◆四月の雪
彩瀬あいりさま作


 夢を見た。
 不思議な夢。
 そこは暗闇で、あかね以外は誰もいない。
 声をかけてみようと口を開いても、何故か言葉が出なかった。
 声を発しているつもりなのに、喉から音として出てこない。
 それだけではない。
 その他、いっさいの音がしなかった。
 音のない世界。
 無音。
 息苦しくなってくる。
 己の吐息すら聞こえない世界。
 呼吸をしているはずなのに、空気の対流すら感じられない世界。

 ああ、これは罰だ。

 そう思った。
 いつもいつも裏腹なことばかり言ってしまう自分に対する罰。
 それならば口をきけなくしてしまえという罰。
 なにも聞こえないようにしてしまえという罰。


 乱馬。


 心で叫んだ。
 声に出せない言葉を。
 口に出来ない思いを。



 ごめんなさい

 助けて



 風が吹いた。
 無音の風が髪をさらう。
 それとともに、なにかが舞う。
 白い光。
 暗闇の中、ぼんやりとそれが光る。
 乱馬が隣にいれば、人魂だとか、そうやってわざと恐がらせるようなことを言うかしれない。
 けれど、それがたとえ人魂だったとしても、とても綺麗だと思った。
 清浄なる魂の浄化。

 手を伸べてみた。
 手のひらでそれは、薄ぼんやり光り、そして少しひんやりとした感触を伝える。
 桜の花びらにも似た色。
 虚空を見上げた。
 果ての無い闇からそれはやってくる。
 まるで、季節外れの雪のように。






     *



「お花見?」
「そう。花見」
 そんなに驚くことないじゃない──と、なびきがお茶をすすり、あかねはそんな姉を不審そうに見つめた。
「おねーちゃんがそんなこと言い出すなんて……」
「あら失礼ね。あたしが花を愛でるのが悪いとでもいうわけ?」
「似合わねえと思うけどな」
「花より団子のあんたに言われたくはないわね、乱馬くん」
 横から割り込んだ声の主に、なびきはじろりと一瞥をくれる。その視線を受けて思わずたじろいでしまった早乙女乱馬であるが、なびきはすっと視線を戻し、口を開く。
「で、どーなのよ」
「あら、いいじゃない」
「今年はまだ花見もしとらんしなあ」
「桜の下で飲む酒は、また格別じゃからなー天道くん」
「そうだねえ、早乙女くん」
 かすみ、早雲、玄馬が次々に頷きだす。あかねにしたって別に花見をしたくないとか、そういうわけではない。ただ、意外な人が発案したことに疑問を感じただけだ。
 ちらりと隣を見る。
 生欠伸をした乱馬が、退屈そうに机に肘をついている。
 こちらを向こうともしない。
 まだ怒っているのかもしれない。
 喧嘩をするのはいつものことだから、あかねとてそのこと自体に腹を立てるつもりはなかった。背を向けて、顔もろくに見なかったりするのは、自分達のいつもの喧嘩のやり方だからだ。
 昨夜見た、おかしな夢。
 はっきりとは覚えていないけれど、なんだかとても息苦しい夢だった。
 苦しくて、心細くて、どうしていいかわからなくて。
 夢の中で乱馬を呼んだような気がする。
 喧嘩したことと、関係あるのかもしれない。
 目覚めてすぐ、あかねはそう思った。
 気にしている証拠だろう。
 謝ろう──と、珍しく素直に思ったのだ。
 だが、いざ謝ろうと思うと、それはそれでキッカケがつかめない。普段ならば、どうでもいいことを話せるはずなのに、こういう時は話しかけることすら苦痛になってしまう。
 いっそのこと乱馬の方から話しかけてくれればいいのにと、身勝手な考えすら抱いてしまう。
 それならば、きっと会話の流れにまかせて「ごめんね」と言えるのに。
 そんな中、なびきの言い出した「お花見」という言葉。 
 家族で花見。
 大きな桜の下で乱馬と一緒に上を仰ぐ様を想像して、それも悪くないとあかねは思った。
 そうやって桜を眺めているうちに、仲直りだってできるかもしれない。
 すでに酒の話で盛り上がる父親達の会話を聞いて、かすみが微笑む。
「それじゃあ、たくさんお弁当作らないといけないわね」
「あ、あたしも手伝う!」
「それは止めろ」

