◇imitation ACT.5
kawachamonさま作


「おぉ、おぉ、美しいのう!!ほんにこんな美しい花嫁は200年生きたワシでもみたことはないわ!」
いよいよ挙式当日、白地に花の刺繍を施したチャイナ風のウェディングドレスに身を包んだリンスにコロンは感嘆の声をあげた。
首までピッチリと詰まった襟に長袖、そして腰の辺りで前後にわかれふくらはぎまでヒラヒラしているトップスの下には、同じく真っ白なすそ広がりのロングのスーカートをはいている。
肌の露出こそすくないが、そのピッチリとしたシルエットは、リンスの華奢であるが豊かな身体のライン強調し目のやり場に困るほど魅力的だ。
そしてリンスのサラサラの髪を、やはり白い石楠花が飾る。
けっして派手ではない控えめな化粧が逆にリンスの可憐な魅力を引き出している。
今、彼女はその胸に煌く龍の涙よりも輝いて見えた。
身支度の手伝いをしてくれた娘達は、うっとりと見惚れその姿を賞賛する事さえも忘れていた。
「ばば様、私、なんてしあわせなんでしょう」
リンスは目に涙を浮かべている。
「おぉ、リンス、泣いてはいけないよ。せっかくの美しい顔を涙で濡らさないでおくれ。おぬしには笑顔が似合う」
「はい」
「ではそろそろ行こうではないか、花婿が首を長くして待っているじゃろうて」
控え室を後にし、リンスはコロンに導かれ寺の本堂の扉をあけた。
本堂の一番奥には花婿のシートウがリンスを待っている。
女傑族のしきたりとして花嫁の母がそこまで花嫁を送ることになっている。
リンスの場合、コロンが母代わりだ。
シートウはパオと呼ばれる民族衣装を身にまとっていた。
黒地に龍の刺繍を施した上着はリンスと同じく腰の辺りで前後に分かれくるぶしの辺りまである。
長身のシートウの凛々しさ、精悍さをいっそう引き立てていた。
中国のしきたりで、花嫁の白はどうぞあなた色に染めてくださいという意味で、花婿の黒はそれを受け入れるという意味だ。
「リンス、なんて美しいいんだ・・・。俺の花嫁」
コロンがリンスをシートウの元に届ける。
「シートウ・・・」
見つめあう二人。もうお互いのことしか目に入らない様子だった。
コロンはそっと退場する。
結婚式は二人きりで執り行う。
それがこの地方の風習だった。
コロンが本堂の扉にたどりついたその時、バンっと勢いよく扉が開いた。
「ちょっと待った!!」
日の光を背に乱馬が現れた。
「お、お前!生きていたのか・・・!おばば殿これはどういう事だ!!」
シートウは死んでいるハズの乱馬の登場に驚きをかくせない。
コロンも言葉を失っている。
乱馬の後ろからおもむろにムースが現れた。
「おばば殿すまんのう。乱馬を連れ去ったのはオラじゃ」
「ム、ムース!!お前・・・、裏切ったか!!シャンプーの幸せをこの後に及んで邪魔しようというのか!?」
思いもよらないムースの裏切りに、コロンは怒りのため全身が震えている。
「シャンプーの幸せ?いったい何がシャンプーのしあわせじゃ?あかねの代わりとなり乱馬と結婚することか?シャンプーの事などまったく愛していない乱馬と一生をともにすることか?それがシャンプーの幸せなのか?
