スローラブ 3



第三話 紫巨峰の茉里菜

五、

 荒れた関東大会。
 後に、女子部はそう評された無差別格闘技の関東学生大会。男子部は結局、乱馬のぶっちぎり勝利で幕を閉じた。
 翌日の新聞に、でかでかと新しい女子ヒロインの誕生を祝う記事はもとより、早乙女乱馬とあかねが下した綾小路茉里菜の突然の抱擁シーンが写真付きで掲載されていた。

「これ、どういうことなのかねえ?早乙女君!」
「知らないよう!こっちが訊きたいくらいなんだからあっ!天道君!」

 天道家の朝の食卓でも、このスポーツ紙の話題が、持ち上がって、物議をかもしていた。普段仲が良い父親たち二人だけに、こういう水のさされかたは、両者両用にきついものがある。

「お父さんたち、別に、あたしは気にしてないから。」
 あかねは雲行きが怪しくなった父親たちに声をかけた。

「そんなに、あからさまに不機嫌な顔をして、言われてもねえ。」
 なびきがにやつきながら、あかねを覗き込む。
「だから、あたしには関係ないのっ!」
 あかねは、なびきを突き放すように言った。
 勿論、腹の中は煮えくり返っている。
 乱馬と言葉を交わす間もなく、会場を後にした身の上。何が起こったのか、自分でも把握していない苛立ちが、あかねを不安に陥れる。が、姉や親たちの手前、動揺を見せたくは無い、という、勝気さが気丈さを演じて見せている状況だ。
 乱馬からの連絡もない。

「まだ、あんたと乱馬君の間柄がマスコミにばれてないから、良いようなものだけどねえ…。」
 なびきがふっと吐き出すように言った。
「なびきぃ!」
 早雲が悲愴な顔をなびきに手向ける。
「なびきちゃん、わかってると思うけれど…。」
 のほほんとした中にも、どこか鬼気迫る長姉かすみの釘刺しの一声が茶の間にこだまする。上辺は笑っていたが、決して口元は笑って居ない。
「わかってるわよ!マスコミに乱馬君とあかねが許婚同士だなんて、口が裂けても漏らさないわよ。あたしだって、平静な日常生活を奪われたかないわ。」
 と、淡々となびきは応じる。
「でも、いずれ、ばれるんじゃないの?」
 と付け加える事も忘れない。
「ばれたって、どうってことないわ!あたしが望んで許婚にしてもらったわけじゃないもの。勝手に親に決められて、迷惑してたんだから!」
 当事者のあかねは、ツンと言い捨てた。
「とにかく、ワシ、乱馬のところへ行って、確かめてくる。」
 玄馬が唐突に父親らしいことを言い出した。じっとしては居られないのだろう。
「母さん、悪いが…。ちょっと、金子(きんす)を都合してくれないかね…。」
 と、交通費の無心も忘れず付け加える。固定収入源を持たない無職の父らしい言動だ。
「ええ、あかねちゃんのためですものね。」
 にこにこと微笑みながら、のどかがそれに答えた。
「でも、あなただけでは心配ですから…。早雲さんと私も同行させていただきますわ!」
 と、これまた、隙の無い返答。
「そんなに事を大袈裟にしなくとも、ワシ、一人で充分じゃと思うんじゃが…。」
「あなたっ!何、のん気なふざけたことを言ってるんですかっ!事は、早乙女家の行く末すら、左右しかねないのよ。」
 何とも言い表せない、母親の気迫が、のどかの背中から発せられる。いや、そればかりではない。いつも傍らに持っている、日本刀の柄へと既に手が伸びているではないか。
 思わず、ビクッと玄馬は後ずさる。
「奥さん、穏便に。何卒、この天道早雲に免じて!ここは、穏便に!」
 早雲が、慌ててとりなしにかかる。こんなところで任侠沙汰にはしたくないだろう。
「と、とにかく、乱馬君の事は、ワシらに任せて、あかねはゆっくり休養していなさい!今日はこの道場へ取材の人が押し寄せて来るかもしれないが、なびきっ!そっちはおまえに任せるから。」
 と、早雲は手早く指し示した。
「勿論、手間賃は払ってもらえるのよねえ?」
 なびきが、意味深な瞳でちらりと父親を見上げる。
「今月の小遣いを三割り増しにしてやるから、それで良いだろ?」
 業突く張りの娘に、苦笑しながら、父親が返答する。
「ま、それでも安いって不満はあるけど…それで手を打ちましょうか。」
 相変わらずの、守銭奴小娘の言動。
「乱馬なんかほっときゃ良いのに…。」
 渦中に居るあかねは、それ以上、己に言動権はないと、それだけ言って道着に着替えた。昔のあかねなら、家族にも当り散らしていたろうが、二十歳をこえ、周りに気を遣う術を彼女なりにおぼえていた。
 しっかり者の乱馬の母、のどかが様子を見てきてくれるというのだ。父親二人よりも、頼りがいが有る。

