イラスト/きつねさま
■戌年は犬夜叉の年?■


「かごめ。今年もお世話になるからね!」
「あ、あの不良彼氏も連れて来なさいよ!」
「楽しみにしてるからね!」
 由加と絵理とあゆみ。三人の友人に声をかけられた。

「うん、わかったわ。一年に一度のカウントダウン行事だものね。今年も手伝ってね。」
 かごめは渋々、相打ちした。

 かごめの実家は「日暮神社」。犬夜叉を封印していたご神木をはじめ、古い社が立ち並ぶ空間だ。
 一応、神社なのだから、年末からお正月にかけては、いろいろと忙しい。新年のお守り作りに始まって、新年の祈祷など、成人式が終わる辺りまでがかきいれ時になるのだ。
 今年は受験生だから、準備期間からの手伝いなるものは勘弁してもらったというのに。年越し参りの巫女稼業を手伝わされることになっていた。中学生に上がってからは、毎年、氏子でもある親しい友人に頼んで、一緒に巫女を手伝ってもらっている。未成年だから「アルバイト」という形態は取れないが、氏子としての宗教行事なら、何とか…ということで、未公認アルバイトもクリアしている。四人、示し合わせて、今年も巫女になるのだ。
 友人たちには除夜の鐘が鳴り出す頃から、日暮神社に来てもらい、社務所にて年越し参りのお守りやら破魔の矢などを売るのを手伝ってもらうのだ。そのまま、かごめの家に泊まり、翌日、神社本殿で合格祈願の初詣をして、解散する。そんな計画が、今年も、仲よし四人組で持ち上がってしまったのだ。

「かごめのおじいさんが、今年もよろしくって、誘ってくれたのよ。」
「年越し参りは毎年、猫の手も借りたいくらいに忙しいんでしょ?」
「まあ、そうだけど…ああ、そう…。爺ちゃんが誘ったの…。」
 半ば諦め気味に言い放った。

 実のところ、今年は乗り気ではない。
 当たり前だろう。こちらは「火のついた、受験生」なのだ。ここのところ、戦国時代がややこしいこと続きだったので、すっかり「学校」そのものにご無沙汰している。
 「新年は現代で迎えるの!いい加減、勉強を取り戻さないと、やばいのよ!」と無理矢理、骨喰いの井戸を抜けて戻って来たばかりだ。
 
(それなのに、爺ちゃんはあたしの、切羽詰った事情も察せずに、また、巫女だなんて。一応、健康を害して長期欠席させてもらってるんだけどなあ…。あたし。)
 ふうっと溜息が漏れた。
 二学期の成績表も、欠席が多かった分、見事に玉砕していた。
 そろそろ、試験勉強に本腰を入れないと、やばい。
 いくら、首都圏に高校が数多あれども、出席日数はギリギリ、しかも、成績は下となると、合格を出してくれる学校があるかどうかさえ、不安だ。
 中学浪人や中卒では終わりたくない。
(受験生だってこと、みんな、自覚してるのかしら…。)
 と疑いたくなるような話でもあった。

 だが、机にばかり向かっていると、確かに、気分は晴れず、ウップンが溜まってくる。自分以外の友人たちは、一様に皆、真面目に毎日、受験勉強をしているだろうから、たまにはハメを外したいと思うのも当然だろう。久々に戦国時代から帰宅して、机に向かっている、己が、もう勉強に飽きてきているのだ。

「犬夜叉には、声をかけないでおこう…。だって、普通じゃないしね。いつまでも、誤魔化しきれるもんじゃないし。もし、あいつが半妖だってばれでもしたら、面倒だし。」

 そう決めたものの、ふううっと溜息が漏れる。


 大晦日。
 今年の年の瀬は、例年よりも寒かった。
 巫女衣装だけでは、寒い。そこで、着物の下にいっぱい着込む。それと、カイロも手放せない。
 それでも、日が落ちると、深々と寒さが迫って来る。
 吐き出す息も真っ白だ。

