◇Ranma change into the child
  第二章  ちび乱馬
武蔵さま作


「・・んま・・・ら・・ま」
(あれ?だれかが呼んでる。)
「乱馬!気がついたのね。よかったーー。」
乱馬は小さくなっていた。目を覚ましたのを見てあかねはほっとした。
「おねぇちゃん、だれ?」
訳がわからないといった表情であかねに乱馬は尋ねた。
「えっ!誰って私よ、あかねよ!」
「あかね・・・?」
「・・・ちょっと!どういうことよ、若返るだけで記憶の方は変わらないんじゃなかったの?」
「おかしいね、聞いた話では体だけ若返ると言っていたのだが・・・」
「どうしてぼく、こんな所にいるの?」
「ここに説明があったね。なになに、『注意:必要以上に薬を服用すると記憶にまで影響がでます。尚、その場合、薬の効き目がなくなれば、記憶も元に戻ります。しかし、薬の効いている時の出来事は記憶に残らないので安心してお使い下さい。』と書いてあるね。」
「そんなっ!薬の効き目が切れるのはいつ頃なの?」
「わからないね。なにしろこの人2倍の薬を飲んでしまったから・・・」
「乱馬君、大丈夫か!?」
「乱馬君、大丈夫?」
「やだっ!本当に小さくなってる!」
天道家一同乱馬が起きたのを聞き付け、乱馬と玄馬の部屋に駆け付けた。
「みんな、だれ?」
「・・・ちょっと、これどういうことよ?」
「実は乱馬が必要以上の薬を飲んでしまったから、体だけじゃなくて意識まで若返っちゃったってことらしいのよ。」
『ダダダダ・・・・ガラッ』
「乱馬、目を覚ましたか!」
遅れてやって来た玄馬。いかにちゃらんぽらんと言えども所詮は人の親。息子の一大事とあって急いでやって来たのだった。
「あっ!お父ちゃん!」
「えっ?お父ちゃん?・・・あかねくん、これは一体どういうことかね?」
駆け込んだ部屋には小さくなった乱馬の姿。それに続いて普段とは違う呼び方に玄馬は抵抗を感じた。
「はぁーー(また話さなくちゃ・・・)、実は乱馬が必要以上の薬を飲んでしまったから、体だけじゃなくて意識まで若返っちゃったってことらしいのよ。」
「なっ、なんと奇怪な・・・」
「でも、早乙女のおじさまのことがわかるんだったら大丈夫じゃないかしら?」
「まぁ、とりあえずこのちび乱馬君の薬の効き目が切れればいいんでしょう?あかね、ちび乱馬君の面倒しっかり見るのよ。」
「ちょっとお姉ちゃん!なんで私なのよ!」
「だってあんたの『いいなずけ』でしょ。それにちび乱馬君、あかねに結構なついてるみたいだし。」
あかねがふと隣を見ると、知らない所でおろおろしてあかねの腕をつかんでいる乱馬の姿があった。
「もうっ!仕方ないわね。」
「早乙女君、これはもしかすると・・・」
「2人が進展するかもしれないねーー天道君。」
『ニヤリ』
「そういうことであかね、乱馬君の世話をしっかりしてあげるんだぞ。」
「乱馬。このお姉さんの言う事をしっかり聞くんだぞ!」
早雲、玄馬は半ば強引に乱馬をあかねに押し付けた。
その時・・・
『ガラガラッ・・ただいまーー。』
「あら?早乙女のおばさまね。」
「そうだ!おばさまに頼もうっと。」
「「そんな〜〜〜〜〜〜。」」
2人の考えは脆くも崩れ去ったのであった。


