◆ALWAYS
Kobayashiさま作



 穏やかな日曜日の昼下がりのこと。静寂を破るがごとく「ガラガラガシャーン!!」
と、荒々しく戸が閉められた。かなり大きな音だから、その家の近所に住んでいる人は
「何事だ?」と思ったであろう。そのくらい大きな音であった。
閉めたのは早乙女乱馬という少年だ。
「天道道場」という大きな看板がある立派な門をくぐった彼は「あかねの奴、あんなに
怒んなくってもいいじゃねえか……」とつぶやきながら歩いていった。
 家のなかでは天道あかねという、おしゃれをしたショートカットのかわいい少女が
しかめっ面でいた。
「んもー、乱馬のバカッ!」と言い放って、そのあとぼそぼそ言いながら、どたどたと階段を上っていった。
彼女の自室のドアが、これも「バタン!」と大きな音をともなって閉められた。
大きな音といい、2人のぼやきといい、これは何かあったに違いない。
いったい何があったというのだろうか?
 2人は日曜日に映画を見に行こうとしていた。提案したのはあかねのほうである。
見たい映画だったので、乱馬を誘ったところ、曖昧ではあったが「OK」の返事がでた。日曜日にその映画は午前に2本と午後に3本の計5本上映されるそうで、彼女は2本目を見ようと決めていた。そこまでは良かったのだが、当日に彼が寝ぼうしてしまい、しかも昼近くまで眠りこけてしまった。彼が起きてきて、着替えたときに彼女が
映画のことを聞いたのだが、彼はすっかり忘れていた。それに彼女は逆上してしまった
わけである。彼のほうも素直に謝れば良いものを、素直でない性格が災いしてケンカに
なってしまったわけである。ちなみに付け加えておけば、乱馬とあかねの口喧嘩は
天道家においては日常茶飯事なことなのである。
 部屋に閉じこもったあかねは、ベットに突っ伏して考えごとをしていた。
ひとりになってから改めて冷静になってみると「あんなこと言わなきゃ良かったかな」
と思うのである。彼女も興奮していて、言うべきでない言葉を口にしてしまったのだろう。だが、いったん口に出してしまった言葉は引っ込められない。そうだとわかっては
いながらも、つい興奮してしまうと言うべきでない言葉が出てきてしまう。
それが原因でいつもケンカになってしまう。それを終わらせるには謝り、自分の
発言を撤回するほかはない。
 しばらくして、彼女は起きあがると机の上にあるCDラジカセの電源を入れた。
机の横にある棚に本やマンガ、CDが何枚か立てかけてある。
その中から1枚のCDを取り出すと、ラジカセにかけた。
ジョン・レノンのベストアルバムである。
彼女は乱馬とケンカするたびに、このCDをかけていた。
とりわけ、お気に入りは「Imagine」「Love」「Mother」「Happy Xmas(War Is Over)」
ジョン・レノンの楽曲は彼にとって、心を安らかにしてくれるものであった。
これらの4曲を聴き終わると、気持ちが落ち着いた。
ちょっとしゃくかもしれないけど、乱馬に謝ろう。あたしもちょっと言いすぎたしね……。
1階の居間にいってみたが、まだ彼は帰ってはいなかった。
居間に姉のなびきがいたので「お姉ちゃん、乱馬帰ってきた?」とたずねたら
「乱馬くん?まだ帰ってきてないけど」と彼女はPower Book G3と
向き合ったまま返事をした。カタカタカタとキーボードを打つ音が聞こえてくる。
他のみんなは出かけたらしい。あかねは「お姉ちゃん、悪いんだけど映画の時間調べたいから見せてくれない?」と頼むと、なびきは横においてあった新聞をあかねに渡した。彼女は、映画の情報のところを見つけると、40秒ほど時計と映画の時間を見くらべていたが、わかったらしく「ありがと、お姉ちゃん」と新聞を返し、玄関で靴をはくと外へでた。なびきもパソコンをパタンと閉じて、それを抱えて部屋に戻っていった。
ところで、あかねはどこへ行くのだろうか?
