不思議発見!?入本丸!!

「天道さーんっ、小包でーっす!!」
「はぁい」
パタパタパタ・・・・
天道家に静かな、そして優しい声が響き渡った。
その声の主は天道かすみ。天道家の長女で、家事全般を仕切っている。
「ハンコお願いします」
宅急便がそう言った。
「(ぺたっ)はい、いつもご苦労様です」
かすみがお礼を言うと、
「ありがとうございましたぁ!」
元気な声で帰っていった。
この様に、かすみは結構人気があったりする。
少し、ボケが偶に傷だが。
まあ、そのボケもナイスで片付いている。
「まぁ。元気」
かすみはにこやかに笑い、感心した。
「おねーちゃん!」
その時、元気な声にかわいい顔(?)が覗き込んできた。
この声の主、顔の主は天道あかね。天道家の末っ子。
高校1年、運動神経バツグンの、少々頭もよろしい、女である。
「まあ、あかね。どうしたの?」
かすみはおっとり聞く。
「何来たの?誰宛に?」
あかねはかすみと反対に早口だ。
「えっと・・・入本丸って言うものらしいわ・・・八宝斎のおじいさん宛みたいね」
「にゅうほんがん?何、それ・・・」
あかねは首をかしげて悩んだ。
「何でしょうね・・・おじいさーん!お荷物ですよー!」
「はーい、はいはいはいっ。何が来たのかなんっ」
このちっこいじじいは八宝斎、基、ハッピー、ウーパールーパー。天道家に居候中、天道家の主、早雲とその娘、あかねの許婚の父親、早乙女玄馬の師匠。
「入本丸って言うお薬みたいなものらしいです・・・心当たりありますか?」
「おぉ、やって来たのか、入本丸!やあやあ、ずぅっと待っとったぞぉ!」
箱に頬擦りする八宝斎。
「わしの部屋に誰も入るなよっ。もちろん、あかねちゃんも駄目じゃっ!!」
「えっ・・・う、うん・・・」
そう言うと八宝斎はスキップして自分の部屋に向かった。
「どうしたのかしらねえ、おじいさん」
「うん・・・・」
あかねは八宝斎の後ろ姿を、心配そうにじっと見ていた。
一方、八宝斎の部屋。
「やっと・・・やっと念願の入本丸が来たんじゃっ!!!」
八宝斎は乱暴に袋を破り、中身を取り出し説明書を読んだ。

    ────使い方────
入本丸をお湯、又はお茶と一緒に飲み込み(食べ物と一緒に飲み込んでもOK)、
   入りたい本(本だけ)の上に立ったり、寝たりして触れてください。

「ほう、お湯と飲むのか」
がさごそ
八宝斎は箱をがさごそやって薬を出した。
「・・・グリーンピースみたいじゃなあ・・・」
緑色で小粒のものだった。
缶詰に入っているので、尚更グリーンピースに見えた。

