◆君の名は・・・
美南沙耶さま作


まだ、誰も通らない明け方の道。秋は空も空気も澄んでいて、清々しい。
あかねは日課である、ロード・ワークにはげんでいた。
「あ・・れ・・・?」
いつもは自分1人が走っている道の前方に、別の人物がいる。
(この気は・・・)
見ずともわかる。この気は昨日当然現れた、自分の相棒の物。
(別に脅かしたからって、ばちは当たらないわよね・・・・)
後ろから気配を消して、そーっと、そーっと近づく。
(いっせーの、せっ!)
「わっ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
葵はあかねの期待通りの反応を示した。すなわち大声をあげて飛び上がったのである。
「っ!?あかね、なにすんだよ。」
「い〜じゃない。それに私の気配に気づかないあんたが悪いのっ!」
「しょーがねーだろ、考え事してたんだから・・・」
明後日の方をみてしゃべる葵にあかねは不思議な感覚を覚えた。
(変ねー。星羅と話してると、乱馬と話しているような感じに・・・)
「考え事って?」
「そりゃー、高校の事とかー。」
「・・・アドバイスしたげるけど、風林館高校に一般の常識は当てはまんないわよ。」
「う〜ん。」
「ま、行けば分かるわよ。」
悩みはじめた彼女の背中をぽん、と叩き、あかねは葵と一緒に家路を辿りはじめた。




「そのたくわんは、俺のだっ!!!」
『えーい、たくわんのひとつやふたつでさわぐな!女々しいぞ乱馬!』
玄馬と乱馬は朝食時にいつものごとく、たくわんの事で、箸を片手に(玄馬は箸と看板を両手に)争っていた。
葵はその様子を気にした風もなく、淡々と箸をすすめている。
「すみませんかすみさん、おかわりいただけますか?」
「はいはい。葵ちゃんも見かけによらず、よく食べるのね。」
「そっそうですか?」
ちゃんづけされた事で葵はとまどっている。
(でも、おかしいわね。さっきから見てると、食べたおかずの量とご飯の量にものすごい差が・・・)
その事に気が付いたのはかすみだけの様だ。
「あー!?俺の魚がねぇっ!親父!てめぇ食いやがったな!!」
『失敬な!わしは食べとらん!ってわしのもない〜!』
乱馬と玄馬の皿から忽然と魚が消えている。
涙を流す2人になびきは冷静に言い切った。
「魚ぐらいでなに泣いてんのよ。みっともない。・・・ごちそうさま。」
「ほんとにねー。さて、乱馬!星羅!学校行くよ!」
あかねはなびきに同調すると元気よく立ち上がる。
「私もそろそろ行かなくちゃ。」
「おう。」
「ちょっと待てよ、あかね。」
一斉に学生4人が茶の間を出ていく。
「「「「いってきまーす!!」」」」
「いってらっしゃ〜い。」
後ろ姿に手を振って、後かたづけをしにかすみは茶の間に戻った。
「あら?葵ちゃんのお皿・・・・」
葵の皿にはしっかり3匹分の魚の骨が残されていた。




「天道あかね〜っ!!愛してるぞ〜!!」
あかねと乱馬、葵が校門を通り抜けると、九能帯刀があかねに走ってくる所であった。
「いやぁあああ!!」

ばきっ

意外なことに九能を殴ったのはあかねでも乱馬でもなく・・・葵であった。
「お前が誰だかはしらねえが、あかねにてぇ出すやつはゆるさねぇ!!・・あかねが嫌がってるだろうが!!」
この時葵が不運だったのは、女だという事がすぐに分かる事であった。昨日はさらしを巻いていたため、男とも女とも分からなかったが、今日はさらしをまかないでそのままチャイナ服を着ていたからだ。(作者注:ブラジャーはちゃんとしてます
「天道あかねは嫌がってなどおらん!照れているだけだ!・・・・む、きさま誰だ?!」
「誰だっていいだろう!」
「ふっ、ふっ、ふ・・・そうか貴様この僕にヤキモチをやいているんだな?かわいい奴め。・・・よろしい、僕に勝ったら交際して     
 あげよう!!」
言いながら九能は葵に切り込んでゆく。
「〜っ誰がいつ交際を申し込んだ!!」