 半拍も置かずに放たれた言葉に、こちらも瞬時に対応し、あかねは渾身の肘鉄を許婚の頭に叩き込んだ。





 溢れんばかりの桜並木。
 たわわに成った桜の花が、重たそうに枝をもたげるぐらい、それは見事な木だった。枝が空を覆い隠すほどに茂っている。
 塀からもれる桜の枝。その塀の向こうのお屋敷。
 広大な敷地にあるたくさんの木々たち。
 そんな光景を自宅の縁で見ることができるのならば、それは最高の贅沢であろう。
 晴れた空から降る柔らかな陽射しが、肌を温める。冬の寒さから脱皮して、身につける服も薄いものとなっている今日この頃。明るい色合いの長袖シャツを通して感じる太陽に光が心地よい。
 さらに、頭上からさす桜の影。
 寒くもなければ、暑いわけでもない。
 春の、絶好のお花見日和といえる陽気だ。
 場所はあたしに任せてよ──と、すっかり幹事となったなびきが家族を先導してここまでやって来た。

「どこまで行くの、おねーちゃん?」
「まあまあ、そんなに慌てない。桜は逃げやしないわよ」
 そう言って笑うだけで、なびきは目的地を告げようとはしなかった。けれど、歩きながらも眺めることができるこの桜の木。道中は決して悪いものでもない。道すがら楽しませてくれているこの大木の家主に感謝の念すら浮かぶ。
 なびきはそのまま塀に沿って歩きつづけ、そして止まった。
 そこにも桜が咲いている。
 大きな門構えの脇にある桜は、勇壮華麗な面持ちだ。
 だが、そんな美しい景色を台無しにするぐらいの問題がそこにあった。



「おい、どーゆーことだ」
「どーゆーって、こういうことよ」

「はっはっは、ようこそ我が九能家へ」


 つまり、そういうことであった。





   *



「待ちかねたぞ、天道あかね」
「待ってもらったつもりはありませんけど」
「おい、なびき、なんで九能がいるんだよ」
「そりゃあ九能ちゃんの家なんだから、いてもおかしくないでしょーが」
「だから、なんで九能の家で花見なんだ!」
「だって、見事な桜でしょう?」

 たしかに見事だ。
 屋敷をぐるりと囲むように植わっている桜。とくに前庭を飾るように、さらには絶妙な間隔をおいて聳える大木は見るものを飽きさせない。池の水面に散っている花びらすら計算されたような美しさだ。
 人込みの中でお花見するなんてごめんだし、ここなら広いしゆっくりできるじゃない。
 そうなびきは言ったけれど、ゆっくりもなにもない。
 ここは九能家だ。
 九能家であるということはつまり──
「ようこそいらっしゃいました、乱馬さま」
 小太刀がいる、ということだ。
「乱馬さまが我が九能家にお花見にいらっしゃるということで、私、腕によりをかけてお弁当を作りましたの」
 ぽっと頬を染め、振袖で顔を隠す仕草は淑女のそれ。けれど、彼女が決して「淑女」などではないことを、誰もがよく知っている。
 広げられた五段のお弁当。蓋を取り、ひとまず目についた卵焼きを手にし、ふらりと迷い込んできた犬に差し出す。はぐはぐと食した後、犬は足を折って痙攣しはじめた。
 しびれ薬。
「まあ、大変。乱馬さまがご無事でなによりですわ」
「……あのな……」
 無駄とは知りつつも、乱馬はついつい頭が痛くなる。
 と、殺気を感じてその場を跳ぶ。靴をかすめるようにして走った刀が、銀の軌跡を描いて地をえぐった。
「おのれ、早乙女」
「あにしやがる」
「そうですわお兄様。私と乱馬さまの甘い時間を邪魔しないでくださいませ」
「どこか甘い時間だ!」
 甘いというよりはむしろ、ピリピリと舌に辛いだろう。

