◇Ranma change into the child
   第一章  丸薬

武蔵さま作


ある晴れた日の午後天道家ではお馴染みの2人の会話があった。
「こらーー。待ちなさい乱馬!」
「やーなこったーー。」
「食べてみないとわからないじゃない!」
「おまえの料理は食べなくてもまずい。」
「ぬぁんですってーー!」
『バッコーーン』
遠くに吹っ飛ばされる乱馬。天道家の住人は乱馬の飛んでいく先を見ていた。
「なによ、乱馬の馬鹿!・・・あーあ、今回は自信作だったのに・・・」
1人呟くあかね。折角自分のいいなずけの為に作った手料理を、食べる前から拒絶されてはあかねも怒らずにはいられなかった。


一方、吹っ飛ばされた乱馬は・・・


「ってーーー。あかねのやつ、こんなとこまで飛ばしやがって・・・」
乱馬は天道家からかなり離れた所まで飛ばされていた。頭から着地した乱馬は頭をおさえながら文句をい
った。その時、愚痴をこぼしている乱馬のそばに1人の女性が近づいてきた。
「乱馬?こんな所で何をしているの?」
乱馬の母、のどかであった。買い物の帰りらしく地面に座り込んでいる乱馬を見つけて声を掛けたのだった。
「んっ?あっ、おふくろ・・・」
「その様子だとまたあかねちゃんと何かあったわね。」
「うっ・・鋭い・・・」
のどかにはお見通しらしく、乱馬は事情を話した。
「そうだったの・・・でもね乱馬、あかねちゃんは乱馬のために料理を作ったのよ。あなたが食べてあげないでどうするの?」
さすがの乱馬ものどかには頭が上がらず、玄馬に対するように強い口調で反論することはできなかった。
「でもよーー、あいつの料理は殺人的だからなぁ・・・」
「乱馬、女の子っていうのはね、お料理を作るのが好きだけじゃないの、好きな人にお料理をたべてもらうのが嬉しいのよ。ましてやあかねちゃんは、乱馬においしいって言ってもらいたくて頑張って料理を作ってるんじゃないの。わかったらあかねちゃんに謝って料理を食べてあげる事。いいわね。」
そう言ってのどかは去って行ってしまった。のどかに半ば有無を言わさず納得させられた乱馬は呆然とのどかの行方を眺めていた。
「ふぅ・・・。好きな人に・・か・・・。しかたねぇ、帰ってあかねの料理を喰うか!おっとその前に薬用意しとかなきゃな・・・・」
「あれっ?なんだありゃ?」
決意を固めた乱馬が見たものは中国の商人であった。かなり怪しげな男が座って乱馬の方を見て言った。
「いらっしゃい!お客さん。何か買っていってほしいね。」
「へぇーー、どんなもの売ってんだ?」
怪しげな商人はさておき、日本では見かけることのない珍しい薬に乱馬は興味を引かれた。
「よくぞ聞いてくれたお客さん。実は私、こう見えても中国では名の知れた薬屋なのだよ。身体の事に関する薬をいろいろ売っているね。ささ、とにかく買った買った。」
「丁度薬を探してたんだ。いやぁラッキーだな。おい、食あたりに効く薬ってあるか?」
「もちろん。この薬がいいね。どんなに酷い食あたりもたちどころに治ってしまうね。」
「いくらだ?」
「本来なら1万円はするとこだが、私もう他の場所に移るね。だから特別サービス1000円でいいある
よ。」
「1000円か・・ちっと高いけどよく効く薬ならいいか・・・。ほらよ、1000円。」
「まいど有難うある。はい、こちら商品。」
「おっサンキュー。・・やべっ・・・・!」
乱馬は薬を受け取り損ねて落っことしてしまった。なんとか薬は他の薬とぶつかって転がっただけで何も
壊れた物はなかった。ただでさえ高級そうな薬がある中、乱馬の少ない小遣いでは到底弁償等できなかった為、乱馬は心底ほっとした。
「あぶねーー、危うく他の商品をダメにするとこだったぜ。」
「お客さん。気をつけてほしいね。この中にはとっても貴重な薬もあるのだからね。」
「悪い悪い。まぁ薬ありがとよ。」
乱馬は薬を手に取ると天道家に走って行った。
「ただいまーー。」
「おかえりなさい、乱馬君。おそかったのね。」
「ちょっと乱馬君。あかねの料理食べてあげなさいよ。でなけりゃこっちにまでとばっちりを受ける事になっちゃうんだからね。」
乱馬はのどかに言われた事を思い出し、更にはなびきに逆らえば何かをきっかけに強請られること間違い無しとふんだ乱馬は素直に従うことにした。
「へいへい、わーーったよ。喰えばいいんだろ喰えば。」
「おーーい。あかねーーー。」
「あっ、乱馬・・・ねぇ、おばさまが言ってたんだけど、私の料理食べてくれるって本当?」
「あーーそうだよ。さっさと料理もってきな。」
乱馬の強気な顔に隠された恐怖の顔を知らずに、あかねは喜んで料理を持って来た。
