◇お互いの想い   良牙の場合
武蔵さま作


−−−山中−−−

「ここは一体どこなんだーー!」
俺の声も空しく響く山の中。乱馬を倒すため、俺は3日前に修行の旅に出た。富士にある青木ヶ原樹海に着いたはいいが、早速俺は迷っている。ただでさえ迷い易く、自殺の名所であるここは俺にとって最も危険な場所だったかもしれない。食料はもうすでに尽き、今朝から木の実や茸で食い繋いでいる。
「こんな所でくたばってたまるか!天道道場ではあかねさんが俺の帰りを待っているに違い無い。」
『あかねさんが待っている。』そのことが俺の唯一の生きる糧だ。とりあえず今はどうにかして人のいる所に出なければ・・・・


−−−数時間後−−−

駄目だ、どうも同じ所をぐるぐる回っている気がする。もう日が沈む。仕方が無いが今日はここでまた一晩過ごすか・・・
あかねさん・・・君と最初に会ったのは確か風林館高校だったな。乱馬を追いかけて来て、乱馬と勝負し、そして・・・・君の髪を切ってしまった。あのときはぶん殴られても仕方が無かった。それから乱馬に復讐心を燃やし、天道道場に乗り込み、豚になってあかねさんは俺の鼻に・・・////
俺はあかねさんが居たからここまで生きていけた。そんな気さえする。今頃どうしているだろうか・・・
勉強か?いや稽古か?だとしたらやはり乱馬と稽古を・・・
「かわいくねー、色気がねーー!」
おのれーー乱馬!心無しか幻聴まで聞こえて来た。しかも一度聞こえた幻聴はますますエスカレートしてきた。
「良牙君、旅に出てから連絡来ないね。心配だわ。」
あかねさん。俺の心配を。なんて優しい人だ。
「放っとけよ。どうせまた迷ってんだろ。」
おのれ乱馬!帰ったら真っ先に貴様に地獄を見せてくれる!
「そんなことより今は俺達だけだな。・・・俺、ずっと前からあかねのこと・・・・」
なにを言い出すんだ乱馬!
「乱馬、実はあたしも・・・・」
あかねさん!そんな・・・・
俺は、不幸だ・・・・不幸の、どん底だ・・・
「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜!獅子咆哮弾!」
俺の妄想から始まった不幸は獅子咆哮弾となって辺り一面の木々を無と化してしまった。
急いで天道道場に向かわねば!幸い今の一撃で道が開けた。待ってろよ乱馬、今のが現実にならぬために俺は貴様を倒す!


−−−二日後−−−

やっと着いた。しかし腹が減り過ぎてもう駄目・・・・だ。
ガラガラッ
「んっ?そこに倒れとるんは良牙やないか!一体何しとるん?」
倒れた瞬間、近くの戸が開き、中から出てきたのは右京だった。俺はもはや立つ事も出来ないくらい参っていた。しかしなんとか訴えなければ正直、本当にやばい!ただでさえ食べていないのに、一昨日の朝以降何も飲まず食わずで歩き続けたのだから無理は無い。なんとか右京に訴えようにも声すら出ない。もう、だめかもしれん。
ぐぅ〜〜
「なんや、腹減っとるんかいな。ほならはよ言わんかい!どっこいせっ。」
右京は俺を担ぎ上げ店に入った。そして椅子に座らせ、お好み焼きを焼いてくれた。
「まったく、また迷ったんか?まったくしょーもないわ!ほらっイカ玉や。」
俺の前にイカ玉が置かれる。しかし体が思うように動かない。食べなかった所為でもあるがやはり獅子咆哮弾であれだけ気を使った事もあるだろう。
なんとか上体を起こし食べようとしていると・・
「しゃーない、うちが食べさせたる。ほらっ!」
右京がお好み焼きを俺の口に運んでくれる。飯まで食わせてもらうとは、少し情けない気もするが有り難みを感じずにはいられなかった。
飯を食い終わり、少しだが回復した俺は礼を言って店を出ようとした。
「ちょいまち!そないに弱った体じゃまた倒れるで。今日は家に泊まってき!」
耳を疑った。今右京は泊まっていけと言ったのだろうか?確かにまだふらつくし危ない状態ではある。しかし仮にも俺は男だ。いくら変身体質でブタになろうとも本体は紛れも無い男なのだ。
「2階に布団敷いておくさかい、今日1日はゆっくり休んどき。うちはこれから商売や。」
反論は許されず、俺は久遠寺家、といっても右京独りだが泊まる事になった。疲れも溜まっていた事もあり、俺はすぐに眠りについた。



