おまけ



長い作品をご拝読ありがとうございました。

さて、ここで一之瀬の創作方法の一つを公開(笑

私自身はとても気まぐれに作品を叩いています。
プロットと呼ばれる作品の「骨子」を作ることもあれば、何も無しに一気に書き上げることもあります。
その時の気分によってまちまちです(苦笑
本来はプロットを組んで丁寧に描かないと、長い作品はまとまりがつきにくいでしょう。
大学ノートに思い立ったものを書き留めていることもあれば、こうやってパソコンのメモに叩くこともあります。
最近は字を書くよりもキーボードを打つ方が早くなってきたので、もっぱらパソコンを立ち上げてプロットなしで書き出すことが多いです。

書きたいテーマや骨子が決まったらまずは題名に辺りをつけます。
題名が浮かばないときは「広辞苑」や「漢和辞典」と戯れます。「古語辞典」を引っ張って、そのまま遊んでいることもあります(笑
題名が決まらないとイメージが続かないこともあります。
若い頃は語彙を増やすために、良く辞書引きごっこやって遊んでいました。
枕元に辞書を置いておいて、片っ端から引き比べて遊んでみたり。今も枕元に大学ノートと辞書を置いているので、旦那には白い目で見られていますが。

「十六夜異聞」は長くなりそうだったのでざっとプロットとキャラクター設定を書きました。
これを元に話を作りました。私にしては珍しく、きっちり設定を作ってある作品ですが、この程度です。
長いものはこうやって組みながら書いていることが多いです。でないと伏線を忘れることも・・・。
また、突発で思いついたアイデアへと書き換えることも勿論あります。
この設定を読んでいただくと、どこがどういう風に作品にしている間に変わったかわかるかと思います。
これから長編小説でも仕込んでみるべかなあ・・と思っていらっしゃる方に参考になりましたら・・・。(ならないかもしれませんが・・・)
だいたい一話は10KBから25KBでファイルを小分けして叩いています。作品によって長さはまちまちです。長編はフォルダーに区切って保存しています。



十三夜異聞のプロットとキャラクター設定

蓮華(れんげ)
 あかねに変身する少女。十七歳の誕生日に一族の掟により「羅公」という化け物に嫁入りさせられることが決まっている。
 己の運命から逃げ出すように、呪泉郷で入水自殺を図ろうとしたが、紫苑に助けられる。
 たまたま彼女が入水したのが茜溺泉だったことから騒動が始まる。
 入水後、彼女は茜溺泉が実はまだ出来立てほやほやの呪泉ということをガイドから聞き、単身、日本へとあかねに会いに来た。
 中国奥地の蛮族の深窓に育った彼女には日本の常識は通じない。次々と騒動を引き起こしてゆく。
 彼女は己の付き人(近衛奴)の幼馴染「紫苑」に恋情を持っている。
 そこそこの戦闘能力を持っている。
 また、彼女はカナヅチである。

紫苑(しおん)
 蓮華の同族の少年。蓮華とは乳母兄妹であり(母が蓮華の乳母であった)、彼女の近衛奴(このえやっこ・一之瀬造語)でもある。
 心の奥底では蓮華をこよなく愛しているが、己の役目を知り、一族の掟により、その感情は隠している。
 実はこの少年、蓮華を入水した茜溺泉から引き上げた。その折に、彼もまた、茜溺泉の犠牲者に。そう、水を被るとあかねに変身できてしまう。

蓮華も紫苑もカタコト(シャンプー程度)の日本語を話せる。

羅公(らこう)
 名前の由来は羅ごう(別名・黄幡)からもじった。
 謎の男(?)で、妖術を使う仙人。呪泉郷のまだ奥、中国の秘境、羅魔眉山(らまびさん)に棲み、年に一度、花嫁を求めて内地に降りてくる。彼に花嫁を与えないと、禍が起こると信じられている。
 だが、その実、彼に差し出された花嫁たちはどうなったかは誰も知らない。一説によると、彼の毒気に耐えられずに交わった途端に悶絶死するという。従って、彼には子孫が居ない。子孫を残すために強い少女を所望してまわっているというのだ。
 彼の妖気が満ちる後の月の日(陰暦九月十三夜の月夜)に婚姻の儀式をする。
 たまたま今年は羅魔眉山麓の村々の中から差し出す順番に当っており、蓮華に白羽の矢が当った。