 父、早雲と早乙女夫妻が出て行ってしまうと、あかねは道場へと篭った。
 こういう時は、道場に篭って、一汗流すのが、一番だと思ったのだ。乱馬と負けるとも劣らない「格闘技馬鹿娘」には、道場が全てであった。
 道着に袖を通すと、気持ちも自然、引き締まる。いや、そう思いこもうと、努力しているのが、本当のところかもしれない。
 ただ、じっと待つことは性分に合わない。かといって、外出する気分にもなれなかった。
「家の外、マスコミがチラホラと張ってるわねえ…。お父さんたち、勝手口からそっと出て行ったのは正解だったわ。」
 なびきが、そんな事を口走ったからだ。確かに、家の周りに、いくつか不審な瞳が点在している。昨日の試合を見たマスメディアか俄かファンなのだろう。
 門戸には「道場主は一日留守にしますから、ご訪問はお控えください。」と早雲が見事な毛筆で、早朝から一筆入れて、張り紙しているらしい。
 電話は全て留守電に切り替えている。かすみによれば、朝からベルが鳴りっぱなしだと、家事仕事もできないからだそうだ。案の定、留守電にたくさんメッセージも届いている。
 あかねの携帯にも、祝いのメールがたくさん届いていたが、いちいち返信する気持ちにもなれず、朝ご飯が終わる頃には、携帯の電源そのものを切ってしまった。
 便利な道具は煩わしい。便利さと不都合さは表裏一体なのである。
「インターホンも電源を切っておいた方が良いわよね。」
 なびきが、インターホンのケーブル主電源を落とす。これで、不意な訪問者に気を遣うこともなくなるわけだ。

 道着に袖を通すと、あかねは道場へと篭った。
 幼きより、ここで「無差別格闘天道流の跡取り」として修練を積んできた。最初は遊び感覚で父と戯れる程度の稽古だったが、本気になり始めたのはいつ頃からだったろう?

「物心ついた頃には、既にここで汗を流していたわね…。」
 ふと、感傷的に己を思い出す。

 二人の姉は格闘技には一切、興味を示さなかった。早雲も、娘たちに無理強いして無差別格闘をさせることもなかった。
『格闘技は危険とも隣り合わせだからね。己から望まない人間は、無理に道着に袖を通す必要はないんだよ。』
 早雲は、常日ごろからそう言っていた。
 かすみは格闘技よりも家事に、なびきは金儲けに興味を示し、それぞれ、己が道を歩いている。あかねは、幼少の頃から、格闘技に興味があった。父親が汗を流している脇で、同じように格闘ポーズを取って見せる。と、父が喜んで相手をしてくれた。
 天道家の末娘として生まれ育ったあかねにとって、格闘技を習うことで、父親の愛を己に集中させる喜びのようなものを、幼いながらも悟っていたところもあるかと思う。組み手をしている間は、二人の姉から父親を独占できたからだ。
 己の格闘人生は、父親の愛を独占したいという、不純な動機から始まったのかもしれない。
 あかねは、そんな、幼い頃を振り返って苦笑いする。

 動機が不純であったとしても、格闘技は楽しかった。
 まだ、たくさん出入りしていた弟子たちに混じり、汗を流す。父はそんな自分を目を細めて見守ってくれた。特に、母が亡くなって以降は、あかねに過度な期待を示す事もあった。
 小学生の頃、大会に出て、初戦敗退してきたあかねに
『無差別格闘の道は長く険しい。勿論、勝つことも大切だが、負けた時にこそ、得る物はたくさんあるものなんだよ。』
 と声をかけてくれたこともあった。子供の頃はその言葉の持つ意味が良くわからなかったが、今となっては理解できる。
 だからといって、負けたくはなかった。誰からも勝ちたかった。その思いが一番強かったのは、乱馬と出会う少し前だったろう。己が女だと自覚し始めた頃、どんなにいきり立っても男の筋力腕力にはかなわないと悟り始めた頃。あの頃が一番「はねっ返っていた」と思う。
 そんな微妙な年頃に乱馬と出会い、また、格闘技に対する意識が変わった。
 「どんなに足掻いても、男の子にはかなわない。」
 乱馬に出会い、彼が強くなる様を間近で見ながら、観念してしまったところもある。
 動きの基本となる組み手や気合の入れ方、足運びなどの細部が、天道流と早乙女流は良く似ている。乱馬と己を並べて比べると、その強弱が手に取るほどわかるのだ。 
 その事実は曲げられない。