無論、乱馬を探しに行くのである。
 家を出た乱馬は、大きな川の土手を歩いていた。土手の下では、何人かの子供達がサッカーに興じている。すこし遠くに目をやると川の水が太陽の光を反射して、キラキラと
輝いている。彼は土手の斜面に腰をおろし、先ほどのやりとりをじっくりと反芻してみた。
彼女の言い方も悪かったが、約束をすっぽかして昼まで眠りこけていた彼も悪い。
ああ、あいつに謝らなきゃ。俺も悪いところがあったのだから。
 そう思ったら憂鬱な気分が少し晴れた。そして彼はその場にあおむけになり
空を見上げた。
秋の抜けるような青空がどこまでも広がっている、雲も少ない、陽射しは柔らかい。
吹き抜けていく風は、幼いころ母に抱かれて聴いた歌のように優しい。
空を見上げると、自然と心が安らぐ。人は悲しいとき、憂鬱なとき空を見ることによって
安らぎを覚えるものだ。
過去も未来もいらない。あるのは現在(いま)を生きる喜びだけ。
日曜日の午後は、そんなことを認識させられる。彼は高くて青く、どこまでも広がる空を見つめていた。
 そして、彼は何気なく左側に顔を向けた。少し間を隔てて、ひとりの少年が腰を下ろしていた。汚すのがもったいないくらいの、洗い立てで真っ白い長袖のYシャツ、買ったばかりのような、真っ青なジーンズ。夏の青い空と、それに浮かぶ白い雲をイメージさせるかのようなスタイルだった。
 彼は真剣な顔つきでPower Book G3に向かっていた。
パワーブックはバッテリが最大5時間もつので、外出時にはもってこいのノートPCなのだろう。キーボードのカタカタカタという乾いた音が耳に飛び込んでくる。なかなか慣れた手つきだ。電源を切り、パタンと閉じてバッグにしまうと「ふぅー」と大きく深呼吸をした。乱馬は、そういえばなびきもあれと似たようなノートパソコン持ってたっけなと思いながら、パソコンを持っている少年を見つめていた。
乱馬はなんとなく誰かと話をしたい気分だった、誰でもいい。そこにいるパソコンの少年でもいい。
 そのパソコンの少年が、乱馬の方へと顔を向けた。視線と視線がぶつかりあった。
口を開いたのは向こうだった。「何か僕に用?」と聞いて来た。乱馬は「いや、別に」
と返事を返した。今度は乱馬が声をかける。「パソコンやってんのか?」「まあね。ネットやったり、メールもやるし。文章を書いたりもする。最近はモバイルもやってるけどね。さっきもあれで文を書いていたけど。パソコン持ってんの?」と返す。「いいや、俺は持っちゃねえけど」と答えると「そっか、持ってねえんだ」と残念そうな顔をした。
しばし沈黙が続いた。
 沈黙を破ったのはパソコンの少年だった。
「そういえば、なんとなく思いつめたような顔をしてたじゃない。余計なお世話かもしれないけど」と怪訝そうな表情を乱馬の方に向けた。
「僕でよかったら話してくれないかな。別によけりゃいいけどね」
乱馬は異邦人を誘う子供の手にひかれているような気分だった。別に悪い気分ではなかった。相手も悪い人ではなさそうだ。異邦人を誘う子供に悪い奴はいないのだから。
そう思った乱馬は、きょうあった出来事を話した。
乱馬が話している間、少年は教会で迷える者の話を聞く神父のように黙って聞いていた。
「とまあ、こんなところだな」の言葉で、話は結ばれた。
 黙って聞いていた少年が口を開いた。
「ふーん、そんなことがあったの。それで、今の気持ちはどうなのさ?」とたずねた。
乱馬は「まあ、あいつには悪いと思っているし。謝ろって思っているけど」と答えた。
彼の心の中には何のわだかまりもなさそうだ。今の青い空のように晴れ晴れとしていた。
その心中を聞いた少年は「えらいな。それでこそ、さ」と微笑みながら乱馬に言った。
少年の微笑みは、冷め切った体に暖かいスープが入ってくるような暖かさを感じた。
乱馬は「サンキュー。俺の話を聞いてくれてな」素直に少年への感謝の言葉を述べた。
少年も「なあに。困ったときゃお互い様じゃねえか」と微笑んだ。
ふたりは、がっしりと固い握手をかわした。何十年も付き合っている親友のように思えた。
「そういえば、名前聞いてなかったよな。俺は早乙女乱馬」と自分の名を告げる。
「僕は小林っていうから、コバとでも呼んでくれ。小学校からそのニックネームだから。
それから、乱馬君と呼んでいいかな?」と聞くと、乱馬はあっさりとOKした。
「あらためてよろしく!」と彼らは再びがっしりと握手をかわした。
