◆日曜日
のぶさま作


「明日にでも、乱馬と主人を引き取ります。」
のどかの突然の申し出に、天道家、早乙女家の面々は顔を見合わせた。
・・・天道家をでる?
なにより1番驚いたのは、乱馬本人だったに違いない。
立派な男として、母親に会うことばかり考えていて自分の身の振り方まで頭には無かった。
「明日・・・。」

・・・笑って送り出したげなきゃ。
あかねは小さいころに母親を亡くしており、家族がそろって生活できる大切さをよく知っていた。
道場にいるあかねを見つけた乱馬は話す言葉を見つけられず、隣に座り込んだ。 「あ、あのよー、なんかいろいろあって・・・。」
あかねのやつ、また泣くのかな・・・
「・・・うん・・・でも、よかったね。お母さんと一緒に暮らせるじゃない。」
あかねはニッコリと乱馬に微笑む。
「ん?」
すっかり落ち込んでいると思っていた乱馬は予想していなかった、あかねの態度に、
「なんなんだよっ。それっ!」
と、トゲトゲしい口調となった。
「あんた、もしかして出て行きたくないわけ?」
「ん、なわけねーだろっ!」
なんだか自分の方が余裕がないような気がして、乱馬はあかねに突っかかる。
「泣いて止められたって、俺の決意はかわらねーからな。」
いつものことだが売り言葉に買い言葉、
「誰も止めてないわよっ!さっさと出て行ったら。」
最後の夜だというのに気まずい雰囲気になってしまった。
なんでーあかねのばか。

次の日の朝早く、のどかが乱馬を迎えにきた。
天道家の面々に見守られる中、乱馬は初めて家族を感じることができた天道家をでていく。
たった1人を除いて・・・
「・・・あかねちゃんは?」
「行こうぜ、おふくろ。」
あかねと話をしたそうにしている、のどかを無理やり引っ張る。
ほんっっっとうにかわいくねーなっ。

のどかの住んでいたアパートは大きくはないけれど、親子3人で暮らすには丁度いい広さだった。
・・・俺の家か・・・
「今日は美味しいもの作るからね。乱馬が帰ってきたんだもの。母さん張り切っちゃう。」
『のどか、わしも帰ってきたじゃないかあ〜〜』
のどかは台所で夕飯の支度を始めた。
居間ではパンダになった玄馬が熱いお茶をすすっていた。
そーだよな、これが普通だもんな。
まあ、パンダは普通ではないにしろ。
もし、玄馬と修行の旅に出ていなかったら親子3人で普通に暮らしていたはず。
毎日学校行って、ゲームしてバイトして・・・
あかねに会うこともなかったかもしれない。
・・・あかねは関係ないな、うん。
「テレビでも見よーかなっと。」
ぼーっとしてると余計なことまで考えてしまいそうだったので、わざわざ口に出してテレビをつける。
丁度バラエティ番組をやっていた。
「あ、こいつってば、おもしれーよな、センターマン。なあ、あか・・・・親父。」
ぱふぉ?
玄馬は乱馬の言葉を聞き逃してはいなかった。
『あかねって言おうとしたな貴様!や〜いや〜い、寂しいんだ〜〜』
「うるせーぞ、このバカパンダ!」
「もう、2人ともご飯よ。」
のどかが食べきれんばかりの食事を運んできた。

ふあ〜〜〜、もう朝か〜〜〜
翌日はいい天気だったので窓から射す光で、乱馬はめずらしく朝早くに目が覚めた。
あ、今日は日曜だっけ?
のどかもまだ寝ているようだった。
しかし、もう1度寝るにはもうはっきりと目が覚めてしまっていた。
・・・たまには走るか。
ランニングに着替え、タオルを首から掛け玄関をでる。
昼間の暑さが嘘のように、風がひんやりと心地よかった。
そーいえば最近、朝は走ってなかったな・・・あかねのやつ、今日も走ってんだろうか・・
いつの間にやら見慣れた景色のところへ来てしまった。
「・・・天、道、道場・・・。」
いつもの、ロードワークコースを走っていたようだ。

がらら

玄関が開く音がして乱馬はとっさに塀の陰に隠れる。
門が開いて、あかねがいつも通りロードワークに出てきた。
・・・なんか、俺が会いに来たみてーじゃん。
乱馬はあかねに声を掛けることなく、走り去る後姿を見送った。

本来日曜日は皆が1番好きな日だ。
朝遅くまで寝てて、学校も休み・・
俺って休みの日って何してたっけ・・・?
なんだか時間が経つのが遅い様に感じられる。
「ねー乱馬。」
洗い物をしていたのどかが声を掛ける。
「お隣さんに沢山じゃがいも貰ったの。かすみちゃんに持っていってくれない?」
のどかは「あかね」ではなく、あえて「かすみ」の名前を口にした。
「ああ、いいよ。ちょっと行ってくる。」
買い物袋にいれたじゃがいもを抱えてひょいひょいと塀を伝って走っていく。
しゅたっと天道家の前に降り立ち玄関をあけようと思ったが、
俺ってもう、居候じゃないしな・・・
と呼び鈴を鳴らした。
「はい。」
出てきたのはなびき。
「あら、乱馬くん、どーしたの?」
「おふくろが、かすみさんにって。」
なびきに袋を手渡しながら奥の方を覗いてみる。
「あー、あかね?」
「い、いや、別にあかねに会いにきたわけじゃ・・・。」
「出かけてるわよ。」
ぶんぶんと慌てて首を振った乱馬になびきがあっさり言った。
「あ、そお・・・。」

夕食を済ませ、今日早起きした分、夜は早々と床についた。
「・・・日曜日、か。」

「じゃ、行ってくる。」
翌日学校へ行こうとする乱馬をのどかが呼び止めた。
「ちょっと待って乱馬。これあかねちゃんに渡して欲しいの。」
片手に収まるくらいの箱を乱馬に手渡す。
「ね、早く渡してあげてね。」
「・・・まあ、おふくろがゆーんなら・・。」
いかにもめんどくさげに乱馬は呟いた。
「じゃ、いってきまーす。」
言葉とは裏腹に軽い足取りで駆け抜けていく。
・・・でも、これってなんなんだろうなあ・・?





挿絵・・・のぶさんの柔らかいイラスト♪

 


薬箱を貰うまでのサイドストーリーてきにしてみました
原作のあかねが来たと思って、のどかさんの前ではのろのろ、
でも、1人になると、そわそわ走っていくのがめっちゃお気に入りシーン
(のぶさん的コメント)


残念ながら閉鎖されたのぶさんの旧サイト「らくがきらんま」からご無理言って頂いてきました。
36巻の指輪騒動のお話、は個人的にも大好きです。
日曜日のゆったりとした時間。
天道家を後にした彼の複雑な心境を垣間見るようでとても好きな作品。


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