『おめえさあ…。何、気負ってんだ?力で押すだけが無差別格闘の技じゃねえだろ…。今のままだと、おめえの選手生命は…いや無差別格闘技は、ここで終わっちまうぜ!』
 道着に着替えて、古い道場の真ん中に立つと、昨日、乱馬に言われた言葉が脳裏に蘇ってきた。
 綾小路茉里菜との決勝戦直後に乱馬があかねに叩きつけた意味深な言葉だ。
 途中で、茉里菜が乱入してきたので、それ以上の言葉を交わせなかった。
 彼は一体、あかねに何を諭そうとしたのか。
 いや、それは、あかね自身が一番わかっていた。
 彼が指摘したとおり、あの試合で己は必要以上に「気負って」いた。
 激しいだけの格闘だった。試合内容など無に等しい。力で押し捲り、相手を薙ぎ倒しただけ。勝利しただけで、何も己に残って居ない。
 彼に言われるまでもなく、己でわかっていたからこそ、苛立ちもする。

「やっぱり、もっと自在に気を扱えるようにならないとダメね…。」

 道場の真ん中であかねはふうっと溜息を吐き出した。

 無差別格闘技の究極技は、やはり「気技」だろう。
 乱馬の飛竜昇天破、良牙の獅子咆哮弾、彼らの技に代表される「気の技」。己の気の流れを把握し、自在に使いこなすことは容易ではない。
 まだ、日本の女流格闘家で気技を自在に扱える選手は居ない、とされている。
 
 真ん中に立って、丹田に力をこめる。息を大きく吸い、お腹へ吐き出す動作を続ける。深呼吸。

「はああああ…。」

 息を吐ききったところで、気を一気に高める。
 体内の気を右掌に集中させた。
 と掌が熱くなる。体内の気がそこへ集中し始めた証拠だ。
 

「でやあああっ!」

 満を持して、あかねは気弾を前に繰り出した。

 プシュッ!
 
 己の意図していたのよりも、遥かに弱い、スカッ屁のような気の抜けた音と共に、白い気焔が一瞬だけ上がって消える。

「こんなんじゃ、猫一匹だって打てやしないわ…。」
 あかねは、気弾が出た右掌をじっと見詰めて、溜息を吐いた。

 まだまだ、である。
 まだまだ。
 こんな小さな気弾では、使い物にもなるまい。相手を倒すどころか、気を溜める間に敵に強襲されれば、惨めに負けかねない。

(乱馬が傍に居て、アドバイスでもしてくれれば…。)
 と、思いかけたが、ブルブルと頭を横に振った。
「ダメよ、乱馬なんかに頼らないで、自分だけで気弾を打つ修行をするって決めたんだから。」
 再び、奮い立つ。
 ここのところ、毎日のように、イメージトレーニングに始まり、気技を習得しようと躍起になっていた。小さな気弾でも体内から放出できるようになったのは、己の努力である。
 いつか、乱馬に負けないような、大きな気技を扱いたい。腕力で負けるのなら、せめて、気砲では負けたくない。
 気合を入れなおすと、再び、気を高め始めた。

 と、並々ならぬ殺気を道場の外で感じた。
 同時に、バキバキと戸板が外れて、乱入してくる「武器」。新体操のバトンやピンなどが、己目掛けて飛び込んでくるのが見えた。
 同時に舞い込む黒薔薇の花びら。

「はっ!ほっ!ほっ!」
 身軽にそれを交わす。
「天道あかねえーっ!覚悟っ!!」
 今度は前面から尋常ならぬ殺気を感じた。
「黒薔薇の小太刀っ!」
 あかねは白刃取りよろしく、振り下ろされた「木槌」を真正面からはっしと受け止める。
「何のつもりよっ!あんたっ!」
 ギリギリと向かってくる、レオタード姿の小太刀を正面から睨みつけて、問い質す。
「それは、こちらのセリフですわっ!」
 小太刀の顔が思い切り強張っている。
「だからっ!何のつもりであたしを襲ったって訊いてんのよっ!」
 対するあかねも負けては居ない。渾身の力を両手先にこめると、でやああっと小槌を振り上げ、薙ぎ払った。
 
 ドサッ、と音がして、小太刀が真正面に尻餅をつく。

「何をなさいますのっ!この、凶暴女がっ!」
 倒された拍子に小太刀が、あかねに毒づく。
「それはこっちのセリフでしょうがっ!人ん家に黙って上がり込んできて!どういう了見なのよっ!」
 相変わらずの、突然女に、困惑しながらあかねは問いかける。
 九能小太刀、又の名を「黒薔薇の小太刀」。九能帯刀のあかねと同学年の妹。彼女も、格闘新体操界では、確然と光る女王だ。

「そりゃあ、小太刀があかねちゃんに因縁つけたくなる気持ちもわかるで。」
 あかねの背後で、もう一つ、声がした。この頃、標準語イントネーションが混じり始めた特徴の有る関西弁。
「右京…。」
 あかねは、きょとんと、声の主に声をかけた。
 二人とも、正面玄関から入って来たのではなく、塀を乗り越えて浸入してきたようだ。
「うちかてあんたに訊きたいことがたんとあるんや…。インターホンを何度も押したんやけどな、誰も出てくる気配なかったんで、勝手に上がらせてもうたわ。」
 インターホンの電源は元から切られているから、右京が押入ったことにも頷ける。いや、小太刀などはインターホンが正常に機能していなくても、こうやって、急襲をかけてきたには違いない。

