サイレントムーン あとがき



 この作品のプロットを思いついたのは、今年の六月のことでありました。
 最初は、旧暦の七夕の話として、書き始めておりました。
 ちょうど書き始めた頃、バタバタと色々なことがありまして、一度、書く気力が根底から失せ、失速しました。というのも、閉経性更年期障害の症状が強く出てしまい、夏の暑さもあいまって、久々に心身ともにノックダウンしました。
 いやはや、えげつないほどに感情が揺れまくって、どうにかなるのではないかと、思った次第。かかりつけの先生に相談もしました。色々、指摘していただいて、閉経期の異常の原因なども、チラッとお聞きしました。
 閉経期は身体の不調が鮮明に出ることが多いそうです。ヒートショックは血圧変動と関わっていて、血圧急上昇で症状が出ることが多いそうです。従って、血圧を下げて安定を図ることが解決の糸口になるそうで。ヒートショックが来たら、深呼吸をしたり、水を飲んだり、手と足のグッパを繰り返したり。つまり、血液の流れを促すことで、ある程度コントロールできると教わりました。
 何とか処方してもらったお薬を飲んで落ち着き、今は、あれは何だったのだろう?と思えてしまうほど、回復しております。
 当時関わっていただいていた、方々に、ほんとにいっぱい、ご迷惑やご心配をかけました。穴があったら入りたいです。はい。

 この作品を書き遂せなければ、次に進んでいけないないと強く思っていましたので、九月に入って、涼しくなり出したころ、改めてプロットを整理し、再び、書き始めました。…なので、夏本の続きの創作はまだ、これから始めます、ごめんなさい。(2017年11月末現在)
 私に取って、この作品は、また一本、印象に強く残る作品となりました。
 最後に使った「睡蓮」にもある想いが私なりに込めてあります。
 本当は、ラストシーンに、睡蓮の間に、蛍を飛ばしたかったのでありますが…。睡蓮も白ではなく、青が最初のイメージでした。初秋の作品に書き改めたので、蛍は飛ばせず睡蓮も「蓮白玖」と「蓮黒玖」という名前から、白い花と黒いオシベの睡蓮へと改めました。
 諦めたラストシーンは、いつか、別の作品で使いまわします。
 特にラストは、迷走して、何度書きなおしたか。いや、まだ、書きなおしたい気持ちで一杯です。
 苦しみ抜いた作品だからかもしれませんが、ラストを書いていたとき、またぞろ、心にぽっかり穴が開く出来事に見舞われました。
 舞いこんで来た一枚の、喪中はがき。
 私をらんま世界の同人沼に突き落としてくれた友人が永遠の眠りに就いたことを知りました。
 試作室に置いてある、未完作品「格闘オーケストラ」シリーズを、メールでやり取りしていた、友人です。
 彼女が居なければ、私は二次創作に手を染めることは無かったと思います。二十年ほど前、彼女とメールで遊び始めた「小説ごっこ…格闘オーケストラシリーズ」が私の二次作文の原点でした。
 また、「秋桜」、「蜜月浪漫」、「月の華」(蛮蛇)、「水鏡」、「蒼い月と紅い太陽」…など、彼女との「濃密なオタ的やり取り」の中で思いついて書き始めた作品も結構あります。「RANMA WONDER 3」というRNRのパラレル誌にも、「南極堂」というペンネームで、原稿を寄せていただきました。(京極夏彦さんの大ファンだった彼女です。)

 彼女が持病の闘病(がん)のため、近所から越していってしまってから、私も大病(脳梗塞)を患い、ここのところ年賀状のやり取りだけに成り下がっていたのが、悔やまれてなりません。
 彼女と最後に会ったのは、2008年のるーみっく展京都会場でした。私は、近鉄西大寺駅で失敗をやらかして、京都線ではなく大阪難波線に乗ってしまい、約束の時間にめちゃくちゃ遅れてしまったという、どあほでした。今も鮮明に覚えています。

