お年賀小説  海野優波さま作

=First Anniversary=



「はーい、みんな、笑顔よ笑顔!これでもかって位ニッコリ笑ってね〜」
 そんななびきお姉ちゃんの言葉に家族全員が顔を緩ませる。
 乱馬の笑顔は引き攣っていたけど…
「じゃぁ撮るわよ〜ハイ、チーズ」
 パシャリ、とカメラの音。
 撮影の瞬間が過ぎた途端に皆肩の力が抜けたのか、一斉にため息をついた。
「はい、じゃー次!乱馬君とあかねの二人で撮るわよ!」
 皆の視線が私たち二人に集まった。
「い、いいわよ!別に…」
「さっきのだけで十分じゃねーか」
 二人で同時に拒否のセリフ。
 思わず顔を見合わせた。
「何よ、私とのツーショットなんて撮りたく無いって意味?」
「お前こそ、撮りたくなんだろ?」
 一気に険悪になる私たち。
 ……にも関わらず他の皆は笑ってる。
「ハイハイ、勝手に撮るからね〜」
「え、ちょ…!」
 慌ててお姉ちゃんのほうを向くと、その瞬間にまたパシャリと音が響いた。
「照れない、照れない〜独身最後の乱馬君とあかねのツーショットなんだから、あんた達の記念にもなるでしょ?家族写真だけじゃ勿体無いじゃない」
 そうお姉ちゃんが言った直後にTVで新年へのカウントダウンが始まった。
 
 
 ―そうだった…明日、私達は結婚するんだ……
 まだあまり実感が無い。
 高校を卒業して2年が経って、それでもこれと言った変化も無くて……
 だけど、1週間前に転機は突然訪れた。
 何の前触れも無く、本当に突然…乱馬にプロポーズをされた。
 その時に指輪も渡された。私は宝石の価値なんて分らないけど、それでもその指輪はとても高価な物だと分った。
 乱馬はきっと私よりもずっと前から結婚を考えてくれていたんだと思う。
 好きだとか愛してるとか、そんな言葉を言われた事も言った事も無いけれどその気持ちが嬉しかった。
 だから、私は承諾した。
 
 
 カウントダウンが残り10秒になる。
 この10秒間を越えたら、私達は夫婦になるんだ…
 正確にはお昼前に婚姻届を提出するんだけど。でも、10秒後に夫婦になるんだと私は思ってる。


 残り3秒。
 …2
 …1
 
 
「あけましておめでとう」
 全員が口を揃えて挨拶を口にした。
 それから
「おめでとう、乱馬君、あかね」
 お父さんとおねーちゃん達、早乙女のおじさま、おばさま…皆が笑顔で私達にそう言ってくれた。


 1月1日・元日。それは私達の最初の記念日。



「ハッピーセオリー」の海野優波さまからいだたいたお年賀小説です。
新年の合図と共に結婚・・・というのは何ともその(笑
ちょこちょこ元旦生まれの方はお聞きしますが、新年が結婚記念日だなんて、それはそれで楽しいかもしれませんね。
私の場合は、結婚式の日ではなく、婚姻届は新婚旅行から帰国してから出しに行きました。
皆さんはどうでしたか?・・・って、既婚者乱あまにあは少ないかなあ…?


今年で結婚二十周年だなあとしみじみ思いつつ、ごちそうさまでした(笑




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