「訊きたいことって?何なのよ。」
 あかねは右京を見返して言った。

「このスポーツ紙の記事や。」
 そう言って、右京は、あかね目掛けて、四つ折にたたんだ新聞紙を投げ出した。 
 それをはっしと掴み取ると、おもむろにあかねは記事を広げ始めた。
 何の変哲も無い、サラリーマンのおじさんの友、スポーツ誌。ふと、一つの記事に目が留まる。小さな三面記事だったが、赤く丸がこれみよがしに印されていて、否が応でも目が行ったのだ。

「な、何よこれっ!」
 今度はあかねの顔の表情がみるみる変わる。
 新聞紙を持つ手が、心なしか震え始める。そこには、昨日の試合場での出来事が、面白おかしく書かれている。父親たちが手にしていた新聞よりも、もっと、突っ込んだ書き方をしてあった。
 そう、乱馬の胸へ飛び込んだ「綾小路茉里菜」についての記事である。詳らかに読むと、綾小路茉里菜と早乙女乱馬は恋仲だ、という断定的な言い回しが結論として、書いてある。
「昨日の試合、あかねちゃんも出てたんやろう?そんなふざけた出来事がほんまにあったんか?」
 右京が厳しく問いかけてきた。
「ええ、まあ、否定はしないわ。現に、綾小路選手は乱馬に抱きついて泣いていたから。」
 動揺を隠しながら、あかねがその問いに答える。
「キイイイーッ!乱馬様ったら、わたくしという者がありながら…。」
「乱馬はあんたも相手にはせんと思うんやけど…。」
「何を言われます!はっ!どうせ、綾小路茉里菜が乱馬様を誘惑なさったに違いありませんわ、いえ、そうですとも!乱馬様からなびかれるようなことは決してございません!」
 小太刀の目が再びきつくなった。
「あの、はなタレ女っ!乱馬様の恋人だなんて、ちゃんちゃら可笑しいですわ!ほーっほっほ!」
 とまで、言い放つ。
「物凄い、言い方ね…。」
 あかねが思わず苦笑したほどだ。
「その、綾小路何たらって女、どうやら、小太刀の知り合いらしいで。」
 こそっと、右京が耳打ちしてくれた。
「知り合い?」
 その言葉に、小太刀が反応する。
「ええ、知り合いも知り合い!幼馴染みですわっ!」
 小太刀が言い捨てた。

「ええええーっ!?」
「幼馴染み?」
 信じられない言葉が返ってきて、思わず、右京と顔を見合わせる。

「今を去ること、十五年ほど前、綾小路茉里菜とは、トカゲ幼稚園で同席しておりましたわ!」
「トカゲ幼稚園…ものごっつう、変な名前の幼稚園やな…。」
 右京が変なつっこみを入れる。
「ねえ。白ユリの飛鳥…だったっけ?確か、彼女も居た幼稚園よねえ…。」
 あかねは苦い思い出を手繰るように、小太刀へと尋ねる。
「まあ、よく記憶なさっていらっしゃったわね。なかなか、記憶力がおよろしいこと、ほーっほっほ。」
「そりゃあ…ねえ。」
 乱馬との良い男勝負に臨んだ、鷺ノ宮飛鳥とのやり取りを、あかねは瞬時に思い出していた。男趣味をかけた彼氏勝負。小太刀の彼氏として乱馬を差し出して勝負させた、「アレ」だ。気力をそがれるような相当ふざけた勝負であった。
「鷺ノ宮飛鳥ともども、茉里菜もトカゲ幼稚園に在籍しておりましたの。」
「あ…そう…。」
 脱力気味にあかねが答える。
「わたくしが黒薔薇の小太刀、鷺ノ宮飛鳥が白百合の飛鳥、そして、綾小路茉里菜は紫巨峰(むらさききょほう)の茉里菜と呼ばれておりましたのよ。」
「紫巨峰の茉里菜あ?」
「そらまた、けったいな二つ名やな。」
 思わず、あかねと右京は顔を見合わせて笑ってしまった。
「あの「きょほほほほ」という茉里菜のお下劣な笑い声から、「巨峰」そして、イメージ色の紫が上について「紫巨峰」ですわ。」
 小太刀がいちいち説明してくれた。
「あの高笑いねえ…たしかに、物凄くインパクトのある笑い方してたわねえ…。」
 あかねは納得してしまった。確かに、「きょほほほ」と高笑いを会場で何度か聞いたからだ。
「三人を総称して「トカゲ幼稚園の三色スミレ」とまで呼び称されておりましたのよ。」
 得意げに小太刀が言った。
「トカゲ幼稚園の三色スミレ…ねえ…。どっちかっつーと、仇花やな…。」
 右京が吐き出した。
 あかねは、思わず、たははと、思わず脱力してしまった。
 あの鷺ノ宮飛鳥と小太刀と並び称されていたとなると、だいたい、綾小路茉里菜の性格も想像できた。いや、己と対峙していた時の、あの、高飛車さも理解できる。