眠りから覚めると、もう既に外は日が落ちていた。下の階からは戸の閉まる音が聞こえてきた。どうやら店じまいらしい。右京が2階に上がってくるのがわかった。
ガラッ
戸を開けて右京が入ってきた。
「よ、よう。」
言葉がうまく出ない。何を言ったら良いのやら。
「目ー覚めたんか、ほならちょうどええ、風呂行くで。」
右京に勧められて俺達は銭湯に行く事になった。なんだか右京の言われるがままになっている。
今日は空いていて客はほとんどいなかった。男湯で俺は考え事をしていた。
「なんかこういうのって夫婦みたいだ。」
声に出して慌てて口を押さえた。俺にはあかねさんがいるじゃないか。そうだ!俺は乱馬を倒すためにここまで頑張ってきたじゃないか。
「よし、今夜はもう寝て明日、乱馬と決着をつけてやるぜ!」
俺は風呂から上がり、外へ出た。右京も同じように出たらしく、ちょうど出口のところで出くわした。
「なんか、うちら夫婦みたいやね///」
顔を赤らめて右京が言った。さっき俺が考えていた事と同じだ。俺は黙ってしまった。右京はあまり深く考えていないのか、そのことには触れなかった。
俺は少し外で熱くなっている体を冷ました。風呂のせいなのかまたは・・・
しばらくして俺は寝室へ向かった。そこで俺が見たものは・・・・
「ふ、布団がぴったりと隣り合わせに・・・」
先ほどの風呂での言葉、『夫婦』という文字が甦ってきた。
「あの〜、右京さん?」
余りの緊張で声が違ったように聞こえる。この状態は非常にまずい!俺にはあかねさんが・・・
「ああ、良牙。湯冷めせーへんかった?」
笑顔で出迎える右京。
「ああ、大丈夫だ・・・・ってそうじゃなくて、この状況は一体どういうことだ?」
「そないなこと言うても仕方ないやん。うち、一人暮らしやからそんなにこの部屋広くできてないんや。もうじき4月ゆーてもまだ肌寒いしな。それに良牙はあかねちゃんの事想うとるんやろ?せやったらうちかて安心できるってもんや。」
まさかそれだけの理由で俺をここに?
「いいのか?」
俺は男だ。正直、こういう場面では理性を失いやすいがこうまで信頼されているからには絶対に自制心を保たねばならない。
「ほな、うち一階を片付けてくるさかい、先に寝とってええで。」
右京は一階へ向かって行った。そうだ!この間にさっさと寝てしまえばいいんだ。
「ダメだ、寝られない。やはりさっきまで寝ていたからだろうか?それとも緊張のせいか?」
とにかく俺はまったく眠気がなかった。しかしこのままではまずい。こうなったら奥の手!
「せいっ!」
俺は自分の頭部を思いっきり殴った。鈍い音と共に俺の意識は遠のいた。


「ここは、どこだ?」
朝日が差し込んできて、俺は目が覚めた。俺の胸に何かがある。どうも手のようだ。一体誰の?と思い、ふと隣を見ると・・・
「う、右京!」
右京が眠っていた。そういえば俺は昨夜右京に泊めてもらったんだった。俺の隣では右京が規則的な寝息をたてて眠っている。
『ドクン!』
一瞬心臓が波打ったように思った。右京の寝顔を見るのは初めてだが、こいつ、結構かわいい?
普段、あの強気な一面を見ているだけに、こんな右京の顔を見るとあまりのギャップに少し思考が鈍ってしまう。
「そういえばこいつとは長い付き合いなんだよな。」
破恋洞ではペアを組んで乱馬とあかねさんの仲を邪魔しようとしてなぜか俺達が酷い目に会ってしまった。桃源郷でもあかねさんを助けようとして間違った部屋に行った時、右京がいたんだよな。あかねさんを助けることで頭がいっぱいだったけど、あのサル野郎を倒して気がついた時、右京に一瞬目を奪われたのも事実だ。俺は、右京の事どう思っているんだろう?初めは乱馬とあかねさんの仲を裂くという共通点で一致した仲間の感覚だった。だけど今は・・・
「う〜ん、もう朝かいな。おはよう良牙!結構早起きやな。うち、これから商売やけどおまえはどないするん?」
右京が目を覚ました。一瞬俺は心の声が聞こえてしまったんじゃないかと思った。右京の問いかけに俺は考えた。乱馬と闘うこともあるが、今俺一人で行けば迷うことは確実だ。この際、右京に連れて行ってもらうか。
「俺も、手伝うよ。だから、仕事が終わったら俺を・・・」
「天道道場に連れて行けばいいんやな。今日は昼間での仕事やし、うちも乱ちゃんに会いにいくさかい一緒に行こか?」
俺はまだ何も言っていないんだがなぜそこまで俺の意図を?
ともかく、俺は右京の手伝いをすることになった。