 どびゅっ

 剛速球で灯篭が跳んできた。
 三者はぱっとその場を散る。着地して、乱馬は叫んだ。
「あかね、危ねえじゃねえか」
「ふん」
「天道あかね。私と乱馬さまの仲をどこまでも引き裂くおつもりですか」
「なにが、おまえと俺の仲だ」
「まあ、乱馬さまったら」
「誰が邪魔なんてするもんですかー!」
 ふたつめの灯篭が空を切る。乱馬はそれを跳躍して避けて、
「あかね、おまえな。もうちっとかわいげのあるやきもちを──」
「誰が妬いてるってのよ!」
 みっつめの灯篭が、自由落下する乱馬にヒット。そしてそのまま地へと直行し、地面のかわりに存在していた池に着水した。
 温かくなってきたとはいえ、水浴びをするほどの気温ではない。水の冷たさに身体を震わせて、乱馬はあわてて池からあがる。
「おお、おさげの女ー!」
「寄るな、この変態が」
「乱馬さまー。乱馬さまは何処へっ」

 騒がしい彼らを尻目に、残りの天道家の面々は、喧騒など他人事のような態度で花見の準備を整えていた。




 小太刀に絡まれるよりは、まだ九能帯刀を牽制しているほうがいい。
 そう思ったのか、乱馬は女の姿のまま──ついでにいえばまだ半分濡れている──、桜の下に座り込んでいた。隙あらば「おさげの女よ」と杯を近づけてくる九能を殴り、目を離すとあかねの肩を抱こうとするところを蹴り飛ばす。早雲は赤い顔で騒ぎ立て「乱馬くん、ぐぐっと」と、酒気交じりの息が無遠慮にかかるし、父親は何故かパンダ姿で踊っている。
 幹事であるらしいなびきはといえば、喧騒をうまく避け、一番枝ぶりのいい場所の真下に陣取って、かすみとお弁当をつついているのが視界に入った。
 花見に来たというのに、何故こんなに疲れるのだろうか。
 脱力感が否めない、乱馬である。
 その時だ。
「あいやー、乱馬。ここにいたか」
「乱ちゃーん」
 シャンプー、右京。それだけでなく、学友も含め、見知った顔が続々とやってくるではないか。彼らが行列をつくり、その列の先頭でなにやら受け答えをしているのは、なびきである。
 なにか感じるところがあったのか、あかねはそっと姉に近づいていく。後ろから覗いてみると、案の定というかなんというか。彼女の元にはいくばくかの金銭があるではないか。
「ちょっと、おねーちゃん。なにしてんのよ」
「会費」
「会費って……」
「この花見の会費に決まってるでしょう」
 当然のように主張した。
 いつからこれが「会費制」になったのだ。第一、家族だけの花見ではなかったのだろうか。
「あのね、あかね。お花見なんてものは、人数がいるから楽しいの。人数がいるとなると、当然先立つものがいるでしょうが」
 先立つものもなにも、彼女はいっさい身銭を切っていない。持参したものは、すべて家にあったものだし、集まった人もみな各人が持ち寄ってきている。
 なぜ「会費」が必要になるのか、あかねには謎だったが、なびきはしたり顔で言った。
「ショバ代って、知ってる?」
 ちなみにその「場所」を提供しているのは、九能帯刀である。
(なびきおねーちゃんがお花見を企画するなんて、おかしいと思ったのよね)
 今更ながら後悔した。
 家族で花見をして、父親たちが酒を酌み交わし、姉二人はおしゃべりをしながら弁当をつつき、そして自分は乱馬と座って桜を見る。
 そんなビジョンはもろくも崩れ去った。
 九能家であるということ時点ですでに破綻していたというのに、さらにそこにシャンプーやら右京やらが加わっては、もうどうしようもない。
 視線をやると、案の定、二人が持参したらしい弁当を突きつけられて逃げ腰になっている乱馬の姿が目に入る。女の姿であるおかげかそこに小太刀の姿はないけれど、その人数が二人だろうと三人だろうと、そんなことは些細なこと。変わらない。同じことだ。
 あかねは重い息をつく。
 空はもう夕暮れに向かっていた。