「で?小太刀は何であたしに因縁をつけてきたの?」
 あかねは、巡らない頭で、問い返す。
「あたしが襲われるいわれなんて、ないと思うんだけど…。」
「何で茉里菜が乱馬様に抱きついていらっしゃったのか、真相を聞きに参りましたの!」
「だから…。聞きに来る態度じゃないって…、それは…。あからさま、襲いに来てるじゃないの。闇討ちみたいなものよ。」
「闇討ちではありませんことよ。昼間ですわ。昼討ちです!」
 話は全くかみ合ってこない。
 常識や理屈が通らない小太刀を見上げて、あかねは、はああっと息を吐きつける。やれやれと思った。

「では、ズバリ、おききしますわ!天道あかね…。やっぱり、あなた、乱馬様におふられになられましたの?」

「なっ!」
 小太刀の強烈な問い掛けに、あかねはそのまま固まる。丁寧な言い回しであるが、侮蔑的な言い方でもある。

「うちもそのことが訊きとうて、ここへきたんやけどな。」
 右京もにっと笑いながら、あかねを見た。
「最近、乱ちゃんに別れ話、許婚解消を持ち出されたとかいうことあらへんか?」
 聞きにくい事をズバッとえぐるように訊いてくるところは、右京らしい。
「そんなこと…あるわけないじゃん!っていうか、何であんたたちにそんなことを訊かれなきゃならないのよっ!」
 あかねは顔を真っ赤にしながら、言い放った。乱馬に許婚解消を持ち出されたことはない。当人同士の心持ちはともかく、「許婚」という立場に変化はもたらされていない。
「乱ちゃんからのコンタクトは?最後に会ったのはいつや?」
「この前の試合よ、試合。」
「うちが訊いとるんは「二人きりで会った」のは…ってことやで。試合の日に二人きりで会ったんかいな?」
「そ、それは…。」
 答えに詰まるあかねを、小太刀と右京の瞳が真剣に見詰めてくる。
 さすがに、あかねも、ハッとなって言葉を継ぐ。
「な、何でそんなこと、いちいちあんたたちに言わなきゃいけないのよ!」
 と唐突に話題を打ち切りにかかる。
 それを見て、ふっと右京の顔が緩んだ。

「ってことは、長い間、乱ちゃんと二人きりになってへん…てことか。っちゅうことは、乱ちゃんの気持ちの変化があったかどうかは、あかねちゃんにもわからん…ってことやな。」
 右京の指摘は鋭かった。答えに思わず、窮するあかね。
 いや、実際、乱馬と二人きりで会ったのは、いつのことだったか。すぐさま、思い出せなかったのだ。少なくとも、二人きりでと限定条件がつくと、更に厳しくなり、今年に入ってからは皆無かもしれなかった。
「何も進展なし…ってことやんなあ。」
「いいえ、むしろ、天道あかねと乱馬さまの間柄は、大きく後退しているのではありませんこと?」
 冷ややかな瞳が、あかねを見据える。
 さすがに、あかねもカチンときた。

「だから、あんたたちに、とやかく言われる筋合いはないわっ!」
 ムカッときたあかねが、二人相手にドカッとやろうと拳を振り上げた途端だった。




六、


 俄かに、道場の外が騒がしくなった。

「ちょっと!待ちなさいよっ!あんたっ!」
 なびきの怒鳴り声がすぐ傍で聞こえる。と、ヒヒーンと馬のいななき声がした。

「う、馬?」
 驚いたあかねが、はっと、道場の引き戸の方へ向かい、外へ出た。
 と、太陽光を背に受けて、一人の女がそこに立ちはだかっていた。
 見たことの有る、きつい顔。

「あんたは…。」
「綾小路茉里菜ではありませんことっ!」
 小太刀が先に叫んだ。

「きょほほほほ、そこに居るのは、黒薔薇の小太刀さんじゃありませんこと。まあ、こんなところで奇遇ですわね。」
 昨日の道着姿とは打って変わって、ど派手な紫色のお嬢様趣味衣装を身にまとった綾小路茉里菜が馬にまたがり、外に立っていた。傍には従者なのだろう、熟年のタキシード姿の爺さんが一人、つき従って手綱を引いていた。
「あんたさあ、人の家に何のつもりで…。しかも、門戸思い切り壊してくれちゃってるしいっ!」
 あかねは叫んだ後、思い切り脱力した。
 天道家の門戸は無残にも引き破られ、もうもうと砂煙が上がっている。
「あら、まあ、どうしましょう…。修理屋さんを呼ばなくては…。」
 その傍を、困った様子も無く、淡々と困惑しているかすみが見えたのだ。

「あら、インターホンで何度も呼びましたが、一切、出てこられなかったから、こちらから、入らせていただいたまでですわ。」
 さらりと、騎乗の茉里菜が答える。
 こういう手合いには「一般常識」というものが、一切通用しないのかもしれない。