オラはそんなの許せない!!シャンプーはシャンプーとして幸せになるんじゃ!!オラが絶対幸せにしてみせる!!」
ムースはコロンを見据えて高々と言い放った。
空気がピリピリと音を立てて緊張を増していく。
「あかね!待ってろ!!今助けてやるからな!!」
乱馬の声が本堂にこだまする。
リンスはまた自分を失いそうになる感覚を覚えた。
気が遠くなる、自分が遠くなる。苦しい・・・。
立っていられない。
床がズブズブと自分を取り込んでいく。
力なくその場に崩れるリンス。
「シートウ・・・、シートウ・・・」
シートウの名を呼ぶ事でリンスは自分を保とうとしていたのかもしれない。
リンスを抱きとめながらシートウは乱馬に対するはっきりとした殺意を抱いた。
リンスを苦しめる奴はゆるさねぇ。
今まで感じたこともないほどの狂気がシートウを支配する。
”ぶっ殺してやる・・・。”
全身からほとばしる気でシートウの髪が、その衣装がまるで生きているように揺らめいている。
「あの時死んでいればよかったと思わせてやるぜ」
そういうとシートウは怒りにまかせて乱馬に向い、石貫閃の乱れうちをはじめた。
乱馬は目にもとまらぬ動きでそれをよける。
一度くらった技だその動きは見切っている。
乱馬とて達人だ。
「おのれぇ!チョロチョロと!!」
シートウはいらだった。そしてむやみに石貫閃を放つのをやめ、まずその動きを封じるべく戦法を変えてきた。
気をまるでタコの手のように操り、乱馬を捕まえにかかったのだ。
コレには乱馬もおどろいた。
ひとつよけてもまた四方八方から鋭い触手が自分をおそう。
少しずつ乱馬の息が上がってくる。
「や、やめて・・・。シートウ、その人と戦わないで・・・」
ヨロヨロとリンスは立ち上がり、シートウに近づいた。
しかしシートウの周りは、まるでオーラのように殺気を帯びた気がその身を包んでいる。
バチッ!!ものすごい音を立ててリンスははじかれた。
シートウは怒りの為その事にまったく気がつかない。
「あ、あかね!!」
乱馬に一瞬の隙ができた。シートウはそれを見逃さない。鋭い触手を乱馬へと繰り出した。
髪一重でかわしたものの左胸の傷口を触手が掠める。
「ぐっ!!」
乱馬の動きが一瞬とまった。
その瞬間何本もの触手が乱馬身体にからみつきその動きを封じた。
そしてその触手を媒介し、一気に電流のような気を乱馬に送り込む。
バチッバチッバチッ!!!
「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」
衝撃のため乱馬の身体は激しく痙攣を繰り返す。
乱馬の身体から湯気なのか煙なのか分からない気体が立ち上る。
「コレで終わりだな・・・」
シートウはニヤっと笑い、乱馬にとどめをさすべく石貫閃を打つため気を貯める。
瞬間、今までシートウのまわりを覆っていたオーラような気が消えた。
その時を待っていたのかムースの鎖がシートウの首を襲う。
「ううぅ!!」
思わず苦しみの声を上げるシートウ。
「助太刀するぞ、乱馬!!」
キリキリとシートウの首を鎖は締め付けてゆく。
それと同時に乱馬の動きを封じていた触手が消えた。
バッタリとその場に倒れる乱馬。
身体は自由になったものの動けない。
「こんなもんで俺に勝つつもりか?バカかお前・・・」
シートウはそう低くつぶやくと鎖をガシッとにぎりそれに向かって気を送り込む。
「うあぁぁ!!」
鎖の反対側をつかんでいたムースは、まともにその気を受け気を失った。
「ふっ、バカめ・・・」
そういいながらシートウは一歩一歩乱馬に近づいていく。
「そろそろ楽にしてやろうか」
倒れている乱馬、シートウが近づく気配は感じても身体をピクリとも動かせなかった。
”クソッ!!身体が言う事をきかねぇ・・・”
シートウは目を閉じ、とどめの石貫閃を放つべく指先に全身の気を集める。
「とどめだ!!!」
そういうと乱馬に向けて特大の石貫閃を放った。
「あかねぇーーー!!!」
乱馬の絶叫ががこだまする。
その時信じられない光景が二人の目前に広がった。
