◆本当の気持ち
朝霧小兎さま作


今朝、乱馬と喧嘩をした。
いつもの様な他愛もない口げんか。
でも、今日はちょっと違ってた。
原因は私・・・。
私が言い過ぎたから。
乱馬は怒って、傷ついて・・・一緒に学校へも行ってくれなかった。

休み時間、髪型を整えるためにコンパクトを取り出す。
ふとした瞬間、彼が鏡に映った。
私には見せた事のない笑顔・・・。
鏡の向こうのあいつは笑ってる。
今朝の出来事なんか何にもなかったみたいに。
今、この小さな空間に私と乱馬だけが存在するのにも気づかずに。

放課後も別々に帰った。
いつもなら、私が掃除当番で遅くなっても待っていてくれるのに・・・。
一人で帰る薄暗い道。
急に淋しくなって、不安になる。
いつもなら・・・・・。

「・・・おせーんだよ。」

聞き慣れた声にうつむいていた顔を上げる。
ブロック塀の上にしゃがみ込んでいる男の子。
じっと、遠くの方を見てる。

「・・・乱馬・・・・。迎えに来てくれたの?」

笑えない状況なのに・・・
安心と嬉しさで自然と笑みがこぼれてしまう。隠そうと思っても隠せない。

「・・・別に。親父たちが迎えに行って来いって・・。」

視線も合わそうとせずに答える乱馬。
彼の横顔は沈み行く夕日に照らされて格好良く見える。

「怒ってるの?」
「・・・・何が?」

相変わらず素っ気ない態度の乱馬。
当然よね・・・。私が悪いんだから。

「・・・ゴメンね。・・・その、今朝のこと。」

乱馬が初めてこっちを見てくれた。
嬉しかった。

「・・・言い過ぎた。ゴメン・・・なさい。」

もう一度謝った。乱馬に許して欲しくって。
いつもみたいに微笑みかけて欲しくって。

「・・・良いよ。」
「へっ・・・?」

不意の言葉に間抜けな返事をしてしまった。
ブロック塀がら飛び降りて右手を差し出してきた。

「一緒に帰ろーぜ。」

いつもの笑顔。
乱馬は許してくれた。私は差し出された手を取った。

「・・・うん!」

鞄が背中に有るのを見つけた。
ずっと、ここで待っていてくれたのかな・・・?
自惚れてるだけかも知れないけど、そうだったら嬉しい。

「・・ねぇ。乱馬。」
「何だよ?」

横目でちらっと彼の顔を見る。

「ううん・・・。何でもないっ。」
「けっ、変な奴・・・。」

いつもより歩く速さが遅い。
「変な奴」って言ってるケド、ちゃんと手は握ったまま。
彼の手のぬくもりが伝わってくる。

『待っててくれて有り難う。乱馬』

心の中でつぶやいてみる。
乱馬は隣であくびをしていた。









作者さまのコメント

あかねの視点で書いてみました。
少々にぎこちない点があるかと思いますけど・・・。
私の書く乱あ小説の殆どが下校風景です。一応これもそうですね。
学校じゃ九能先輩やうっちゃんがいてドタバタになりそうで・・・。
ほのぼの系乱あしか思い浮かばない私には下校の様子が一番書きやすいのです。
今回もほんわか系を乱あ目指したのですが・・・どうでしょうか?


お誕生日にいただいた作品です。誕生日は、嬉しくない年齢になっても、祝ってもらうのは嬉しいものです。
それはさておき…。喧嘩したあと、どうやって元の鞘に戻るか、いろいろと苦心したことってありませんか?友人とや恋人、はたまた旦那とか…。
乱馬とあかねの場合、それぞれどんな気持ちで元に戻ろうとするのでしょうか。一つの答えであるような気がします。
この二人の下校風景が目に浮かんできます。やっぱり、乱馬とあかねは、青春してるなあ・・・(ちょっと羨ましい!)
(一之瀬けいこ)




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