目−!準備ができた人からスキーを始めちゃってください。集合時間は4時です。お昼は、自由に食べに行ってください。それから、夕飯は6時からで、お風呂は入りたい人から入っちゃってください。では解散ー。」
担任のひな子がそういい終わるや否や1年F組の生徒はあっという間にゲレンデへ行ってしまった。そう、ため息ばかりついてはいられないのだ。早くあかねを見つけて、プレゼントを渡さなければいけないのだ。っとひとまず状況を説明しよう、今日はスキー教室当日で今まさにスキーをしようとしているところ、時刻は午前だ。乱馬はあかねに何かを渡すために隣町まで行って買ってきたが八宝菜にその何かを盗まれたが激闘の末、汚れはしたがなんとか取り戻したのであった。
では、状況を把握したところで話しを戻そう。
「乱馬、おまえ結局どうするんだよ?やっぱあかねに教えてもらうんだろ。」
「というよりあかねから教わったほうがいいと思うわよ。わたしたちじゃ、あかねのようにうまく教えられそうにないもの。」
ひろしとゆかがにやけながらそういった。なぜなら、あかねがスキーブーツを板につけることがうまくできない乱馬を見かねてマンツーマンで教えているのだ。はたから見ればいちゃついてるようにしか見えない光景である。
「えっ?なんでだよ。」
「そうよ、なんで私一人で乱馬にスキーを教えてあげなきゃいけないのよ。」
乱馬とあかねが不満の声を出すがその声もむなしくひろし達の耳には届かず
「じゃ、そういうことだからガンバレよ乱馬」
「あかね、私たち上の方で滑ってるから。それじゃ!」
大輔とさゆりがそう言うとさっさとみんなでリフトの方へ行ってしまった。
「あっ!ちょっと〜。もう、みんな勝手なんだからー。」
あかねがそうぼやくがすぐに
「乱馬ほら、私たちも行くよ!」
と言った。
「おっ、おう」
人一倍お人好しな故かはたまた最初から、その気でいたのかは定かではないが教えてくれるのであれば素直にとあいまいながらも返事をした乱馬であった。

―「もうっ、らんま!そんなへっぴり腰なんかじゃなくて男なら男らしく胸をはって背筋伸ばして滑んなさいよ!」
「うっ、うるへー。なれねぇーんだからしょうがねぇーだろ!それに今は女でいっ!うっ、うわっ。」
ドッシャッ 
「くっそー!」
らんまがあかねの指導を受けてから約1時間たとうとしている。ここら辺はあまり人が来なく比較的落ち着いて練習ができる場所だ。だから練習にうってつけで早く上達するのだが、らんまはいっこうにうまくならない様子だ。
「まったくさっきから転んでばっかり。起き上がるのは上手くなったけど・・・。もうスケートの時みたいに引っ張っていけないんだから。」
「へいへい。 こんな転んでばっかりじゃ、あかねにプレゼント渡せねぇかもしれねぇな。」
「なに、ぶつぶつ言ってるのよ。・・・ねぇ、らんま一つ聞きたいんだけど、私より右京に教えて貰いたかったの?」
「えっ?なっ、なに言ってんだよあかね?」
「だってらんま、さっきから妙に不機嫌みたいだし、もしかしたら右京が来てないからだと思ったんだもん。」
最後の方は人に聴こえないような声の大きさだった。
今回、邪魔者が全然出てきてない事にお気ずきの方も多いだろう。そう、学校行事のはずなのに生徒であるはずの右京が出てきていないのだ。理由を説明すると右京はこの日、今度商店街でやるカラオケ大会の打ち合わせで絶対に抜けられなかったためスキー教室に来れなくなったのだ。では話に戻るとしよう
「ばか。んなわけねぇだろ。俺は逆に・・・その、つまり・・・(他の奴らに邪魔されないであかねと一緒に滑れてよかったんだ)」
「そのつまり何よ!」
しばし二人の間に沈黙の風が流れたそして痺れを切らしたあかねが
「なんで言えないのよ!」
といった。
「だから・・・」
らんまは、言えなかった。呪泉洞の時、自分の気持ちがたしかだと言う事も分かったし、あかねがどういう気持ちなのかも分かった。だが、その気持ちを素直に受け止めて言う事ができなかった。そしてあかねに気持ちを伝える分だけの勇気もなかった。膨れ上がりすぎた愛しさに満ちた気持ちはそれと同じ・・・いや、それ以上の勇気がなければ伝える事はできなかった・・・。
「Let’s become gentle!」
「えっ?!」
突然あかねが言ったのでらんまは驚き一瞬固まってしまった。
「意味は『素直になりましょう!』。私が今読んでる本に書いてあるの『自分を偽らないで。本当の気持ちを他人だけでなく自分にまでも隠すのはやめよう。本当の気持ちを大事にして・・・。』 ・・・・私ね、このスキー教室は絶対変な意地張らない、らんまとはケンカしないって決めたの。これからもそう、素直な私になるんだって決めたの。だから、らんまも本当のこと言って・・・」
 あかねはずっとらんまに本当のことを面と向かっていって欲しかった。でもあかね自身、らんまの気持ちを言わせてあげられる状態ではなかった。周りの環境もそうであったが自分達自身打ち明けられる状態ではなかった。しかし、呪泉洞のことがあってからお互いの気持ちがわかった今ならきっと打ち明けられる。勇気を引き出してくれる言葉、自分を素直にしてくれる言葉を見つけたのだから。
らんまはしばらくたってから口を開いた。
「あかね・・・俺おまえのこと・・・」
俺も勇気がなかった、答えはもう分かってた筈なのに言えなかっただけなんだ。でも今なら言える!あかね、俺お前の事・・・!!
「お客様方に申し上げます。ただいま越後湯沢スキーガーデンでは様々なイベントを・・・・」
スキー場からのアナウンス。タイミングが良すぎると言うか悪すぎると言うか・・・。すると後ろから聞きなれた声がした。
「らんま君スキーの方は上手くなった?」
「ゆか!!いつの間に来たの?!」
後ろを見てみるとついさっきまでは居なかったはずのゆかとさゆりと大輔とひろしがいた。
「いつって、ついさっきよ。さゆりがあんた達の様子見に行こうっていったから頂上の方から滑ってきたのよ。」
「ところでらんま。お前ら今さっき何やってたんだ?」
「へっ?」
「そうそう!スキーの練習してるわけでもなく、言い合ってるわけでもないんだもの一体何やってたの?」
ひろしとさゆりがらんまに聞いてきた。すると大輔がからかうかのように言ってきた。
「まさからんま、周りに誰もいないのいいことに愛の告白を・・・!!」
「いくら周りに誰もいないからってそんなことするわけねぇだろっ!!////」
  ―相も変わらずからかわれているらんまであった。しかし、いつもと1つだけ違う事があった。それは、否定しなかった事である。
いつもなら些細なからかいでもすぐむきになって否定をするが今のは、[告白はしていない、だが今はしていないだけであっていつかする]と受け取れる。あかねの言葉の魔法のお陰で素直になり勇気も持てちょっぴり2人の関係が前進したように見えた。



つづく




作者さまより

あと少しで終わります!!
季節はもう真夏!!こんな冬の話ですみません!
そして、長い間投稿しないで他の小説を読むのにハマってて書かなかった私を許して〜。


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