◇monologue and dialogue the last scene (is opening)
マルボロシガーさま作
『あかね、ごめんな。本当はこんな形じゃなくて面と向かって言わなきゃいけないのだろうけど・・・。
おれは今から休眠に入る。これはおれが望んだわけじゃないけど、おっさんたちがしつこく勧めるから仕方ねえんだ。
でも、事実おれの体はもうボロボロだ。今はおっさんたちがおれのことを気遣ってくれてありがたいと思ってる。
ただ、その前にあかねに話さなきゃいけないことがある。
きっと、おれ、この間お前のことを傷つけたから。
言わなくてもわかると思うけど・・・いいなずけのことだ。
おれが言葉足らずで優柔不断なせいで、お前にはひどく悲しい思いをさせちまった。
お前にはおれの本当の気持ちを伝えたい。
だから、もう一度だけおれの話を聞いて欲しいんだ。』
不思議なことに、さっきまでの緊張と不安が、乱馬の声を聞くだけで消えていくのを感じました。
そこにいるのは、私のいいなずけの乱馬でした。
『この前話したとき、おれはお前にのことを、ともだちが決めたいいなずけと言った。
でも、本当はそれだけの存在じゃないと思ってる。
あのときだってそう思ってたんだ。
こんなことを言うと言い訳になるかもしれないけど・・・お前のところには人間を行かせたくなかった。
お前にはおれと同じような苦労をさせたくなかったんだ。
だけど、おれは断れなかった。
それで、もういっそのことお前に嫌われたほうがいい、なんて安易な考えが浮かんだんだ。
結局、おれは逃げてたんだよ。自分の正直な気持ちから。
何を今さら、と思うかもしれないけど、これだけははっきりと言わせてくれ。
おれは、あかねのことが・・・好きだ。
宇宙のなによりも愛してる。
ずっとそばにいたい。
お前に会えないと思うと気が狂っちまうんじゃねえかと思う。
もしこんなおれを許してくれるなら、どうかこの言葉を信じて欲しい。
もう一度言うぞ。
神様にも閻魔様にも誓って言える。
おれはあかねを愛してる。
また、おれが起きたときには前のように楽しく話してえな。
真っ先にお前のところに飛んでいくから。
そのときは、いつかみたいに寝てんじゃねえぞ。
じゃあ、これからも元気でな。おっさんたちと仲良くしろよ。
あかねのいいなずけ、乱馬より愛をこめて』
「乱馬の・・・バカ・・・」
泣き虫な私はもう顔をクシャクシャにして泣きました。
乱馬の気持ちを知った嬉しさと彼に会えない悲しさが一緒になって。
乱馬はいつだって私のことを思いやってくれていたんです。
それなのに、私は彼の心を疑っていました。
謝るのは私のほうです。
それに、私はこの言葉だけでは足りない想いを、乱馬に伝えていません。
私は大声でおじさんたちを呼んで言いました。
「私もこれと同じものがつくれますか?乱馬が目を覚ましたときに渡して欲しいんです」
そして、私はおひげのおじさんの言うとおりにして、自分の気持ちをそのキカイにこめました。
え?何を話したかって?
それは、ナイショです。
思い出すだけでも顔から火が出るような・・・そんな感じです。
その後、おじさんたちが頻繁にやってくるようになりました。
きっと私のところに移動するための準備をしているのでしょう。
そのたびに、おじさんたちは私によくしてくれました。
私が、自分の周りをキカイが飛んでいた、というおかしな夢の話をしてもおじさんたちは笑って聞いてくれました。
そして、明日、たくさんの乱馬のおともだちをお迎えすることになっています。
The End
作者さまより
設定は数百年後くらいということで・・・
地球や月そのものではなくて、それぞれの星の神様みたいな存在のほうが良かったかな、と書き進めるうちに思いました。
深い作品です。人間の業の深さを改めて考えさせられました。
乱馬が次に目覚めたときに見るあかねは美しいのかそれとも・・・。
(一之瀬けいこ)
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