◇戦場の息吹
  Another Mission 『After Story』
武蔵さま作


戦争は終わった。5年という歳月を経た戦争は、地球連邦政府の結成したジュセン軍の勝利で終えた。
結果として人々が得たものは、何もなかった。
ハッポウ軍の独立宣言から始まったこの戦争は、民間人に多くの被害を与え、また、人々に多くの悲しみを与えた。人々の心には戦争の恐怖、身内の死が焼き付いていた。

歴史に残るこの戦争から二年の年月が流れた。
壊れた町も復興を遂げ、まるで戦争などなかったかのようである。悲しみを感じつつも、平和に暮らし始める人間。

しかし彼らは知らない。この戦争を終わらせた一人の男を・・・
彼らは知らない。その男がどれだけの命を救ったか・・・
彼らは知らない。その男の存在を・・・


―――ジュセン軍本部―――

「早いものだな・・・あれからもう2年か・・・」
何もない広い部屋で一人の男は呟いた。
「ああ。そうじゃな。つい昨日のことのように感じるだ・・・」
それに応じるようにもう一人の男が応える。
良牙とムースである。二人の男はその広い部屋で何をするわけでもなく、ただ佇んでいた。
この部屋には、かつて良牙とムース、そしてもう一人と3人で生活していた場所である。
かつてはジュセン軍・第一アーマー小隊の部屋として扱われた場所であったが、解散した今となってはただの広い空き部屋であった。
20歳を迎えた二人は、肉体的にそう変化はなかったが、顔立ちは2年前よりも大人びていた。


「結局、俺たちは何もできなかったな。」
遠い目をした良牙が呟く。その瞳はどこか寂しさを帯びていた。
「おらたちはできる限りの事はしただ。ただ、力が及ばなかっただ・・・」
同じようにムースも寂しげに呟いた。

二人の脳裏に二年前のあの時が浮かんだ。


―――二年前・山中―――

雨が降っていた。まるで悲しみを語るように、終戦と同時に降り出した。
その中、救出班は山中に横たわるアーマーを発見した。
「『飛竜』、発見しました!」
「パイロット、双方共にいません!」
大破した機体は、ハッチを開けるまでもなく、中に搭乗者がいないことは明白であった。

ドシン!ドシン!

地響きと共に、2体のアーマーが近づいた。その外装は剥がれ、傷だらけであった。
『獅子』と『白鴻』、良牙とムースの機体であった。オペレーターである右京から連絡を受け、すぐさま現場に向かってきたのだ。しかし戦闘でのダメージが大きく、はるかに時間をロストすることになったため、近くにいながらも、救護班よりも遅く到着した。
二人はハッチから降りると、乱馬の姿を捜した。
「乱馬は無事か!?」
堰を切ったように救護班に訊ねた。救護班の一人が首を横に振ると、良牙はその男の胸ぐらを掴み、揺さぶった。
「よく捜したのか!近くにいないのか!?」
その様子を見たムースは焦ったように制止に入った。
「落ち着くだ、良牙!気持ちはわかるが冷静になるだ!」
ムースの言葉で冷静さを少し取り戻した良牙はそっと手を離した。
「そうだな・・・・すまなかった・・・」
あれから時間はそんなに経っていない。だから乱馬も近くにいるはずだと判断し、二人は捜索隊に任せることにした。


「シートに大量の血液が付着しています。血液は早乙女大佐のものと一致しました。」
救護班としてあかりも手伝いに参加し、血液を調べた。
「しかしこの出血量では・・・・・」
救護班の一人が言葉を濁しながら言った。その言葉に沈黙が流れる。
実際にコクピット内部を見たもの全ての者が、見た瞬間に悟ったことである。
その夥(おびただ)しいほどの血は、乱馬が生存している可能性を奪うには十分すぎるほどであった。
乱馬をよく知るものは血の気が失せていくのがわかった。
「この雨じゃ、外に出たとしても血痕は流されてしまっているな。」


