◇優柔不断返し! 前編 
夏海さま作


Akane

「乱馬ぁ!」
「乱ちゃん!」
「乱馬様!」
「うわッ、ちょ、ちょっと待て!頼むから!」
いつもの帰り道。
いつものように乱馬を好きな三人がやって来た。
そして、いつものように乱馬は優柔不断ぶりを発揮。
イライラする。
ムカムカする。
乱馬の馬鹿、乱馬の馬鹿、乱馬の馬鹿!
私は乱馬を置いて、さっさと歩く。
そろそろ・・・・
「あ、おい!あかね!待てよ!」
ほらね。
私に頼らないでよ!自分でなんとかして!
「・・・っごゆっくりどうぞ!私先に帰るから!」
「あかね!」
ふん、乱馬なんて知らない!
私の気持ち分かってよ。
乱馬に言って欲しいんだよ?はっきりと、「俺はおめぇらの事なんとも思ってねぇんだ」って言って欲しいんだよ。
乱馬、この気持ち分からないでしょ。
好きな人が目の前で例えその気がないようにしてても、イチャついてたらどんな気持ちか・・・・。
胸がギュッと苦しくなるんだよ?
痛くて痛くて、辛いんだよ?
なんでそんなに優柔不断なのよ!
私は気が付かないうちに俯いていた。

「もし、お嬢さん」
「へ?わ、私?」
突然声をかけられて、顔を上げる。
「そうじゃよ、お嬢さん。そんな悲しそうな顔をしていては可愛いお顔が台無しじゃよ」
声をかけてきたのはお婆さん。行商をしているみたい。
「お嬢さん、何にそんなに胸を痛めているじゃ。よかったらこの老いぼれに、すこーしばかり話してみなされ。」
ニコニコと笑うお婆さん。
信用できそうだし、私の知り合いに話される可能性は全然ない。だから私は今までの事を話してみた。
「成る程のぅ。それは、それは・・・。」
「ええ。乱馬は・・・私の気持ち全然分かってくれてない。優柔不断だし!」
自分でも驚くほど素直に乱馬の事を話せたのはきっとこのお婆さんが優しく親身になって聞いてくれたからだと思う。
「それなら、やり返してみたらどうじゃ?」
「へ?」
私は相変わらずニコニコ笑うお婆さんをマジマジと見た。




Ranma

「ただいまぁ〜・・・」
うう、なんでこんなズタボロに俺がなんなきゃなんねぇんだ。
・・・・あかね、怒ってんのかな?
ちぇ、ヤキモチ焼きが。
俺は全っ然悪くねぇ!俺は巻き込まれただけだ!
むしろ俺は被害者だぜ。
ったく・・・・。
トタトタトタ・・・・
「「あ」」
俺とあかねの声がハモッた。
冷たい目で見られるのや、冷たい言葉を投げられるのを覚悟した。が、
「乱馬、大丈夫?」
「え、あかね?」
「もう、シャンプー達乱馬まで巻き込んで。とんだ災難だったわね。まぁ、これももてる男の甲斐性だと思えばしょうがないわね」
「え・・・・え・・・・?」
わけがわかんねぇ。
あかねがこんな事言うなんて・・・いつもなら『ほんと、バッカじゃないの?あんたがハッキリしないからよ!』とかって文句を言いつつ、手当するもしくは完全に無視すんのに。
「乱馬、来なさいよ。手当てしてあげるv」
妙に優しい声音で話す。
しかも、めちゃくちゃ可愛い。
俺はクラクラしながらも、あかねに手を引かれて居間に向かう。
「んもう、乱馬ったらこんなに怪我して。乱馬ほどの武道の達人ならもうちょっと避けられたんじゃないの?」
俺は「うっせぇな!」と言おうと口を開きかけた。
しかし、あかねのが早かった。
「けど、ちょっと感謝しちゃうな」
「はぁ?」
あかねは手当てをする手をいったん止めて、俺を見つめた。
黒曜石のような綺麗な黒い瞳を潤ませて、俺の右手をギュッと握った。
「な・・・・、あかね・・・さん?」
ドクン、ドクン、ドクン・・・・
「だって、乱馬を手当するのは私だけ。この時は二人だけ・・・でしょう?」
クラクラクラ・・・・
か、可愛い・・・・
あかねは再び手当を再開した。
「はい、お終いv手当して欲しかったらまた私に言ってねv乱馬vv」
チュッ
ぼんッッッ!!!
あ、あかね・・・・がおお、おおおお俺の頬にき、ききききキ・・・スした・・・・。
俺は頬に手を当てて、いつまでもいつまでもそこに硬直していた。





次の日
「乱馬ぁ〜!」
あかねがいつものように起こしに来る。
「ら・ん・まv起きてよ♪」
耳元でいきなり囁かれ、俺はビックリして飛び起きた。
昨日の事もあって、俺は一気に赤くなった。
が、あかねは全く気にしていないようでニッコリと微笑むと「早くおいでよ」と言って、先に行った。
どうしたんだろ。
あかねが妙に可愛いし、素直だし・・・。
「おい、あかね」
「なぁに?」
振り返るあかねに、俺は聞いた。
「あのよぅ、おめぇ昨日から・・・変だぞ?」
「どこが?」
「いや、そのなんか・・・素直だし、優しいし、その・・・積極的だし」
「嫌だったの?」
「い・・・やじゃねぇ、けど」
「なら、いいじゃない」
ニコニコと笑ったまま、あかねは俺の口にトーストをくわえさせ、手を引く。
「行ってきまぁ〜す」
「行っ・・・てきま、す」
手を繋いでるモンだから身体をギシギシと強ばらせながら、俺はあかねと学校へ向かった。
俺は惜しいながらも、他の奴らに見られるのが嫌なんですぐにあかねの手を離した。
「遅れちゃう!」
俺はあかねの後ろ姿を見ながら考える。
どうしたんだ、あかねは。
昨日はシャンプー達に絡まれて、ヤキモチを焼いてたのに帰ってみたら別人のように優しくなってヤキモチを焼く素振りすらない。
おかしい。
これはこれでいいけど・・・絶対おかしい。
今日だって変だった。
起こし方がめちゃくちゃ優しかった。
寝坊したのに、全然怒らねぇし。
と、突然俺の思考遮るいつもの声が聞こえた。
「天道あかねー!交際しよう!!」
ゲシッ!
「よっ、九能先輩!」
「おのれ、早乙女!また僕と天道あかねの恋路を邪魔する気か!」
なぁ〜にが恋路だ。
あかねは嫌がってんだよ、この変態が!
「喰らえ!愛の障害粉砕剣!!」
九能は木刀をふりかざし俺に突っ込んでくる。
「いつもの突きと同じだろーが!!」
久能を思いきりけっ飛ばした。
「天道あかね、愛してるぞぉ〜!」
ケッ、ざまーみろ!
と、その後が違った。
「久能先輩!今度デートしましょうね〜v」
な、な、な、な・・・・・・
「「「「なぁにぃいいいいいいいい!?」」」」
俺も、周りにいた登校途中の生徒も全員が叫んだ。
「て、天道あかねが・・・・」
「あれほど嫌がっていた久能先輩に・・・・・」
「デートに誘った・・・・!?」
とうのあかねは何事もなかったかのように学校へ行く。
「あかね、ホントにどうしたってんだ・・・?」



つづく




Copyright c Jyusendo 2000-2005. All rights reserved.