 足元にヒーターを置いてもらっても、なかなか、手先までは温まらない。
 にこやかに、作り笑いしながら、お守りや破魔の矢を、参拝者に乞われるまま、売るのが巫女の仕事だった。巫女というよりは、売り子だろう。
 新年を迎える頃、参拝客のピークが来て、午前二時を回る頃になると、さあっとさすがに引いていく。後は初日の出を拝もうと夜明けに参拝する熱心な氏子さんがパラパラ居るくらいだ。
 さすがに、深夜ともなると、眠気が回ってくる。いくら、昼寝をしていたとしてもだ。

 夜が深々と更ける頃、ふっと、あいつが現れた。

 そう、遠巻きに、かごめを見詰める瞳の気配を感じたのだ。しかも、神社の脇に生えている、樹齢百年近い高木の枝先にちんまりと犬座りしてこちらを覗きこんでいる。

(げ…。犬夜叉…。骨喰いの井戸を通って、現代(こっち)へ来たのね…。)
 破魔の矢飾りを売りながら、そっちへと神経が寄っていく。
「かごめ!釣銭、間違ってるわよ!」
 横から由加が声をかける。
「あ…。ああ。ごめんなさい。」
 いやはや、かごめなりに動揺し始める。
「そろそろ、限界かのう…。深夜じゃからのう。」
 爺ちゃんがかごめを見ながら笑った。
 そろそろ、午前一時。勿論、中学生が起きて、外を歩いてような時間ではない。
「あたしたちなら、まだ大丈夫ですけど…。」
「でも、かごめちゃんはそろそろ限界かしらね…。」
 友人たちは声をそろえる。
「後は、爺ちゃんや氏子さんたちに任せて、あなたたちは母屋へ戻って、寝なさいな。」
 にっこりとかごめの母が声をかけてくれた。
「母屋の居間に蒲団を敷いてありますからね。それから、夜食も準備してあるから、好きにやんなさいね。」
 かごめの母が笑いながら進めてくれた。

 巫女装束から解放された女子中学生たちは、それぞれ、持って来たジャージに着替えた。
 ストーブがガンガンにたかれた部屋で、ふうっとくつろぐ。
「結構、忙しかったね。」
「やっぱ、日本の正月は神社よね。」
 それぞれ、そんな事を言いながら、労働の後のひと時を楽しむ。
「わあ…。おせち料理だ。」
「たっくさんいろんなものがあるわよ。」
「かごめのお母さん、お料理上手だものねえ。」
 ちゃぶ台の上には、少女たちに用意された食事やおやつ、ジュース類が整然と置かれていた。これだけ用意されていたら、女子中学生たちのちょっとした、「宴会場」に早がわりだ。その実、このささやかな「お喋り宴会」を楽しむために、娘たちは集って来たと言ってもよいかもしれない。
 かごめも、随分、久しぶりに友人たちとこうやって、何気ないお喋りを楽しむような気がした。
 ここのところ、奈落たちとの闘いで、ずっと、戦国時代(あっち)へ行きっぱなしだったから、こういう、潤いの時間に飢えていたのかもしれない。
 すっかり、犬夜叉が傍に来ていることを忘れていた。

 さすがに、未成年なので「酒」というわけにはいかなかったが、ずっと冷える社務所につめていたその労をねぎらう意味もあったのか、あまざけがIHヒーターの上にくべられていたから、いけなかった。
 甘酒とはいえ、ごく少量だが「アルコール」が混じっている。身体がほこほこ温まる程度のごく微量なアルコール成分だが、深夜冷え切ったかごめたち、中学生にはそれなりに効いたようだ。へべれけになるという程度ではないが、顔がほんのりと赤くなる。そればかりではなく、とっても良い気分にもなった。
 いや、案外、「新年」という特別の晩というシチュエーションにほんのりと酔ってしまったのかもしれない。
「ねえ、さっきからさあ…。外に人の気配感じない?」
 と、あゆみが窓の方をちらっと見やった。
「誰か居るんじゃないの?」
「どら。」
 由加ががらりと窓を開く。と、ひょこっと犬夜叉が顔を出した。
「きゃあ。かごめの彼氏じゃん。」
「ねえねえ、かごめに会いに来たの?」
 途端、盛り上がった。
「よ、よお…。かごめのトモダチ。」
 犬夜叉は恥じかみながら手を挙げる。頭には耳を隠すための野球帽。それ以外は、いつもの、童子風の赤い着物だった。