 色々あって、創作そのものに、めちゃくちゃ苦しんでいた私に、この作品をちゃんと書き遂せさせてくれたのは、もしかすると、彼女だったのかもしれません。
 書いている最中に、珍しく彼女のことが気になったのも確かです。らんまカフェに誘うかどうかも、迷っていました。でも、連絡を取ろうとして、何故かメールアドレスが通じずで、不審に思っていました。
 喪中はがきを見て、ああそうか…と、全て、腑に落ちて、納得したのでありました。

 実は、この作品、毎日顔を合わせていた頃《職場が一緒だったことがあったので》、彼女と交わした「かぐや姫譚の考察」が、基本になっています。過去に、「かぐや姫」という邦画(沢口靖子さん主演)があったのを、ご存じな方もいらっしゃるかと思いますが、その映画が放映されたときに喋ったような記憶があります。
 「かぐや姫譚」というのは、物書きならば、一度は己解釈で書いてみたいと思うテーマだと思います。私も、その一人で、高校生の頃から、いろいろ妄想だけはしておりました。
 本作で植物のようなイメージで書いたのも、当時、オタ世界を席巻していた「キャプテンハーロック」からイメージをいただいております。私、松本零次作品にのめりこんでいた時代もありまして、その頃、SF作家になりたいと、けっこう、真剣に思っておりました。拙作「ダークエンジェル」にその影響がもろに出ていると思います。この作品も、いずれ続きを書いて、完結させます。

 それともう一つ。この作品のラストイメージには、「鉄腕アトム」の「植物人間」が元になっています。私、幼少期にオンタイムで見た記憶がかなり残っているほど、このストーリーが好きで、中学生になって朝日ソノラマ版のコミックスをお小遣いで買っていたのですが、それを読んでもっと好きになりました。
 そのイメージをいつか使いたかった…のでありました。

 なにはともあれ、友人が鬼籍に入ってしまったことは、脳天打ち砕かれるほど、衝撃でした。
 共に、濃厚な世界を持っていました。彼女はいわゆる腐女子系統、私は王道。そんな彼女に突き落とされるように、私は、二次創作の世界へと足を突っ込んでしまいました。そして、未だ抜け出せず、罹病後、速度は落ちましたが、書き綴っています。
 鎖骨好きを指摘したのも、実は彼女でした。「○○○は、絶対、鎖骨フェチだ!」と…。それまで、自覚していませんでしたが、確かに、惚れたキャラはほとんどすべて、鎖骨がきれいだったなと…。
 アトムに、五右衛門さんに(ルパン三世)、ハーロックに、冴羽りょうに、孫悟空に、比古い清十郎(るろ剣)に、手塚キャプテン(テニプリ)に、殺生丸さまに、黒子君に(黒子のバスケ)…。好きなキャラって確かにそこそこ、鎖骨が光ってるな…。みたいな…。(蛮骨は殆ど見えませんでしたけれど、きっと綺麗なのです。)
 サイトを構築し始めた頃、色々相談にも乗ってもらったことを、今も鮮明に覚えています。盗作騒動や18禁問題。諸々と。私が18禁サイトを切り離して運営しているのも、彼女の助言によります。(現在不動ですが、作品はちまちま書いていますので、そのうちアップ作業をすると思います。)
 幼稚園の役員会で一緒にならなければ、恐らく、蜜に付き合えなかった。出会いは本当に偶然で、でも必然だったのだと今は思います。子供の学年は見事にすれ違っていますので…。
 袖振り合うも他生の縁…。きっと、次の輪廻の先も、お互い、関わっているような気がします。
 とまれ、彼女には、ありがとうと言いたいです。彼女が居なければ、私は…「一之瀬けいこ」という存在、そして、「呪泉洞」というサイトは無かったのですから。

 今回この作品を仕上げられて、また、一つ、前進したと思います。これからも、細々ではありますが、懸命に書き綴っていきますので、たまに、思い出した時、読みに来てくださいませ。


2017年12月1日





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