「あんたさあ…。家を壊しに乗り込んで来たの?」
 なびきも、はああっと溜息を吐き出した。

「ご心配には及びませんことよ。このくらいの門戸、我が家の財力があれば、ちょちょいのちょいで前よりも立派に直して差上げます事よ。そうすれば、文句はございませんでしょ?」
 人を小馬鹿にしたように、茉里菜が言う。
「まあ、ちゃんと落とし前つけて、修理してくれるなら、争う気はないけれど…。」
 なびきが続けた。
「じいや、後で家に連絡して、専属の大工を寄越して修理させなさい。それで、よろしいわね?」

「で?綾小路茉里菜さんが、何の用事で我が家にまで乗り込んできたのかしら?」
 あかねは、さっさと用事を済ませて、招かざる客人たちを帰してしまいたかった。

「あーら、大切な用事を忘れてしまうところでしたわ。じいや。」
 馬から降りることなく、従者の爺さんに、促す。と、爺さんは、懐から分厚い封筒を差し出す。
 
「これは…。」
 守銭奴、なびきが、あかねよりも先に反応した。
「これは…日本銀行券!それも、一万円で数十、いや、数百枚!」
 心なしか、声が上ずっている。いくら、なびきでも、ここまでの大枚を目の当たりにすることは、あるまい。

「ちょっと、何の真似?」
 あかねが怪訝な顔を差し向けると、茉里菜はさらっと言った。

「手切れ金でございますわ!」と。

「手切れ金?」
 あかねがきびすを返すと、茉里菜が続けた。
「聞くところによりますと、あなたと乱馬様は親同士が勝手にお決めになった許婚だそうでございますわね?」
「え、ええ…。まあ、そうだけど。」
「このお金を手切れ金となさって、きっぱり、すんなり、乱馬様とお別れになってください。」
 脇から爺さんが先に言葉を濁した。

「はあ?」
 一体全体、何を言い出すかと、あかねは、思い切り大きな声で疑問符を投げつけた。

「ですから、今、爺が言ったとおりですわ。このお金で乱馬様とすっぱり、ご縁をお切りになってもらいとうございますの。」
 高飛車お嬢様が、頭上から声を下ろした。

「単なる手切れ金と呼ぶには、物凄い金額じゃない?ざっと見積もって、これ…五百万円は入ってるでしょう。」
 なびきが封筒を片手で振りながら、奇妙な訪問者たちを見返す。

「おおお、おわかりになりますかな?ビンゴ、大正解でございます!ここに、五百万円ご用意させていただきました。」

「ご、五百万ですってえ?いったい、どういう了見でそんな大金…。」

「十六歳のときから五年間、乱馬様の許婚として君臨なさったお方に敬意を表して、一年百万円という計算で都合させていただきました。これも、お嬢様のお心遣いでございます。」
 爺さんが、丁寧な言葉で、なびきの問い掛けに受け答える。

「へえ…。一年、百万円ねえ…。どうする?あかね。」
 なびきがちらりと、妹を見た。
 なびきの隣では、ふるふると肩を震わせているあかねが居る。
「そ、そんなふざけたもの受け取るわけ、ないでしょう!」
 怒り心頭、頭に血が上り始めた。

「お金にかこつけて、乱馬様を誘惑なさるだなんて…ふん!綾小路茉里菜、さすがに、日本有数の大金持ちだけありますことね!」
 小太刀の口が開いた。
「せや、金で誰もが言う事をきくやなんて、思ったら!うちは、こういう貧乏人を愚弄する行為が、大っ嫌いなんやっ!」
 右京も反応した。

「私は、あなたがたと交渉しているのではありませんわ!天道あかねさんと交渉しているんですの。
 あかねさん、いかがです?この手切れ金を受け取って、乱馬様との婚約を解消なさってくださいませんこと?」

「じ、冗談じゃないわ。」
 あかねは吐き捨てるように言った。

「あら、五百万円でご不満でしたら、倍額出してもよろしくてよ。」
 
「倍額…。ってことは一千万…。」
 なびきの瞳がキラリと光る。
「手を打ったら?あかね…。どうせ、あんたと乱馬君は所詮、親同士が決めた許婚だから。」
 などと、こそっとあかねに耳打ちしてくる。
 姉のデリカシーの無い言葉が、更にあかねの機嫌を損ねたようだ。
「お姉ちゃん!お金で何でも解決できるだなんて、言わないでよっ!」
 そして、改めて、茉里菜へと向き直る。
「ねえ、この手切れ金は乱馬の意思なのかしら?」
 と厳しい表情で尋ねた。
「それは…ここでは言えませんわ。」
 茉里菜はふっと含み笑いを浮かべて、言い捨てた。

