◆「Merry christmas」の一言
早乙女亜乱(華緒梨)さま作


あかねの記憶が戻った次の日。
クリスマスだった。
「みなさん、ご迷惑をお掛けしました」
あかねの心配はもう無く、東京が闇に包まれる前に、接骨院を後にした。
「あかねえ」
家に帰るなり、早雲がボロボロの顔であかねに抱きついた。
「お父さん・・・ただいま」
あかねの睫は少し濡れていた。
でも・・・笑っていた。
「あかねくん」「あかねちゃん」「あかね」「あかねぇ」「あっかねちゅわんっ」
家の中からどやどやと人が出てきた。
乱馬はそれをゆっくりと見届けると、自分の部屋に行った。
あかねはそれを見逃さなかった。
「さあ、あかねが帰ってきたから、パーティーを開こう!」
「やったあ〜」
「ごめんなさいっ!あたし、パス!」
と言うと、あかねは、階段を上って行った。
「・・・パスって言われても・・・」
「主役が居なくっちゃねぇ」
「あーかーねえー」
かすみとなびき、そしてのどかはその後ろ姿を見て、微笑んでいた。
3人は顔を見合せ、吹き出し、そしてあかねが通った階段を見て思った。

「(しっかりやるのよ・・・)」

と。

コンコンッ
シーン・・・
「入るわよー」
キィ・・・
「(寝てるのかな・・・?)」
乱馬が寝転がっているのを見て、あかねはそう思った。
「(このまま寝かしとこう・・・)」
部屋から出て行こうとした。その時。
「あかね」
「えっ?」
振り替えるあかね。
「なんだ・・・起きてたの」
「ああ・・・いいのか?おじさんたちのところに行かなくて」
乱馬はのっそり起き上がりながら言った。
「いいの・・・それより、乱馬に言いたい事があったから・・・」
「え・・・」
少々赤くなりながら、乱馬は答えた。
「乱馬・・・ありがとう・・・」
にこっとわらいながら、あかねは袋を差し出した。
「なんだ・・・?」
「開けてみて」
乱馬はごそごそと袋の中を漁った。
「マフラー・・・」
「そう・・・あたし、記憶喪失の時に編んでたみたい。全然覚えてないけどね」
にこにこしながら言った。
「記憶喪失の時は、不器用じゃなかったみたいね。キレイに出来てるし」
乱馬の目はキラキラしていた。喜びに溢れていた。
「全然・・・覚えてないわけじゃないけれどね・・・」
あかねは赤く染まった空に視線を向けた。
「それは乱馬に渡すために作ったって・・・覚えてたもの・・・」
そして、乱馬に視線を戻す。
「あ、あのさ・・・」
「ん?なあに?」
あかねはきょとんっとする。
「おかえしならいいのよ。あたし、乱馬が帰ってきただけ」
バフッ・・・
「?」
乱馬は、あかねに箱を突きつけて、そっぽをむいた。
「開けてみろ」
照れくさそうに、そう言った。
「うん」
不器用だから、包装紙をびりびりに破りながら中身を出した。
「・・・ブローチ・・・」
オレンジ色の蝶のブローチだった。
「おまえに・・・似合うと思ってな・・・」
「ありがとう・・・」
あかねの顔から、嬉しさが溢れていた。
そして乱馬は振向いて、頬をかきながら、笑顔でこういった。
「メリークリスマス」
その時、ドアから声が聞こえた。
「ちょっと、痛いわよっ」
「早乙女くん、もうちょっと下がってくれないかな」
「パフォー」
「早雲、玄馬!邪魔だっ」
「「「シーッ!!」」」
「お父さん、静かにね」
「あなた、下がってあげなさい」
キィィィィ・・・
ドアが開いて、どたどたどたっと人がなだれ込んだ。
「あ・・・アハハハハ、アハハ・・・ハ・・・ハハ・・・・・・」
「笑って・・・」
「誤魔化すなーーーーーーー!!!」
ずっぴょーんっ!!
玄馬と早雲、八宝斎は吹っ飛ばされた。
なびき、かすみ、のどかはギリギリセーフ、間一髪!で逃げた。
「もうっ・・・」「ったく・・・」
2人は顔を見合せ、笑った。
「ねえ、いつ帰ってこれる?」
「わかんねえ。でも、早く帰ってくる」
「そっか・・・除夜の鐘・・・一緒に聞けるといいね」
「ああ・・・そうだな」
乱馬とあかねは空を見上げた。
さっきまで夕日に染まっていた空が、もうすぐ暗闇に包まれる。
雪は降っていない。だが、それでもいい。
2人の胸の中は、何故か雪が積もったみたいに、いっぱいだから。
2人は顔を見合せ、こう言った。

「メリークリスマス」

END




作者さまのコメント

おひさしぶりデス!(そうでもないか)
クリスマス小説。いかがでしたか?
あまりラブシーンは入れませんでした。
あんまりくっつけ過ぎると、後で大変になりますから・・・。(ぉ)
あかねちゃんのマフラー。ちゃんと出来てよかったです。(笑)
私はこの頃、マフラーを編み始めました。自分の為に。(笑×2)
自分へのクリスマスプレゼントです。(渡す相手が居なくて(しくしく))
みなさんは、サンタさんが居ると思います?
私は、居ると思いますヨ。
でも、サンタさんは世界中の子供に、クリスマスのプレゼントを配らなきゃいけない
から、かなりお金がかかりますよね(汗)
サンタさんが居たら、みなさんは、何を貰います?
私は・・・素敵な彼氏かな??(笑)
もしくは、乱馬をもらっちゃおうかしら。(ぉ)



ほんわかあったかくなる小説です。
娘がサンタの存在にとうとう気がついたのは小学校五年生・・・それまでは毎年一所懸命、欲しい物をサンタさんへのお手紙に書いていました。
もう、懸命に書く、サンタさんへのお手紙ももらえないんだなあ。と思って、残念だったことが、思い出されます。
クリスマスはやっぱり、暖かい話がよろしいようで。
(一之瀬けいこ)





Copyright c Jyusendo 2000-2005. All rights reserved.