   *



「おさげの女、庭を案内してやろう」
「乱ちゃん、これ食べてんかー」
「乱馬、食べるよろし」

 うんざりするぐらいしつこい声に、乱馬は隙をみて宴会の輪から逃げ出した。こういう時、小柄な女の身は便利だと思う。身軽だし、人の波をすり抜けやすい。
 逃げ出したはいいけれど、おさげの女がいなくなった九能の標的があかねに移るのではないかという懸念が頭をもたげる。そう考えただけで、腹が立った。周囲には人がいるし、天道家の面々だって一応いるのだから、そう面倒なことにはならないだろうし、あかね自身、九能を張り倒すくらい、わけはないはずだ。
 それでも、それとこれとはまた話が別なのだ。
 戻ろうか──と、ほんの少しだけ思った時、庭を歩いているあかねの姿が目に入った。しかも九能が隣にいる。
 庭を案内してやろう。
 その言葉をあかね相手に使ったのかもしれない。
(──ばか)
 あかねに、九能に──あるいは自分に対して罵って、乱馬は地を蹴った。



「見事であろう、天道あかね」
「そうですね」
 生返事を返しつつ、それでも桜自体は綺麗だと思った。喧騒を抜け出してみてよくわかる。今までいた場所がどれほどまでにうるさかったのか。ひんやりとした空気が、頬を撫でるのが心地よい。
 後ろでは九能帯刀が語っている。うるさいとは思いつつも、一応ここが彼の自宅である以上、あまりむげにもできない。庭を見せてやろうと言われて了承したのは、乱馬へのあてつけであったのかもしれない。二人の少女に囲まれている、これまた傍目には少女である乱馬を見ているうちに、どうやって仲直りしようかと考えていた自分がばかみたいに思えてきた。
「天道あかね」
 ぼんやり思考に耽っていたせいで、わずかに反応が遅れた。
 寄ってくる顔に、拳が間に合わない。
 力の乗っていない右手を逆に掴まれて、恐怖に目を閉じた。
 静かな暗闇
 頭の片隅をなにかがよぎった。



 夢

 あの、夢。

 真っ暗で、誰もいなくて、静かで、そして──



 風が吹いた。
 風──というよりは、空気の流れ。それが強い衝撃となって、髪をさらう。
 そんな感じだった。
 瞳を開けて見えたのは、白い光。
 そう思って、すぐ間違いに気づいた。
 光じゃない。桜──花びらだ。
 それが舞っている。

 花びらが舞い散る原因となったのは、九能帯刀の身体が木の幹に激突したからで。
 激突する原因となったのは、あかねの目の前で肩を怒らせている早乙女乱馬のせいだった。
「…………」
「おまえな、こんな暗い中、のこのこ付いていく馬鹿がどこにいんだよ!」


 夢のつづきを思い出した。
 雪のように白い光が降り注ぎ、それが綺麗で。
 綺麗すぎて泣きたくなった。
 どうしてあたしは一人なんだろう。
 そう思うと、どうしようもなく涙が込み上げてきて、夢の中で泣いていた。
 綺麗で、恐くて、孤独で
 声にならない声で、乱馬を呼んだ。
 たすけて
 ここに来て


「…………乱、馬」


 我ながら、かすれた声。
 声が出た途端、目頭が熱くなる。
 理由もなく泣きたくなった。
 夢の中の自分を思い出して、気弱になっていることが情けなくなる。

 思わず口をついて出た怒声を合図に、涙を滲ませたあかねを目の当たりにして、乱馬は乱馬で自分が情けなくなる。
 どうしてもっと違う言い方ができないのだろうか。
 怒らせない言い方。
 泣かせなくてすむような言い方。
 笑顔になれるような言い方。