(そうよね…。乱馬はこのタイプの女は苦手の筈だし…。)
 あかねはその言葉をぐっと飲み込みながら、思った。

「で?あたしが乱馬との許婚を解消したら、あんたには都合が良いわけ?」
 と更に突っ込んでみる。

「ええ。私が乱馬様と婚姻を結ぶのに何の障害もなくなりますもの。」

「乱馬との婚姻…ねえ。」
 あかねはため息を吐き出すように言った。

「早乙女乱馬様はとても優秀なお方です。是非に、綾小路コンチェルンの跡取りとして、お嬢様とご一緒になっていただかねばなりませんゆえ…。」
 爺やが横から口を挟んだ。

「で、手切れ金って訳なんだ…。」

「そうですわ。」

 二人の女の、緊張感溢れる睨みあいが続く。

「お断りします。」
 あかねはビシッと吐き出すように言い捨てる。
 その言葉に、一瞬、茉里菜の顔がきつくなる。もともときつい顔がもっと目じりがつりあがったようだ。

「そうくると思っておりましたわ。天道あかねさん。」
 怯むどころか、ぐいぐいと押し込んでくる強引さは、小太刀以上かもしれない。

「だったらどうなの?」
 あかねは半分からかい気味に尋ねた。このまま、引き下がる相手ではあるまい。では、次の一手は?

「お互い、格闘家なら、格闘家らしい決着のつけ方をいたしませんこと?」
 と、勝敗を格闘でつけることへと持ち込んできた。
「それも、お断りね!私事の争いに格闘技を持ち出すだなんて、スポーツマンとして最低よ!」
「あら、わたくしにはかなわないと思って、勝負からお逃げになりますの?」
 茉里菜はあかねを馬鹿にしたような瞳で騎乗から微笑みかけた。
「な、何ですって?昨日の試合であんたはあたしに負けたでしょう?」
 茉里菜の一言でカチンときたあかねが、即座に答える。
「決め技を封印されておりましたからね。」
「決め技ですって?負け惜しみもたいがいにして欲しいわ!」
 あかねが厳しく茉里菜を見上げた。
 この茉里菜のような手合いは、たとえ己が負けても、それを負けと認めたがらない節がある。
「決め技を封印されていなければ、あなたなんか…一発で武舞台に沈めてしまいましたものを…おほほほほ。」
 高飛車な笑いをあげる。
「聞き捨てならないわね。」
 あかねも、だんだんに冷静さを欠いていった。カッと来易い短気なところは、高校生の頃とちっとも変わっていなかった。
「だから、来月の全国大会で決着をつけましょうと提案して差上げておりますの。次の対戦では、容赦はしませんわ。決め技も封印いたしませんことよ。」
 茉里菜は、余裕しゃくしゃくでまくしたててくる。
「それとも、わたくしに負けることがわかっているから、恐れおののいて勝負もできないのでしょうかしら?そこの腰抜けさんは。」

 「腰抜け」という言葉に、あかねは遂に切れた。

「そこまで言うなら、その勝負、受けてあげようじゃないの!」

「あら、やっと、その気になられましたの?おほほほほ。」
 にやっと茉里菜が笑った。あかねの性格を分析して、仕掛けてきたのかもしれない。
「爺、確かに聴きましたね?」
 そう言って、従者の爺さんを振り返る。
「確かに、あかね様の言葉、この耳に。」
「もう逃げることはままなりませんわよ。逃げたら、武道家の風上にもおけない奴と、末代までの笑いものにさせていただきますわよ。」
「良いわよ。勝手になさい。」
 あかねは、強く言い放った。

「負けた場合、その手切れ金はどうなるの?」
 なびきが横から口を挟む。
「お姉ちゃん!」
 欲どおしい姉に、思わず、苦言が漏れる。
「あら、手切れ金は無しですわ。さっき、お断りなさったではありませんか。」

「あかね、やっぱ、勝負なんかやめて、手切れ金貰っちゃえば。」
 こそっとなびきが耳打ちする。
「お姉ちゃん!どっちの味方なの?」
 短気なあかねがなびきを睨みつける。
「あたしは、お金の味方よ。」
「手切れ金はお姉ちゃんが貰うんじゃないでしょうがっ!」
「あら、あたしは、一般論を言っただけよ。危険を冒すよりも、目の前の現金ってね。」
「あたしはお姉ちゃんとは違うの!」
 プンプンとあかねは姉を見やる。
「でも、勝手に許婚の座を賭けちゃってさあ、乱馬君怒らないかしら?」
「あら、あんな奴怒ったって怖かないわよ!」
 姉と妹がいがみあっている間に、話の輪の外に置かれていた、小太刀と右京が、気焔を吐いた。

「黙って聴いてたら、あんた!ええ根性しとるやん!乱ちゃんの許婚はあかねだけと違うんやで!」
 と右京が凄む。
「そうですわ!乱馬様は私のフィアンセですわ!」
 小太刀も口を挟んできたから、ややこしい話がますます、混戦し始める。