とてもではないが、重傷を負った乱馬が一人で歩いていけるわけがない。つまりは誰かが乱馬を連れて行ったと考えるのが普通である。
しかし、あかねの存在をジュセン軍の連中は知らなかった。無論、良牙とムースもあの後に乱馬があかねを救出し、機体に乗り込んだことは知らなかった。しかし、彼らにはあかねが連れ出したという確信があった。
あかねは当然ハッポウ軍のパイロットとして処分される。如何にジュセン軍を勝利に導いた一人だとしても、未だ厳令は解かれていない。しかも救出班が到着するまでに3時間もの時間があった。その間にあかねが乱馬を連れてどこかへ行ったかまでは想像できなかった。


「班長!こっちに血液を発見しました!しかし・・・・」
少し離れたところで救護班の一人が大声をあげた。一瞬躊躇ったがそのまま言葉を続けた。
「しかし、血液型は一緒ですが、早乙女大佐のものとは違います。成分が一致しません。」
「何!?」
その場がざわめく。そしてその言葉が良牙とムース、そしてあかり、シャンプーにさらに追い討ちをかける事になった。
乱馬以外の血液とすれば、それはほぼあかねの血ということになる。しかし、その量は乱馬には及ばないにしろ、重傷の部類に入る量であったからだ。

その後も捜索は続いた。しかし、二人の姿を見つけることはできなかった。


命令違反をし、敵であるパイロットと共にハッポウ軍を倒した『早乙女乱馬』の存在を国は認めるわけにはいかなかった。
公にはヤマタノオロチの活躍ということになり、国民もそれを信じた。
そして、それを機に、乱馬個人のデータを初め、彼に関する様々な書類が削除された。
と同時に、彼の捜索は続いた。衛星による探索も行った。
初めは彼の処刑を望んでいた連中も、サフランの命令により、捜索に駆り立てられた。無論、処刑のためではない。仮にも戦争を終わらせた重要人物の1人だからだ。世間に公表しないまでも、罰するつもりはもうなかった。
初めのうちは良牙とムースも捜索にあたっていたが、その後は事情により、火星と水星、それぞれの星に帰った。彼らがお互いに会うのも、一年以上経っていた。
そしてこの二年、捜索は打ち切られることになった。



「良牙様!」「ムース!」
二人の女性の声で、良牙とムースは現実に引き戻された。あかりとシャンプーである。
「こんなところで何してるか。そろそろ時間ね。」
シャンプーの言葉に二人は時計を見た。どうやらあれから30分以上時間が経過していたようだ。
「おっと、もうこんな時間か。」
「そろそろ行くとするだか。と・・・その前に・・・」
「ああ。そうだな。あいつの事だからすっかり忘れてるんじゃねぇか?」
二人は顔を見合すと、苦笑した。
「二人は先に行っててくれ。俺たちもすぐに向かう。」
そう言ってあかりとシャンプーを先に送ると、二人は整備工場に向かった。


―――整備工場―――

二人が工場内に入ると、そこには相変わらず忙しそうに働いている真之介の姿があった。
「やっぱ作業着だったな。」
良牙が溜息を吐いた。すると、真之介の方が二人に気づいて駆けてきた。
「おお!いいとこに来てくれた!実は大変なことがあったんだ!」
「「・・・・・・・・で、何があった?」」
二人は声を揃えて訊ねる。その様子は呆れたような調子だ。それもそのはず。
「・・・・・・・忘れた。」
この調子だからである。この1年、事あるごとに真之介は「大変だ」と言いながら駆けつけてくるが結局良牙とムースには伝わった試しがなかった。
「それより、おまえらなんでそんな真っ黒な服なんか着てるんだ?」
真之介は要領を得ないといった様子で訊ねてきた。
「今日は何の日だ?」
「大方忘れておるのだろうと思って寄ってみて正解じゃったな。」
「・・・・ああ、そうか!今日は・・・・・悪い、じいちゃん。ここは頼んだ!」
真之介は慌てたように立ち去ると、良牙たちと同じ黒い服装で現れた。
「よし、じゃあ行くか。」
三人は整備工場を後にした。格納庫の横を通り過ぎたとき、ふと良牙が立ち止まった。
「なあ・・・あれって・・」
格納庫の一番奥にそれは置いてあった。『飛竜』であった。
ボロボロだった外装は復元され、かつての姿を現していた。
「ああ。廃棄処分にされたらしいが、忘れてた。」
どうやら直したのは真之介らしい。
「動くのか?」
「まあな。変形を可能にする特殊鉱石は砕けてたし、ビーム兵器回路も複雑に壊れてたからな。戦闘はもうできないが、移動だけなら可能だ。」
「そうか・・・・あいつが見たら、喜ぶだろうな・・・」
良牙はふと呟いた。


