The Little Mermaid
第1話 水城での戦い!姫を守れ!!



ゴポ・・・ゴポゴポゴポッ・・・
私を・・・助けて・・・私を・・・助けて・・・
・・・助けて────────────。






──────東京都・練馬区の商店街。
「1等賞〜〜〜!(カランカランカラン)」
「きゃーっ、やったーっ」
パチパチパチ・・・
周りで拍手が起こった。
そう、1等賞をとったのは天道あかね。毎回毎回、くじ運の良い女である。
くじを引くと、1等賞か、欲しいものに当たる。
「1等賞は、海の近くにある、如月旅館へ御招待っ!お嬢ちゃん、おめでとう!」
「どうもありがとー、おじさん!」
あかねは買い物袋を抱えて家路に就いた。
家路に就いた頃はもう日が暮れていた。辺りがオレンジ色に染まっていた。
まるで、どの家も、フェンスさえもみかんのようだった。
「あー、早く帰んなきゃ」
あかねは家路を急いだ。早くしないと、この街を闇が覆い始めるのだから。
そうなると、どんなに勘が鋭くて(恋の事になると鈍いが)乱暴者のあかねでも、危ないに決まっている。
家路を急いで居た時、あかねの反対方向からフェンスに乗って走ってくる人影が見えた。
あかねはすぐわかった。いや、あかねならすぐわかるだろう。
許嫁の乱馬なのだから。
「乱馬」
素っ頓狂な声を出して言う。当たり前だ。乱馬は、迎えに来るようなヤツでは無い。
きっと、早雲やかすみ、なびき、のどか、玄馬に押されてイヤイヤながら来たんだろう。
「おい、おせーぞ。いくら乱暴者のおめーでも危な(バキッ」
「一言余計よ」
あかねはぷうっと膨れた。乱馬は顔面を抑えて、「いっちい・・・」と言う。
「おい、早く帰るぞ」
殴られたので少し膨れた乱馬が、無愛想に言った。
「(きっとお父さんたちに念を押されて来たんだよね、乱馬・・・でも迎えに来てくれたんだ・・・)」
あかねは少し照れた。
「うん・・・。乱馬、・・・ありがと」
そして、にっこり笑った。気持ちをいっぱい込めて。
「え゙・・・ま、まあな・・・」
乱馬は照れた。顔が真っ赤になっていた。ただ、夕日のせいで、あかねからは見えなかった。
乱馬から見ると、今のあかねの笑顔は、花畑に居る可愛い天使に見えたのだった。

「えええええええーーーーーーーーーーーーっ!?」
天道家に大声が響いた。それもそうだろう。あかねが宿泊券を当てたのだから。
「あらァ、あかね、勝手にくじ券使っちゃ駄目でしょう?」
かすみはおっとり言った。そのはず。かすみは菩薩なのだから。
「おねーちゃん、そう言う問題じゃなくて・・・・」
おぜんの上に体を乗せて、かすみの方を向き、なびきは手を振りながら否定する。
「パッフォパフォパフォ〜」
玄馬は小躍りしている。そんなところに、乱馬の母・・・つまり、玄馬の妻、のどかが来た。
「え、旅行に行けるの?」
のどかは日本刀を持っていたので、かすみ以外皆、後退りした。
「え、ええ・・・まあ・・」
「あかねが当てたのよね」
かすみはまたおっとり言った。日本刀の事は気にしていない。
「うれしいっ、いついくの?」
のどかは無邪気に言う。まるで何処かの公園に居る、子供みたいだ。
「えっとね・・・・多分、明日辺りになると思うわ。丁度今、夏休みだし」
なびきは抜けしゃあしゃあと言った。
「あっ、明日ァ!?」
あかねと乱馬は声をそろえて言った。
「うん」
「そうね、早めの方がいいし」
かすみは事の重大さをわかっていない。
「じゃあ、明日の10時」
「10時!?」
と言う事で、あかねと乱馬無視で決まってしまった。
翌日───────。
「いってきまーす」
「お留守番、おねがいね、お家さん」
かすみが言った。
「・・・・・・( ̄▽ ̄;)」
皆、ツッコミを入れたくてもつっこめない。
「おーい、行くぞー」
早雲が言った。
「えーっ、待ってよーっ」
あかねは駆けて行った。