花梨(かりん)
 紫苑の曾祖母。シャンプーの曾祖母、コロンと親しいらしい。
 蓮華のことが心配で日本へついてくる。
 本当は、陰謀を巡らせており、あわよくば、あかねを羅公へと差し出そうと目論んでいた。
 それも、孫息子の紫苑と蓮華を婚姻させようと思うがあまりの策略であった。蓮華の父もそれを望んでいるらしい。
 乱馬とシャンプーを結婚させたい、コロンは、あかねを排除するために、その陰謀に協力することになる。


第一話 やって来た大迷惑
 謎の食い逃げ事件が、天道家周辺にて連続して起こる。あかねに盗みの嫌疑がかけられる。その犯人があかねに酷似しているというのだ。張り込みに出た乱馬はあかねに似た少女、蓮華を捕まえた。聴くと中国の奥地からやってきたという。

第二話 あかねパニック
 蓮華は天道家に暫く身を寄せることになった。勿論、彼女の近衛奴の紫苑も一緒だ。
 彼女はあかねに変身できる体質を持ってしまっている。
 また、日本の常識は彼女には通じない。従って乱馬たちのまわりは大騒ぎ。
 だが、あかねとは波長が合うようで、仲良くなった。乱馬はハラハラしながら、蓮華とあかねを見守る。
 日本に来たのも何か訳ありのようで、気になりながらも、真意は中々摘めない。

第三話 渚の哀歌
 海が見てみたいという蓮華の希望で、乱馬とあかねそして紫苑は連れ立って湘南海岸へと出かける。
 しかし、再び蓮華は海へと身を投じる。そのために海に来たらしい。
 だが、紫苑と乱馬の連携で助け上げられる。その時に紫苑があかねに変化することを知る乱馬たち。
 案の定騒動が拡大する気配があった。
 一緒に乱馬たちにくっついてきた、九能や八宝斎が絡み、海辺は大騒ぎに。

第四話 蠢く陰謀
 海端の民宿で乱馬たちは宿を取ることになる。
 息を吹き返した蓮華をあかねは何故命を粗末にするのか尋ねる。
「臨まぬ婚姻を結ぶくらいなら死んだ方がいい。」と呟く蓮華をあかねは複雑な想いで見詰める。
 折りしもその日は十三夜の前夜。明日は十三夜。
 海岸に異変が起こる。蓮華を求めて羅公が闇から迎えに来たのだ。羅公の仙術で海岸に異世界への扉が開いた。花梨はまだ意識が戻らない蓮華に水を浴びせ掛けた。あかねに変身する蓮華。羅公はあかねを蓮華と間違えて、彼女をさらってしまった。
 蓮華を気つかせるために紫苑は東京の天道道場ヘ、薬箱を取りに出ていた。
 乱馬は、あかねに追い縋ろうとしたが、シャンプーとコロンの陰謀で、金縛りにあい、みすみす羅公の手にあかねを渡してしまう。
「最初から、これが狙いだったのか?」
 銀の糸の虜になった乱馬はコロンと花梨を睨みつける。
「無駄だ。明日は十三夜。あかね殿は羅公に嫁いでもらおう。そして、蓮華は紫苑と、そしておまえはシャンプーと祝言じゃ!」

第五話 洞窟の攻防
 身動きが取れない乱馬は、コロンとシャンプーに捕らわれたまま、海端の洞窟に閉じ込められた。次の日の夜明けまでそこへ幽閉される。
「諦めるね。あかねは今宵、羅公と結ばれてその子を身篭ることになる。だから、乱馬は私と結ばれる、これで皆が幸せになる。」
 戻って来た紫苑は、花梨から蓮華は魔手から救われたと聴かされる。羅公が滅びたのかと問うたが花梨は詳しくは言わない。
「明日には目覚めた蓮華と祝言じゃ。コロンの孫共々、幸せになるがよかろう。明日の朝、夜明があけてから、蓮華にこの薬を飲ませてやるとよい。」
 何故、今すぐ薬を使わないかと尋ねたが的を得る言葉は返って来ない。
「蓮華さまはお疲れの様子じゃからな・・・。」
 乱馬の心があかねの上にあることを感じていた紫苑は、花梨の言葉に耳を疑った。
 そして、乱馬とあかねの姿が消えたことに不信感を抱く。だが、花梨は何も言おうとしない。
「今夜は遅いから早く休め。明日は忙しくなるぞ。」 
 紫苑は蓮華の部屋に忍んでいき、気付け薬を飲ませた。そして、初めてあかねが身代わりにさらわれたことを知る。
「あかねの犠牲の上に幸せになることなど、あたしにはできない。」
 蓮華はとある決意を紫苑に告げた。
 紫苑は彼女に同調した。
「行こう!羅公からあかねさんを救い出すんだ。」
 二人はまず、乱馬の幽閉された岬の洞窟へ向かう。途中、コロンと花梨の二人を相手にしながらも、乱馬の元へと駆けつける。