「はい!特製オムライスよ。たくさん食べてね・」
「そっそれじゃ喰うかな・・」(おいおい、これが本当にオムライスかよ!)
『パクッ』
一口食べた瞬間、乱馬は身体に突き抜けるような電気に似た衝撃を味わった。
「ねぇ、どうかな?おいしい?」
まずい。などとは言えず味はおいといて、とりあえず最初の感想を言った。
「そっそうだな・・・うーん、なんだかまったりとしていてそれでいてねっとりと、さらにぐっちょりし
た感触のあとべっちょりとした感じが・・・」
「よくわからないわよ。で、結局どうなのよ!今回は自信作だったから美味しいでしょう・」
満面の笑みを浮かべて笑うあかねを見て、乱馬は思った。
(やべぇ、意識が遠のいちまいそうだ。でもこんなあかねを見たら不味いなんて言えないよなーー。)
「まっ、まあまあかな・・・」
「もう!素直に美味しいって言えないの?まあいいわ、まだまだあるから遠慮しないで食べてね・」
乱馬にはあかねの笑顔が死神が己を死後の世界へ誘うかの如く見えたであろう。
「えっ!まだあんのか?わりぃけどもう腹いっぱいだ。」(これ以上喰ったらマジで死んじまう。)
涙目になって否定する乱馬にあかねは気付かず、そして笑って言った。
「なーーに遠慮してんのよ。乱馬らしくない。」
「いやっ、そういうわけじゃなくて・・・あっ!ちょっと待っててくれよ。」
乱馬は台所へ走って行った。
「いまのうちに薬飲んどかないと身体がもたねぇよ。(泣)」
「えーーと、なになに?15歳以上は5粒だな。うーーん、あかねの料理は酷いから10粒ぐらい飲んでおくとするか。」
『ゴクッ』
「なんか変な味だな?まぁよく効く薬だからかな?」
「乱馬くーーん、お客さんよーー。」
「んっ?誰だろう?」
かすみに呼ばれて玄関に行ってみると先ほどの商人がいた。
「なんでぇ、さっきの商人じゃねぇか。どうしたんだ?」
「実はお客さん、あなたがさっき買って行った薬、食あたりの薬ではないのだよ。」
「食あたりの薬ってどういうことよ!」
「一体どうしたんだね。」
「騒々しいぞ、何が起こったんだね。」
「一体誰なのこの人?」
いつの間にか集まった天道家の面々。次々に質問をしている。その中でも怒りを露にしているのはあかねであった。
「食あたりの薬じゃないんなら一体何の薬なんだよ?」
「実はあれは若返りの薬ね。呪泉郷の通信販売で私が薬と交換したのだよお客さん。何でも呪泉郷の童子溺泉をもとに作った丸薬で身体に何らかの影響を与えて若返らせるのだよ。」
「なんでそれが食あたりの薬と間違えるんだよ!」
「お客さん確か薬を落としたね。それで他の薬と間違えて持って行ってしまったね。まぁ、なにはともあれ何事もなくてよかったね。さぁこれが食あたりのくすりね。ささ、若返りの丸薬をかえすね。」
「やっべーー!俺、飲んじまった・・・」
「あいやーー。なんてことあるか!お客さん、何粒飲んでしまったか?」
「確か10粒。」
「なんでそんなに飲んだのよ?」
既に飲んだということよりも決められた以上の薬を飲んだという事にあかねは怒って乱馬を睨み付けた。
「いやっ、それはだな・・・・」
言い訳を考える乱馬、その時!
『ドックン』
乱馬の身体に異変が起きた。心臓の鼓動が速くなり、体中の体温が上昇する。呼吸が荒くなり目の焦点が
合わない。遂には立つ事さえできなくなり、乱馬はその場に倒れ込んでしまった。
(なんだ?どうなってんだ?身体が燃えるように熱い・・・)
「乱馬ーーーーー!」
「乱馬くん!」
「乱馬っ!」
「ちょっと!乱馬君!」
「乱馬君!しっかり!」
(なんだ?皆の顔がぼやけてやがる・・・声まで聞き取れないなんて・・・俺、どうなっちまうんだ?)
「始まってしまったか・・・」
「くそっ・・・・・・意識が・・・・・・とお・・・の・・く・・・・・・」



つづく




作者さまより

主人公が子供になるというパターンは多く使われているため、自分もやりたくなりました。
以前誤って脚本形式で書いていたものの編集のため、セリフが非常に多いです。
以後、慣れるまで注意して行くので末永くお願い致します。


 かく言う私も子供化した作品を何本か仕込んでいます。
 原作にも「年の数茸」というちび乱馬とちび良牙の話がありますね。原作のこのお話のちび乱馬とちび良牙が可愛いと思います。
 ちびあかねちゃんも捨て難いと思いますが…。
 小さくなった乱馬くん・・・さてどうなりますやら。
(一之瀬けいこ)


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