◆雪兎
早乙女亜乱(華緒梨)さま作


どばっしゃあん!
落ちてしまった。男溺泉ではなく・・・兎溺泉に。
俺は、白い白い・・・雪のように真っ白な兎に変身してしまったのだった。

ひとまず、男に戻って日本へ帰ってきた。
のはいいんだ。女になる体質とはおさらばしたが、兎となる体質に巡り会ってしまった。
親父は元の体質に戻った。男溺泉に落ちて。この差はなんなんだ!俺、悪い事したか!?
ばっしゃ!
げっ・・・と、思った瞬間には、兎になっていた。
ああ・・・もお・・・。
ここは水掛ばあさんのとこだったっけ・・・。
「乱馬、大丈夫か?」
今はもう秋と冬の境目・・・寒いに決まってるだろーーーー!!!
そんな時、向こうから女学生の声が聞こえた。
あれは・・・あかねの声!!(となびきの声)
今あかねに会ったらやばい・・・。
しかも!あんな約束したばかりじゃないか!
逃げなきゃ・・・と思ったものの、足が動かない。
・・・今は会いたくないっつうの!
親父はさっさとどっかにいっちまいやがった。
「くぅ〜んっ、くぅ〜ん」
俺は、オヤジー、オヤジーと、叫んだつもりだったが・・・言葉にならなかった。
「もうっ、おねえちゃん!いい加減にしてよっ」
「我慢しないの。乱馬クンはもう帰ってくるって」「しつこいっ」
あ、蹴られる・・・後、5歩、4、3、2・・・。
「あかねっ」「えっ?」「あんたの足元」
なびきが気づいてどーすんだよ・・・。
「あ、ホントだー。ゴメンネ、踏むところだった」
俺はそっと抱き上げられる。
「まあったく、豚と言い、熊猫と言い、家鴨と言い、猫といい・・・。今度は兎?」
なびきはあきれていった。ま、俺達の周りには、動物が居過ぎだが。
「あったかあい。今の時期にぴったりね。真っ白の雪みたいな兎」
あかねは俺を見ながらくすっと笑った。
かあぁぁぁぁ・・・
俺の真っ白な体は、一瞬にして紅色に染まった。
「あら?真っ赤だわ」
「それ、乱馬くんなんじゃない?」
ぎくっ・・・
なびき!!いい加減にしろ!!
「くわ〜っ」
俺は話題を逸らせるように、欠伸をした。
「あ、欠伸した。眠いのね」
あかねは俺をぎゅっと抱きしめ、
「早く帰ろ、おねーちゃん」
と言った。
「その兎・・・どうするの?」
「うちで飼うわ」
「うちで!?・・・ま、いっか」
すると2人+1羽は、家に向かって歩いた。

「くしょいっ」
「くしゃみしたわ、この兎」
「そう言えば、濡れてたわよね」
「ドライヤーで乾かしてあげましょう」
家に着いた。しかし、家に着くなり俺はくしゃみした。
寒い。とにかく寒かった。
そして救助的活躍の炬燵。炬燵はあったけ〜。
「炬燵が気に入ったみたいだねえ」
早雲のおじさんが言った。
「外は寒いもんね〜」
あかねが言う。
「くぅ〜ん」
とりあえず返事。
「ぷききっ!!」
良牙が怒っている。俺とばれたか?
「あ、Pちゃん、紹介するね。雪兎の・・・名前、何にしようかしら」
「乱馬」でいいじゃない」
なびきがそう言った。
「なんで!」「くん!!」
俺とあかねは同時にそんな事を言った。
「あら、この兎、否定してる」
やべっ、ついいつもの調子で・・・。
「大和・・・なんてどうかしら」
「大和ぉ〜?宇宙戦艦??」
「何かかっこいいじゃない」
かすみはおっとりしながら言った。
「いいかもね・・・大和」
「そうでしょ。大和に決定ね」
とりあえず俺の兎バージョンの名前は大和らしい。
なんかかっこいいじゃねーか。
少なくとも「Pちゃん」よりはマシだな。
「やーまとっ」
俺はピクっと反応して振り替える。
そこにはあかねが居た。
「?」
俺は首をかしげる。
「大和、紹介するね。ペットのPちゃん」
知ってる。知ってるってばっ。
俺は一応、頭をさげた。
「あら、大和、賢いのね。で、Pちゃん、紹介するね。兎の大和」
良牙は俺を、しげしげと怪しそーにみながら、頭を下げた。
「あかねちゃーん!お買い物に行ってきてくれるー?」
「はあ〜い!・・・じゃ、Pちゃんも大和も、仲良くしてるのよ」
P助を先にしたのが、俺には気に食わなかった。
・・・ま、しょうがねえか。
「いってきまーす!」
あかねは元気よく、玄関を飛び出した。
「くわー」
俺は欠伸をして、炬燵に入った。
「ぷきっ」
後を追うように、P助も炬燵に入った。
そして俺達は・・・深い、深い、眠りの溝にはまってしまったのだった。

