◆ウルフ
ゴンタックさま作


学校の昼休み。あかねたちはある話をしていた。
「狼男!?」
「そっ、このあたりの山に出るらしいわよ。」
「しかもけっこうかっこいいらしいのよ。」
さゆりとゆかが最近流行っている噂話をあかねに教えた。
「ねえ、あかね。その男どういうやつか見てみたいと思わない?」
「べっつにー…。」
予想通りのあかねの素っ気ない答えにさゆりとゆかはニヤリとした。
「だめだよ、さゆり。あかねには乱馬君がいるんだから。」
「な゛…!?」
「そっかー、そうだよねー。こんな話、あかねにしても意味ないねー。」
「…ところであかね。乱馬君とどこまでいったの?」
「あー、あたしも知りたーい!」
「ちょっ…な、何言ってんの!?」
二人にからかわれ顔を赤くするあかね。
そこへ乱馬が話に割り込んできた。
「お前ら、何盛りあがってんだ?」
「あっ、乱馬君。あのさぁ、乱馬君とあかねってどこま…。」
「あぁぁぁぁぁ!」
あかねはあわててさゆりの口を塞いだ。乱馬は不思議そうに見ている。
「…何してんだ、おめえ?」
「な、なんでもない、なんでもないの!…え、えっと、おおかみ…そっ、狼男の話をしてたのよ!」
「は?狼男?」
「そうなの!そうだよね!?」
あかねは早口でさゆりたちに話しかける。
二人はそんなあかねを見てやれやれと思いながら乱馬に噂話を話した。
話を聞き終えた後、乱馬は素っ気なく答えた。
「それさ、良牙のことじゃねえ?」
「えっ、良牙君?」
「あいつ方向音痴のうえに、あの風貌だぜ?きっと誰かが山であいつを見てそう思ったんだろ?」
「そうかなぁ…?」
「第一、狼男っていうのは満月の夜に出るもんだろ?それに、この前ここらへんで迷ってた良牙見かけたし…。」
良牙に決まっているぜ、と言うと一同なんとなく納得してしまった。

そのころ…

ハックションッ!

「うう…風邪ひいちまったかな?」
良牙は山の中をさまよっていた。
修行をしようと出かけてみたものの、彼の方向音痴は筋金入り。
見事に迷子になり、もう数週間が経っていた。
「それにしても…ここはどこなんだぁぁぁぁぁぁ!?」
「うるせーぞ!てめえ!!」
「う…!?」
突然男の声がした。良牙が上を見ると、一人の男が木の上に立っていた。
腕や腰、足に毛皮を着せ、胴には戦国時代の鎧のようなものをつけている。
「だ、誰だ、貴様!?」
「人の名を訊ねるときは自分から名乗るってのが筋だろ!ったく、最近の人間は…。」
男は木から飛び降り、良牙を睨みつけた。
「先祖代々守ってきたこの土地に、無断で上がりこんできやがって…!!」
男は良牙に向かって突っ込んできた。
「てめえは俺がぶっとばしてやる!!」
「うおっ!?」
男が蹴りを繰り出してきた。良牙は寸前で体をのけぞらせて攻撃をかわした。
(こ、こいつ…速いっ!!)
「ちっ…けっこうやるじゃねえか、ハチマキ野郎!」
「な゛…!これははちまきじゃねえ、バンダナだっ!!」
「うるせえっ、どっちもおんなじだ!!」
男はまた良牙に襲いかかってきた。良牙も負けじと応戦する。
両者の拳、蹴りが空を切る。時々拳と拳、蹴りと蹴りがぶつかると凄まじい衝撃が走る。
それでも二人はまったくひるまずに攻撃を仕掛ける。まさに互角の戦いである。
近くで身を潜ませていた小動物たちは、身の危険を感じ一斉に逃げ出した。

どれくらい経ったのだろうか。いつのまにか日が暮れかかっていた。
周囲の木々は二人の凄まじい闘気によってなぎ倒されていた。
ハァ…ハァ…ハァ…
「し、しぶといやつだな…。」
「そ、それはお互いさまだ…。」
二人の息はかなり上がっていた。
(次の攻撃で決めてやる!!)
二人は最後の一発を繰り出そうとした。
そのときである。良牙の懐から一枚の紙切れが落ちた。
その紙切れは不意に吹いてきた風に乗って男の顔にかぶさった。
「!?…な、なんだ!?」
「!?…あっ、そ、それは…!!」
二人の動きが止まった。
男は紙切れを手にしてみた。
「…へぇ、けっこういい女じゃねえか。」
それはあかねの写真だった。おそらく良牙がなびきから買った(買わされた?)ものだろう。
「か、かえしやがれっ!!」
良牙があわてて奪い取ろうとしたが、男にあっさりかわされてしまった。
「どことなくあの女に似てるなあ。」
「この野郎!!」
良牙は必死になって男を追い回す。
男は良牙の攻撃をかわしながら、写真を見ながら考え事をしているのかブツブツひとり言を言っている。
「…よし、決めた!!」
「!?」
男は突然立ち止まった。良牙も思わず立ち止まってしまった。
「この女を俺の嫁にする!!」
「な゛…!?」
あまりの突然の一言に良牙の頭の中は真っ白になってしまったが、すぐに我に返ると男に飛びかかった。
「き、貴様ぁ、そんなことをよくもぬけぬけと!!」
「俺の決めたことだ。てめえには関係ねえだろっ!」
男は後ろに宙返りをすると、そのまま走り出した。
「あっ、貴様どこへ行く気だ!?」
「ふん、てめえの相手をする気はなくなった。これからこの女を捜しにいくぜっ!!」
「こ、こらっ!ちょっと待ちやがれ!!」
良牙も慌てて男のあとを追って走り出した。
今度は二人の壮絶な鬼ごっこが始まった。

数日後の天道家。
あかねは居間で新聞を読んでいた。そこへ稽古を終えたばかりの乱馬が入ってきた。
「…お?珍しいな。お前が新聞読んでるなんて。」
あかねはキッと睨むが、乱馬は気にせず横から顔を覗かせた。
「…で、何が書いてあるんだ?お前でも作れる料理か?」
「失礼ね!…ここよ、ここ!」
「ん〜、なになに…?」
あかねの指差した部分を読んだ。
「これってさ、良牙君だよね?」
「……みたいだな。」
(あいつ、こんなとこで何やってんだ?)
そこには「未確認生物発見!?」の記事と見覚えのある黄色いバンダナをした影が映った写真が掲載されていた。









作者さまより

今回は「主人公のライバル」である二人を題材にしてみました。
この二人、主人公との仲、主人公の彼女(?)に惚れる、性格などいろんな点でそっくりだなあと思われた方もいたのではないでしょうか。名前も「牙」つながりですし…。
(作者さまより)


やっぱり、狼男って「犬夜叉」キャラのあの狼妖怪少年ですよね(笑
同じ「牙」という字を名前に持ってますし・・・女の子に対するストレートで一途なところなんか確かにそっくりだと思ってます。
類は友を呼ぶ・・・じゃないか(笑
どちらもむき出し鎖骨キャラですし(何?
(一之瀬けいこ)




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