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なな(高野連)さま作


青く透き通るような空。雲ひとつない大気。
そこに1台の飛行機。飛行機を追い、証のように残る一筋の飛行機雲・・・。

「なんだよ・・・あの言い方・・・・・」
乱馬はひろしから言われた言葉にいささか腹をたてていた。
『乱馬?おまえさ、はっきりさせたらどうだ?自分のこと・・・』

「はっきりも、なにもねえってのに…」
答えてくれる声もないのに、一人でブツブツと言い放つ。しかし、モヤモヤとしたものが胸の中に蓄積していく。
どんどん、モヤモヤした気分になる。いつもシャキっとしてる背中も心なしか猫背になっている。

「・・・・・・・ってなんでこんなにグジグジしてるんだ?俺・・。らしくねぇー」
気を取り直すように背伸びをひとつ。
1人家路を急ぐことにした。


トゥルルルル・・・、トゥルルルル・・・
天道家の電話が鳴り響く。
「はい、天道ですが・・・」
柔らかく、優しい声が電話にでた。姉、かすみだ。
「あ、お姉ちゃん?」
「あら?あかねちゃん?どうしたの?」
声を聞き、あかねとわかり、少し驚くかすみ。
「え?!あのね、帰り道でちょっと足、傷めちゃって。今東風先生のとこなの、少し遅くなるかもしれないから、電話しといた。」
「あら、けが?一人で帰れるの?乱馬くん・・・」
「あぁ、平気、平気よ!軽い打ち身程度だから・・・」
「・・・そう、あまり無理しちゃだめよ。あかね。」
「うん・・・、じゃ。」

ぷちっ・・トゥー・トゥー・トゥ・・・・・。
がしゃん。
ピィーピィー

病院備え付けの公衆電話の受話器を下ろし。返ってきたテレホンカードを取りながら、あかねは1つため息をついた。
けんか中の2人。内心乱馬に迎えに来て欲しいが、そううまくいかない2人。

乱馬同様、あかねも恋愛オンチ。
2人揃って、恋に不器用だから、甘えるきっかけも、優しく接するタイミングもわからない。だから決まって口喧嘩。素直になれず、ついで に意地っ張りの負けず嫌い。ある意味とんでもなく相性の悪い2人だが、恋愛ベタだから、逆にいいのかもしれない・・・。
こんな関係がもう2年目位。 最近ではみんな慣れっ子。まぁ、慣れて当然な2人の微妙な関係(シーソーゲーム)。

こんなあかねだから、素直に、迎えに来て欲しいなんていえない。
「はぁ、」
またため息。乱馬のことになると、いつも自然ともれる息の集まり。
とぼとぼと東風先生のいる部屋に戻って来た。 しょげ気味のあかねに優しい声が頭の上からした。
「あ、あかねちゃん。お茶入れたんだけど、はい。」
優しく微笑みかけ、手に湯のみを持ち、こちらに差し出す。
「あ、ありがとうございます。先生!」
東風先生からお茶を貰い、笑顔で応えるあかね。
初恋だった相手。今はとうに諦めているけど、こういう優しさが、なんだか今はものすごく嬉かった。
お茶を口に入れると、なんだか心まで温かくなるようだった。柔らかく、甘いお茶の味にあかねはしばし酔ってみた。

「足はだいぶ痛みは引いたかい?」
お茶を啜りながら先生が容態を聞いた。
「はい、だいぶ痛くなくなりました。」
まだ少しズキズキするものの、当初の歩くのも困難な痛みはなくなっていた。
「よかった。この薬、打ち身によく効くんだ。まだ、腫れてるようだから、念のため1週間分の塗り薬用意しとくね。」
「ありがとうがざいます。東風先生」
「当然のことだよ。そうそう、5日たっても引かないようならもう一度きてね。」
「はい、わかりました。」
乱馬の前では牙剥き出しのじゃじゃ馬なあかねも、東風先生の前ではやたら大人しい。
これはあかね自身、無意識のやってる行動。でも、この態度は乱馬にとってはあまりありがたくない行動だ。
なぜなら、誰だって、好きな子が自分の前で一向に汐らしい態度をせず、他の男にされたら頭にくるもんだ。 しかし、今、この空間に乱馬はいない。もし、いたとしたらけんかは間違いなく巨大に発展してただろう。
「もうすぐ日も沈むから、気をつけて帰るんだよ、あかねちゃん!」
「はい・・大丈夫ですよ、先生・・・」
いくら怪我人といっても、もう高校2年生。今の言葉はいささかくすぐったい台詞だった。
高1の時ならば、怒ったような表情もしただろうが、高2ともなれば感情も安定してくる。
軽く笑いながら、鞄を取り、東風先生にあいさつ をし、部屋をあとにした。