 最後にはシャンプーが控えていた。
「ここからさきには通さないね!」
 三対二の攻防である。圧倒的に紫苑と蓮華は劣勢にあった。だが、乱馬とて黙って見ているわけではなかった。繋がれた鎖を、気砲で辛くも打ち砕くと、乱馬は闘気で洞穴の牢をぶち壊した。
 そして、紫苑と蓮華の助けを得た彼は、蓮華の導きで、羅公が潜む、海神の門を潜った。

第六話 あかね危機一髪
 さらわれたあかねは羅公と対峙する。
 暗い初老親父の仙人が羅公の正体だった。
「あんたなんかと結婚なんかしないわ!」
 あかねは持ち前の気の強さから抵抗を試みる。だが、羅公の術にはめられてしまった。
 羅公はまやかしの術で、自らを乱馬と化したのだ。
 心の隙間に入り込む羅公の妖術。あかねは、最愛の人に変化した羅公へと惑わされてゆく。そう、目の前の羅公が、己が意識の中で美化された乱馬となり、彼女を永遠の虜にしようと襲い掛かったのである。
 あかねは乱馬に変化した羅公へと心を奪われてしまう。


第七話 十三夜の攻防
 まさに、羅公の毒牙に掛かろうとした瞬間、乱馬と蓮華、紫苑が雪崩れ込んだ。
「このまま、彼女を夢の中へと置いておいたほうが、幸せというもの・・・。おぬしのような中途半端な男はあかねには相応しくはない。」
 襲い来る羅公の妖術。ワダツミの世界は海の底。
 噴出した海水は乱馬たちを変化させた。乱馬は女に、紫苑と蓮華はあかねに変身を遂げる。
 それだけではない。羅公は己の妖術で、あかねの心をも牛耳っていた。そう、彼の妖術は、あかねだけではなく、紫苑と蓮華までも操り始めたのだ。あかねと姿形を共にした、変化後の彼らもまた、羅公の術へと捕らわれてゆく。それでけではない。彼の妖術は三人を同じコスチュームに仕立てあげたのだ。
「これでは、どれが本物のあかねと、容易に区別がつかぬであろう。攻撃もできまいよ・・・。おまえがあかねを愛しているなら尚更な!おまえのような中途半端な男に、彼女を幸せにできる筈がなかろう!」
 飛び出す妖術に苦心しながらも、乱馬は打開策を謀る。
 羅公と三人のあかねを相手しながら追い詰められてゆく。
「目覚めろっ!あかね!思い出せ。俺のこと。本当の早乙女乱馬は、この俺だーっ!」
「ほお・・・。おまえ、本物のあかねがわかるのか。」
「あったりめえだ・・・。あかねは俺の許婚。てめえなんぞには絶対にくれてやらねえ!」
「だが、それだけでは太刀打ちできまい。」
 振り上げた剣(蓮華から預った彼女の一族の家宝)の切っ先から光りが放たれた。と、溢れていたワダツミの泉の水は、瞬時に湯となって上から降り注ぐ。再び乱馬は男へと立ち戻る。そして、その湿気と熱気を利用して、羅公向けて飛竜昇天破をぶっ放した。
 羅公の妖術を駆逐してゆく激しい気砲、飛竜。
「くそ・・・。せめてあかねはわが元に・・・。」
 羅公はこの期に及んでもあかねへ執着している。
「あかねと結ばれるのは、他でもねえ、この俺だ!」
 乱馬は残る力を振り絞り、羅公へと闘気をぶちかました。
 崩れる羅公の世界。

 やっとのことで外へ。
 夜明けが二人を柔らかく包みだしていた。
 紫苑と蓮華は互いの心を知り、羅公を滅ぼした今、新たな旅立ちを迎えようとしていた。
「幸せは己の力で掴み取るもの、良くわかった。一族の掟よりも大切なものも・・・。」

「婿殿、今回は負けを認めよう。だが、わしらは決して諦めはしない・・・。その強さ、女傑族の血へ必ず混入させるでな・・・。」
 コロンは夜明けと共にシャンプーを伴って帰っていった。
 後の月が海岸に沈む頃、太陽が茜色に輝きながら再び昇り始める。

 一年後・・・二人の元へ一枚の手紙が舞い込んだ。
 そこには夫婦になったという蓮華と紫苑の二人が。二枚の写真が同封されていた。玉のような子供を抱いた幸せそうな二人の写真が添えられていた。そしてもう一枚には・・・あかねになった二人が子供をあやしている・・・
「悪趣味すぎるぜ・・・。」



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