     ─── 保管方法───
   直射日光の当たらないところに保管すればいいです。

「ほう・・・」
グリーンピース化していく、入本丸。
「うーん・・・まあ飲んで試してみよう・・・にっひっひっひ・・・」
八宝斎が変態的な事を考えているのは、一目瞭然。
どうせ、エロ本の中にでも入ろうとしているのだろう。
「お湯ぅっ、おっゆーっ♪」
といいながら部屋を飛び出して来た。
「・・・ね、なんか変でしょ?」
あかねと乱馬がそれを見ていた。
「は?変なのはいつもの事じゃねーか」
まあ、それもそうだが。
「でもさぁ、いつもは、「乱っ馬っ」とか言いながら水掛けてくるのに・・・」
「うーん・・・でも別に気にしなくてもいいんじゃねえか?また変な事やらかすに決まってるし、関わらない方がいいと思うぜ」
乱馬はとりあえず、良い考えを出した。
「そうね・・・心配して損したわ。乱馬、テレビでも見てましょ」
「ああ」
2人はこの後、何の心配もせずにテレビを見ていた。
台所─────。
シューーーーーーーーーーーーーー
「お湯が沸いたぞいっ・・・ふっふっふ・・・」
缶詰を開け、そこから3粒ぐらい取り、残りは机の上に置いた。
そして、3粒をお湯と一緒に飲んだ。
「やっぱりグリーンピースの味がする・・・まあいい」
八宝斎は、片づけもせずに、走って自分の部屋に向かった・・・が。
こけっ
「ん?なんでこんなところにシンデレラの本が・・・・げっ!!!(汗×100」
ぴかあああああんっ!!
シュンっ
八宝斎は本に吸い込まれてしまった。
その後、反対側からかすみが出て来た。
「さあて。今日のお昼はチャーハン・・・」
かすみは急いでいたのでシンデレラの本が目に入らなかった。
「グリーンピース・・・グリーンピース・・・あったわ。それにニンジンと玉子も」
かすみがグリーンピースだと思って使ったのは、入本丸だった。
しゃっしゃっしゃっ
「出来たわ。すぐ終るから楽なのよね、チャーハンって」
かすみは全部お盆に載せて運んだ。当然、シンデレラの本は目に入らない。
「皆さーん、ご飯ですよー」
かすみは天道家の住人を呼んだ。
「おぉ、かすみさん。今日はチャーハンですか!」
一番最初にそう発言したのは早乙女玄馬。乱馬の父だった。
「かすみさんはオヤジが太らないように肉をいれなかったんだな。よかったな、オヤジ!」
そういたずらっぽく言うのは乱馬。
「やったあ、チャーハンチャーハンっ」
あかねは喜ぶ。
「へえ。今日はチャーハンか」
なびきはさらっと言う。
「いいねえ、チャーハン」
早雲が最後にそう言った。
「「「「「「いただきまーっす!!!」」」」」」
皆でそう言う。
「あれえ?かすみ、おししょーさまは?」
「おじいさんなら、自分の部屋にこもってますよ。なんでも誰も自分の部屋に入れるなと。それに呼んでも来ないから先に食べちゃっていいのかと・・・」
かすみはそう言った。
「よおっし、じじいが来なかったらじじいの分は俺が食っちまおうっ」
「何おう、バカ息子!これはわしが食う!!!」
「俺が先に目ぇ付けたんだぞ!!」
今にも乱闘が始まりそうな予感。
「どーでもいいから半分すれば?」
なびきが言った。
「そうか。半分すれば異議無し」
「じゃあ私が半分にしてあげますね。それで喧嘩になったら意味が無いですから」
かすみが最後にそう言った。
「「「さーんせーい」」」
あかねとなびきと早雲は言う。
とにかく、乱闘が起こらなければ、この人たちはどうでもいいのだ。
「よおっし。んじゃあ半分にして下さい」
「わかったわ」
と言う事で半分にして食べた。
「「「「「「ごっちそーさまでっしたぁーっ」」」」」」
皆が食べ終わって自分のやりたい事を始めた。
「あたし自分の部屋いってこよー」
「あたしは後片付けしなくちゃ」
「わしと早乙女くんはお師匠様の様子を見てくる」
「あたしはテレビ見てよーっと」
「俺も見てよーっと」
と言う風に、ゴロゴロする人や、仕事をする人やと、色々である。
「お姉ちゃん、お父さん、おじさまも来てみなよっ。乱馬くんもついでに!!」
「「「「えっ?」」」」
4人はなびきに呼ばれた方に行った。
あかねは自分が呼ばれなかった事を、気にも留めていなかった。
「これ、あかねが読んでたシンデレラの絵本。思い出すな、あかねの小さい頃の事」
「開いてみましょうか」
かすみが本に触れた瞬間・・・。
ぴかあああんっ!!!
「えっ・・・」
シュンっ
「お、おねーちゃん!」
シュンっ
「かすみさんっ!なびきねーちゃん!!!」
シュンっ
「かすみぃ!なびきぃ!乱馬くんっ!!」
シュンっ
「か、かすみさんっ!?なびきくん!?バカ息子!!天道くん!!」
シュンっ
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
この家にはあかねしか居ない事になった。
「・・・・あれえ?」
やけに静かな事に不快感を持ち、あかねは廊下に出てみた。
「おっかしーなー。さっきまでおねーちゃんたちの声してたのに・・・」
首を傾げるあかね。
「ん?あ・・・この本はあたしが小さい頃の・・・」
あかねは本を開こうとした。
ぴかあああああんっ!!!
「きゃっ」
シュンっ
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
「わ・・・私今見てしまた・・・」
「わしもじゃ。きっとあれは入本丸と言う丸薬のせい・・・」
「わたくしも見ていましたわ・・・」
「うちもや・・・なあ、ばあちゃん。入本丸言うんは何や?」
「入本丸・・・それは中国でしか手に入らないと言う恐るべき丸薬・・・」
「ほななんでじーさん持ってたん?」
「きっと通販で取り寄せたんじゃろう・・・」
シャンプーの曾ばあさん、コロンは語り始めた。

