◆乱馬VSなびき?!
みのりんさま作





 ガラガラガラガラ……
 玄関が勢いよく開く音がした。
 ドンドンドンドン……
 居間にいた、あかね達の耳に、足跡が聞こえてくる。すぐに居間にその音の主が現れた。
「くぉら!なびき!!」
 なびきの姿を見つけた乱馬の、怒気を含んだ低い声。
「聞いたぜ!また勝手に、変な話をとりつけてきやがったって!!」
「あら、言っていなかったけ?」となびきはとぼける。
「手前ぇ!表に出やがれ!!」
 乱馬はビシッと玄関を指差す。
「ちょっと、乱馬。」
 あかねが慌てて声を出した。まさか、本気でなびきを殴ったりはしないだろうが……
「い〜けど。一つあんたに聞きたいことがあるんだけど。」
 なびきは乱馬の手を指で示す。
「あんたって、何でもぶっ壊すことできるわよね。」
「ああ。」
 乱馬は拳を胸の前で構えてみせる。
「と〜ぜんだ。おれは強ぇからな!」
「それじゃあ、“ある板”をぶっ壊してくれたら、すぐに土下座して何もかも謝ってあげるわよ。」

 今までさんざんもてあそばれた恨みは、数え切れない。
 そのなびきが、自分に土下座している謝る。
「ごめん、乱馬くん。私が悪かったわ。」
 泣きながら、なびきはハンカチをくわえ、乱馬のズボンを掴む。
「わっはっは!」
 どんなに、気持ちの良いことだろう……思わず笑みが漏れる。

「よーし、その言葉に嘘、偽りはねえな!」
「いいわよ。ただし、ぶっ壊すことができたらね。」
 スタスタとなびきは居間を出て行く。その後を追う乱馬。それに続く居合わせた天道家家人一同。
 なびきは玄関で靴を履いた。
「どこに行くつもりだ?」
 訝しげに乱馬が問うと、「すぐそこ。」となびきから返事が返ってきた。


 天道家の門の前まで来て、なびきは立ち止まった。
「さぁ、“この板”をぶっ壊してちょうだい!」
「…………」
 乱馬は思わず固まってしまった。
 なびきが指差したのは、なんと“天道道場の看板”。
「ぶっ壊せたら、この場で土下座するわよ。」
 なびきは不敵な笑みを浮かべ、両手を組みながら乱馬を見つめる。
「ら、ん、ま、く、ん……」
 強烈な殺気が、乱馬は背中に感じた。
 乱馬が恐る恐る振り返ってみると、般若のごとく変じた巨大な早雲が、己を見下ろしていた。
「うちの看板、壊すつもりなら……」
 デロデロデロデロ〜〜〜
 蛇のごとく長い舌が、乱馬の頬を撫ぜる。
「……今すぐ地獄を見せてあげるよ〜〜」
「びえええええぇぇ!!」

「じゃあね。乱馬くん。」
 そういい残して、さっさとなびきは家に戻る。
「洗濯物、とりこまなくちゃ。」
 かすみも家の中に向かった。
 血走る目が、乱馬を睨む。
「や、やりません!やりません!!許してください!」
 地面に正座して、頭をこすりつけ、必死に叫ぶ乱馬。
「勝負あったな。」玄馬がシミジミと言う。
「……自分で土下座しちゃね。」
 呆れながら、あかねは何度も早雲に土下座する乱馬を見ていた。












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