◇戦場の息吹
   2ND MISSION 仲間との信頼

武蔵さま作


−−−地球−−−

「ったく、一時はどうなるかと思ったぜ。」
乱馬は安堵の溜め息をつきながら言った。乱馬達の乗った小型船は大気圏突入の際、ムースの近眼により計器の測定値にミスがあったのだ。その為危うく燃え尽きるところだったのだ。
「今後貴様には操縦を任せないからな!」
ムースを責める良牙にムースは負けずに反抗していた。
「おまえとて方向を間違えたではないか!そのせいで地球との距離がうまく割りだせなかったんじゃ!」
二人は暫く言い争っていたがやがてぐったりとその場に座り込んでしまった。
「それにしてもこの暑さ、なんとかならんかの〜。」
暫くの間、宇宙での任務をこなしてきた三人に久しぶりの地球の気温は堪え難かった。
「そういうなよムース。おまえの生まれの水星だって昔は火の惑星だって言われてたんだぞ。」
乱馬は慰めるつもりで言ったのだが全く気休めにもならなかった。今でこそ太陽系等の中で最も太陽に近かった惑星だが、惑星開拓のおかげで快適な生活ができるようになったのだ。それは火星出身の良牙にも同じ事であった。唯一乱馬だけが地球出身であり、三人は士官学校で出会った。当初は仲が悪くお互いに忌み嫌い合っていたが、士官学校卒業後、すぐに戦争が始まり三人はBA(バトルアーマー)のパイロットを志願した。以来三人は部隊を独立し、三人だけの小隊として任務に就く事にしていた。
「そういや乱馬、今回の任務の件だが親父さん・・・いや、早乙女司令官に報告しに行かなきゃまずいんじゃないか?」
良牙はふと思い出したように乱馬に言った。乱馬は暑さで目が虚ろになっていたが宇宙服を脱ぎ、軍服に着替えると本部に直行した。
「早乙女乱馬、ただいま帰還しました。」
自動でドアが開き、乱馬は中に入り敬礼しながら言った。するとその奥に座っていた一人の眼鏡をかけ、帽子を冠った中年の男は口元に笑みを浮かべた。
「帰ってきたか。この度の任務はごくろうであった。今回の任務の件で乱馬、おまえは大佐に階級が上がったぞ。」
中年の男、早乙女玄馬は椅子をくるりと回し、乱馬に背を向けて話し出した。
「ところで乱馬、おまえ達第一アーマー小隊だがそろそろ独立して大隊の方に入ってはどうだ?響大尉やムース中尉も中隊から是非派遣して欲しいと連絡がきておる。」
玄馬の言葉に先ほどまで敬意をはらっていた乱馬がぶっきらぼうな口調に戻って言った。
「俺達は好きなように行動する。それに小隊の方が任務上色々役立つんでね。」
親子でなければこんな口調を言えば即座に軍を辞めさせられるであろうが玄馬はあまり気にせず言葉を続けた。
「まあ、ならば好きにするがよい。それと今回のおまえ達の機体の損傷が激しい為、暫く任務は控えておけ。ついでにおまえ達のパイロットとしての活躍をハーブ総督が認めて下さった。現在ジュセン軍最高技術で造り上げられたおまえ達専用のBAが造られておる。」
玄馬の言葉を聞いていた乱馬は目を輝かせた。
「ホントか!?今までの量産型じゃ戦いに限界があったからな。助かるぜ親父。」
「礼ならハーブ総督に言え。それからここではわしを親父と呼ぶな。司令官と呼べ。」
「わかったよ、親父。」
乱馬はそう言ってすぐに部屋から出て行ってしまった。
「まったく、わかっとらんじゃないか。」
残された玄馬は乱馬が出て行くのを見ると呟いた。

