◆The Little Mermaid
第2話




「あかねー?」

なびきが部屋のドアをノックする。
返事は、無い。

「居ないのかしら・・・」

後ろから、かすみが困ったように言った。
なびきがドアノブに手をかけて、まわす。

「あ、開いてる」

ドアを開けると、見える窓。
その開けっぱなしの窓から吹く風が、カーテンを揺らしていた。
お膳の上には、さっきまで食べていたお煎餅。
入れっぱなしのお茶。
それ以外には、何も無かった。

「・・・あかね?」

なびきが口にした名前の人間さえ、も。


−The Little Mermaid 〜水城での戦い!姫を守れ!!〜−


「ったく・・・何処フラついてんだ?・・・あかねー!」

海辺を歩く、2つの影。
赤い夕日に、長く延びる。
乱馬と水穂だ。
乱馬が、大声で名前を呼んだ。
水穂は、乱馬の後ろをひっついて歩き、さも探す気が無いような素振りである。
乱馬は、あかねが居なくなった、となびきに聞いてから、ずっと探している。
未だ、彼女が見つかったという連絡は無い。まるで神隠しにでもあったようだ。

「ねー、もう帰りましょうよぉ。あの子はもう見つからないわよ。あんな怒っていたんですもの。今ごろ、別の素敵な男の子でも」
「あかねはそんな奴じゃねぇよ」

小さいけど、しっかりした声でそう言った。
水穂は、その言葉に少しむっと来たらしい。
なんでそんなに信じられるのよ、他人なのに。と呟いた。
乱馬は眉間に皺を寄せ、ちら、と水穂を見る。

「そんな・・・奴じゃねぇよ・・・」

また、小さく、呟いた。



一方、先ほどの部屋では。
かすみが、手を組みながら、じっと待っていた。
チクタクチクタク、と時計の音が自棄に五月蝿い。

誰からの連絡も無ければ、居なくなった彼女が帰ってくる気配も無い。
あかねが、誰に何も言わずに何処かへ行くような子ではないということは、かすみが一番知っていた。
だから余計に、心配になってしまうのだ。

「かすみお姉ちゃん!」
「なびきちゃん」

ガタ、と、いつもは立てもしない音を立てて、かすみが立ちあがった。
なびきは息を荒くして、当たりを見回す。
そして、落胆の溜め息を吐いた。

「あかねは・・・」

かすみが、なびきに問い掛ける。
問い掛けられた彼女は、俯いて、首を横に振った。
かすみも、肩を落とす。

「帰って・・・来てないんだよね、この静けさだと」
「ええ・・・」

なびきの問いに、かすみが返答する。
2人で、肩を落とす。

「お父さん達は?」
「まだ・・・」
「乱馬くんも?」
「ええ・・・」
「そっか・・・」

ドアを閉め、奥に入る。
かすみが、静かにお茶を入れた。

「ご苦労様」
「うん・・・」

差し出されたお茶を、小さくすする。
暖かい液体が、喉を通った。
少し落ち着いて、ほ、と暖かい溜め息が口から出た。
とその時、また、ドアが開いた。

2人の視線が、そちらに向けられる。

「・・・おじさま」
「パフォフォ〜(見つからなかったよ〜ん)」
「本当に、何処へ行ったのかしらねぇ、あかねちゃん・・・」
「あかね〜〜!!」

そこには、看板を手に持ったパンダの玄馬と、その妻・のどか、そして顔が涙でぐちゃぐちゃの早雲が居た。
あかねは居ない。

「そう・・・」

そう簡単に見つかるわけも無く。
ましてや、動く人間だ。
すれ違い、行き違い、入れ違い。
色んな事がある。

「乱馬くんを、待ちましょうか・・・」
「そうね・・・」

あの子なら、匂いでわかるでしょうし・・・。
のどかがポツリ、呟いた。
その言葉に、なびきが吹き出す。
どうやら、彼女の言葉で、緊迫した雰囲気が、少しは穏やかになりそうだ。



「あかねー!!」
「だから、見つからないってば・・・」

私が、操ってるんだから。

水穂が永遠操心のツボを押して、すでに2時間が経っている。
辺りは暗く、静かに寄せては返す波も不気味だ。
人は居ない。乱馬と水穂のみ。
明かりといえば、周りから漏れてくる小さな明かりだけ。
灯台すらない。

「ここまで・・・か」
「そうよ。さっさと帰りましょ」

あー、やっと帰れるわ。
水穂がウーンと伸びをする。
とその時、彼女の足が海の水に触れた。
乱馬が、帰るか・・・と諦めて小さく呟き、水穂を向く。

「きゃあああっ!!!」
「?!」

水穂が叫び声を上げた。
乱馬は驚き、目を丸くしている。
ふと足元を見ると、海水が彼女の足を取り巻き、中へと吸い込もうとしていた。

「や・・・いや!まだいやです!!お父様!!」
「み、水穂?おまえ、何言って・・・」
「た、助けて乱馬!!お願い、助け・・・」
「え?!水・・・」

ゴポゴポゴポ・・・
海水が、彼女を中心へと引っ張る。
乱馬はその光景に圧倒されながらも、彼女が差し出す手を掴み、引っ張ろうとした。
が、彼女は海に引っ張られる一方。
力も強く、彼と彼女の手は引き千切れんばかりだ。
海が、彼女を吸い込もうとしている。

「や・・・お父様・・・!!止めて・・・!お願い・・・!!」
「お父様って・・・うわっ」

乱馬がぐいっと引き寄せられ、海の中へと突っ込んだ。

バシャァン!

「きゃああぁぁ〜〜・・・・・・」

水穂の泣き声が、遠くなっていく。
らんまはがばっと起き上がり、辺りを見回した。

「水穂?!水穂〜〜〜〜!!!」

目の前には、何も無い。
一緒に海へと倒れたはずの水穂は、影も形もなかった。

「い・・・一体・・・?」

らんまが海に浸かりながら、小さく呟く。
目は未だ、驚きを帯びていた。

「しょっぺ・・・」

ペペッ、と唾をはき、口の中の海水を出す。
なんなんだよ、もう・・・、と思いながら、立ち上がった。
その時、ふと、背後に気配を感じた。

「・・・あかね・・・?」

その気配は、闘気で満ち溢れていた。


つづく





はたまたお久しぶりですv華緒梨です!
えーと、今回、ず〜っと休業でしたらんま活動、めでたく復帰しました!
別のマンガにちょっと没頭していて・・・(浮気者!(爆))。
ああ、キャラの性格を忘れているようです・・・。
もう一回、一巻から読み直します!!絶対!(笑)
えー、なんだかよくわかりませんが、人、消え過ぎですね。ごめんなさい(涙)。
人を消すことしか能が無いようです。いい加減にしろ、ですね。ごめんなさい。
ホント、一から修行し直します。がんばりますよ?
それでは、この辺で!



お待たせしました、続きです♪
連載再開の嬉しさよ・・・さあ、物語はどう展開してゆくのでしょうか。
楽しみです。
(一之瀬けいこ)