 「ときに、乱馬君のガールフレンドは。映画見に行く約束してたんだろ?」
「家にいるとは思うけど。ひとりで見にいっちまったんじゃねえだろうな。んなこたあねえとは思うけどなあ」
「もしかしたら、君を探しているんじゃあないかな?行き先も告げずに飛び出してきたのならば」と彼は真顔で言う。彼の表情にウソの文字はなさそうだ。
 その、あかねの方はというと、やはり彼の予測した通りだった。「んもー、乱馬ったら。どこいっちゃったのよう!」と涙声気味の声でつぶやいた。あんなに怒んなきゃよかった。でも、あの映画はどうしても乱馬と行きたかった。息せききり、彼女は迷子になった子供を探しまわる母親のように必死だった。
いくら探しても見つからない。焦れば焦るほどそれに比例して後悔の念がムクムクと頭をもたげてくる。
 街の本屋でひろしと大介を見かけた。「あっ。ひろし君、大介君。乱馬見なかった?」
と尋ねたところ「さあ、見かけなかったけど?」とのことだった。
 つぎに、ゆかとさゆりに会った。彼女らに同じ質問を投げかけると「乱馬くん?あっちの方に行ったけど。乱馬くん、思いつめたような顔だったわよ。あたしたちが声かけても無視して行っちゃったのよ。何かあったの?」と逆に聞かれた。
あかねは「ううん。何でもないの」と無理に笑って見せ、ゆかとさゆりの指差した方角へと駆け出していった。
しかし、彼女達はあかねの少し泣きそうな表情を見逃さなかった。
2人は彼女の背中を訝しげな表情で見つめながら「何でもないわけないよ、あかね。絶対何かあるでしょ」と心の中でつぶやいた。
 そうこうしているうちに、あかねは乱馬のいる河原にでた。
抜けるような青空が広がっているが、彼女の心の中は今にも雨が降りそうな空模様だ。
いや、もう雨は降り出しているのかもしれない。
周りを見まわしながら歩く。下では、あいもかわらず子供達がサッカーに興じている。
しかし彼女には、そんなものは眼中にない。乱馬を探し出すことで頭はいっぱいなのだ。
 その時、あかねの目に見たことのある少年の姿が飛び込んできた。
赤いチャイナ服の少年、そう早乙女乱馬だ。
そう確信した彼女は思わず声をあげた。「乱馬……」
少年がゆっくりと振り向いた。「あかね……」
二人は感情を爆発させた。
 あかねは乱馬に抱きついた。乱馬は彼女を抱きしめた。
長い間逢えなかった恋人達が逢えたときのように。
なんてドラマティックなのだろうか。これで夕日がバックにあったら最高なのにとも
思う。しかし、今は昼間だ。でもいいではないか、見つかったのだから。
 あかねは乱馬の腕の中で「乱馬のバカッ!本っ当に心配したんだから」と子供のように
泣きじゃくった。
 乱馬はただただ呆然としていた。あかねがこんなにも泣きじゃくるなんて。それだけ俺のことを心配してくれていたのか。そう思ったら申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。「心配かけてすまなかったな、あかね」といい、きつく抱いた。
2人はしばらくそのまま抱き合っていた。
抱き合うことによって、2人の気持ちは確かめ合えることができるのだから。
 それまでのやりとりを見届けていた少年は、2人のように感情的ではなかったけれど
微笑みがすべてを物語っていた。自分のことのように喜んでいた。
2人が離れると、彼は乱馬に向けて「やったな!」という感じで小さくガッツポーズを
送った。乱馬もそれに応えた。
 あかねは「ねえ乱馬。この人は…」と聞くので、乱馬は彼の名前と、事の一部始終をすべて話した。
それを聞いた彼女は「ふーん、そうだったのね」と納得して、少年に感謝の言葉を述べた。
彼は「別にいいよ。それに僕は困っている人見ると放っちゃおけねえ性質だからさ」
と言った。
 少年は続けた。「なあ、何か喉渇かない?」
乱馬もあかねも喉が渇ききっていることに気がついたので、うなずいた。
「そうか、飲み物買ってくるよ。君らは何にするんだよ」とたずねた。
2人は最初多少遠慮していたが、彼が「そんな遠慮しなくたっていいよ。こうして君らと逢ったのも何かの縁かもしれないから」というので、そうさせてもらうことにした。
あかねはホットミルクティー、乱馬はホットコーヒーにした。銘柄は別に何でも良いと伝えた。
10月もなかばなので、そろそろ自販機のコーヒーや紅茶も温かいものが並んでくる。