「いらっしゃ〜い。」
どんどん客が入ってくる。俺が具をまぜて右京の方に投げる。鉄板に焼かれたお好み焼きを右京は器用にひっくり返しながら客の皿に置く。結構いいコンビネーションだ。
しかし、大変だ。こんなにも忙しい仕事を右京は一人でやってのけているのか?ちょっと尊敬するな。
昼近くになった。客は相変わらずたくさんいるが、店に入ってきた1人の男を俺は見逃さなかった。
「よ〜、ウっちゃん。何か食わせてくれよ。」
乱馬だ。ふっ、貴様の方から現れてくるとは!俺は乱馬に話し掛けようとしたがそれは右京によって止められてしまった。
「乱ちゃん!うれしいわ〜。うちに会いに来てくれたん?イカ玉でもミックスでも何でも食べてき!」
「サンキュー、ウっちゃん。あれ?なんで良牙がここにいるんだ?」
やっと俺の存在に気付きやがった。しかし、乱馬にはまさか右京の家に泊まった等とは口がさけても言えん!
「ふっ、貴様に教えることは何一つ・・・」
「良牙は昨日うちの店前で倒れとったもんやから泊めてあげてたんよ。」
なんで言ってしまうんだ右京〜〜。正直、俺は困った。乱馬に知られたということは当然あかねさんにもこのことは伝わるのであって、それは俺にとってかなりの弱味になるのでは・・・
「乱馬!勝負だ!」
ここは一つ、誤魔化すしかない。そしてこの闘いに勝てば俺も乱馬の弱味を握るということになる。正に完璧な作戦だ。
「いや、今日は都合が悪い。ムースにも決闘を挑まれてな、こっちが承諾もしてねぇのに勝手に決めやがった。というわけでおまえとの決闘は今度だな。」
ムースが?珍しいこともあるもんだ。どうせシャンプーを賭けてとのことだろう。しかし困ったな。今日一日することがなくなっちまった。この店ももうすぐ終わりだし・・・仕方ねえ、もう一度修行の旅にでも行くかな。
「右京、世話になったな。」
俺が荷物を持って外へ出ようとすると右京が呼び止めた。
「ちょい待ち、良牙!おまえ天道家に行くんやろ?うちが連れてったる。」
乱馬がここにいて、その後風林館高校でムースと決闘をするんだったら右京は天道家に用はないはず。なぜ俺を連れてってくれるのかはわからないが俺は好意に甘えることにした。



「こうして2人して歩くのも久しぶりやな〜。」
久しぶりどころかほとんどないだろう。右京は俺にかまっているのは何故なんだろうか。乱馬に対する当て付けなのか?
「右京、乱馬の事・・・・まだ好きなのか?」
何故か聞いてしまった。自分でも何故こんなことを急に言ったのかわからない。だが、言ってしまった以上答えを聞きたい。そんな気持ちが俺の中にあった。
「乱ちゃんのこと、今でも好きや!」
満面の笑顔で答える右京。俺はその顔を見て何故か悲しいような複雑な気持ちになった。
「幼馴染みとしてやけどな。」
右京が付け加えるように言った言葉に俺は驚いた。
「乱ちゃんにはあかねちゃんがおる。うちと同じ許婚やけど、乱ちゃんはあかねちゃんを選んだ。伊達に幼馴染みはやっとらんで。それぐらいはわかる。もしかしたら乱ちゃんがうちに振り向いてくれるんやないかって思うこともあったけど、もう諦めはついとるんよ。シャンプーだって同じや。」
なんだか辛そうな右京の顔。諦めたと言っても気持ちの整理が出来ていないんだな。
「良牙はあかねちゃんの事、まだ好きなん?」
「えっ?」
俺は戸惑った。確かにあかねさんに対して恋愛感情はあった。だがこの頃は乱馬こそあかねさんに相応しいのではと思い始めている。
「俺は、まだわからない。少なくとも以前よりあかねさんに対して好きだっていう感情は薄れている気がする。だからこそ、今から会ってその気持ちを確かめたいんだ。」
「そっか。ほな、はよあかねちゃんに会いに行こか!」
「おう!」
右京といると気持ちが楽になる。右京が傍にいてくれて本当によかったぜ。
『バシャッ!』
いつもの水かけばあさんの所を通ってしまった。冷たいと感じた瞬間!俺の目線は低くなった。隣を見ると巨大な右京が俺を見下ろしていた。
「あちゃ〜、良牙、ブタになってしもたな。せやけど丁度ええんちゃう?その姿であかねちゃんの本心聞いてきたらどや?」
「プギー、ブイブイ!(それもそうだな。悪いが連れて行ってくれ!)」
右京にブタ語が理解できるとは思えないが右京は俺を天道家に連れて行ってくれた。