中国4000年の歴史によると・・・
丸薬を湯と一緒に飲むと、最初に触れた本の中に入ってしまうと言う恐ろしき丸薬。
「本の・・・?」
「中に・・・?」
「入る・・・?」
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
「「「えええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」」」
すごく驚いている3人。
「その丸薬見つけ出して私たちも本の中に入るね!!」
シャンプーは言った。
「そうやな!急いで探しにいくでえ!」
「その丸薬は・・・直射日光のあたらない所に保管するといいと言われておる」
「そうなのですね」
小太刀は言った。
「そうじゃ。たしか・・・グリーンピースの様な色と形をしておる」
「な、何事あるか・・・(汗」
「直射日光の当たらないはわかるが・・・」
「グリーンピース・・・うちには考えられへん・・・」
口々にそう言う。
「ま、それはそれとして探すのが先決じゃ。良いか、手分けして探すぞい」
「わたくし、台所を探しますわ」
小太刀が言う。
「うちは居間や」
「私、ハッピーの部屋探すね」
「そんな事、言ってる場合じゃ無いぞ。探すのじゃーっ」
捜索開始。
ダダダダダ・・・
人んちを容赦無く走り回る人たち。
「早乙女乱馬ーっ!今こそ勝負だっ。ちぇえすとおーーーーーーーーーーーっ!!」
「乱馬!あかねさんは俺のかおまえのか決着を着けに来た!早く出てこいっ!!」
「早乙女乱馬!シャンプーはおらの物じゃーーーーーーーーーーーっ!!」
お馴染みの3人組登場。
「人を物扱いする、良くない!(バッキ」
「なにするだ、シャンプー」
「乱ちゃんなら今おらへんで」
「乱馬様は絵本の中に入ってしまいましたのよ!天道あかねもね!私達は乱馬様の為
だけに本の中に入るんですわ!こんな私は、いじらしいと思いますわ」
小太刀は1人で暴れている。
「どーでもええからその口止めぇ」
右京が小太刀の口を塞ぐ。
「ひいばあちゃん、薬有ったか?」
「おぉ、ここにあったぞ」
コロンは缶詰の蓋を開ける。
「お湯と一緒に飲むんか」
「そうじゃ。ほれ、おまえたちも」
「「「ん?」」」(ポトッ)
3人の手の平に丸薬が乗った。
「おい、そこ。僕はグリーンピースなんか嫌いだぞ」
九能が言う。
「グリーンピースでは無い。入本丸じゃ」
「入本丸?なんだ、それ」
「おら聞いた事ある」
ムースが言った。
「お湯と一緒に飲めば一番最初に触った本の中に入れるってうわさだ」
「その通り」
ぴゅーーーーーーーーーーーーーーぅ
その時お湯が沸いた。
「わきましたわ。皆さん、では湯飲みを出しますわね」
小太刀は湯飲みを出して注いだ。
「いっせーのーでで飲むんじゃ。わかったな」
「はい」
「いっせーのーで!!!」
ひょいっごっくん
「今、本に触れたらそやつだけその本の中に入ってしまうぞ。いいか、あのシンデレラの本に入るんじゃ」
「はい・・・」
ごくり・・・
皆唾を飲む。
「いっせーのーでで触れるぞ、いっせーのーで!」
すっ・・・
ぴっかああん!!
シュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン!!!
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
等々、皆居なくなってしまった。
入本丸は冷凍庫に保管するのを忘れていた。
直射日光が当たっていた。




つづく



@あとがき@
どうも、早乙女亜乱です。
今回、2作品を投稿させていただきましたが、どちらも続きで・・・(笑)。
それにこれ、随分昔に書いたのを訂正しながらやったもので、なんだか違和感が感じられました(苦笑)。
ここまで読んでくれた方にとても感謝しています、有り難うございます。
これからの展開を楽しみにしてくれて居る方、がんばりますので、待っていて下さい(笑)。
それでは、この辺で。
See you later!
早乙女亜乱

一之瀬的コメント
素晴らしいっ!
こちらはコメディーの予感が(笑
ほんの中に入った皆はどうなるのでしょうか?
スピード感溢れる力作、ありがとうございます♪


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