「ちょっと、あんた、何しに来たのよ。」
 かごめがぼそっと犬夜叉に問いかける。
「うるせーな。暇だから、遊びに来たんじゃねえか。」
 ぼそぼそっと歯切れ悪く返答する。
「きゃあ、新年早々、かごめに夜這いかけに来たの?」
 それなりに盛り上がる友人が、そんな言葉をかける。
「そ、そんなんじゃないわよっ!」
 かごめが、あたふたと否定しにかかる。
「あ、犬夜叉の兄ちゃん。」
 姉たちの気配で目が覚めたのか、トイレに立った草太が、通り様に声をかけた。
「わあ、弟君も知ってるんだ。ってことは、家族公認なのねえ。」
「ねえねえ、君も草太君もも、こっちへ来なさいよ。そんなところに突っ立ってたら、寒いでしょう?」
「あたしたちと一緒に、新年の夜をパアーッと過ごしましょう!」
 かごめは不味いと思ったが、友人たちは容赦ない。
 半ば強引に、草太ばかりでなく、犬夜叉を部屋へと招きいれてしまった。

 こうなると、寝床へなど入ってはいられない。
 今夜は新年というおまけまでついている。特別な夜だ。居間が俄か「宴会場」へと化すのに、時間がかからなかった。

「ねえねえ、前から気になってたんだけど…。あんたさあ、どうしてそんな面白い格好してんの?」

 そら来た!
 かごめは警戒した。
 犬夜叉を招き入れて、一番弱るのは、こうやって、友人たちが詮索を始めることだった。
 前、彼と話したときは、かみあわないまでも、会話がそれなりに成立し、事無きを得たが、ここであからさまになるとやばい。
 もし、彼が人間では無いという、衝撃的事実に気付かれでもしたら…。
 どっくん、どっくんと、かごめの心臓が音をたてはじめる。

「俺、小さい頃から、ずっと、この格好だけど。」
 ボソッと犬夜叉が言いかけたのを、かごめがぐっと制した。
(何だよ…。)
(いいから、余計なことは言わないで!)
 かごめは犬夜叉を牽制しながら、言った。

「あはは、お正月の手伝いをしてもらうのに、この格好で来てって頼んでおいたのよ…。ねえ。」
 強引にかごめが返答した。
「お、おう…。」

「へええ…。そうか。ここは神社だものねえ。」
「その格好からすると、やっぱり、神社のお仕事、手伝ってるんだ、あんた。」
「赤はお目出度い色だものねえ…。」
 じろっと、犬夜叉を見詰める好奇の瞳。
「でも、何だかねえ…。」
「せっかくのお正月なんだから、もうちょっとねえ…。」
「そんなチンケな衣装じゃあ、その、きれいな銀色の髪が勿体無いわよ!」
 少女たちは、ずいっと身を乗り出して犬夜叉を見た。
「お正月なんだから、もうちょっと着飾っても良いんじゃないのお?」
「そうよねえ。」

 甘酒含有のアルコールも手伝っているのか、少女たちは、いつもよりも、積極的かつ強引であった。

「せっかくだから、お正月バージョンにしてあげるわ。」

「ええええっ?ち、ちょっと待ってよ!みんな!」
 かごめは焦った。
 犬夜叉の身体を触られるということは、犬耳がピンチだ。

「草太君も手伝ってよ。」
 と、目覚めた弟の草太にまで、声をかける始末。
「適当に、彼に似合いそうなお洋服、何でもいいから持ってきてよ。」
「洋服なら、そこの押入れにあると思うよ。」
「こら、草太!無責任なこと言わないでよ!」
 かごめが怒鳴った。
「いいじゃん、面白そうだもの。僕も兄ちゃんが着飾るところ見てみたいよ。」
「弟君が、ああ言ってるのよ。」

「なっ、て、てめえら!や、やめろよ!」
 好奇心だけで、擦り寄って来る少女たちを目前に、抵抗することすら忘れて、犬夜叉はたじっと、背後へ後ずさる。
「やめろー!」

「やばいっ!このままじゃ、犬夜叉、鋭い爪をあの子たちに立てちゃうわ!」
 そういう、危機的状況を悟ったかごめは、咄嗟に叫んでいた。

「おすわり!」

 ぐえ!どちゃん!

