◇monologue and dialogue scene.2
マルボロシガーさま作


「乱馬君、乱馬君、乱馬、乱馬。うん、乱馬でいいよね!だって、いいなずけ、なんだから!」
おじさんたちが帰ってからというもの、私はずっと乱馬のことばかり考えていました。
私のことどう思ってるんだろう?
どんな性格なんだろう?
喋り方は?
よく食べるほうかな?
幽霊って信じる?
などと、とにかく彼のありとあらゆることに関して、私の希望も含めて予測していたんです。
ところが、そうやってここから乱馬を眺めているうちに、私はどうしようもないコンプレックスを感じてきました。
なぜなら、彼は私にないものをたくさん持っています。
第一に、彼はすごくきれいです。遠くから見ているだけでも飽きることはありません。
それに比べて、私ってかわいくないですよね。
それに、乱馬にはたくさんの友達がいるそうです。
私の話相手といえば、お山のPちゃんぐらいです。
だから、私のことなんか相手にしてくれないんじゃないか、って思ったりするんです。

・・・・・おい、聞こえるか?

突然、誰かの声がしました。
「は、はい」
と、私は誰に向かっていっているのかわかりませんでしたが、とりあえず返事をしました。
「お前が俺のいいなずけ、だろ?」
「彼」がそう問いかけてきたので、私は彼のほうをはっきり見て言いました。
「じゃあ、あなたが・・・乱馬?」
「何だよ、いきなり呼び捨てかよ。・・・まあいいや、お前、あかね、だよな?お前がそう言うんなら俺も間違ってもあかねちゃんだなんて呼ばねえからな!」
これで、彼の喋り方の疑問は解けました。
私の想像とほんの少し違っていましたが、不愉快ではありませんでした。
「よろしくね、乱馬」
笑顔いっぱいに私があいさつをすると、乱馬は珍しく顔を赤くしたように見えました。
「お、おう。よろしく・・・な」


それから、私はよく、乱馬と話をするようになりました。忙しい乱馬にとっては「よく」でもなかったようですけど。
それで、私は乱馬からいろんなことを聞きました。
彼にはいろんな仕事があります。
それもこれも「友達」のためにやってることだそうです。
ある時、私は乱馬に聞きました。
「ねえ、悩みとかある?」
すると、彼は考え込んだあと、
「うーん、最近、太ったかな」
と答えました。
私は不思議に思ったので、
「え?前と全然変わらないよ?」
と、言いました。
もちろんお世辞を言ったつもりはなく、私の本心でした。
「まあ、お前からはそう見えるだろうけどな・・・」
乱馬は少し声の調子を落として言いました。
「へー、乱馬にも悩みってあるんだ。ダイエットしたら?」
と、私が何気なく言うと、
「そういうわけにもいかねえんだよ」
と、怒ったような口調で言われました。
だから、私は黙ってしまいました。
すると、乱馬は、
「あ、いや、ダイエットって急にすると体に悪いだろ?だから・・・」
と、あわてたように言いました。
それを聞いて、このことはこれ以上踏み込んで聞かないほうがいいと思いました。
乱馬には乱馬の、私には私の世界があるんですから。
「それより、お前はどうなんだ?この寸胴」
乱馬というのは、気を抜くとすぐこうやって憎まれ口を叩いてきます。
私も負けず嫌いだから、言い返さずにはいられません。
「あんたに言われたかないわよ!この青びょうたん!」
「かーっ!おめーって本当に可愛げのない女だな!」
これから延々と私たちの言い合いは続きました。
でも、こんなことでも私にはとっても楽しかったんです。
私は乱馬のことが会う度に好きになりました。
でも、今日も乱馬とお別れです。
「またお話しようね、乱馬」
「ん?ああ・・・じゃあな・・・」
その時、乱馬が少しだけ悲しそうに見えたのは気のせいでしょうか?



つづく




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