「お兄様、お兄様ー」


 沈黙を破るように聞こえたのは、小太刀の声。
 妹が兄を探す声だった。
 反射的にあかねを引き寄せて、脇の茂みに身を潜めた。
 今の自分は「女」であるから、小太刀のアタックを受けることはないけれど、今のあかねの姿を他の誰かの目にさらしたくないと思ったのかもしれない。正直、理由はよくわからない。ただ単に、邪魔されたくないと思っただけなのかもしれない。
(邪魔ってなんだよ、邪魔って)
 自分で考えて、自分でつっこんで、自分で自分に言い訳する。
「まあ、お兄様。なにをしていらっしゃいますの。はやくこちらにいらしてくださいませ」
 ずるずると引きずられていく音が遠ざかり、辺りに再び静寂が戻る。思わず、はあ……と溜息が洩れ、そして自分の顔のすぐ横に、あかねの顔があることに気づいて、あわてて乱馬は身を引いた。
 暗闇の中。顔が赤いことはきっとバレていないはずだ。
 あかねはまだ俯いている。
 なにか言うと、また泣くんじゃないかと思うと、口を開けない。乱馬はただ黙って、あかねの隣に座り込む。
 風が出てきたのか、雲間から月が覗いた。
 ふわりと風が、髪をくすぐる。
 その風に、あかねが顔を上げた。
 目尻の涙が月明かりに光っている。

「──ごめん、ね。ごめんなさい……」
「あ、謝ることねーだろ」
「怒ってないの? 昨日のこと」
「……なんだ、そのことかよ」
 そのことってなによ、と口を尖らせるあかねの顔は、いつものあかねの顔で、なんとなく安堵した。
「別に怒ってねー」
「でも、だって……」
「だって、なんだよ」
「朝から機嫌悪かった」
「朝から怒ったまんまだったのはおめーの方じゃねえか」
「別に怒ってないわよ」
「じゃあ、なんだよ」
「……夢」
「はあ?」
「夢見が悪かっただけよ」
「ガキか、おまえは」
「なによ、失礼ね。すっごく恐い夢だったんだから!」
「どんな夢だよ」
「もういい、言わない」
「言うのヤなほど、恐いのかよ」

 急に心配そうになる乱馬の声色を聞いて、あかねは苦笑した。
 よかった。
 乱馬だ。

「違うの、そうじゃないの」

 昨夜の夢は悪夢だと思ったけれど、それはもういいのだ。
 風が吹いて、頭上から花びらを散らす。
 手を伸べて受け止めたそれは、軽くて、薄くて、白くて、ほんのり冷たい。
 あの夢と同じ。
 だけど、絶対的に違うことがある。
 じっと自分を見つめる乱馬の視線が、ここにある。
 呼びかければ、返る声があるのだ。
 あの夢は正夢だったのかもしれない。
 あのまま見つづけていれば、きっと乱馬は現れてくれたに違いない。
「ねえ乱馬」と呼べば、「なんだよあかね」と答えてくれたに違いない。


「だから、もういいの」
「……なんだよ、それ。わけわかんねー」
「いいの。そうだ、ねえ乱馬」
「なんだよ、あかね」
「お弁当、ちゃんと食べてくれた?」
「弁当?」
「そう、赤い箱に入ってる、あたしが作ったやつ」
「……残飯じゃなかったのか、あれ」


 本日よっつめの灯篭が、乱馬の頭に減り込んだ。




 月光に映える桜吹雪。
 それは、四月に降る、温かい雪。







作者さまのコメント
昔から「4月の雪」という曲が大好きで、四月になったら絶対こういうタイトルで話を書こうと決めてました。
予定していた内容とはまったく違いますけど。


2004年は花冷えが長かったので、桜が長く楽しめました。
四月の雪は桜の花吹雪だったんですね。遊びに出た奈良公園で、幻想的な花吹雪を見ましたが、桜は咲き始めてから散り初めるまで、その美しさを輝かせています。
そんな美しい情景の春を、皆さんは体感されたことがあるでしょうか?
(一之瀬けいこ)

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