「部外者はお黙り!」
 高飛車女が騎乗から叫ぶ。

「何やて!」
「部外者ですってえ?」
 右京と小太刀の目の色が変わった。

「これは無差別格闘の明日を賭けた、わたくしとあかねさんの闘いですの!あなたたちは部外者ですわ!」

「無差別格闘がどないなもんやっちゅうねん!」
「格闘新体操の比ではありませぬ!」
 二人が茉里菜目掛けて襲い掛かるのに、時間は要さなかった。
 小太刀は新体操の道具を両手に、右京は背負っていたコテを手に持った。そして、勢い良く、馬にまたがったままの茉里菜を襲った。

「邪魔者は成敗ですわ!」
 そう言いながら、さっと、騎乗の茉里菜が構える。その右手に、光る何か熱源のようなものを感じた。

「ちょっと、あんたたち、危ないっ!」
 尋常な沙汰ではないと直感したあかねが、思わず横から叫んだ。
 あかねの怒鳴り声と共に、ドオンと気柱が上がる。

「きゃああ!」
「な、何やあっ?」
 火炎と共に、小太刀と右京が吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
 それは、一瞬の出来事だった。
「う…。残念無念ですわ!」
「あかん、油断した。」
 小太刀も右京も地面に沈んだ。

「大丈夫?あんたたち。」
 あかねは二人に駆け寄った。やけどような裂傷が二人の少女にある。焔系の気弾に吹き飛ばされたようだ。
「あんた…。まさか。気弾を…。」
 あかねの問い掛けを聞くまでも無く、茉里菜は笑いながら言った。
「おほほほほ。さっきも言いましたとおり、この前の試合ではこの「烈火砲弾」という技を封印していて使いませんでしたの!この技を使っていれば、あなたには負けませんでしたわ。」
 茉里菜が言った。

「烈火砲弾…。」
 ゴクリとあかねは唾を飲み込んだ。今まで見たこともない気技だ。乱馬とて、こんな熱技をここまで打てるかどうかわからない。
「そっか…。天道家(うち)の門戸もこの技で壊して、入ってきたのね。」
 キッと厳しい表情で、ボロボロになった門戸の木戸を見やる。
「ふふふ、お察しが良ろしいこと。そうですわ。」
 茉里菜は続ける。
「どう?あかねさん、この技の餌食となって次の大会で私に倒されるか、それとも、大人しくこちらが用意した手切れ金を受け取って乱馬様との許婚を解消してくださるか…二つに一つですわよ。」

「冗談じゃないわ!どっちもごめんよ!」
 あかねは、静かに言い放った。
「あたしは、勝つわ!あんだが喩え「烈火砲弾」を打ってきても、それを打ち破る技を身に付けて…ね。」

「あーら…。それは楽しみですこと。きょほほほほ。」
 茉里菜は笑った。
「いずれにしても、乱馬様に相応しいのは、あなたではなく、このわたくしであることを、次の大会で証明して見せますわ。きょほほほほほほほ、きょーほほほほほ。
 でも、覚悟なさいまし!わたくし、これから乱馬様にコーチしていただいて、烈火砲弾に更に磨きをかけますわよ。」
「乱馬にコーチしてもらって、技に磨きをかける…。」
 今のあかねには刺激的な言葉だった。
「何しろ、乱馬様は同じ、城海大学のチームに所属しておりますから。わたくしのコーチとして、今後も助けて頂きますわ。きょほほほほ、きょーっほっほっほ。愛の力で粉砕してあげますことよ。」

 そう言い置くと、茉里菜は己が破壊した門戸を通って、帰路につく。
 彼女が立ち去った後には、赤い椿の花びらが舞い落ちる。良く見ると、爺やがカゴを持って撒き散らしているのが見えたのだが…。

「迷惑なお嬢様ねえ…あの、綾小路茉里菜ってドハデな女は…。本当に大丈夫?あかね…。」
 なびきが口元に笑みを浮かべながら、あかねを覗き込む。

「やるしかないわ…。あたしも、あたしの気技を完成させるだけ…。」
 あかねは、ぐっと青く澄み渡った空を仰いだ。

(負けたくない!いえ、負けられない!乱馬と同じチームのあの女には絶対に!)
 気合が入るのに上々の出来事だった。



つづく





 真面目モードが耐えられず、結局「けったいなキャラクター」として「綾小路茉里菜」を作ってしまいました…。最初は真面目なキャラクターとして描く予定だったのです。
 でも、小太刀を登場させてしまった辺りから変なハチャメチャならんま的キャラの方がしっくりくるかと思い直し線引きしなおしました。もっとも、乱馬の恋人には成り得ないってのが見え見えになってしまうのではありますが(苦笑
 まあ、それでも、あかねの強敵であることは間違いございませんことよ。きょほほほほほ。
 また、最初は「紫巨峰」ではなく「紅椿」と命名していたのですが、笑い声に特徴を持たせた結果、二つ名を変更しました。手っ取り早く、キャラクターのイメージモデルとしては、「機動新撰組 萌えよ剣 TV」の敵役「早乙女美姫」です…。
 なお、トカゲ幼稚園や白ユリの飛鳥は原作32巻でどうぞ!


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