「ハーブ総督!」
また別の部屋に入る乱馬。もちろん敬礼も忘れずにして中に入った。そこには護衛達に囲まれた威厳のある人物が座っていた。
「早乙女少佐、いや、今は大佐だったな。今回の任務はごくろうであった。」
ハーブは周りの御衛兵を退室させた。
「本当に俺達専用のBAが造られてるんですか?」
乱馬がBAの事について訊きにきたのを知っていたようにハーブは笑って答えた。
「ああ、おまえ達の活躍は私達の間では有名だ。まだ若いのに大した物だ。実力でいえば将官の位だがまだ若いからな・・・おまえら三人は確か士官学校も優秀な成績だった為本来の行程を飛ばしてこれたらしいな。異例の事だったが私からサフラン元帥に相談した所、今回の専用BA開発の許可を頂いたのだ。」
玄馬の言った事が本当であったと知った乱馬は心底喜んだ。なにせ機体の性能が違うだけで戦い方や強さまで変わるのだ。一般の量産機で戦っていたら本来楽な任務も苦労する。だが専用BAは将官クラスでなければ使用の許可が降りないのだ。乱馬達は士官クラスであったが最年少の士官であり、任務の遂行率も悪くなかった。天才とまで言われたほどであったので特別に許可が降りたのだ。
「本当にありがとうございます!」
敬礼と同時に深く頭を下げる乱馬。
「頭を上げてくれ。私が以前宝来山への任務の時、崖に挟まって動けなかった私の機体を救ってくれたせめてもの礼だ。」
乱馬はまた一礼すると部屋を出た。
(俺の機体か。どんなのかな?ちょっくら見てくとすっか!)

乱馬は整備工場に向かった。するとそこには良牙とムースの姿もあった。
「よう、良牙にムース。おめーらも来てたのか?」
乱馬が声をかけると二人も乱馬に気付き敬礼した。それを見て乱馬は二人の行為を止めさせた。
「そんなことすんなよ。階級が違っても普段通りにしてくれればいいっていつも言ってるだろ。」
乱馬に言われて敬礼する手を下ろす良牙とムース。
「乱馬、おまえ大佐になったんだろ?同じ期に士官学校を卒業したのに何でいっつもおまえに一歩先を越されるんだろうな。折角二階級特進になっても中佐か。」
溜め息をつく良牙の隣ではムースがさらに深い溜め息をついて言った。
「良牙はまだいい方だ。おらなんか同じ期に卒業してもさらに一階級低い少佐だ。こんなことじゃシャンプーもおらの事いつまで経っても認めてくれねーだ。」
三人はまだ十八歳である。士官学校で優秀成績を修めた為異例ながらも若くして卒業した三人。現時点で士官階級の上位から三つを取得している時点で確実に凄いのだが良牙とムースにしてみれば同じ期に卒業したのだから階級も当然同じとみていたのだから不満もあった。
「何の騒ぎだ?」
工場の中からオイルのついた作業服を着た男が三人の前に現れた。その男は乱馬達の姿を見ると姿勢を正し、敬礼した。
「これは、早乙女大佐を初めとする第一アーマー小隊の方々。御帰還なされてましたか。」
堅苦しい挨拶をする男に三人は戸惑った。
「おい、真之介。俺達の事はいつも通りでいいって言っただろ。階級が上がる度忘れやがって・・・」
乱馬の言葉に首を傾けていた真之介だが、許可を得たという事で普通の話し方になった。
「そうだったか?まあ、そんな事よりおまえ達の機体、まだ完全ではないが見て行くか?」
「ああ、そうさせてもらうよ。」