「ただいまぁ!」
天道家の敷居を元気よく入ってきたのは乱馬。
「おかえり、乱馬くん」
そしてかすみが出迎えに出る。
乱馬は靴を脱ごうと下へ目をやると、あかねのスニーカーがないことに気づいた。
「かすみさん、あかねは?」
乱馬は居候して以来、早雲とかすみだけは敬語で話してる。(できる範囲で) それは今も同じ。口は悪いが、礼儀にはシビアな乱馬。ここらへんは、さすが武道家。
かすみも、なびきやあかねとはタメ語を話している乱馬が自分だけ敬語で話してるというとこはまったく気にしてない。
「あ、あかねちゃん、足けがしちゃったみたいで、東風先生の所にいってるみたいなの。」
「?!けが?」
けがと聞いて応答する乱馬の音量が明らかに大きくなった。
「そうなの、大丈夫とは言ってたけど・・・心配だから乱馬くん、途中まで迎えに行ってくれる?」
「え、あ、はい!」
乱馬は、言われなくても、と言った感じで返事をすると、鞄を置き、玄関を後にした。

「あ、乱馬くん。傘!・・・・・・」
かすみの声も届かないくらい、あっという間に出ていった。
「…夕立、平気かしら?」
心配もあるが、もう追いつかない。そう確信して、居間に戻り、洗濯物を取り込むかすみ。

時刻は午後4:30。


「たく、何あいつ怪我なんてしてるんだよ。そういやーあかねって 」
走って小乃接骨院へ向かう。

『打ち身って言ってたよな。なんで“打ち身”なんだ?普通、捻挫とか・・・』
かすみから聞いた “打ち身”という言葉に今更ながら疑問を抱いた。確かにただ歩いてて“打ち身”はおかしい。普通は“捻挫”というのが自然だ。
『まさか誰かにやられたんじゃ? いや、考えすぎだ。大丈夫、あかねはそんな柔な女じゃねぇ・・・』
なんだかことを悪い方へ悪い方へと考えてしまう自分に気付き、気を取り直してダッシュで接骨院へ向かう。

刻々と2人の距離が近いていく。

あかねは足をひきずりぎみで。
乱馬は急いで走っていて。

そして、距離およそ3m。2人位置は90度。
2人の前には曲がり角。

お互いインコースいっぱいに曲がる、が何かにぶつかり跳ね返される。

「きゃっ」
思わず叫ぶあかね。
足を痛めている、だがとっさに痛めている右足に重心かけてしまい痛みが襲う。そして体重を安定できず後方へ吸い込まれそうになる。
『倒れる!』
そう思い目をつぶった、すると手首を強い力で握られた。
「ごめん、大丈夫、か?」
声をかけてきたので、答えようと目を開くと。
「あかね!ごめん、平気か?」
と、今あかねだと気がついたと様子で言い心配そうな顔して乱馬が覗き込む。
「!乱馬!!」
びっくりするあかね。あまりの驚きに足の痛みも飛んでいった。

「かすみさんから聞いた・・・。そ、その・・・心配してたぞ、かすみさん・・・・」
何を話そうと思った乱馬は、かすみを使ってけがの具合と、心配してるという気持ちを言った。心なし鼓動が早く感じた。
「・・あ、平気よ。東風先生が良く効くお薬塗ってもらったから。ほら、ちゃんとここまで歩いて来れたし。」
実はまだ痛むが、心配はかけまいと笑顔で言うあかね。
「・・・なにが“ここまで”だ! すぐそこじゃんか、先生んち・・・。」
こりゃ、相当重症だと乱馬は思った。
乱馬の言ったとおり、接骨院とこの角は直線で約70m程の辺り。ここから天道家までは350mそこそこはある。
いつごろ出て来たかはわからないが、あかねを見ればなんとなくわかった。

「痛むんだろ・・・」
少し凄んで言ってみた。
「・・・・」

『なんで、こうゆう時だけ鋭いんだろ・・』
いつも優柔不断で、鈍感な乱馬だが。あかねのとこになると突然鋭い。乱馬のことばが真実すぎて、思わずうつむくあかね。
「・・足、見せてみろ。」
「!無理よ!シップしてもらって包帯巻いてるんだから・・・」
あかねの右足には、白い包帯が丁寧に巻いてあった。見ているだけで痛々しい感じがした。
「・・歩けるのか?手でも貸そうか?」
後半は少し照れた感じの乱馬の声。顔もほのかに紅くなっていた。
あかねはいつになく優しい乱馬の態度に、少しだけ甘えようかと思い、乱馬の手をとってみた。
『手、ぐらいなら・・・』
触れると、自分の顔も火照りだした。乱馬も自分で言っときながら、心底赤くなった。
「・・・・あ、歩けるか?」
少し棒読みのように話す乱馬。
「・・う、うん、大丈夫・・・」
あかねもつられてまた赤くなる。お互い、俯き合っていた。