三人がやってきたのは本部の裏手にある小さな丘だった。山と海に面したその場所はジュセン軍の敷地であったが、特別にこの場所を使用する許可を得た。
そこにはすでに幾人かが集まっていた。皆黒い服を着用していた。
そこには、玄馬、のどか、東風、右京、シャンプー、あかり、ハーブ、そしてかつてハッポウ軍の捕虜であった早雲、かすみ、なびきの姿があった。
皆が囲むその中心には墓碑があった。そこには二人の名が刻まれていた。
そう、今日は乱馬とあかねの葬儀であった。遺体は見つかっていないが、捜索を打ち切られた以上、もはや生存している確率はなかったのだ。
結果、弔ってやることがせめてもの手向けということで、本日を持って葬儀を行うことになったのだ。


「乱馬・・・父としておまえを守れなかったことだけが心残りだ。あかね君を救い、おまえは僅かな幸福しか得られなかった。おまえを犠牲にしてしまったこと、後悔している。代われるならば、わしが代わってやりたかったぞ。」
普段ふざけている玄馬も、この時ばかりは涙を流しながら語った。そして、墓碑に花を添えて下がった。

「あかね・・・捕虜となってからは父親らしいこともしてやれず、すまないと思っている。しかし・・・母さんを亡くした私にとって、おまえの死は辛すぎる。二度と同じ思いはしたくないと思っていただけに尚更だ。この戦争を終わらすためにパイロットという危険な役にあえて志願したおまえの優しさを忘れない。それから、乱馬君。君とは直接会ったことはなかったが、早乙女君からよく聞いている。あかねを最後まで守ってくれてありがとう。」
早雲も同じように花を添え、後ろに下がった。

親類、友人たちが一言ずつ言葉を紡ぎ、花を添えて下がる。皆悲しさに包まれているのが手に取るようにわかった。

「乱馬君、僕はやっと会えたよ。探し続けていた女性(ひと)に。君たちがお互いに巡り会ったのは必然だったんだと思う。だけど、生きていて欲しかった・・・あかねちゃんも、前の元気いっぱいの姿がまだ目に焼きついているよ・・・」
東風はそのまま下がり、泣いているかすみの肩を抱き寄せた。

「乱馬・・・正直おまえが死んだなんてこと、今でも信じられねぇ。きっとどこかで平然と暮らしてるんだろなって思うんだ。でも・・・現実に引き戻されると必ず激しい後悔に襲われるんだ。おまえがいないだけでこんなにも変わっちまうなんてな。バカヤロウ!なんで・・・・戻ってこなかったんだ。あかねさんを助け出して、敵を倒しても、死んじまったら何も意味がねぇんだぞ!?ホントに・・・・・馬鹿だな・・・おまえ・・」
良牙は花の代わりに、腕に着けているネリマーから一枚のディスクを取り出して置いた。
それは一度だけ、あかねをヴォーカルに、皆でバンド活動した最初の製作ディスクであった。

一通り、皆が言葉を終えたとき、沈黙が続いた。重い沈黙がただ時間が経つのを感じさせていた。
道を横切るものは、何があったか知らない様子で通っていく。存在を消されたものに興味はないのかもしれない。しかし、ここにいる者にとってはそれがとても冷たく感じた。


「誰か、死んだのか?」
通り過ぎ行く人々の中の一人が声をかけてきた。あまり興味のなさそうに。皆は花が飾られた墓碑をただ眺めていた。そんな重苦しい雰囲気を察しないその男を見る事すらしなかった。
「ああ、そうだよ。俺たちにとってかけがえのない人がな。皆が無事でいられるのも、こいつらのおかげなんだ・・・」
良牙は皮肉の含む言い方でぶっきらぼうに答えた。
「そうか・・・じゃあ俺からも花を添えさせてもらうよ。」
男はそう言って墓碑に近づき、花を持って言った。
「あんたの事はわからねぇが、この星を守るために尽くしてくれたことに感謝する。今ここで、みんなと共に心にあんたの名を刻むよ。え〜っと、サオトメランマにテンドウアカネ・・・・・ん?」
男がいきなり素っ頓狂な声を上げた。さすがに沈黙していた皆もその男に視線が注がれる。
「え〜〜っと・・・・」
考え込むその男の後ろ髪には、首を傾げる男の動作に合わせて揺れる『おさげ』があった。