−−−整備工場内ーーー

「これが、俺達の機体か・・・・」
整備工場の奥には三機のアーマーが置かれていた。まだ頭部や腕などがくっついていないが大方できていた。
「まず、装甲だが特殊合金を使っている。頑丈で軽いが敵のレーダーに補足されやすい。だがおまえ達なら大丈夫だろう。次に武器だが今回の任務でおまえ達が得た情報の中に過去のビーム兵器について記されているものがあった。早速これを利用しようと考えて・・・・って聞いているのか!?」
真之介が説明する中、乱馬達は自分達の機体を見上げながら輝かしい目をしていた。乱馬達は真之介の声で我に帰り、話を聞いた。
「取り敢えず試作段階だが腰部に筒状の物がある。それを取り出して握れば電荷を与えられた粒子がプラズマ化してブレードの形状を作り出す。万が一の時の為、乱馬と良牙の機体には手の部分にもビーム兵器を搭載しているが開発途中だ。それと名前だがおまえ達の異名からつけようかと思ってるんだ。乱馬の異名『無敵の飛竜』、良牙の異名『最強の獅子』、ムースの異名『孤高の白鴻』だがどう思う?」
延々と続く真之介の機体についての説明だが乱馬達もいい加減、うんざりしてきた。機体の性能はパイロットである彼らには乗ればわかる事なのだ。すると工場に女性の声が複数響いてきた。
「乱馬ーー!」「乱ちゃ〜ん!」
逃げ出す口実ができた三人はその女性の方に向かって逃げ出した。真之介はそんな事にも気がつかず、まだ説明を続けていた。
「ウっちゃんにシャンプー、元気そうだな。」
表情を変えもしないで乱馬は二人の女性に声をかけた。
「乱ちゃん、今度は大佐やって聞いたんやけどほんまか?」
シャンプーと右京の質問攻めに乱馬は難無く答えていた。しかしそのやり取りを見た良牙はポツリと呟いた。
「相変わらず女に対しては無愛想だな。なあ、ムース?」
良牙は隣にいたムースに話し掛けたがムースの姿は既になく、女性の一人、シャンプーのところにいた。
「シャンプー、おらは今回の任務で少佐になっただ。」
シャンプーにアプローチをかけるムースだが、シャンプーは冷ややかな目であしらっていた。
「やれやれ、ムースも前途多難だな。」
腕組みをして乱馬とムースを見ていた良牙はふと横のテントに目がいった。そこでは救護班が怪我人の手当てをしていた。そこにいる一人の男を見つけると、良牙は駆け寄っていった。
「東風先生!」
名を呼ばれた男は眼鏡をしっかりかけ直し、良牙の方に向き直った。
「おや、良牙君。無事に帰還できたようだね。」
穏やかな顔を向けてニコニコ笑う東風。良牙は手をもじもじさせながら何かを言おうとしていた。それを察した東風はまだ良牙が何も言っていないのにも拘わらず、少し離れた所を指差して言った。
「あかりちゃんなら第二班だからあそこのテントにいるよ。」
良牙は照れていた顔を輝かせ、東風の指したテント目掛けて猛スピードで走り出した。
「あかりちゃーーーーん!」
大声で叫ぶ良牙に、テントから顔を出した少女は良牙を見るとすぐに駆け出した。
「良牙様!!」
看護服にも拘わらず、あかりは良牙に抱きついた。
この少女、以前ハッポウ軍に村を占領され、拠点とされていたのだが、第一小隊の良牙達によって救い出されたのである。その時に良牙とあかりは相思相愛になったのだ。以後、役に立ちたいという事であかりはジュセン軍の救護班に志願したのであった。
乱馬、良牙、ムース、この三人はこの日、地球に帰ってきた休息を有意義に過ごした。


−−−ハッポウ軍本部−−−

「天道あかね、帰還いたしました。」
自動でドアが開き、中には座っている小柄な老人がいた。
「この度の任務でジュセン軍との戦闘の末、一機アーマーを失いました。しかしながら今回の任務のアーマーの最終調整に関しましては既に整備士にレポートを送りました。」
老人はキセルで煙草を吹かしていたがあかねの方に目をやると無気味な笑みを浮かべた。
「任務遂行ごくろう。しかし九能准将からの連絡によると一人のジュセン軍のパイロットといたそうだが一体何をしていたのじゃ?」
疑惑の目を向ける老人にあかねは顔色を変える事なく答えた。
「あの者とは一時的に協力したに過ぎません。それに近辺に幾つかジュセン軍のアーマーもありました。九能准将といえどもそれだけの数と戦うには苦戦を強いられると思い、あの場は帰還する方が正しいと判断いたしました。」
「じゃがその者が御主のアーマーを破壊したのではないのか?そのような者、後々我が軍の脅威になるやもしれぬ。以後注意するべきじゃな。」
老人はそのまま椅子を回転させ、あかねに背を向けてまた煙草を吹かし始めた。
「あの!・・・・」
あかねは何か言いたそうにそのまま老人に向かって叫んだ。
「私の父や姉達はいつ解放してもらえるんでしょうか!?」
あかねの悲痛な叫びに対し、老人は後ろを向いたまま笑って言った。
「な〜に、心配せんでもこの戦いが終わればちゃんと解放すると約束しよう。」
信じられると言い切れなかったがあかねはそのまま一礼して部屋を出た。すると通路から歩いてくる男に出会い、その男はあかねに声をかけてきた。
「おお、あかね中尉ではないか。いや、確か本日付けで大尉になったそうだな。どうだ、今夜祝いのパーティーでも・・・・」
男の誘いをあかねは丁重に断った。
「いえ、九能准将。これから新しいアーマーのテストをしますので次の機会でということで・・・」
あかねはそのまま九能を見ないで通路をスタスタと歩いて行った。
「ふふっ、僕に助けられた事で遠慮しているな。かわいいやつだ。」
妄想を膨らませた九能はそのまま軽快な足取りでどこかへ行ってしまった。