・・・・・・・・・・・・

「あ、あの・・朝は・・・ご、ごめんね・・・。」
あかねはおもいきって今朝けんかしたことを詫びた。今しかないと思ったからだ。
乱馬はしばし無言だった。でも微かに握った手が熱い感じがした。
「お、俺の方こそ・・その・・・悪かった」
素直に謝ってきたあかねの言葉を静かに組み込んいくように言い返す乱馬。
さっきまでの意地の張り合いが嘘のように晴れていく感じが2人はした。

さっきにも増して赤くなっていく2人。
そこへ涼しい風がやってきて、火照る2人の頬を優しくなでた。
今日は猛暑だったので、少し心地のいい風だった。
この風が吹きぬけた時、2人は自然と顔を上げた。わりと近くにあるお互いの顔。・・・しばしの沈黙。
なぜか見詰め合う2人。
するといきなりあかねが微笑んだ。そして握っている手を少し強く握り締めて、「帰ろ!」と言った。
乱馬は少しその微笑に見とれたが、答えるように笑いかけ、「ああ、」と言った。
そして、家の方向へ歩きだそうとしたら、突風が目の前から来た。

バ ビュ!!
「爆砕点穴!!」

あまりの突風に乱馬はとっさにあかねの盾になり前を見据えると、そこには乱馬のライバル、響良牙が立っていた。
そういえば突風の中に 「爆砕点穴!!」 という小さな声が聞こえたような気がした。

「・・りょ、良牙・・・」
「・・良牙君!!」
思わぬ人物の登場に2人とも叫ぶ。と言っても、乱馬的にはお断りな人物だ。
なぜなら、良牙がいろんな意味でライバルだ。格闘もいつも競い合う。そして、恋敵でもある。
良牙もあかねが好きなのだ。しかし、良牙には“あかりちゃん”という彼女がいるのだが、諦めがつかないようなのだ。
そして、良牙も乱馬と同じ変身体質。水を被ると黒子豚のPちゃんになる。そうこれが1番乱馬には耐えられないものなのだ。・・・それは、変身後の黒子豚のPちゃんはあかねのペット同様だからだ。
あかねは、良牙=Pちゃんとは知っていない。
完全に変身後の良牙をペットにしている。だから抱きしめたり、一緒に寝たりは当たり前なのだ。
知っていたら絶対にやらない行為だが、ほんとにただの豚(かわいいペット)ならやっても攻めることはない。知らないあかねにとやかく言うよりは、良牙が来なければ収まる話だが、良牙はほとんどあかねに抱かれるために(Pちゃんとして)天道家へ来てると言っても過言ではない。
来るといつも、天道家で風呂を浴び。なぜかほとんど乱馬の目の前で変身し、軽く鼻歌を歌いながらあかねの部屋へ向かう。
まるで乱馬に「お前にできるか?」とでも言ってるかのように。っといっても、乱馬が見ていて大人しくするわけがない。止めようとして大体が大騒動になる。しかしそれはすぐにあかねに阻まれ、良牙の願い通りになるのが関の山。乱馬の苦悩は続く・・・。

そんな人物の登場だけに、心境穏やかではいられない乱馬。

と、そのとき辺りが真っ白になる。かすかに良牙の顔が見えたけど、表情も読み取れないくらいにしか見えなかった。
そして二人の意識が遠くなった。
繋いでた手もいつしか離れた・・・。


もやもやとした空気が取りまくいていた・・・
やっと晴れた霧の中に誰かがこちらに話かける・・・

「・・・今のはこち・・・のミス・・・・・たの、ごめ・・・なさい。・・だから・・・・・・」

白かった。それ以外ははっきりとは覚えてない・・・
ただ何かについてあやっまっていた。

そしてまた遠くなる意識。



――――
良牙はびっくりした。

ほんの30m程前にいた2人に稲妻がおちたのだから・・・。
なぜか音のない、銀色の光の槍。

その矢は2人の頭上にくると、2人を白銀の光が静かに包んで、そして拡散するように消滅した。

落ちたと言っても、良牙自信確信は持てなかった。
なにしろ一瞬のことだった。
2人の姿が一瞬白銀幕の向こうに消えた。そうかと思うと今度は音をたってて地面に倒れる2人。明らかに意識がないとわかった。

「・・・?」
声も出ないほど驚いた。
一呼吸おくと、良牙はことの重大さが認識できてきた。だが認識したら、ほとんどパニック状態になった。
それもそうだ。なにしろ目の前で落雷に遭ったのだから。ましてや、それが他人でなくて、あかねと乱馬なのだから・・・。

