◆九能の新たなる敵!?
ゴンタックさま作


学校の帰り道。
「天道あかねぇ!好きだぁぁぁぁ!!」
いつものように九能があかねに抱きついてきた。

ドカッ!!ヒュルルルルルルルルル…

そしていつものようにあかねに吹っ飛ばされていく。
「まったく、懲りねえな九能のヤツ…。」
フェンスの上では乱馬が九能の飛んでいったほうを見上げている。
彼の隣、いや下ではあかねがパンパンと埃を払っている。
「ほら、帰るわよ乱馬。」
「お、おう。」
二人が歩き始めようとしたときである。
「もし、そこのお嬢さん。」
後ろから誰かに呼び止められた。振り返るとそこには一人の法師らしき服を着た男が立っていた。
背丈はすらっとしており、髪は乱馬ほどではないが長く後ろで軽く縛っている。若い男だ。
「すいません、この辺りに日暮神社があると聞いたのですが、どこかわかりますか?」
「ああ、そこなら…。」
あかねは親切に道を教える。男はさわやかな笑顔を浮かべている。
乱馬はその男を睨んでいた。
(こいつ、あかね目当てで話しかけてきたんじゃねえだろうな…。)
あかねはそんな乱馬に気づいていないのか、笑顔で話している。
(あかねもさっさと話終わらせろよ!)
あかねに手を出そうものなら、すぐに殴りかかりたい気分だ。しかし、男はまだ何もしていない。
乱馬のイライラは頂点に達しようとしていた。

「いやあ、かたじけない。助かりました。」
「いえ、そんな…。」
男はまた笑顔を浮かべた。乱馬が早く帰ろうぜと言おうとしたとき、男はいきなりあかねの手を握った。
あかねは突然のことで何が何だかわからないといった表情だ。
「あ、あの…!?」
「こんな美しい女性に道を教えてもらえるとは…何たる幸運!!」
男は歓喜の声を上げた。
「おい、てめえ!あかねから離れやがれ!」
乱馬はフェンスから飛び降り、男を睨みつけた。
しかし、男はそんな乱馬に目もくれず、あかねをじっと見るととんでもない言葉を口にした。

「わたしの子を産んでくださらぬか?」

「な゛…!?」
「て、てめえ!!」
乱馬が怒りの形相で男に殴りかかろうとした。
その時。

ズドドドドドドドドドドドドッ

ものすごい土煙をあげてこちらに向かってくるものがいる。
それは先ほどあかねに飛ばされていた九能だった。
「早乙女ぇ、そこをどけぇ!!」
「な…く、九能!?」
あまりの九能の勢いに乱馬はあわててよけた。
「このクソ法師がぁぁぁ!!」
九能は乱馬の目の前を通り過ぎると、男に向かって木刀を振り回してきた。
男はあかねの手を離すと、両手に数珠をかけて木刀を受け止めた。
「やれやれ、しつこいですねぇ…。」
「だまれ!我が九能家を乗っ取ろうと妹に手を出しただけでなく、僕の天道あかねにまで…!!」
「誰が『僕の』ですか、誰が!?」
あかねが文句を言っているが、九能は気にしていない様子だ。
九能はいったん男から離れ、間合いを取り直した。
「貴様は絶対に許さん!!この九能帯刀が成敗してくれるわ!!」
男に連続で突きを繰り出す。普通の人間ならかわすことはできないだろう。
しかし、この男は普通ではなかった。九能のすべての攻撃をすばやくかわしている。
しかも余裕の表情で。
「まったく、乱暴な人ですねぇ…。」
「うるさいっ!!この二股野郎!!」
九能は凄まじい勢いで斬りかかる。
周囲は九能の木刀が突き刺さった跡でボロボロになってしまっている。

「『この二股野郎!!』って…九能先輩、自分のこと棚に上げてる…。」
「ああ、自分はあかねとおさげの女の二股がけなのによー。」
乱馬とあかねは二人のやりとりを見ていた。
(せっかく俺があいつをぶっ飛ばそうと思ったのに、九能のヤツ邪魔しやがって…。)
乱馬は相手を横取りされてしまったからか、拍子抜けしてしまっていた。
あかねもため息をついている。
「あー、あほらし…あかね、帰るぞー。」
「あ、ちょっと待ってよー。」
突然あかねが乱馬の腕に自分の腕を回してきた。
乱馬の顔が赤くなる。
「お、おいっ!?」
「さっきあたしのために怒ってくれたんでしょ、乱馬?」
あかねが笑顔を向ける。乱馬はあかねの笑顔に弱い。思わず顔を背けてしまった。
「ありがとっ、乱馬。」
「お、おう…。」
乱馬は顔を背けたまま答えた。その耳は真っ赤だ。
あかねはそんな乱馬を見てクスッと笑った。
「じゃ、帰ろう乱馬。」
「お、おう…。」
そして、二人は腕を組んだまま家路についた。

その後ろでは…
「はぁ…本当にしつこい人ですねぇ…。」
「おのれ貴様ぁ、待たんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
法師と九能の格闘…いや鬼ごっこが続いていた…。







作者さまより

 今回は恋多き変態…じゃなくて青少年をイメージしてみました。
 九能&法師の共通点は「男前なんだけど、女のことになると…」っていう感じですかね?
 法師の性格上、シャンプーや右京にも手を出すとは思ったのですが、九能と対等にしてみたかったので…。九能のほうもなんか妹思いの兄という感じになってしまいました。(笑


 
勝手にこの楽しいシリーズを「似たものシリーズ」と銘打たせていただいた一之瀬管理人です。
 九能ちゃんと法師さまが思わぬところで似ているなんて(笑
 で、九能ちゃんの敵になってしまったおかわいそうな、法師さま。
 法師さまがどうして現代に遊びに来たのか、考えるのも楽しいですが…。
(一之瀬けいこ)



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