−−−ジュセン軍・第一アーマー小隊の部屋−−−

「やっぱり地球はいいな〜。よく眠れたぜ。」
ベッドから起きた良牙はそのまま隣にいるムースに言った。
「んだ。ただ暑く感じるのが難点じゃがの〜。」
良牙とムースは大きく伸びをした後、眠気を覚ますように顔を叩いた。しかしいつもならとっくに起きているもう一人のチームメイトが眠っている事に気がついた。
「乱馬の奴、いつもならこの時刻ならとっくにおきてるはずなのに・・・」
「夕べ遅くまで何やら思いつめておったぞ。」
良牙とムースが心配して覗き込むと、乱馬の規則正しい寝息から微かに声がした。
「あ・・かね・・」
その言葉を聞き取った良牙とムースはその名に心当たりがあったので顔を見合わせた。
「あかねって確か二日前乱馬が言ってたハッポウ軍のパイロットだよな。」
「そうじゃったな。とすると昨夜もそのあかねの事を考えていたのかもしれんな。」
二人は暫く乱馬の寝顔を見つめていた。
「やっぱり、乱馬の奴、そのあかねって娘に少なからず好感を持ってるな。」
「ああ、じゃが相手が敵パイロットとなるとその恋も報われんの〜。乱馬はその事をわかってるんじゃろうか・・・・」
暫く乱馬の寝顔を見ていた二人だが、集合時間が迫っている事に気付き急いで乱馬を起こした。


「この度、第一アーマー小隊の活躍により、我が軍に遂にビーム兵器の開発が可能となった。コストは多少かかるが戦力は格段に向上した。」
作戦指令室に集まった各部隊はハーブの言葉を一心に聞いていた。細かい作戦内容を伝えた後、ハーブは乱馬達第一アーマー小隊を残し、他を解散させた。
「先ほど整備士の真之介から連絡があった。おまえ達のBAが大方完成したらしい。今回の任務はその機体のテストも兼ねて、北部の街に向かってくれ。あそこはハッポウ軍の拠点となっていて、そこに住んでいた民間人が人質として捕らえられている。そこを解放するのだ。まずは工場に向かってくれ。」
乱馬達は承諾し、真之介のいる整備工場に向かった。

−−−整備工場−−−

「おっ、来たか。待ってたぞ。」
真之介は乱馬達が来るのを待っていた。
「俺達のアーマーが完成したってのは本当か?」
乱馬は真之介に近寄って尋ねた。すると真之介は合図して部下になにやら命令した。すると、巨大な扉が開かれ、中から三機のアーマーが出現した。
「まだ試作段階だからな。あまり無茶はするな。それと、乱馬。おまえが宇宙で助けた仲間のBAパイロット、確か名は紅つばさと言ってたけど、そいつが助けられた礼ということで今エネルギー供給によって変形可能になる特殊鉱石の発掘に向かっている。その鉱石があればこのアーマーにもトランスフォームができるようになるぞ。」
真之介の言葉に乱馬達は更に目を輝かせた。
「へ〜、それじゃこれよりもっと強くなるって事だな。」
「それはさておき、機体の説明をする。」
(またかよ。)
乱馬達はいい加減真之介の説明好きに嫌気がさしていたが試作段階の機体では整備士の言う事は聞かねばならないという事で黙って聞いていた。
「まずおまえ達の機体はおまえ達の性能に合わせて造られている。乱馬の機体『飛竜』は近距離挌闘型だ。つづいて良牙の機体『獅子』は中距離援護型。最後にムースの機体『白鴻』は遠距離狙撃型だ。各機体の性能や攻撃パターンは全て異なる。つまりはチームの連係がうまくいかなければやられるが逆に連係がとれていれば最強という事だ。」
この後も機体の性能について延々と説明を聞かされた為、乱馬達第一アーマー小隊が出撃は1時間遅れてしまった。