「リンス!!!」
「あかね!!!」
リンスが乱馬の前に立ちはだかった。
石貫閃はリンスの胸の中心を一直線に貫く。
リンスは大きく後ろに飛び、そのまま本堂の扉にぶつかり前のめりに倒れこんだ。
「リンス!リンス!リンスー!!」
シートウが狂ったようにリンスに駆け寄り抱き起こす。
乱馬もふらつきながらそれに続く。
抱き起こしたリンスは奇跡的に無傷であった。
その代わり胸にしていた龍の涙が粉々に砕け散っている。
「シートウ、お願い・・・。その人と戦わないで・・・」
リンスは息も絶え絶えに懇願する。
「リンス!!」
シートウはリンスの手を強く握る。
「しっかりしろ!!大丈夫!お前は無傷だ!!首飾りがお前をまもってくれたぞ!!」
シートウは力強くリンスを励ます。
「でも、駄目・・・。私、苦しいよ・・・」
リンスの身体は真冬の冷気にどんどん冷えてゆく。
「シートウ・・・。私の手を離さないで・・・。お願い抱いて・・・」
言われるがままシートウはリンスを抱きしめる。
「ねぇ・・・、シートウ、私、あなたと出会って幸せだった。あなたを愛してる。今も、これからも・・・。ずっとあなたを愛してるわ・・・。ありがとう・・・」
そういうとリンスはもうすっかり冷たくなってしまった手でシートウの頬に触れた。そして瞳を閉じそのまま力をうしなった。
「リンスーーーーー!!!」
シートウは声の限りリンスの名を呼ぶ。
しかしリンスは目を覚まさない。乱馬はその様子を後ろからみつめていた。
「おい・・・。嘘だろあかね・・・。目ぇ覚ましてくれよ」
そろそろと近づきその手ををとった。
「あかねーーー!!」
乱馬があかねを呼ぶ。
ゆっくりとあかねが目を開けた。
「乱馬?私、何をしていたの?ここはどこ?なんだか長い夢を見ていたような気がするわ」
あかねは乱馬を見つめ弱々しくつぶやいた。
「リ、リンス・・・」
シートウは呆然とする。
乱馬はそんなシートウを押しのけあかねを抱きしめた。
「な、なによ・・・。乱馬苦しいじゃない」
あかねは突然の抱擁に苦しそうに片目をつぶる。しかし、少しうれしそうだ。
「俺、俺・・・」
乱馬は言葉にならず涙を流し続けた。
「変な乱馬・・・。でも私、こうしているととても幸せ。私、乱馬を愛してる。とても愛してるわ。あはっ、変ね・・・。突然告白なんて、私らしくないかしら・・・。でもどうしても伝えたかったの」
あかねは微笑み乱馬の背中に腕を回す。
「ねぇ、乱馬。私、なんだかとても疲れたわ・・・。このままこうして眠りたい。乱馬、私を離さないで・・・」
そういうとあかねはゆっくり瞳をとじる。
それと同時に乱馬の背に回っていたあかねの腕が脱力する。
「あかね・・・?」
乱馬は不審に思いあかねの肩を抱きその顔をのぞきこむ。
その顔は少しほほえんで幸せそうだった。
しかし力がすっかり抜けているのか首がふらふらと据わらない。
「あかね?」
もう一度乱馬はその名を呼んでみた。
しかしなんの反応もない。
今度は肩をゆすってみる。
やはりあかねは目覚めない。
「あかねぇ!あかねぇ!!あかねぇぇぇ!!!!」
乱馬は狂ったようあかねの名を呼びその身体をゆする。
生き返ったと思ったのに、あかねにまた会えたとおもったのに・・・。
乱馬は子供のように泣きじゃくり、冷たくなってしまったあかねを抱きしめる。
「あかね・・・。思い出してしまたあるな。私の技を破ってしまたあるな」
本堂の扉にシャンプーが立っていた。
シャンプーは乱馬とあかねに近づき、あかねの手をとった。
「ごめんある。あかね。ごめんある。まにあわなかたね。私、あかねにかけた技、解こうと来たが、まにあわなかたね」
シャンプーは泣き崩れる。自分のしたことは結局なんの幸せもうみださなかった。
ただ絶望を乱馬とあかね、そして自分に与えただけだった。
後悔してももう遅い。あかねは死んでしまった。
「シャンプー・・・。乱馬・・・。あかね・・・」
コロンはただ見つめるしかできなかった。
ふらふらとシートウが動きだす。
乱馬をおしのけその腕からあかねを奪った。