『落雷に遭った・・・』
どんどん青ざめる。

「あ、あかねさん!!」
必死でそう叫び横たわる2人の間に座り、あかねを抱かかえる。

「あか、あかねさん!!!」
自然と涙が頬をつたう。

「死なないで!あかねさん!」
もう無我夢中・・。すると。
普通、落雷を直撃したらば即死間違えなしだろう。それがいくら、乱馬とあかねでも・・・。

しかし、
「・・・・・う、うん・・・・・・」
あかねが良牙の声に答えるようにうめいた。
「あかねさん!あかねさん!!あかねさん!!!あかねさん!!!!」
良牙は歓喜の声。
「大丈夫ですか?あかねさん!!」
もう一度呼びかける良牙。

すると後方で声がした。
「うっ・・・」

「!!」
良牙は慌てて後ろを向き乱馬を見た。
「乱馬!」
思わず安堵の声。ライバルとはいえ、助かってよかったと心から思った良牙。
「良牙・・・・くん?」
「乱馬、平気が?」

あかねが意識を取り戻す。

「あかねさん!平気ですか!!」
あかねはボーとする頭を抱えて体を起こそうとするが、体があまり言う事を効かない。
「いてぇ・・・・・」
なんとか体を起こた、 間近には心配そうな顔の良牙が目一杯にはいってきた。しかも抱きとめて感じで彼の腕の中にいた。
「!?な!!」
そういいかけると良牙の背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「う゛っ・・・」
乱馬もまた痛む頭を抱えて半身を起こした。意外と言う事の効く体。あまりダメージはなかったようだ。

でも自分になにがあったのだろう?
さっきまで繋いでいた手は、今、掌の中にはいない。

思い起こしてみた・・・。

歩いてて、角を曲がったらあいつにぶつかっちゃって。
それから仲直りして。
手、繋いで。
そしたら地面から良牙君が出てきて。
辺りが真っ白に・・・。

そこで記憶がなくなった。

「なにがあったんだろ?」
言葉を口にした。
「???!!!」
自分の声がおかしい・・・、なんだか自分のものではない声質。でも良く聴く声。
『なんだろう・・・?』

「あ・・あぁ・・・いー・・うぃー・・・」
思わず発声練習する乱馬。
『あれ?やっぱり・・・。なんか低い?』

いきなり聞こえる発声練習に良牙とあかねは不思議そうに乱馬を見た。
でも同時ではない、正確には良牙が邪魔で見えなかったあかね。

「・・なにやってるんだ?乱馬?」
先に乱馬を見た良牙が問い掛けた、しかし乱馬本人は受け答えしない、かわりにあかねが応える。

「なんだ? それよか見えん・・・」
そうかえてきた。
「あ、あかねさん、動いちゃだめですよ。」
そういって動くあかねを静止しようとあかねの方に向き直ると、後ろの乱馬が
「え?!けっこう調子いい感じなんだけど・・・」
これを聴いて良牙は乱馬に向かって当然のように言い放つ。
「・・?お前にいっとらん!見りゃわかる!一応大人しくしてろ!乱馬!!」
「??あたしが乱馬?良牙くん?」
「はぁ?乱馬だろ?」
「え?」

「なんだよ?おれがどうかしたか?」
あかねが応える。

ようやく、あかねは良牙の頭をどけ、瞳から目の前の映像を脳に届ける・・・。
『ん?』

このとき初めてあかねと乱馬は事故ってから顔を見た。しかしその対面はとても考えられるものではなかった。

顔を見た2人の顔は徐々に困惑した顔になった。
しばし沈黙が2人(+1人【良牙】)を包んだ。

「え・・・・?」
これが精一杯といった感じの2人の声。

それは自分の瞳から見える、もう1人の自分。
まるで鏡の世界に迷い込んだような錯覚。でも確実に目の前に存在する自分の姿。


時刻は午後4:50。
天候は曇天。
南南西から生暖かい少し強くて湿気の多い風。
もうすぐ、きっと夕立・・・。



つづく




作者さまより

なんとか作りました。第2作。
出来は・・・よくわかりません。(汗
一応、入れ替わりが行われました。でも当本人たちはまだ自覚がまだない段階です。
天候と時刻を所々で出してます。
これで文章力のない分に時間を与えています。(情景も)
ちなみに飛行機雲を出したのは、あれが出ると次の日に雨が降るという目安なんだそうです。
まあ、それと夕立にはどう関係するのかは、気象的にはわかりませんが、経験で書きました。

文章力ないんで、(理工系なんで。)いまいちなとこもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。



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