 かごめの発した一言に、犬夜叉の身体は、畳の上にズシンと沈んだ。念珠の言霊が作動したのである。

 思わず、発した一言に、しまったと思ったが、後の祭り。犬夜叉が畳に投げ出され、怯んだ隙に、友人たちは無理矢理、犬夜叉の鼠衣の着物を引き剥がし始めた。
「やめろー!」
 犬夜叉も体中を触られ、不機嫌で叫んだが、こうなってはどうにもいかない。無闇に抵抗すれば、また、かごめは「おすわり!」を連呼するだろう。これは、犬夜叉にとって、屈辱的な呪文である。

「結構、いい、身体してるわねえ!あんた!」
 バッチンと絵理の手が犬夜叉の背中に飛ぶ。
 引き剥がした衣服の下半身は、白いフンドシだ。
「きゃああん、あんたさあ、クラッシックパンツはいてるの?」
「どれどれ。」
「いやん、これが、あのフンドシなのお?」
「くおらっ!ど、どこ見てるんでいっ!」
 甘酒に酔ってしまった少女たちの前では、成す術もない。

(ダメだ…。皆、すっかり甘酒に酔っ払っちゃってるわ。)
 かごめは額に手をやりながら、脱力した。
(こうなったら、成り行きにまかせるしかないか…。)
 既に悟りともとれる、諦めの境地に入り込んでいた。 

 かごめの危惧したとおり、勢いで、野球帽もひらりと脱げた。
(げ!帽子が脱げて…犬耳があからさまになってる!)
 かごめの背中から、冷や汗が滴り落ちる。
 絶体絶命。犬夜叉の正体が暴かれる時。そう思って、力が入った。

「きゃああ、これ、見てみて。犬の耳よ!」
 目敏く犬耳を見つけて、あゆみが叫んだ。
「今年は戌年だからって、犬耳なんか、つけてるぅ!」
「いやああん、かごめの彼氏ってユニークぅ!かーわいい!」
 群がるように、犬耳を触り出した。
「どうなってるのぉ?これ。」
「きゃん、本物の耳みたあい!」
「おもしろーい!」

「こらあ!くすぐってえだろが!」
 犬夜叉は既に涙目になっていた。

 幸か不幸か、戌年に救われた。戌年だから気を利かせて、犬夜叉が「犬耳」を仕込んできたと、少女たちが勝手に解釈してくれたようだ。
 よく観察すれば、人間の耳がくっついていないのだから、それは「本物の犬耳」とわかってしまいそうなものだが、少女たちは着せ替えに夢中になってしまったので、それ以上、突っ込みはしなかった。

 ふううっと、かごめの口から安堵の溜息が漏れる。
 
「ねえねえ、せっかくだからさあ、これ、こんな中華風な感じの服どう?」
「きゃああ、それ、かわいーかもよ!」
「着てみてー!」
「きゃああ、犬耳がワンポイントになってかわゆーい!」

「ねええ、このネックレス、取れないわよ。」
 犬夜叉の首に巻かれた念珠に気付いた由加が、ふんぬっと、取ろうとした。
「いてて、首が痛いだろうがっ!」
 犬夜叉が引っ張られて、悲鳴をあげる。
「変わったネックレスねえ…。何だか、数珠みたい。」
「わあ、勾玉なんかついてる。ねえ、かごめ、御神具か何かなの?」

「お守りみたいなものよ。」
「んな、良いもんじゃないぞ!」
 かごめの適当な受け答えに、犬夜叉はムッとしながら答えた。彼にしてみれば、言霊の念珠は「迷惑極まりない神具」に違いない。
 取れるものなら、取って欲しかったが、当然、無駄な足掻きだ。