そしてその唇にふかぶかと口付けをする。
「てめぇ!何しやがる!!!」
乱馬はあかねを奪われた上、まるでその身を汚すかのように口付けをしたシートウが許せなかった。
我を忘れてシートウに飛びかかる。
しかしシートウとあかねをつつんだオーラが乱馬を弾き飛ばした。
神々しい金色のオーラが二人をつつむ。
しかしそれは先ほどまでの殺気に満ちたそれでなく、あたたかいやわらかいとても心地良い気だった。
本堂いっぱいにその気が立ち込める。
いつしか乱馬達もその気に包まれていた。。
不思議とその気に触れるとまるで癒されるようだった。
乱馬は自分の中に力がわいてくるのを感じた。
ムースは気がつき立ち上がる。
「な、なんだ・・・?この気は・・・?」
乱馬は気の中心にいるあかねを見つめる。
あかねの頬に赤みが差していた。
その指がピクッと動いた気がした。
「あかねっ!?」
ゆっくりとあかねがその目を開ける。
目の前に見知らぬ男の顔があった。
自分にこの男はキスをしている。
でも不思議と嫌な気がしなかった。
それどころかなんだか安らぐようなそんな気さえした。
シートウはゆっくりあかねを自分から解放する。
「大丈夫か?」
優しく穏やかにシートウはあかねに問いかける。
「えぇ、大丈夫よ。でもはここはドコ?あなたは誰?」
あかねは残酷な言葉をシートウに放った。
シートウは悲しみにその表情を歪ませる。
しかしすぐにやわらかく微笑み。
「誰でもないよ。お前にとって俺は誰でもない」
歌うようにそういった。
「ありがとう。なんだろう?よく分からないけど。なんだかお礼を言わなくちゃいけない気がするの」
あかねはシートウが作った一瞬の悲しみの表情にチクッと胸がいたんだ。
この人を励ましたい。そんな気がした。
「ありがとう」
そう言うとシートウはあかねをグッと力強く抱きしめそして背を向けた。
「リンスを幸せにしてやってくれ」
乱馬にそれだけ告げるとゆっくり本堂の扉へ歩いていく。
「シートウ!」
乱馬はシートウの背中に叫んだ。
何か言いたいそう思ったが何も浮かばなかった。
礼か罵倒かそれともなぐさめか?
自分が言いたかったのは何だろう。
乱馬には分からなかった。
「乱馬!ここはドコなの?」
あかねが乱馬の横に来てその顔を見上げている。
「あかね!!」
つよく、つよくあかねを抱きしめた。
「いたいよ!どうしちゃたの?」
あかねは不思議顔だ。
「あかね、ごねんある。全部私が悪いある」
シャンプーがあかねに涙を流しあやまる。
その瞬間あかねはシャンプーに襲われた事を思い出した。
「そうだわ、私、シャンプーに・・・」
「私は茜溺泉を利用しあかねに成り代わり乱馬を自分のもにしようとした。そしてあかねを殺そうとしたある。私は最低ある。もう生きている価値はないね・・・」
シャンプーは後ろを向きその場を去ろうとした。
その背中は、もう何も自分には残されていない、そう語っているようだった。
「シャンプー待って!どこ行くの!?」
あかねはシャンプーの腕をつかんで引き止める。
「あかね、離すある。私はお前を殺そうとしたあるよ!」
シャンプーは絶望的に叫ぶ。
「でも、できなかったでしょ?私覚えてるよ、シャンプー泣いてたもん。私にすまないって言って泣いてたもん。シャンプー、自分を捨てることはできても私を殺すことはできなかったんだよね」
あかねはそういうとシャンプーの肩に手をおいて微笑んだ。
「あかね・・・。でも私は最低の事をしたある。もうお前達とあわせる顔はないね・・・」
シャンプーはうつむきなおも歩きだそうとする。
「シャンプー!最低なのはオラもおんなじだ!乱馬はシートウに勝てないと分かっていた。あかねは記憶を取り戻すと死んでしまうと知っていた。でもそれでもオラは結婚式をぶち壊そうとしんじゃ!二人が死んでもかまわんと思うたんじゃ!」
ムースがシャンプーに向かって叫ぶ。
「シャンプー、オラとともに生きてゆこう」
ムースはシャンプーの肩に手を置き自分のほうにむかせた。
「私はまだ乱馬を愛してるある」