−−−天道家−−−

「あら、いらっしゃい。」
かすみさんが出迎えてくれ、右京と右京に抱えられた俺は天道家の居間に案内された。右京に抱えられ、俺は赤面していたが右京は気付かないようだった。
「あれ、どうしたの右京?」
あかねさんだ。
「このブタが道で迷っとったから届けに来たんや。」
右京は俺をあかねさんの前に差し出した。
「あー、Pちゃん!どこ行ってたの?右京、ありがとう。ゆっくりしていってね。」
笑顔で右京に言うあかねさん。しかしなんでまだ家にいるのだろう。乱馬の決闘はそろそろ始まるというのに・・・
「乱ちゃんと喧嘩でもしたんか?」
いきなり何を!俺はそう言いたかったがブタのままで声は出なかった。
「どうしたのよ、急にそんなこと言い出して・・・」
あかねさんは笑ってはいるが抱えられている俺にはあかねさんの急に速くなった心音に疑惑を抱いていた。
「もうすぐ乱ちゃんの決闘の時間やで?なのにここにいるっちゅうんは余程の用事があるか喧嘩したかのどっちかなんとちゃう?」
黙り込むあかねさん。どうやら的中のようだ。
「まあ、大体想像はつくけどな。さて、うちはもう行くとするわ。うちは何も聞かんことにするけど、本音を言いたかったらその黒豚にでも言うたらええ。動物相手やったら素直になれるやろ。ほな、またな。」
そうして天道家を後にした右京。・・・・って俺は放っておくのか?
いつものようにあかねさんに抱えられ、あかねさんの部屋に連れていかれる。
「ねぇPちゃん。どうしてあたしって素直になれないのかな?今日だって乱馬がシャンプーに抱きつかれているのを見て頭にきちゃって、その後もムースの決闘を受けるのもどうせシャンプー絡みだってわかってるくせに勝負をうけちゃって。そのときあたし、乱馬に言っちゃったんだ。『どうせシャンプーを取られたくないからムースの決闘をうけるんでしょ。あたしは絶対に行かないから!』って。なんであんなこと言っちゃったんだろう。今だって本当は乱馬が無事か心配なのに・・・・」
これが、あかねさんの本心か・・・わかっていただけにショックはない。むしろスッキリした。右京に感謝しねぇと・・・・っとその前に乱馬の様子でも見に行くか!早くあかねさんの元に戻るように・・・
「どこ行くの、Pちゃん?」
あかねさんの机の上から飛び出し、俺は天道家の浴室に向かった。この家の浴槽はほとんどいつでも湯が沸いている。
「あ〜、いい湯だ。極楽極楽。」
あかねさんの父上である早雲おじさんが入っていたが気にせず湯に飛び込んだ。
『ザバ〜〜』
お湯から上がれば俺は元の体に戻った。急いで服を着て天道家を後にした。乱馬はムースとまだ闘っているのだろうか?