どっかん

哀れ九能は真昼の星と・・・化さなかった。
おそらく葵が加減したのだろう。九能は葵のすぐそばに落下した。
葵はそんな九能にすたすたと近づく。
「おい、手貸せ。」
なんと葵は一度ぶっ飛ばした九能に手を差し出したのだ。
「俺は別にお前が死ぬほど嫌いって訳じゃないからな・・・・転校初日だし・・・っと、お前等遅刻になるぞ?」
8:27の時計を指さして言う。
「あら、嫌だ。」
「いこーぜ、あかね。」
「ほら九能ちゃん、行くわよ。」
「むっ、天道なびき。」
葵を見てぼーっとしていた九能や、何時の間にやら近くにいたなびき達と共にあかねと乱馬は校舎に向かった。
「さてと・・・って、校長室はどこだ?!」
後には途方に暮れた葵が残された。




「OHー、YOUが転校生のMs.廣木デスかー?」
「は、はい、まぁ。」
あの後葵はなんとか校長室にたどり着き、校長と話をしていた。
「ウェルカーム、Ms.廣木!歓迎しマース!OH,問題ひとつだけありマース。」
「なんでしょうか?」
葵はすでに校長に押されていた。
「YOUは本校のワーストスチューデンツ早乙女乱馬と同じ所の居候だそうですが、早乙女乱馬好きでデスかー?」
「誰があんなちゃらんぽらん野郎!」
「OH、それでは問題ありまセーン。教室に案内しマース。」
「ども。」
葵は校長についてゆきながら思った。
(あのヤシの木、ちゃんと水やって栽培してるんだろうか・・・?)




「はーい、みなさんっ!今日は授業の前に転校生を紹介しまーすっ!!」
ひな子が小さな身体を精一杯伸ばして叫ぶと、その言葉に教室がざわつく。
「今の時期に転校生なんて、珍しいわね。」
「可愛い女子だといーなー。」
「あら、かっこいい男子よ。」
中には真剣に、
「おい乱馬、お前今度は何したんだ?」
等と聞いてくる輩もいた。
(転校生ってまさかあいつじゃねぇよな・・・)
乱馬は友人達を適当にあしらいながら思った。だが、こういうときに限って人の予測はあたるものである。
「転校生の廣木 葵さんでーす。みなさん仲良くしてくださいねー。」
ずるっ
思わず乱馬は椅子からずり落ちる。
「おい、乱馬。やっぱあの女の子となんかあんのか?」
大介とひろしは2人して乱馬にたずねた。



2年E組
「あら、どしたの九能ちゃん?」
なびきはなにやらぼーっとしている九能に声をかけた。
「天道なびき、僕は運命の人に出会ったのだ。」
「あらよかったわね、九能ちゃん。」
手を握りしめ背後に薔薇をさかせる九能になびきはあっさりと言った。
「あんたもいー加減よねー。あっさりあかねと乱馬君から乗り換えるなんて。」
「誰が乗り換えると言った。」
じろりと九能を睨む。
「・・・三ツ股がけするつもり?」
「あかね君は清楚、おさげの女は健康的、チャイナ服の女は美少女。それで良いではないか。」
「そういうのを三ツ股がけっていうのよ。・・・で、どんな子なの?」
さすがはなびき。収入源となりそうな情報は、たとえ知り合いが三ツ股がけされようと逃さないつもりらしい。
「チャイナ服の女の事か?・・・うむ、まず黒髪で腰ぐらいの長さで、青い目をしていて長身の、美少女だ。」
「ふーん・・・で、名前は?」
「それが・・・わからんのだ。嗚呼、君の名はなんと・・・?」
あっちの世界にいってしまった九能に、なびきは何処からか出したカメラ片手に呟いた。
「新たな収入源出現って訳ね・・・九能ちゃん、私、その娘の事知ってるわよ?」



何か起こりそうだけど・・・ひとまず E・N・D





作者さまより

終わった〜って、前作投稿から随分経っているではないか!
今回、前作に比べて割と内容少なめです。
なんかスランプ気味・・・3回目の投稿にして・・・(ぉぃ
九能帯刀・・・濃いキャラです。私は乱×あ至上主義ですが、なびきと九能のコンビも割と好きです。
ま、なんだかんだいってらんまのキャラほとんど好きなんですけど。(笑)
校長のヤシの木はずっと気になってたことです。ほんとの所どうなんでしょ?
う〜ん、次回どうしよう。いつも行き当たりばったりで作ってるからなぁ。
おかげで打ち間違いとか多いけど。
まぁ、どうにかなって欲しい!(切望)
うだうだ愚痴をいってしまいましたが、文化祭も終わったことだし、いっちょがんばりますか!

外では雨が土砂降りの日に・・・


シリーズ展開されるかと思っていたのですが、残念ながらここで途切れてしまわれました。
続きは各人皆様でご想像してくださいませ。
(一之瀬けいこ)

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