−−−数分後の家族会議−−−

「・・・というわけで、今から乱馬君に元の姿に戻るまでの間、いろいろ教えてあげようと思う。まずは名前を覚えてもらおう。乱馬君・・・」
「なーーに?」
「まず、私がこの家の家長、天道 早雲という。」
「てんどん、しょうゆ?」
「て・ん・ど・う・だよ。次に長女、かすみ。次女、なびき。三女、あかね。みんな私の娘だ。」
「かすみ、なびき、あかね だね。」
小学校で読み書きを習うように乱馬は楽しそうに復唱する。
「乱馬、あかねくんはおまえの『いいなずけ』なんだよ。」
「『いい菜漬け』?おいしそうだね。」
「ちっがーーーう。いいか、『いいなずけ』っていうのはいわゆる『婚約者』だ。」
「『こんにゃくしゃ』?それっておいしいの?」
「・・・・・・」
黙ってしまう玄馬。さすがにいいなずけの何たるかを教えるには早すぎる年齢なのだから仕方がない。
「さっすがおじさまの子供、食べ物のことしか頭にないのかしら?」
なびきの言葉に玄馬は少し傷付いていた。そんなこととはおかまいなしにのどかが乱馬に話した。
「あのね、乱馬。あなたはあのお姉ちゃんを守ればいいのよ。」
「あのお姉ちゃんを?・・・うん、わかった。」
初めは抵抗を感じていたがやはり自分の母親だと納得したらしく、のどかの言う事にはとても素直だった。
その日の夕方、乱馬はのどか、早雲、玄馬と遊んでいた。
「ほらほらー、乱馬、こっちよ。」
「嬉しそうですなぁ。」
「それはもう。主人に幼い乱馬を引き離されてから乱馬の子供の姿なんて見てないんですもの・・・」
『母の愛情は修行の妨げになる。』そう言ってのどかから乱馬を取り上げてしまったという苦い記憶が玄馬に再び蘇る。
「うぐっ、まぁそう言うなのどかよ。今こうして乱馬がいるから良いではないか。それよりもこのままど
うしようか?天道君。」
「そうだねーー、まぁなんとかなるんじゃない?早乙女君。ほらほらー乱馬君。今度はおじさんの所へおいで。」
「お父さん、嬉しそうねー。」
「そりゃそうでしょ。乱馬君が年の数茸でちっちゃくなったときもべたべたに可愛がっていたもんね。」
「みなさーん、そろそろ夕御飯ですよーー。」
1階からかすみの声が聞こえる。それに応えてみんなは元気よく返事した。
「はーーい!」

−−−その夜−−−

「お風呂沸きましたよーー。」
「はーい。乱馬、お母さんと一緒に入ろっか?」
「うーん・・・ぼく、あかねお姉ちゃんと入る!」
「えーーーーーーーーーーーーーっ!」
あかねはかなり驚いた。小さくなったとはいえ、仮にもここにいる子供は紛れもない乱馬なのである。
「だってぼく、お姉ちゃんを守るんだもん。それともお姉ちゃん、ぼくと入るのは嫌?」
純真な目で見つめる乱馬にあかねは戸惑っていた。
「よーーし、許す!大いに結構!あかね、乱馬君の面倒をしっかり見るんだぞ。」
「乱馬、あかねくんの言う事をしっかり聞くんだぞ!」
「ちょっと!お父さん達!」
腕を組んで回り出す早雲と玄馬。2人にとっってはあかねに何らかの心の変化がある事を期待しているのだ。
「いいじゃないの。乱馬君だって今は6歳児ぐらいの年齢なんだし・・・それに薬が切れれば記憶に残らないんでしょう?だったら気にする事ないじゃない。」
「そうよ。それに乱馬君、あかねを守ってあげたいみたいだし・・・」
「・・・わかったわよ。でもおばさま、よろしいんでしょうか?」
乱馬の母親であるのどかを気づかうあかね。幼い乱馬とは一緒に過ごした事が無に等しいのだから一緒にいさせたいと思うのである。
「乱馬がそうしたいんだったら仕方ないわ。あかねちゃん、乱馬をよろしくね。」
「はい。それじゃいくわよ、乱馬。」
「うん!」
「早乙女君!」 
「天道君!」
「「これでこの道場も安泰だーーーーー・」」
こうしてさんざんな一日が終わった。



つづく




作者さまより

アニメでやっていたらんまの地獄のゆりかごの話で幼い乱馬が玄馬のことを『お父ちゃん』と言ってたのでそれを使いました。
まあ、子供の無邪気さと言うか子供の特権を書きたかっただけです。このとき書いた話が一番段落が多かったので削除したらめちゃくちゃ短くなってしまいました。勘弁して下さい。

Copyright c Jyusendo 2000-2005. All rights reserved.