「お守りかあ…。まさか、かごめの贈り物とかあ?」
 好奇心旺盛な、少女たちに瞳が迫って来る。
「まさか…。ち、違うわよ。」
「あー、そんなに焦ってるところがあやしいわ。」
「ま、取れないから、これはこのまま置いておいて。」
「さて、これ着せちゃえ!」
「きゃああ、似合いそう!」

「だああっ!変な着物、着せるなーっ!」
 うら若き乙女たちの襲撃に、すっかり、闘気も消えうせた、犬夜叉の悲痛な叫び声が、部屋中に響き渡っていった。




「たく…。こいつら、何だってんだよ。」
 犬夜叉が、ハアハアとまだ荒い息を吐きながら、かごめを見返した。
 傍には、疲れ切った少女たちが、蒲団の上でまどろんでいる。適度に甘酒のアルコールがまわってしまったようで、そのまま、倒れ込むように眠ってしまったのだ。
 勿論、草太も一緒に、眠っている。
「まあ、良いんじゃない。お正月だし…。」
「こっちの世界の正月って、こんな風に空騒ぎするのかよ…。」
 まだ、身体中を着せ替え人形にいたぶられたダメージが残っているのか、ブツクサと小言を垂れている。
「あら、戦国時代だって、お正月はみんな、お酒飲んだりご馳走食べたりして、大騒ぎしてるんじゃないの?弥勒様とか珊瑚ちゃんとか、七宝ちゃん、かえで婆ちゃんの村で新年を祝ってるんでしょう?」
「ま、まあな…。」
「もしかして、犬夜叉、あっちの空騒ぎについていけなくなって、居辛くなって、こっちへ来ちゃったんじゃないの?案外…。」
 一瞬、ぎくっと犬夜叉の肩が揺れた。
 どうやら図星だったようだ。
「いつの世も、新年は目出度いものなのよ。だから、こうやって大騒ぎしてみたくなるんじゃないのかなあ…。」
「たく、迷惑な話だぜ。」
 犬夜叉はまだ、ブツブツ言っている。

「それにしても…。」
 かごめはチラッと犬夜叉を見た。
「な、何だよ…。その目は。」
 たじっとなって犬夜叉がかごめを見返す。
「似合ってるわねえ…ずいぶん。」
 くすくす笑いながらかごめが言う。
「なっ。何だよ!この変な格好がかあ?」
 顔を真っ赤に熟れさせた犬夜叉が言った。
「案外、あんたって、エスニックな雰囲気の衣装が似合うのかもしれないわね…。」
「そ、その、えすにっくって何だ?くおら!意味わかんねーぞ!」
「惚れ直したかも…。」
 ふっと、傍で触れたかごめの吐息。
「ば、馬鹿ッ!」
 これ以上ないと言うくらい、犬夜叉の顔が衣装と同じ赤色に染まる。
「冗談よ。」
 かごめは真顔から一転、ぺろっと舌を出した。
「なっ!てめえ…。」
 犬夜叉はからかわれた腹癒せにぎゅううっと拳を作ってみせる。

「今年もよろしくね…。戌年の主役さん。」
 一転、かごめは犬夜叉の頬に唇を寄せた。

 カアアアッ!
 ぎしっ!

 犬夜叉はそのまま、壁に背中をくっつけて、座ったまま、固まって動かなくなってしまった。

「もう、まだまだ、ウブなんだから。」
 かごめは、ふっと笑うと、犬夜叉から離れた。



 よく朝、かごめや友人たちが目覚めると、犬夜叉はまだ、固まっていた。


 完

1月11日
 

いやはや…。犬×かごは書きなれていないから、
加減が全然わかりませんでした。
 乱馬君が犬夜叉にコスプレしたというネタが脳内に湧き上がったのですが、
あまりに同人色が強くなりすぎる傾向があったので、諦めました。
犬夜叉って案外、中華風味な服も似合うのかもしれませんね。
で、おさげを編んだら…朔犬だとベストかも(やめい!
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