これからの季節はホットな飲み物が自販機の定番となっていく。
 彼は注文を受けると、小走りに駆け出していった。
彼が行った後、2人は腰を下ろして話をした。映画の時間をたずねると、まだまだ時間が
あるとのこと。あかねは乱馬といっしょにいた少年と話がしたかったので、乱馬に「ねえ。
もうしばらくここで話していこう」とせがむと、彼は表情を変えることなくOKを出した。
 数分後、少年がコーヒーとミルクティーの缶を両手に持って戻ってきた。
彼から渡されると、2人は早速缶をあけて飲みはじめた。少年も少しずつ飲み始めた。
 少年は「君たち学校はどこなの?」「風林館高校だけど」とは乱馬。
「えっ、そうなの。僕も風林館の3年だけどね」と少年。
あかねは「へえ。あたしと乱馬は1つ下です」「てえことは2年か」とは少年。
「そういえば、君の名前は?」とたずねた。
「天道あかねです」と彼女が答えた。
「天道あかねちゃんね。うーん……天道……ね」と何か思い出そうとしている。
あかねは彼を見て「どうかしたんですか?」と怪訝そうな顔でたずねた。
それから1分ほど彼は考えた後、思い出したらしく彼女に言った。
「天道なびきって娘が同じクラスにいるんだけどね。もしかして……」
あかねは質問の内容が理解できたらしく「妹ですけど」と言った。
「あっ、そう。妹がいるってのはきいてたけど、君が妹さんだったのか。ふーん」と少し驚きが混じった表情を見せた。
あかねは「お姉ちゃんとクラス一緒なのですか」「うん、席もとなりだし。何か知らんけど、クラスは小学校から中学、高校の今までずっと一緒だし、席も何度も一緒になったことあるし。あいつとは何か不思議な縁でもあんのかな」と首をかしげながら言った。
そして「まあ、仲悪いってわけじゃないからいいけどね、ハハハハハ。」と彼は声をあげて笑った。
 コーヒーを飲みながら、彼とあかねの会話を横で聞いていた乱馬は、少しホッとした。
なぜかというと、少年があかねに特別な好意を持っていないかどうか、ひそかに伺って
いたのである。どうやら、少年にそのような気持ちはないらしい。
少年にしてみても、彼女を好きになるという気持ちはないはずだ。
だって、彼女には乱馬という少年がいるということをわかっているのだから。
 あかねはふと時間が気になったので、時計を見ようとして左手首をみた。
が、そこに腕時計はなかった。「やだっ、あたしったら腕時計忘れてきちゃった」
「時計なら僕がもっているよ」と少年が言った。「助かった。今何時ですか?」
「えーとね、3時5分37秒」と左手首にはめている使い古したスポーツタイプの
時計を見ながら言った。
 「あっ、そういやあ映画の時間は?」と乱馬はたずねた。あかねが「3時40分だけど間に合うかなあ」と困った顔をする。時計をしていた少年が「うーん、今っからだと相当急いでもギリギリだな」とこれまた苦笑しながら言った。
そして一呼吸置いてから、彼があかねに聞いた。「映画の時間はそれが最後かい?」
「たしか次があったはず。んーと、5時20分のが」「5時20分か。あ、そうそう。確か今日は最後の回を見るとき、料金が半額になるはずだよ」と少年は言う。
「えっ、マジかよ。ラッキーじゃねえか。なあ、あかね。5時20分にしようぜ」と乱馬が嬉しそうに言った。あかねは「うーん……」と30秒ほど考え込んだ後、「いいわ。遅くなるって家に電話すれば良いことだし。何より半額は嬉しいわね」と、これまた嬉しそうに決めた。
「何の映画をみるつもりなの?」と少年がたずねるので、あかねは題名を告げると、彼の
表情がパッと輝いた。「あっ、それ僕も見た。すっごくいい映画だぜ。見なきゃ損するよ!!」と少々興奮気味に言った。2人は彼がそんなふうに言うので、その映画をますます見たくなった。
 少年は時計にちらりと目をやると「あっ、もうこんな時間か。残念だけど僕はお暇しなくちゃ。どうしてもやらなきゃならないことがあるんだ」と立ち上がった。
「えっ、もう行くの?もうちょっと話して行きゃいいのに」と乱馬は名残惜しそうに言った。しかし彼の意志は変わらないようだ。あかねも「また逢えるといいですね」「うん、どこかでね」と少年。乱馬は「じゃあな、また逢おう」と笑顔で送り出した。
彼も笑顔でそれに応え、バックを肩に引っ掛けて、ポケットに手を突っ込んで歩いていった。
 少年が去った後、2人の頭の中はさまざまな思いがめぐった。