体長30メートル、その重さ50トンに及ぶ乱馬達のアーマーは大型輸送機によって北部に運ばれていた。
「いよいよ俺達のアーマーの性能を試す時が来たぜ!」
「ああ、早く着いて欲しいだ。」
各機体内で待機している良牙とムースは戦争という事も忘れてわくわくしていた。しかし乱馬だけは浮かない顔をしていた。
「どうした、乱馬?おまえだって嬉しいだろ?」
黙っている乱馬に気付いた良牙は不思議に思って乱馬に尋ねた。
「あ、ああ。」
乱馬の声が沈んでいるのを聞いた良牙はコクピット内の機械の中の一つのスイッチを押した。すると通信モニターの中心に乱馬の顔が映し出された。その顔はひどく落ち込んだ様子だった。その顔に心当たりがあった良牙は乱馬に話し掛けた。
「サフラン元帥に言われた言葉を気にしているのか?」
その言葉に乱馬は少し反応した。どうやら図星だとわかった良牙は肩を竦めた。すると通信モニターが分割され、ムースの顔も映し出された。内部通信で良牙の話を聞いていたので気になったらしい。
「気にする事はないと思うぞ。おらたちだって別に間違った事はしておらん。」
乱馬が落ち込むような出来事は出撃する数分間の事であった。


−−−出撃前−−−

「いやー、真之介の話にも困ったもんだぜ。」
乱馬達はパイロットスーツを着て、整備工場に向かう途中であった。
【第一アーマー小隊、至急本部へ直行して下さい。繰り返します・・・・】
アナウンスが流れ、乱馬達は足を止めた。
「なんだ?これから出撃だってーのに・・・」
本部へ急いで向かう乱馬達、そこで待ち受けていたのはサフラン元帥と近辺に座っている高官達であった。
「前回のビーム兵器開発についての任務は御苦労であった。しかし、おまえ達の戦闘状況に余はわからぬことがある。おまえ達は敵と遭遇した場合、必ず敵のアーマー破壊だけに留めている。現状報告によるとその敵のパイロット達は全て生きているそうだな。何故そんな戦いをする?」
サフランの問いに対し、乱馬は即座に答えた。
「はっ!敵アーマーの破壊により、敵パイロットは戦力を失うと考えた為であります!」
敬礼を払いながらしっかりとした口調で話す乱馬。良牙とムースも同意見の為黙って敬礼した。
「余ならば、敵の胸部を貫いた方が簡単に敵の戦力を奪えると思うぞ。」
「しかし、敵だって同じ人間です。そのような事をしなくても・・・・」
乱馬の言動にその場にいる高官達はザワザワと騒ぎ始めた。
「おまえ達は今の世界をなんだと思っているのだ?これは戦争だぞ!そんな甘い考えで通用すると思っているのか!?仮におまえ達のようなやり方でその場を我が軍の勝利に導いたとしても、その逃したパイロットが新たにアーマーに乗って戦えば結局同じ事になってしまうのだ!これは戦争だ!その事を常に頭に入れておいて欲しいものだ。余はおまえ達の活躍には大いに期待しているのだからな・・・」
サフランの言葉が終わり、乱馬達は退室した。それから乱馬の様子がおかしくなったのだ。


「俺達のやり方は間違っているのか?」
俯いたまま呟く乱馬。その言葉を聞き、良牙とムースは少し微笑んだ。
「俺達は俺達のやり方がある。確かにこれは戦争だ。だが俺達は人殺しにはなりたくない。だったら今までのやり方でいいんじゃないのか?」
「そうじゃ、おら達のやっている事は間違ってなんかおらん。乱馬もそんなに考え込む必要などないぞ。」
良牙とムースの励ましの言葉に乱馬の顔が笑いに変わった。
「へへっ、そうだな。俺達は俺達のやり方で・・・上官に何を言われようと任務さえ遂行してればいいんだな。」
良牙とムースも乱馬が元気付いたのを見ると安心した。
「良牙、ムース・・・」
「なんだ?」「なんじゃ?」
乱馬の言葉に良牙とムースは無線に耳を傾けた。
「おまえらと一緒の部隊でよかった。」
乱馬の言葉を聞くと良牙とムースは少し照れながら言った。
「バカ野郎!それは俺達の台詞だ!」
「そうじゃ!おら達、乱馬と一緒のチームじゃなかったら今頃人を殺めているかもしれんから感謝しているのはこっちのほうじゃ。」
先ほどまでの重い空気はどこかに吹き飛ばされたように三人の顔は晴れやかになっていた。
『目標地点に到達します。第一アーマー小隊は出撃準備をして下さい。』
機内にアナウンスが流れる。
「さ〜て、行くとするか!」
「おうっ!」「んだ!」
「第一アーマー小隊、出撃します!」



つづく 




作者さまより

日本語だとパッとしないので英語などの横文字やら専門用語など出てきますが、実際には日本語の方が読み辛く、そして私自身書き辛いので許して下さい。
取り敢えず、全ては無理ですが、らんま1/2に登場するキャラは極力出そうと思っています


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