「ちょっと待て〜〜!!なんで俺とあかねの名前がここにあんだよ!ってか、俺たち死んだのか!?いつ?どうして!?」

パニックを起こして振り向いたその男の顔に皆は見覚えがあった。
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
「「『乱馬』〜!!?」」
乱馬に面識のある者は口を揃えて叫んだ。
「乱馬・・・おまえ・・・おまえ・・・」
混乱しながら言葉を搾り出そうとする良牙。しかし乱馬も混乱していた。
「ちょっと待て、なんでこういうことになってんだ?」
みんなの混乱がおさまらないところに、ひとりの女性が歩いてきた。
「乱馬〜、みんないたの?」
その女性を見て、またしても言葉を失う一同。乱馬だけが平然と答えていた。
「ああ。だけどちょっと訳わかんねーことになってな。」
その女性はあかねであった。二人とも生きていたのだ。
「あかね!・・・・生きてたんだな!」
「お父さん!」
感動の再開も束の間、良牙があかねのある一点を指して言った。
「あかねさん・・・そのおなか・・・・」
たちまち注目されるあかねの腹部。そこは大きく膨れ上がっていた。
「えへへ〜〜。」
嬉しそうに笑うあかね。状況は更に混乱に陥った。


―――数分後―――

ようやく落ち着いてきた一同に、乱馬たちは順を追って説明することになった。
「おまえ、どうやって生き延びたんだ?」
「ああ。実際、出血多量で死に掛けたんだがな。あかねと血液型が一緒だったのが幸いだったな。あかねが自分の腕を深く傷つけて俺の負傷部に合わせた状態で止血したんだ。古典的方法だったが、なんとか一命を取り留めたんだが、あかねも重傷負って結局二人で意識を失っちまったんだ。」
乱馬は自分の傷を見せた。そこは痛々しくも傷跡が残っていた。
「そうそう。大変だったんだから。で、気がついたときには民家に運ばれててね。少し介抱してもらってたんだけど、やっぱり重傷には変わらなくてね。ちょうど月へ向かうシャトルがあったから月面治療センターに行くことにしたの。」
「そ。で結局1年近くそこで集中治療してたってわけ。」

呆気に取られる皆。確かにそれならばあの場にあった二人の血液も、ここ二年以上の捜索活動においても当てはまる。

「だ、だったらなんで連絡よこさなかったんだよ。初めの一年はともかく、この一年は回復できたんだろ?」
声を荒げる良牙。当の乱馬は驚いたように目を丸くしていた。
「いや・・・・したぞ?」
「へ?」
「いやぁ、なんかしらねーけど、IDが無効化されててな。ネリマーが働かなくなってたんだ。かといって特殊コードでロックされている本部には繋がらないし、民間でセキュリティーなしで直通できるとしたら整備工場くらいなもんだったからな。この一年、何度となく連絡したんだが・・・・」
一斉に真之介に視線が向けられる。
「真之介のやつ、親父を呼んでくれって言っても呼びに言ったまま戻ってこないし、良牙かムースを頼んでも、いつのまにか仕事してるし・・・・言っとくけど、一応今日だって帰る旨を伝えたんだが・・・・・まさか一度も連絡が伝わっていなかったとは・・・」
非難するように皆の視線が真之介に突き刺さる。
「すまん!忘れてた!」
ここ一年、真之介が言った『大変!』というのはこのことだったと納得する良牙とムース。つい先程のこともその一部であろう。真相を知れば意外と呆気ないものであった。
「乱馬!」「あかね!」
「「おかえり!」」
皆の言葉が重なった。乱馬とあかねは顔を見合わせ、微笑みながら答えた。