何時間ぐらい寝たのだろうか。
周りのどよめき、五月蝿さに、俺は目を覚ました。
P助は先に起きていた。
「おねえちゃん、あかねが帰ってこないって、ホント!?」
「ええ・・・お使いを頼んだっきり・・・」
「あかね〜」
なびきとかすみさんは冷静っつうか、普通っつうかだけど・・・。
おじさんが・・・。
「大変、かすみちゃん、なびきちゃん!!」
「あ・・・おばさま・・・」
おふくろだ。
「あかねちゃんが、事故にあったって!!今、連絡が入ったの!!」
「ええっ!?」
「まだ意識はあるって言うんだけど・・・当分かかるって、戻るには!!」
あかねが・・・事故!?
「あかねちゃん、今、東風先生のところに居るの」
「あたし、先行くわ!」
なびきはコートを羽織って、家を飛び出した。
おじさんは、倒れている。気絶・・・。
かすみさんもコートを羽織って、出ようとした。
「・・・Pちゃん、大和・・・来なさい」
かすみさんは俺達を気遣ってくれた。
俺とP助を抱えて、家に鍵をかけ、東風先生のところに出かけた。
あかねが事故。
そんなはずない!!
それを俺は、信じる事が出来なかった。
しかし・・・事実だったのだ。
どうして?事故なんか・・・。
そんな事を思っている間に、接骨院についた。
そこでは、なびきが待合室で、かすみさんを待っていた。
「あ、おねえちゃん」
「なびき・・・。あかねは?」
かすみさんは、いつものおっとり口調でなく、言葉がはきはきとしていた。
「まだわからない。命に別状はないんだけど、意識が戻るまで、時間がかかりそう」
「そう・・・」
どうやら、あかねが事故ったと言うのは、真実らしい。
認めたくない真実だ。
「なびきちゃん」
そんな中、東風先生が出てきた。
事の凄さに、己を失う事が出来なかった、東風先生。
いつもはかすみさんの前に出ると、己を失うのに。
「あかねの状態は・・・」
「命に別状はありません。今、ベッドで眠りに落ちています。いつ起きるかわかりません・・・それに・・・このまま・・・」
東風先生の言いたい事がなんとなくわかった。
「なんとかならないの!?東風先生!!」
なびきが悲しい目をしながら言った。
「あかねちゃんに・・・任せるしかないよ・・・」
東風先生も悲しい目をしていた。
「あかね・・・がんばって・・・」
かすみは目を閉じて、暖かい涙を流した。

3日後・・・。
あかねのベッドに横たわって、かすみさんが寝ている。
「う・・・ん〜・・・」
うなった。これはかすみさんじゃない・・・あかね!?
「う〜・・・たたたた・・・」
あかねが起き上がった!!
同時に、かすみさんも起きた。
「あかね!?あかね〜・・・」
かすみさんのからだから、力が抜けていった。
そして、あかねをぎゅっと抱きしめた。
「あかね!ゴメンネ、ゴメンナサイ!!私がお使いを頼んだばかりに・・・」
「・・・」
あかねは無返答だ。
「あかね?」
「あなた・・・誰?」
え・・・。あかね?
あかねがおかしい。どうも様子が変だ。
「え!?あかね!?しっかりしなさい!あかねちゃん!!」
「どうしたんですか、かすみさん!!」
東風先生が入ってきた。
「あかねが・・・あかねがあ・・・」
かすみさんはぐちゃぐちゃにないている。
こんな顔は、初めて見た。
「あかねちゃん?」
「あなた・・・誰?」
「まさか・・・記憶喪失!?」
ショックにショックが重なった。
あかねの記憶が無くなってしまったのだった。
認めたくない現実。
俺が兎になってから、不幸が重なるようになった。




つづく




作者さまのコメント〜ナカガキ

どうも、亜乱です。
すっごい展開になっちゃいました。
この後、どうなるのでしょうか。ホントに。
自分でも予想がつきません。(滝汗
前回、前編・中編・後編と行きそうと言いましたが、なんか前編・中編(前)・中編(後)・後編になりそうです。(滝汗
楽しみにしてて下さいネ。(なんちゃって(ぉ)



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