俺は走った。ひたすら風林館高校を探し求め走り続けた。
「一体ここはどこなんだーーー!」
目の前にあった壁を破壊して出た道にはムースがいた。
「むっ!そこにいるのはムースじゃねぇか。どうした?元気がねぇな。」
乱馬との決着は着いたのか、ムースは落ち込んだ様子だった。
聞く話によるとどうも乱馬に負ければ中国へ帰ることにしたらしい。こいつもシャンプーを追って日本まできたんだからそのシャンプーを諦めて故郷に帰るのは辛いんだろう。
「そうか・・・おまえ、中国へ帰っちまうのか。まあ、その、なんだか寂しくなるな・・・」
この言葉に嘘偽りはない。こいつとは乱馬同様長い付き合いだからな。
「おらとて心残りじゃ。良牙、おまえとは共に乱馬を倒すということに共通があったからの。」
「ああ、そうだな。・・・・・・・どうしても行くのか?」
出来ればここに残って欲しい、そう感じた。だが決心は固いようだ。
「それじゃあおらは行くだ。」
行っちまうのか・・・だが今生の別れというわけではないしな。
「また・・・会えるよな?」
「もちろんじゃ!」
明るく去っていくムース。お互い好きな人に関して悩んでるな・・・
俺の脳裏に右京の姿が映し出される。そういえば右京は・・・?


ムースとの決着が着いたということは乱馬も天道家に戻っていることだろう。俺は右京を捜した。
橋の近くを走っていると、巨大なヘラが見えた。間違いなく右京だ。
「何やってるんだ?」
俺の声に右京は気付いた。寝転がって空を見ていたようだ。
「きれいな夕焼けやな。」
夕日に照らされた右京の顔は、赤みを帯びて・・・綺麗だった///
「あかねちゃんの本心は聞けたんか?」
「ああ。やっぱりあかねさんの心には乱馬がいる。」
「そか。残念やったな。」
寂し気に俺を見つめる右京。残念というよりは気持ちが晴れ晴れとしているのだが俺は黙っていた。
「なんだか、俺達って似てるな。」
ふと思い立ったように俺が口を開く。
「乱馬を追いかけてここまできて、好きになった人は今の友達の許婚・・・本当に、何やってんだかな俺達。」
「せやけど、うちは後悔しとらんよ。乱ちゃんを追っかけてきたおかげでこうしていろんな人と会うたんやから、良牙ともな。」
なんかこいつ、凄え嬉しいこといってくれるな。今まで不幸を味わってきた俺にとっちゃ殺し文句だぜ。
「また、お好み焼き食わせてくれるか?」
照れ隠しでそう言ってしまった。本当は言いたいことがあったのに・・・
「もちろん!好きなだけ食わせたる。」
多分あかねさんの気持ちを知ってもショックを受けなかったのは俺には右京がいたからだろう。あかねさんの優しさは本物だ。だけど右京の優しさも本物だ。もしあかねさんより右京に先に出会っていたら間違いなくこいつを好きになっていただろう。だけど気持ちに区切りがついた今、はっきりわかった。
「右京!俺はおまえが好きだ!」
右京の肩を掴み俺は今伝えたかった事を一気に言った。
「////なっ!何言うてんねん。あかねちゃんに振られたからゆうてうちに乗り換えるっちゅーんか!」
右京は俺を突き飛ばした。結構力強く、危うく川に落ちるところだった。
「違う!あかねさんの事は気持ちに整理がついていた。だからそんな軽い気持ちで言ったんじゃない!」
右京はそのまま道の方に駆け上がり、俺から距離をとった。だけどそのまま去らずに立ち止まって言った。
「良牙!何してんねん。早よ来んかい!先行ってまうで。」
「おうっ!今行く。」








作者さまより

良牙×あかりではないです。ごめんなさい。この続きとして考えている話に影響するので右京でなくてはならなかったのです。本当はムース、良牙、乱馬ともに呪泉洞の戦いの後の話として書こうと思ったのですが、だとしたら良牙×あかりやないとおかしいやろ?と思い、アニメ版のカップリングとして書きました。原作では男として現れた右京に対し、女として登場するつばさや小夏。ブタ体質をコンプレックスにしている良牙に対し、ブタ好きのあかり。などと、対称的なカップリングですが、あっしとしてはアニメ版でもなかなかと思い、こうした次第に御座います。


 あかりちゃんも清楚なイメージで人気がありますが、良牙×右京派の方々が、結構おられるようですね。
 この二人も、ちぐはぐでいて、かなり馬が合いそうな。良牙には案外、右京のような、姉御肌の彼女が似合うのかもしれませんね。
 右京なら良き道先案内人になれることでしょう。
(一之瀬けいこ)

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