「「ただいま!」」


―――本部・控え室―――

「さて・・・時間もないし、そろそろ俺たち行くとするよ。」
乱馬が席を立った。
「え、どこかへ行くのか?まだ帰ってきたばかりじゃないか・・」
「いや、そっちの事情はわかった。俺は存在を消されてるし、あかねだって処分が解かれたわけでもない。これ以上ここに留まるのはな・・・それに・・・あかねのこともあるしな。」
妊婦であるあかねを気遣う乱馬。かつての愛想のなさはどこへやら、あかねにべったりと付いている。
「そうそう。それにIDが使えなくなってから、月からここに来るのに密航してるからね。色々とバレたらマズイわね。」
「暫くは地球に滞在するからな。死に掛けた時の山の近くの自然は凄かったからな。小屋でも作って生活するさ。」
「問題は、そこまでどうやって移動するか、だね?またこっそり密航するにしても、人里離れたあんなとこまで行けないわよ。」
良牙は苦笑して真之介に合図した。


―――格納庫―――

「これは・・・・」
案内された場所は格納庫。その一番奥には乱馬が視死線を共にし、あかねと一緒に最後まで戦い抜いた言わば彼の分身とも呼べる機体があった。
「てっきり、解体されたとばかり思ってたが・・・・」
「ま、今回ばかりは真之介のもの忘れの激しさに感謝だな。本来ならスクラップだったんだぜ?」
「しかし・・・・使ってもいいのか?本部にバレたら・・・」
飛竜を見上げ、乱馬は呟いた。移動手段が見つかったことには感謝だが、使うことには躊躇われた。
「もともと廃棄処分だったんだ。どうせ戦闘はもうできない。それにおまえの慰労金代わりだ。」
真之介の言葉で乱馬はふっと微笑んだ。

乱馬はあかねを連れてコクピットに乗り込んだ。その内部は二年という歳月を経てなお懐かしい感じがした。
「良牙、ムース・・・バンドできなくてすまなかったな。」
二人に向かって乱馬が叫ぶ。二人はそれに笑顔で答えた。
「な〜に、気にするな。」
「んだ。また会いに行くだ。」
続いてあかねも父である早雲、そして姉たちに向かって言った。
「お父さん、お姉ちゃんたち、もっとゆっくり話したかったけど・・・」
「ああ、今度ゆっくり話そう。乱馬君、あかねを幸せにしてくれ。」
早雲の言葉に、乱馬は力強く頷いた。
「おじさん・・・・必ず幸せにするよ。」
そして最後に、乱馬は両親に向かって言った。
「親父、おふくろ・・・・行ってくる!」
二人は何も言わずに頷いた。


外部に繋がる扉が開かれた。アーマーがゆっくりと歩き出し、腰を沈めた。

「じゃあみんな・・・・・・・・・またな!」

スラスターが噴射し、機体は外へ飛び出していった。

もう戦争はない。そこには、青く広がる空があるだけだから・・・・


END





作者さまより
やっぱ、バッドエンドは性に合わないですね。前回で終えようと思ったんですが、やはりダメでした。
おまけ感覚で短く終えるつもりでしたが、結局いつもぐらいの長さになってしまいました。
幼少時代に夢中になったロボットとかの影響で始めた作品ですが、最初の一話以降、なんか内容的に専門用語みたいなのが多くなってきて、理解してもらえないと思い、正直挫折しかけたのですが、なんとか終わってよかったです。最後の決戦部分は、早めに終わらせようという私の意志が働いて、簡潔にしています。別物語の一つとして考えていただければ幸いです。


 パラレル大作、終了です。
 パラレルになっても、「乱馬とあかね」の作品は「悲劇的結末」ではなくやっぱりハッピーエンドが似合うと思います。(もしかして、呪泉洞の規定に気を遣ってくださいました?)
 勿論、第七話で終了していても、それはそれで、心に刻まれる作品には違いないです。でも、あそこで終焉を迎えてしまうと、「ぎゃああ!」と悲鳴をあげてしまうのは私だけでは無いでしょう。
 この世界の二人にも、頑張った分だけ、この先には幸せが続く事を祈りつつ。
(一之瀬けいこ)



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