シャンプーはムースから顔をそらす。
「分かってるだ。オラはいつまでも待つだ。シャンプーが乱馬を忘れるまで、オラを愛してくれるまで。なぁに待つのはなれっこだ。なにせ3つの時からもう15年以上まってるからなぁ」
ムースは明るく笑った。
「でもムースを愛せなかったら?」
シャンプーは残酷な事をいうものだ。
「大丈夫、シャンプーは必ずオラを愛するようになるだ。オラはシャンプーの半身じゃ。シャンプーはオラの半身じゃ」
長い腕でシャンプーを包む。
「ムース・・・」
「行こう、シャンプー、オラと共に・・・」
二人はゆっくりと歩き出した。
「乱馬!あかね!いつかまた会う事があるかもしれんのぉ!お前らも達者でな!幸せになるんじゃぞ!!再見!!」
シャンプーの手を引きムースは二人に別れを告げた。
「ワシは間違っておったんじゃなぁ・・・。シャンプーの幸せを願ってその幸せがようみえておらなんだ・・・。200年も生きたと言うに情けない事よ・・・」
コロンはヨロヨロと歩き出す。
「ばぁさん、どこ行くんだ!?」
その背中に乱馬が問いかける。
「ワシもまだまだじゃとよう分かったわ。また初心へと立ち戻り修行の旅にでもでるかのぉ」
清清しそうにコロンは笑った。
「婿殿、いや、乱馬、あかねと幸せにのぉ」
ゆっくりと寺をあとにする。
残された二人。
「ところでさ、ここはドコなの?」
あかねはキョトンと乱馬に聞いた。
リンスの頃の記憶がないのだからそれも仕方ない。
「中国だよ」
「中国!?また遠いところにいるのね私達。でもちょうどいいじゃない、せっかくだし呪泉郷によっていきましょうよ」
あかねはどこまでも前向きだ。
「よっていこうじゃなくて、もともとそれのために中国に来たんだよ。よったのはこっち!!」
「あははっ!そうなの、なぁんだ」
明るく言う。
「それじゃ、行こうか」
「うん」
乱馬はあかねの手をとり歩き出した。
「そうだ、あかね、大好きだぜ」
思い出したように乱馬があかね言った。
「へっ?何いってんの?突然」
いきなりそんなこと言われると照れてしまう。
「あかねはかわいい!、世界一かわいい!!」
「ちょ、ちょっとなによ」
あかねは笑いながらあきれる。
「いいんだよ!決めてたんだからさ!」
乱馬は上機嫌でつないだ手を勢いよくブンブンとふった。
「えーっと、もうあかねを離さないぞ!俺はやきもち焼きだ、他の男の目にだってホントはあかねを触れさせたくなんかない!」
もう思いつくこと全部を乱馬は口にするようだ。
「はい、はい」
もうどうでも言ってくれといわんばかりにあかねは相槌をうつ。
「それから、あかね・・・、結婚しよう」
一瞬あかねの動きがとまる。
「えっ?!今、何て?」
「何度でも言ってやるよ。俺はあかねを愛している。結婚しよう」
あかねをまっすぐ見つめ乱馬は力強く言った。
「うん」
あかねはうれしそうに微笑んだ。
そして二人は口付けをする。
あたたかい気がふたりを包んだ。

乱馬にとって中国は今、幸せな思い出の場所に変わった。









 kawachamonさまの長編、いかがだったでしょうか?
 
 負けた男と結婚を強いられるという掟。優秀な子孫を伝えるためとはいえ、とても残酷な話であります。そこへ各々の恋が絡んでいく、と、こういうすったもんだが起こってくるのかもしれません。
 自由気ままに生きているようで、掟に縛られた恋愛をするシャンプー。掟に歯向かいながらも、果敢にシャンプーに求愛をするムース。力は確かにシャンプーよりも弱かったのかもしれませんが、本当はらんまキャラ数多居る中、精神的には彼が一番強いのかもしれません。
 結局、恋人たちは元の鞘に戻って、リンス(あかね)に失恋してしまった石頭(シートウ)くんがちょっとお気の毒な…。これも恋のすったもんだということで、彼もまた、己の半身をきっと見つけ出す事でしょう。
(一之瀬けいこ)



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