如月旅館
そこには堂々と書いてあった。立派な旅館である。まるで何処かの城に来たようだ。
「・・・いいのかな、こんなところに入って・・・」
「いいんじゃない?当てたんだし」
なびきは言った。
その時、人が来た。
「あの・・・どちら様でしょうか?等旅館は予約しないと入れないのですが・・・」
どうやら、旅館の役員らしい。
「あ、練馬区のくじで当てたんですけど・・・」
あかねは短く説明した。まるで新幹線が通るように早かった。
「どうもすみません!お待ちしておりました、等旅館女将の八重と申します・・・」
八重はゆっくり説明した。
「風呂は2階中央にあります。時間帯は決まっておりませんので、お気軽に、好きな時間にお入り下さい。
混浴もありますので・・・・」
「(混浴ゥ!?)」
あかねと乱馬は思った。いやな予感がする。
なびきたちは、その後ろでにたりと笑っていた。
「え、それであなた様らは・・」
「えっと・・1234・・・・8人です」
「8人・・・。で、女性は・・」
「4人です」
あかねはちゃっちゃちゃっちゃと言う。
「4名様ですね。では、こちらのお部屋を・・・」
「ちょっと待って」
なびきはいきなり言った。
「この2人は婚約者なので、ひとつの部屋にしちゃってください」
大胆な発言を聞き、乱馬とあかねは退いた。
「な゛・・・・なに言ってんのよ、おねーちゃん!」
「そ、そうだぞ!そんなに部屋使っちゃあ・・・」
「大丈夫ですよ、ここの旅館、予約制なので、お客様はあまり来ませんの。だから部屋がひとつぐらい増え
たって大丈夫です、全然余裕ですよ」
女将はやすやすと言ってのけた。
「「(ガーン)」」
等々、あかねと乱馬はひとつの部屋で寝る事になってしまった。
「あかねー、あまりなんかやられても殺さない程度にねー」
なびきはあかねをからかう。
「バカ言わないでよ!」
「なんかされたら、殺さない程度にこれで・・・」
ハンマーを出しながら、かすみまであかねをからかう。
「もうっ、かすみおねーちゃんまで!」
あかねは膨れっ面で部屋に向かった。
「おっ、おい、待てよ」
「着いてこないで!」
あかねはむっつりしている。
乱馬は、「んなこといったって、同じ部屋じゃねえか」と、ボソっと言った。

・・・助けて・・・

「!?」
あかねはばっと振り返った。
「どうした?」
乱馬はきょとんとした顔であかねを見ている。
「誰かが・・・あたしを呼んでる・・・行かなきゃ!」
「えっ!?あん?!お、おい、ちょっと待てよ!あかね!!」
走り出したあかねを追い駆けながら、乱馬は叫んだ。
「何処行くんだよ、あかね!」
「海!海の方!!」
旅館を出て、海へ走って行くあかね。
乱馬は只、只、あかねを追い駆ける事しか出来なかった。

・・・助けて、お願い・・・

あかねの耳だけに届くその声が、どんどん大きくなるのがわかった。

ザザーン・・・ザザーン・・・
波の音しか聞こえない海。
もう夕方で誰も居ない。
そこに、あかねと乱馬が走っていた。

・・・助けて、お願い、助けて・・・

どんどん大きくなる声。そして、あかねの耳に届く声が途切れたと思った。
その時。
キキーッ・・・ドンッ!!
「いってえ!!急に止まるなよ!!」
ものすごい音と共に聞こえた声を無視し、あかねはすぐそこに見える人間にそっと触れた。
「乱馬・・・」
その人はそう言った。
「へ?」
またしても乱馬は素っ頓狂な声を出す。
「乱・・・馬・・・」
「え・・・(ドキッ」
あかねは寝返りを打った人間の顔を見た。
・・・女だったのだ。
緑の大きな瞳、水色に染まったロングヘアー、ピンクの唇、小麦色の肌・・・。
あかねは動揺した。
「(この子はあたしを呼んでいたはず。どうして乱馬の名前を・・・)」
彼女が目を開けた。
「あ、気が付いたのね」
動揺を表に出さないように、ゆっくり微笑んだ。
「・・・あなた、誰・・・?」
「あかねよ・・・天道あかね・・・」
「おい、おまえ誰だ」
「乱馬!」
彼女はそういって、乱馬に抱きついた。
「え!?だっ・・・どわっ!?!?」
乱馬は動揺を隠せなかった。
その光景を見て、あかねはむっとした。
「乱馬・・・会いたかった!ずっと!!」
「はあっ?!俺はおまえなんかしらねえぞっ」
その女を突き放す。
「えっ・・・ずっとテレパシーを送っていたのに・・・」
「それ・・・って、どういうテレパシー?」
「・・・何よ、あなた」
キっとあかねを睨む。
睨まれたあかねは、動揺する。
「あなたには関係ないっ。今、私は乱馬と話している!!」
その言葉に、あかねは俯いた。
「でも・・・」
乱馬はあかねを気遣いながら話す。
あかねがとても痛々しく見えた。
「あかねには聞こえてたみたいだぞ、テレパシー」
「え?」
けげんそうな顔であかねを見る。
「それより・・・おまえ、誰だよ」
いい加減教えろよー、と言いながら、乱馬は聞く。
「私の名は水穂。海の底、奥深くからここへとやってきた」
「ここへと溺れてきたんだろ」
乱馬が何気なく言ったその一言が、あかねには引っかかった。
(仲・・・いいんじゃない・・・)
あかねはすっと立ち上がる。
「あかね?」
「あたし、帰る。ごゆっくり!!」
「ああっ?!」
乱馬はわけがわからない。
水穂は、乱馬に質問する。
「乱馬、あの女とどういう関係なの?」
「え?俺の居候している家の娘だけど」
あえて許婚とは言わない。
恥ずかしいのだ。
「(ぼそっ)なら・・・私が乱馬を奪っても良いのね」
「え?」
「いや、何でもない。ね、旅館まで案内してよ」
「は?ああ・・・」
乱馬は大人しく、旅館へと案内をした。

