◆或る日常
蒼葵さま作


解っている。
私も…多分彼も…本当はそんなつもりなんて無い事。
でも、でも。
どうしても自分の気持ちに正直になれない。
どうしても彼の言葉の上っ面しか見えない。

カワイクナイヨネ

こんなんじゃ、彼も機嫌悪くするの当たり前だよ。

ホント、カワイクナイヨネ

何時になったら、これが“日常”じゃ無くなるのだろう。



 彼は未だに帰ってくる様子が無かった。もしかしたら、無意識のうちに彼の姿を捜しに
出ていたのかも知れない。赤い服を着た人を目で追ってしまう自分が居た。
 そんな事を考えていたら、猫の声が耳に届き、ふと我に返った。夏の夜はもう少し待た
ないとやってきそうになかったけど、そろそろ帰らなきゃ。そう思って振り返ったら…

 私の目には、思ってもみなかったものが映った。

 赤いチャイナ服を着て、髪型はおさげ。間違いなく彼は私の許嫁であった。そう、私の
捜していた、まさにその人であった。
 私はちょっとした驚きと嬉しさで、喧嘩していた事も忘れて彼に話しかけた。

「乱馬…?」


 私は一瞬何が起こったか理解する事が出来なかった。先刻も同じように猫の鳴き声は聞
こえたが、辺りを見渡しても猫なんて一匹たりとも居ない。どういうこと?もしかして…
 私はおそるおそるもう一度乱馬に声をかけた。

「乱馬?」
「うにゃぁ〜」

 彼は猫化していた。何て事だろう。しかし、幸い辺りに人影は見えない。ちょっとほっ
としたが、このまま放っておくわけにはいかない。何とかしなくっちゃ。取り敢えず彼を
人気(ひとけ)の無い場所に連れていき、落ち着くまで様子を見る事にした。彼が猫化し
ている状態から普通の状態に戻るまでには少々時間が掛かる。それに、猫化している状態
では、私が居ないと他の人に何をするか解らない。私が彼をなだめてないといけない。 

 彼はいつの間にか私の膝の上に頭をのせ、ごろごろと喉を鳴らしていた。安心しきった
穏やかな顔をしている。私が髪を撫でると、彼はとっても嬉しそうに目を細める。
「全く、さっきまであんなに険悪なムードだったのに…この変わり様は何かなぁ?」
私は、半ば呆れながら呟いた。

 ふと、私を見る寂しそうな視線に気付いた。いつの間にか、彼は私をじっと見上げてい
た。そして、
「…たまには、甘えさせてくれたって良いじゃねーか。こんな時しか甘えさせてくれねー
だろう?」

 いきなり彼が言葉を発したのでビックリした。
「えっ…あっ…」
だって、だって、猫になってたんじゃなかったの?そんな事が頭の中をよぎるけれども、
あまりの事に口がパクパクするだけで言葉になってくれない。

「もうちょっとだけこうしてても良いだろう?なぁ、あかねぇ。」
彼はそう言って、また私の膝の上に頭をのせた。

 ずるい。彼は知ってる。私が実はこういうのにとても弱い事を。断りきれない事も解っ
ていてこういう事をする。本当にずるい。

 でもどこかに優越感を抱く私が居る。他の娘にはこんな事絶対にしない。彼がこういう
態度をとるのは、私だけ。

 …何時の日か、これが“日常”じゃ無くなってしまうのだろうか。








作者さまより

<あとがきと称された雑談>
皆様、今晩和(今日和?)。蒼葵(そうあおい)と申します。いやぁ、日の目を見るまでこ
んなに時間が掛かるとは思っても見なかったですわ。某参謀よりお話を頂いて、是非かか
せて頂きますとお約束してから数多の夜が過ぎました(爆)。大変申し訳ないです。許して
っ。ッて、こんな訳のわからん駄文ではまずいですよねぇ。今回は、私の駄文にしちゃあ
珍しく会話文が少ないです。ホント、珍しいですね。
 さて、乱馬くんは何時から正気に戻ったんでしょうか?ご想像にお任せしますが、あえ
て「あまあま砂吐き乱×あ」として読む事も可能ですねぇ。あぁ、私の頭は腐ってる(爆)
さっさと積分しなきゃ<小生、受験生なもんで(激爆)
 あとがきが一番速く書き終わった(汗)なんて奴だよ、おいら。それでは、苦情とかそ
の他諸々お待ちしております。またそのうちお目に掛かりましょう。


某日、某所のチャットルームにて遭遇したときに無理矢理リクエストさせて頂いた小説です。
蒼葵さんといえば、らんまネットでも有数ならんま小説書き手。
お忙しいのに投稿して頂きました。
(一之瀬けいこ)


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