あかねは「今の人なかなか良い感じで優しい人だったわね、乱馬もいつもああいう風に優しければいいのにな」
乱馬は「あいつはなびきと一緒のクラスだったのか……」という調子である。
 そして少したった後、互いに話をしようと思って声をかけようとした。
「あのさあ」「ねえ」
これがほとんど同時だった、2人は顔を見合わせて思わずふきだしてしまった。
先に話し出したのはあかねの方だった。
「乱馬って意外と行動範囲広いのね、公園とか探しても全然いなかったからびっくりしたわ」
「俺も頭の中が混乱していて、どこへ行こうか考える余裕なくってな。やみくもに歩きまわっていたら、ここにきちまったわけさ」と苦笑しながら言った。
空は相変わらず青い空が広がっている。あと何時間かすれば空の色も茜色に彩られるだろう。
「さあ、そろそろいこうか」と乱馬は立ち上がって言った。
「あっ、ちょっと待って」とあかねは言い、バックの中をがさごそと探していた。
そして「あたし、腕時計いれたのコロッと忘れちゃってた」と腕時計を取り出して、えへへっという感じで、ぺロッと舌をだした。
乱馬は半分笑い顔、半分呆れ顔で「バカ、それを早く言えよ。時間がわかんねえもんだから焦っちゃったじゃねえかよ」
あかねは「なによ、忘れてたのはあんたのせいよ。何も言わずにどこかいっちゃうんだもん」とちょっとムキになって言い返した。
乱馬は「でも時間はまだたっぷりあるぜ。んー……そうだ!どこかでお茶でも飲んでいくか?安くて、うまくて、いい店知ってんだよ。俺がおごってやるよ」
「えーっ、おごってくれるの。珍しいわね。明日は雨が降るかしらね」と半分からかいを含めていった。
「バカ、雨が降るなんて言うなよ。俺がおごったって別にいいじゃねえか」と少しムキになる。そして2人は顔を見合わせて笑った。その時の笑顔は昼間ケンカしたとは思えないほど晴れやかなものであった。2人の上に広がる青い空のように。
 「さ、いこうぜ」と乱馬はあかねを促して、歩き出した。
あかねは歩きながら、こういう関係がいつまでも続いて欲しいなと思った。
時々ケンカもしたりするけれど、こうやって仲直りできる。あと、乱馬がいつもあの少年のように優しくして欲しい。これからそんなふうでありたい。乱馬も同じような気持ちで
いるだろう。
 いつも、いつでも。「ALWAYS」―――いいじゃないですか








作者さまより
 こんにちは、Kobayashiです。2ヶ月ぶりの投稿でしょうか。
今回は(も、かな?)オリキャラを登場させてみました。前回(「幻想(まぼろし)」を参照)とは違って今回はほぼメインとして、会話も前回と比べて多めにして話を構築してみました。キャラの名前は考えるのが面倒くさかったので、自分のを使いました(苦笑)。
 ジョン・レノンのアルバムをBGMとして多用していたこともあって、話しにいれてみました。理由は至極、単純。僕がジョンを好きだから。ちなみに僕の尊敬する人でもあります。かけていたのは「LENNON LEGEND」というベストアルバムです。
このアルバムは僕としては、はじめてジョンに興味をもたれた方に相応しいと思うので、興味があれば、ぜひきいていただきたいなと思っています。
 次に乱馬とあかねを高校2年生としたのは、けいこさんの小説の世界が「延長戦」的世界であることを考慮してのことです。僕がこれから書く小説のなかにおいては、彼らは高校2年生という設定でいきますのでご了承を。
 あとそれからオリキャラの「コバ君」のことですが、彼に関してはまた出していきたいと思います。次回に出るときはもう少し明らかになることでしょう。名前は僕のを引用しましたが、作者との関係の有無は秘密です。名前を出したにもかかわらず「少年」と記述しているのは、この方が書きやすかったから。最後に10月中に投稿する予定でしたが、間に合って良かったなと思います。
そんなわけで、次回にお会いしましょう。

  Presented by Kobayashi



 延長的投稿小説〜好みの「乱×あ」で嬉しいです。
 好きな人は、BGMにビートルズが聴きたくなりますよね
 乱馬とあかねの後ろ側にさり気に登場する、オリジナルキャラクター「コバ少年」。今後の彼の活躍は?
(一之瀬けいこ)



Copyright c Jyusendo 2000-2005. All rights reserved.