「ただいま・・・」
「おっじゃまっしまーっす☆・・・?!おまえ、何でこんなところにいるのだっ」
「あら・・・乱馬とあんたが居る事が可笑しいんじゃないの?」
ふっと嘲笑を浮かべて言う。
「乱馬、何故居るのだっ、ホントに、居候している家の娘なのか?!恋人同士では無いのか?!」
水穂は乱馬へと問い掛ける。
「はっはっは、何を隠そう乱馬くんとあかねは、愛し合っている許婚同士なのだよ」
「あぽぽ〜〜〜〜〜〜」
「お父さん!」
「おやじっ!」
どっかんっ
2人は父親を蹴飛ばす。
「ナイスコンビネーション!」
「さすが許婚同士ねー」
なびきとかすみが、様子を見に来ただけなのに、首を突っ込む。
「許婚・・・?!愛し合った?!本当なのか?!」
「本当よ」
なびきは、当たり前よ、と言う感じで答える。
「違うぅぅぅぅ〜、違う違う違う違うぅ!!」
乱馬は顔を真っ赤にして言った。
「そんなに嫌なのなら・・・この娘と付合えばいいじゃないっ」
ボロボロと崩れ始めていたあかねの心は、冷静さを保てなくなった。
そして等々、睫を濡らした。
「あたし・・・ここに居たく無いっ」
あかねは荷物をまとめ、なびきたちの部屋へと直行した。
その後を、呆然と見る乱馬。
「あかね・・・どうしたの?」
突然の涙に、人々は動揺するばかりであった。
「で・・・あなた、だれよ」
なびきは水穂に問い掛ける。
「私は水穂。乱馬の恋人よ」
「恋人ぉっ?!いつからそんな事決まったんだよ!!大体俺はなあっ、あかねの事がすっ・・・やばっ」
「す・・・何よ」
「な・・・なんでもねえよっ」
乱馬はぷいっと明後日を向いた。
「私・・・トイレ行ってくる」
水穂はそういって、部屋を出ていった。
キィー・・・パタンっ。
通路を1人で歩く。
水穂は、トイレを通り過ぎた。
そして、あかねの居るっぽい部屋の前に立ち止まった。
コンコンッ
ノックが鳴り響く。
「・・・はい」
中から、あかねが出て来た。
「?!・・・何しに来たのよ」
「ま、そんな反抗的にならないで。すぐ終る用事なんだから・・・」
シュッと、素早く手を出し、あかねの頭のツボを押した。
ドサっとあかねは倒れる。
「ふふ・・・永遠操心のツボを押した・・・これでおまえは、私の操り人形さ」
微笑する水穂。
この事件を、まだ誰も知らなかった。
この後どうなるかさえも。
まだ・・・誰も。

To be continued.



*After write*
どうも、久しぶりです!
早乙女亜乱でありますっ☆
この度は、[Tha Little Mermaid]をお読みいただき、ありがとうございます。
題名からも分かる様に、この話は人魚姫を「らんま」版に変えたものです(苦笑)。
この後は、大体予想が付くとおもいますが(笑)。
またカチャカチャとキーボードをうち、作っていく間に、新しいネタがひらめき、どんどんとわけのわから
ないものになっていくと思いますが、どうか、ご了承くださいね。
ってなわけで今回は、海を舞台にしたものです。
何と無しに、海を舞台にしたこと無かったなあー・・・と思ってたら、この作品が浮かんだ、と、そういう
情けない話です(ああ、情けない)。
それに、無理矢理な閉め方だし(泣)。
この連休中に、もう一作出来ればなあと思いますが・・・(苦笑)。
それでは、この辺で!
See you later!
早乙女亜乱


一之瀬けいこ的コメント
開いてしまった新たな物語りの扉は・・・?
これは長編の匂いが・・・
乱馬はあかねを守れるのか?
わくわくしながら続きを待つことにします。




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